石原知事施政方針

平成20年9月18日更新

平成20年第三回都議会定例会知事所信表明

平成20年9月18日

 平成20年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 このたび名誉都民の候補者として、川淵三郎さん、松本源之助さんの二名の方々を選定させていただきました。

 川淵三郎さんは、前回の東京オリンピックのサッカー代表選手として活躍の後、Jリーグ創設に力を尽くされ、サッカーを地域のスポーツとして根付かせるなど日本サッカーの隆盛に大きく貢献してこられました。

 松本源之助さんは、70年余りにわたり東京の伝統芸能である江戸里神楽の継承に尽力されるとともに、現代音楽や演劇の要素も取り入れて伝統芸能に新しい息吹を吹き込んでこられました。

 お二方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。

1 オリンピックの感動を日本で

 この夏、北京オリンピックで、世界のトップアスリートたちが肉体と精神を極限まで駆使して繰り広げた迫力ある戦いぶりは、見る者全てに感動を与えてくれました。引き続き開催されたパラリンピックでも、ハンディキャップをもろともしない力強い技に人間の可能性の大きさを再認識し、勇気づけられる思いであります。

 日本人選手も、東京都出身の北島康介選手が、日本競泳史上初となる五輪二種目連覇の偉業を打ち立てるなど全国民が歓喜に沸いた一方で、無念のリタイアなど波乱の競技もあって幾多のドラマが生まれました。

 我々を魅了したアスリートたちは、昨今の日本で忘れられがちな、本気で、真剣に事に取り組むことの美しさを改めて教えてくれたと思います。日本の若者たちにとって、単なる勝ち負けではなく、我々と同じ一人の人間が国を背負い、時には孤独を、或いはさらに重い何ものかを背負って繰り広げる真剣勝負を目の当たりにすることは、将来を担うための力を生み出す絶好の機会となると思います。2016年のオリンピック・パラリンピックを日本で、この東京で開催する意義の一つである「人を育てる」がそこにあります。

 オリンピック・パラリンピックでは、会場案内や通訳など舞台裏を支える多くの人々が活躍しております。北京大会でも若者のボランティアが親切で礼儀正しく印象に残りました。日本で行われた外国選手の事前合宿でも、各地の住民が暖かく選手たちをもてなして交流が深まり、日本のホスピタリティの高さを世界に実感してもらえたと思います。

 東京大会が実現すれば、世界の人々との素晴らしい出会いを得ることができ、日本の若者たちが人間同士の連帯や本物の友情を育む大きな機会となるに違いありません。

 国際的な招致合戦が本格化する中、北京市内に設けたジャパンハウスの招致ブースでは都が新たに作成したDVDやガイドブックを活用して、海外のメディアやIOC関係者など、来場した多くの方々に東京の魅力を伝えてまいりました。また、日本各地の祭りなどで招致プロモーションを展開しているほか、都内各地のイベントで区市町村と連携して招致気運のさらなる盛り上げにも取り組んでおります。

 2016年には、人を育てると同時に、最先端の環境技術などの英知を結集して、豊かな水と緑に溢れた都市のモデルを実現し世界に提案するなど、「日本だからできる、新しいオリンピック」を成熟を遂げた東京で開催したいと思います。今後とも、こうした意義と魅力を、あらゆる機会を捉えて国内外にアピールし、招致の成功に繋げてまいります。

 今回のオリンピック・パラリンピックで、都民、国民に夢と希望と活力を与えてくれた、東京在住のアスリートたちを顕彰したいと思います。世界一の座に輝いた金メダリストには「東京都栄誉賞」をもってその功績を称え、見事にメダルを獲得した全ての選手たちにも、新たに創設した「都民スポーツ大賞」を贈呈いたします。今後とも、スポーツの発展に貢献していただくことを心より願っております。

2 都民・国民の不安を解消する4つの緊急対策

 北京大会の最中、ロシアとグルジアの間で紛争が勃発しました。新しい冷戦の始まりが懸念され、世界各所の紛争や頻発するテロとも相まって、国際情勢はさらに混迷の度を深めていくと思います。

 世界経済もまた、混沌としております。いわゆるサブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱は世界中に広がり、米国の大手証券会社の破綻という事態にまで至っております。また、悪しき経済原理の申し子である巨大な投機マネーが、原油や食料等を標的に跳梁跋扈して価格高騰を引き起こすなど、我々は、景気後退とインフレの危機に晒されております。

 他方、我が国においても、破綻に瀕した国家財政などの困難で複雑な課題が山積しております。難局に臨んで、政治の覚悟が問われていながら、国政は、ねじれ国会の下で迷走を続け、臨時国会を目前にして首相が突然に退陣を表明し停滞の極みにあります。

 まさに内憂外患といえる今、この国に必要なことは、政治が明確な未来図を示し、本質的な課題に正面から向き合いながら、変身蘇生のための具体的な行動を戦略的に積み重ねることなのであります。

 ゆえにも、東京からあるべき政治の姿を示す気概を持って、「10年後の東京」という明確な戦略を構え、21世紀の範となる都市を造形すべく全力で取り組んでまいります。さらに今回、都民・国民に広がる不安を解消していくため、首都東京という現場に根ざした発想力と行動力を最大限に発揮し、国を先導する緊急対策を展開してまいります。

(中小零細企業向け支援・雇用対策)

 まず、緊急の中小零細企業向け支援と雇用対策についてであります。

 只今申し上げたように、我が国には、景気後退と広範囲な物価上昇という暗雲が立ちこめ、特に、金融環境が悪化しただけでなく、原油・原材料価格の高騰を転嫁できない中小零細企業の痛手は極めて深刻であります。

 中小零細企業は、単に都民・国民の多くが働く場というだけではなく、日本経済が発展を遂げてきた原動力であり、高度な技術とそれを駆使できる優秀な人材の宝庫でもあります。

 東京と日本の明日のために、一刻も早く手を差しのべなければならず、国に先んじた複合的な施策を講じてまいります。

〈中小零細企業支援策〉

 景気の悪化に伴い逼迫する中小零細企業の資金繰りを支えるため制度融資を拡充し、零細企業への信用保証料の補助も大幅に拡充いたします。

 また、納品単価の切下げ要求など横行する下請叩きを、「下請センター東京」を核として防止してまいります。自治体で唯一、東京だけが下請取引紛争を裁判外で解決できる機関を持っているメリットを最大限に活かし、きめ細かく中小零細企業を支援してまいります。

 経営難に陥っている企業の立ち直りも支援しなければなりません。過去の制度融資が焦げ付いている企業でも、しっかりとした再建計画を立て再起を期すならば、他の金融機関等と足並みを揃え、円滑に債務を圧縮して再建を応援する仕組みを新たに条例案としてまとめ、本定例会に提案いたしました。

 資源価格の高騰は、投機マネーの影響もさることながら、新興国の経済成長を背景とした資源需要の増大により、中長期的に続くことは不可避であります。現下の試練を乗り切るだけではなく、将来を見据えて経営の足腰を鍛え直していかなければなりません。

 そこで、中小企業振興公社に新しく100億円規模の基金を造成して中小零細企業に設備リースを行い、信用保証料も補助して設備更新を支援いたします。こうして生産効率の向上や経営の合理化を促してまいります。

〈非正規雇用対策〉

 景気後退に伴い、非正規雇用者の雇用環境が厳しさを増しております。中でも、バブル崩壊後の就職氷河期に学校を卒業したために、安定した職を得られず、先行きに展望を見出せない30代の年長フリーター等への支援が急務となっております。

 しごとセンターに専用窓口を設け、専門相談員を配置してサポートを開始すると同時に、正社員としての採用を促すため新たな助成金制度を創設して企業に強く働きかけてまいります。

(地球温暖化対策)

 これらの施策により、景気後退と物価高騰に直面した中小零細企業等を支援する一方で、資源価格の高騰の背景には、人類が築き上げてきた現代の消費社会そのものがあることも見過ごしてはなりません。豊かさを得た代償として、CO2の排出等により地球の環境は致命的に破壊されているのであります。

 人類の存続のために、環境との調和を軸とした文明秩序の再構築が不可避でありながら、7月の洞爺湖サミットや先月にガーナで開かれた国連の気候変動に関する会議でも、世界は具体的な解決策を見出すことができておりません。時間ばかりが空費され、あと5、6年でポイント・オブ・ノーリターンが来てしまう今、世界を変革するうねりを起こすため、施策をさらに強化して一日も早く東京を低炭素型都市に転換する必要があります。

 既に導入を決めたCO2排出総量の削減義務化等を着実に具体化していくとともに、排出量が増加を続けている家庭での対策を強化いたします。家庭からの排出量削減には、使用される電気やガスを太陽エネルギーに転換することが鍵となることから、都は、太陽エネルギー利用機器の重要性を強くアピールしてまいりました。これが呼び水となりまして、関連事業者の関心は高まり、国も再び普及拡大に方針を転ずるなど、状況は整いつつあります。この機を逃さず、都独自の新しい補助制度を構築し、都民や事業者、区市町村とも手を携えて、来年4月から本格的に機器の普及をスタートするべく準備をスピードアップさせてまいります。

 さらに、区市町村と連携して環境教育を推進し、学校で学んだ子供が親と一緒に家庭で省エネ・節電などに取り組むことを促し、裾野の広いCO2削減のムーブメントを起こしてまいりたいと思います。

(新型インフルエンザ対策)

 新型インフルエンザ対策も東京が魁とならなければなりません。

 世界が時間的・空間的に狭小となった今日、ひとたび発生すれば瞬く間に全世界に蔓延することは必至であります。狭い都市空間に膨大な人口を抱える東京では、想像を絶する惨事となるに違いありません。

 既に都は、平成17年12月に「東京都新型インフルエンザ対策行動計画」を策定し、施策を積み重ねており、国にも対策を強く求めてまいりました。昨今、ようやく国も動き始めましたが、米英がテロなどと共に安全保障上の重要課題にこれを位置付けて対策を急いでいることに比較して、全く日本は不十分であります。新型インフルエンザから都民・国民を守るためには、東京がさらに二歩も三歩も前に進んで、国を牽引しなければなりません。

 都内で感染が発生しても患者に的確な処置を速やかに施し、その拡大を徹底して防ぐために、抗インフルエンザ薬の備蓄を都単独で、現在の100万人分から800万人分にまで拡充いたします。また、必要な医療資機材の備蓄を積み増し、地域での医療体制も整備してまいります。

 感染の拡大を防ぐには、学校の休校や企業活動の制限なども不可欠であります。立ち後れている法令整備を急ぐよう国に強く求めるとともに、都独自の対応策についても検討を進めてまいります。

 合わせて大学等と連携して、新しいワクチンやより迅速な検査方法の開発に繋がる基礎研究にも着手し、重層的に備えを固めてまいります。

(震災対策)

 新型インフルエンザと並び、震災は東京に壊滅的な打撃を与える危険性が高く、対策は焦眉の問題であります。

 今後30年以内に南関東にマグニチュード7程度の地震が発生する確率が70パーセント程度と予測されております。被害を少しでも軽減するため、現在、建て替え予定のある建物を除く全ての都立病院、消防署、警察署等の耐震化を3か年で完了させるべく取り組んでおります。

 5月に中国で発生した四川大地震では、無惨にも倒壊した学校の校舎が多数ありました。大変な衝撃を受けました。次代を担う子供たちの尊い命を守るだけでなく、地域の避難拠点を確実に確保するためにも、学校の耐震化を特に加速させなければなりません。

 そこで、倒壊の危険性の高い公立学校の耐震化を3年以内に完了するべく、補助制度の創設や人材面での支援などにより、区市町村を全面的にバックアップしてまいります。また私立学校については、耐震化の前提になる耐震診断が遅れていることから、診断費用の補助を拡充し、耐震性能の早急な把握を支援してまいります。

 もとより耐震化を進めるには、都民一人ひとりが自ら取り組む意識を強く持つことが不可欠であります。そこで、先月、「耐震化推進都民会議」を立ち上げ、民と官とがスクラムを組んで耐震化への気運を高める取組みを始動させました。

 加えて、都独自の耐震化促進税制を来年度からスタートいたします。23区内で旧耐震基準に基づき建築された住宅を建て替えた場合に、3年間、固定資産税と都市計画税を全額免除し、耐震改修を行った場合も、国制度に上乗せして軽減する措置を講じてまいります。

 いざ大地震が発生した場合には、都は、迅速な初動対応とともに、医療や介護などの重要業務を継続しながら、都市機能の速やかな回復を図らなければなりません。

 8月末の総合防災訓練では、「即応力」と「連携」をテーマに、警察・消防・自衛隊が、他県や米軍などの支援部隊と共同して迅速に救出救助活動等にあたる実践的な訓練を行い、連携を深めるなど多くの収穫を得ました。

 同じ8月に、首都直下地震を想定して、都政の事業継続計画(BCP)の素案を策定いたしました。今後、重要業務への応援体制の整備や、ライフラインのバックアップ機能強化などを進めてまいります。

 4つの分野で緊急対策を強力に推進するため、とりわけ早期の取組みが必要な施策を補正予算案に計上して提案いたしました。今後、景気後退により税収の減が見込まれますが、今打たなければならない手をしっかりと打って、都民・国民の不安を解消してまいります。

 合わせて、新銀行東京の減資に伴う減債基金の義務的積み立ても行います。必要なものは早く積み立てることが財政的にメリットがあると判断し、前倒しで実施することといたしました。

3 直面する主要課題への取組み

 都民・国民の不安に応えていくため、緊急対策とともに、都政の各分野で施策を力強く展開してまいります。

(消費生活基本計画の改定)

 昨今、悪徳商法による被害や商品の安全性に対する信頼を揺るがす事件が頻発しております。これを受け国は、消費者庁の設置に動いておりますが、その実効性は未だ不透明であります。

 消費者行政は、現場に根ざし、都民・国民の求めに応じて機動力を発揮してこそ、その使命を果し得るのであり、先月、食の安全と安心の底上げのために、国に先駆け、食品の原料原産地表示を拡充いたしました。今後も、我が国最大の消費地として東京が先頭に立ってまいります。

 改定した「東京都消費生活基本計画」に基づき、最前線の現場である消費生活総合センターの相談機能を充実・強化してまいります。また、既に持っている権限をフルに活用して、首都圏での連携も深めながら、悪質事業者の撲滅等に取り組んでまいります。加えて、巧妙化する悪徳商法の実態に遅れることなく、積極的に法整備を行うよう国に求めてまいります。

(若者の非社会性をめぐる諸問題)

 昨今、年齢に応じた社会性が身に付かず、他者との関係を築けずに社会と断絶してしまう若者の非社会性が問題となっており、ニート、ひきこもりなどの他、反社会的な行動にまで至ることがあります。

 最近も、全国で刃物を用いた無差別殺傷事件が相次ぎ、6月の秋葉原での事件では、攻撃用で殺傷能力の高いダガーナイフを使った凶行により、7人もの尊い命が理不尽にも奪われ、日本中が衝撃を受けました。こうした事件の根底には、便利で過度の情報が溢れた現代文明が、逆に若者を孤独に追いやり、人間としての実存までを希薄化させているという文明工学の皮肉、現代の病理があります。

 至急の対策として、危険な刃物について青少年への販売等を禁止いたしました。また、人々で賑わう繁華街であろうとも昼夜を問わず安全で安心な街となるよう、今月に有識者会議を設置し、年度内を目途に防犯対策の充実・強化を図ってまいります。残念ながら、根深い病理を治癒させる即効薬はありませんが、これまで進めてきた心の東京革命などの取組みを粘り強く講じ、社会を変えていく努力を続けてまいります。

(豪雨対策)

 今年の夏は全国各地で局地的豪雨が頻発し、都内でも被害が相次ぎました。都では、昨年8月に策定した「東京都豪雨対策基本方針」に基づき護岸整備に加えて調節池等を整備する他、土砂災害の防止にも取り組んでおります。今月には古川地下調節池の整備に着手するとともに、地下街等の浸水被害を防止するためのガイドラインを作成いたしました。

 今後とも豪雨対策を着実に進めてまいります。

(豊洲新市場予定地)

 7月、豊洲新市場予定地については、土壌汚染対策を講じることで、生鮮食料品を取り扱う市場用地として食の安全・安心を十分に確保できる旨、専門家会議から提言をいただきました。

 この提言を踏まえて、土壌汚染対策を具体化するため、学識経験者による技術会議を設置し、新技術や新工法を広く民間事業者等から公募したうえ、確実で、コスト面でも優れた土壌汚染対策を選択してまいります。

 今後、この技術会議の検討結果に基づき、早期に都としての土壌汚染対策計画をとりまとめ、都民・国民や市場関係者が安心できる万全な対策を講じてまいります。

(多摩・島しょの発展)

 続いて、多摩・島しょ地域について申し上げます。

 先頃開催されたジュニアスポーツアジア交流大会では、アジアの若者がバドミントンと柔道で交流試合を行い、また、来年3月開催の東京マラソンでは、フルマラソンの参加申込者が応募開始後2日で定員を超えるなど、東京は世界のスポーツ都市へと歩みを進めております。

 多摩・島しょ地域を中心として開催される東京国体も、平成25年の開催に向け、7月に策定した基本構想をもとに準備を進めております。競技力の向上やスポーツ環境の整備などにも取り組み、国内最高のスポーツの祭典へと変貌を遂げてまいります。また、初めての取組みとして全国障害者スポーツ大会を同時開催し、誰もが生涯を通じてスポーツを楽しむ社会の実現も目指してまいります。

 さらに、7月に策定した「東京都スポーツ振興基本計画」に基づき、トップアスリートの育成に向け、ナショナルトレーニングセンター等と連携してジュニア選手の強化に努めるとともに、国体のメインスタジアムとなる味の素スタジアムの隣接地には、多摩地域のスポーツ振興の拠点となるスポーツ施設を整備してまいります。また、スポーツ一貫校の開設を検討していた旧秋川高校跡地については、地元市の意向も受け止めながら、新たな有効活用等を検討してまいります。

 来月17日から19日にかけて、昨年に引き続き三宅島でモーターサイクルフェスティバルが開催されます。今年は、フリースタイルのモトクロスなどの新しい企画も加わり、さらに誰もが楽しめる内容になっております。7月にお台場で開催されたプレイベントには1万7千人もの方々が来場する賑わいを見せております。来月のフェスティバル本番も一層、盛り上がるよう、三宅島を支援してまいります。

4 首都東京が真のグローバルプレーヤーであり続けるために

 今月25日、東京の西の空に大きく立ちはだかる、実は見えない壁、すなわち米軍の管理下にあった横田空域の一部が日本に返還されます。これまで東京から西に向かう航空機は、極めて不自然な飛行を余儀なくされておりましたが、これにより飛行ルートは大幅に改善されます。燃料削減などの経済効果は年間で約98億円に上り、CO2の削減効果も一般家庭約1万5千世帯の年間排出量に相当いたします。

 今回の一部返還を重要な一里塚として、共用化の実現に向けた交渉をさらに重ね、米軍の固く固く閉ざされた扉を必ずやこじ開けてまいります。

 都市の世紀を迎えた今日、日本が真のグローバルプレーヤーであり続けるためには、横田基地の共用化をはじめ、首都東京の機能向上が必須であります。それゆえ、自治体の枠を超えた取組みをも行ってまいりました。先頃、現地を視察しました羽田空港の新滑走路建設では、1千億円の無利子貸付を実施して首都圏と世界を強固に結ぶ結節点づくりを促進し、三環状道路のうち中央環状品川線については、都自らも共同事業者となって首都圏の動脈づくりを進めております。

 法人事業税の一部国税化に伴い、国に設置させた実務者協議会においても、既に国から羽田空港の国際線を拡充する方針を引き出し、東京港トンネルの事業着手にも前向きな姿勢を引き出しております。今後も、羽田空港の昼間における国際線の増加や、東京の道路整備の財源確保、外環道の平成21年度事業着手などを国に強く求めてまいります。

 国を動かすだけでなく、地方自らが、既存の枠組みを超えた新しいフォーマットを造形することも重要であります。本日夕方、東京・横浜・川崎の三港を実質的に一港化することを目指し、横浜市長、川崎市長とのトップ会談を行います。三港で世界第13位というスケールを活かし、首都圏のさらなる発展のため、国際物流の要であるメインポートとしての地位を揺るぎないものにし、アジアの主要港にも対抗してまいります。

5 首都東京の使命

 我が国が今まさに国家の危機にあって、「天は自ら助くる者をのみ助く」というこの世の公理を思い起こさねばなりません。

 国政が「日本をどうするか」という縦軸を失う一方、都政では自らの意志で進むべき道を選び取るため、この国の桎梏を打破し、東京と日本の潜在力を解き放つ挑戦を進めてまいります。未来にも繋がる灯りをともすことで、この国をあるべき航路に引き戻していくことが、首都東京の使命であると思います。

 そのためにも、緊急対策を速やかに実施し、年内を目途として「10年後の東京への実行プログラム2008」を改定いたします。「東京から日本を変える」決意を新たにしながら、我々の未来を切り拓くべく、都政運営に全力を傾けてまいります。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案2件、条例案29件など、合わせて48件の議案を提案しております。

 よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。