石原知事施政方針

平成11年9月20日更新
平成11年9月14日
           平成11年第三回都議会定例会知事発言
 ただいま、都議会議長並びに副議長が改選されました。
 田中晃三前議長並びに前島信次郎前副議長には、2年余にわたり議長、副議長の重責を果たされ、
在任中賜りましたご指導、ご協力に心から感謝申し上げます。
 新しく選任されました、渋谷守生議長並びに五十嵐正副議長には、都政進展のために、引き続きご
指導、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 平成11年第三回都議会定例会の開会に当たり、私の都政運営に対する所信を申し述べ、都議会並
びに都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 ただいま、萩谷勝彦議員は、栄えある永年在職議員表彰を受けられました。都政の発展に尽くされ
ました30年間のご功績に対し、深く敬意を表しますとともに、心からお喜びを申し上げます。
 6月28日、名誉都民の田中千代さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご
冥福をお祈りいたします。
 はじめに、名誉都民の選考について申し上げます。
 このたび、名誉都民選考委員会から、田中澄江さん、三田政吉さん、柳家小さんさんを候補者とし
てご推薦いただきました。
 田中澄江さんは、東京生まれの東京育ちの作家として、戯曲、小説、随筆など、多彩な創作活動に
携わり、都民をはじめとする多くの人びとに深い感銘を与え続けてこられました。三田政吉さんは、
先見性に富んだ判断力と卓越した行動力で、演劇文化、食品衛生、地域住民の福祉向上など多方面に
わたる分野で献身的な努力を重ねてこられました。また、人間国宝である柳家小さんさんは、落語界
の重鎮として江戸の伝統文化の伝承に多大な功績を残され、多くの人びとに心の潤いと和みのひとと
きを与え続けてこられました。
 お三方は、広く都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会のご同意をいただ
き、10月1日の都民の日に顕彰したいと思います。
1 首都機能移転問題
  次に、首都機能移転問題について申し上げます。
  来る9月27日、国会等移転審議会の答申を間近に控え、私は衆議院の国会等移転特別委員会に
 おいて、東京都民を代表して、首都機能移転問題に対する意見表明を行います。広く都民や国民の
 合意を得ること全くなく、既成事実だけを積み重ね、手続きだけが一人歩きすることは、東京の危
 機だけではなく、国家全体にとっても憂慮すべき事態であります。
  私は、先の施政方針演説で絶対反対の立場を明確にいたしましたが、改めて、この問題に対する
 基本的な考え方を申し上げます。
  首都機能移転は、「国家百年の大計」として考えるべき問題であるにもかかわらず、バブル期に
 おける東京一極集中の是正から最近の人心一新論にいたるまで、わずか十年足らずの間に移転の理
 由は大きく揺らいで変わり、もはや、移転の意義そのものが失われていることは明白であります。
  千年紀をまたごうとするこの重要な時期に、国政に求められていることは、何よりもまず、地方
 分権と規制緩和の推進に全力を挙げるとともに、近代工業社会を超えた新しい国づくりの哲学、す
 なわち国家のグランドデザインを早急に国民に提示することであります。
  国会や政府機能の移転さえ実現すれば、人心の一新が図られ、新たな国家運営がスムースに始動
 するなどという主張は、本末転倒といわざるを得ません。移転を前提とした議論については、直ち
 に再検討することを強く求めます。
  今日、国家や都市の繁栄と安全のためには、日本も東京も国際社会の中で強い影響力を発揮する
 ことのできる、グローバルプレイヤーであり続けることが極めて重要であります。
  東京は、ニューヨーク、パリ、ロンドンなど大西洋社会以外で誕生した、アジアで初めてのグロ
 ーバルプレイヤーたる都市ですが、現在では、シンガポール、ソウル、上海など、台頭するアジア
 諸都市との激しい競争が始まっております。東京の国際競争力が衰退すれば、東京がローカルな都
 市に転落するだけではなく、日本の国際的な地位は大きく低下することにもなります。
  21世紀に向けて我が国が選択すべき道は、莫大な費用を投じて、国力の大幅な低下を招きかね
 ない首都機能の移転を進めるのではなく、東京湾沿岸地域の有効活用などを含め、東京を中心とし
 たメガロポリスがもつ潜在的な力を引き出し、日本を再生することであります。
  日本の頭脳であり心臓部でもある東京圏は、すでに、国の行政機関等の移転によって、業務核都
 市の育成・整備が着実に進んでおります。移転に必要な経費の一部で、環状鉄道や道路整備に集中
 的な投資を実施さえすれば、混雑緩和による経済効果はもちろん、環境改善や防災機能の向上の面
 でも飛躍的な効果が生まれ、日本全体の国際競争力の強化や経済の活性化にも繋がります。
  また、首都はその国の歴史や文化を背負った重い存在であり、単なる機能論だけで処理すべきも
 のではありません。例えば、現在の国会や皇居周辺は、外国の美しいとされている首都と比べても
 遜色のない、我が国の歴史と文化を醸し出す見事な景観をもっております。成熟した都市環境を保
 存再生し、新しい価値と共生させながら現代都市を築き上げていくことこそ、東京の魅力をさらに
 向上させていくことになります。
  私は、東京がこれまで培ってきた歴史的文化的蓄積を最大限に活かしながら、東京の再構築に着
 手し、国際社会における東京の魅力を一層高めていくことを強く決意いたします。
  首都機能移転については、70%にのぼる都民の皆さんが、現在の財政状況下で移転のために莫
 大なお金をかけるべきでないとしております。
  今後、私は、これまで以上に移転反対の姿勢を強く訴えていくため、世論を喚起する活動を積極
 的に展開するとともに、都議会をはじめ、区市町村や民間団体と一体となった運動組織を来月結成
 し、反対集会を開催いたします。さらに、12月には、都のみならず広く各界に呼びかけた総決起
 大集会を開催いたします。都議会並びに都民の皆さんのご理解とご協力を心からお願い申し上げま
 す。
2 行財政基盤の再建に向けた決意
  次に、現在の都政が直面する最重要課題である行財政基盤の再建について申し上げます。
 (財政再建推進プラン)
  東京都は、かつて経験したことのない未曾有の財政危機に陥っております。この「負の遺産」を
 自ら背負い、財政再建を成し遂げることが、私に課せられた最大の責務であり、都がいかなる施策
 を進めるに当たっても、その基本的な前提条件となるべきものであります。
  我が国の首都東京が、財政再建団体へ転落することになれば、都民生活に深刻な影響が及ぶだけ
 ではなく、国際社会における日本の信用そのものの失墜に繋がり、ひいては景気の先行きに暗い影
 を落とすことにもなります。また、都財政の構造改革を進め、強固で弾力的な財政体質を確立しな
 ければ、社会経済情勢の変化に的確に対応した、安定的な都民サービスの提供は望むべくもありま
 せん。
  私は、こうした観点から、7月末に、来年度からの4年間を計画期間とする「財政再建推進プラ
 ン」を策定し、都自らの自主的な財政再建に向けた道筋をお示しいたしました。
  平成15年度までに6300億円にのぼる巨額の財源不足を解消するためには、何よりもまず、
 都自らの身を切るような内部努力が前提となります。その上で、全ての施策及びその実施体制につ
 いて、あらゆる角度から精査、点検を行い、聖域のない施策の見直しを断行しなければなりません。
 また、徴税努力や受益者負担の適正化をはじめとする歳入確保、地方主権の確立に向けた税財政制
 度の改革も必要であります。
  私は、こうした取組に不退転の決意で臨むため、福祉施策を含む経常経費の見直しや投資的経費
 の削減など、あらゆる再建の方策に確固たる財源確保の目標額を設定するとともに、新たな都民ニ
 ーズに的確に対応できるよう財政の弾力性を回復させるため、経常収支比率を当面90%以下の水
 準に引き下げることを、明確な目標として掲げました。
  また、当面の危機を回避するため、未利用地の売却や本庁舎等の有効活用を促進するなど、あら
 ゆる努力を講じてまいります。
  都財政の再建は、率直に申し上げて、これまで積み上げられてきた制度や考え方を自ら変えてい
 くという、痛みを伴う極めて困難な課題であります。しかしながら、次の時代の新しい繁栄のため
 には、行政はもちろん、都政にかかわる全ての皆さんが自覚と責任をもち、大局的見地に立って、
 いま改革の決断をしなければなりません。
  大きな改革に軋轢が伴うことは避けられませんが、改革の目指すものが、真に都民の利益にかな
 うものであれば、そして、東京の将来を思うのであれば、徹底した議論の積み重ねの中で、必ずや
 賢明な選択が行われるものと確信しております。私は、この確信と強い決意を胸に、万難を排して
 財政再建に取り組んでまいります。
 (内部努力のさらなる徹底)
  厳しい経済情勢の下、民間企業では自らの存亡や生死をかけた必死の経営努力が続けられており
 ます。雇用環境も極めて厳しい中で、都民の都政に対する関心は高く、聖域のない施策の見直しを
 通じて、都民の皆さんに負担を求めていく以上、都自らのさらに徹底した内部努力を行わなければ、
 到底、都民の理解を得られるものではありません。また、歳出総額の約3割を占める給与関係費を
 削減し、これを財源対策に充てていくことが不可欠であります。
  このため、私は、財政再建を成し遂げるための第一歩として、全国的にみて最も厳しく、都政史
 上かつてない厳しいレベルの職員給与の削減を、全ての職員を対象に時限的な措置として実施する
 ことを決断し、職員団体に提案いたしました。
  期末・勤勉手当については、10.5%程度を11年度から3年間、給料については、4%程度
 の規模を12年度から3年間それぞれ削減するという内容であります。こうした取組による11年
 度から15年度までの給与関係費の削減総額は、12年度から4年間で実施する5千人程度の職員
 定数の削減による効果も含めて、一般会計ベースで約3100億円を見込んでおります。
  なお、管理職については、内部努力の姿勢をさらに示す必要があることから、管理職手当の削減
 を時限的措置として行うこととし、現在、その規模等について検討しております。
  現下の都政運営を進めるに当たって、内部努力を推し進めることがいかに苦しいものであっても、
 自主・自立的な都政運営を継続し、都民の信託に応えていくためには、避けることのできない道で
 あります。
  私は、財政再建団体への転落を回避するためには、まず都庁自らが痛みを感ずることからスター
 トしなければならないと考えます。職員の皆さんには、大変厳しい対応を求めることになりますが、
 この都政最大の危機を突破するための協力を心からお願いしたいと思います。
 (行政改革の推進)
  行財政基盤の再建のためには、都庁の内部だけではなく、監理団体の改革が緊急課題であります。
 監理団体は、設立の目的と活用のメリットを十分に達成、発揮し、自律的経営を行うことが存立の
 基本であります。
  先月、庁内にプロジェクトチームを発足させ、全ての監理団体を対象として、費用対効果の検証
 をはじめ、経営的視点に立った総点検に着手いたしました。来年2月には各点検項目の基本指針を
 策定するとともに、それに基づいて個別団体の点検を実施し、団体の統廃合や派遣職員の削減を含
 めた抜本的な見直しを進めてまいります。
  また、行政改革の具体的取組の一つとして、行政評価制度を取り入れることとし、今月から試行
 を開始いたしました。都庁内外の政策論議を高めるとともに、職員が自らの仕事を原点に立ち返っ
 て見直すことにより、都庁全体の意識改革を進めてまいりたいと思います。
  こうした取組を通じて、都政の問題点や課題を明らかにし、都議会とともに十分議論した上で、
 来年度には、新たな行政改革大綱ともいうべき都政改革ビジョンを、都市構想にあわせて策定いた
 します。
3 東京が危機的状況を乗り越えるための政策展開
  次に、福祉と教育、環境、東京の牽引力、都市機能の各分野において、東京が直面している危機
 的状況を乗り越えるための政策展開について申し上げます。
 (福祉と教育の改革)
  我が国はいま、少子高齢化が急速に進展するとともに、低成長経済への移行、家族構成や意識の
 変化、価値観やライフスタイルの多様化など、福祉を取り巻く状況が大きく変化しております。
  福祉サービスの利用者が増加するのに比べ、社会全体のコスト負担力はそれほど伸びないため、
 今後の福祉水準の低下や負担の増大に対する不安が、高齢者、加えて若い世代の間にも広がってお
 り、このことは、時代を覆う閉塞感の大きな要因ともなっております。
  今日、多くの子育て家庭や高齢者、障害者が福祉サービスを必要としており、それは決して所得
 の低い方に限られているわけではありません。一方、増大し、多様化するニーズに的確に対応する
 ためには、多様なサービスの供給主体が、質の高いサービスを効果的、効率的に提供していく仕組
 みをつくることが求められております。
  このような中で、現行制度のままでの福祉施策を継続させていけば、増大するニーズに十分応え
 られないばかりか、社会の活力をも損なう要因となりかねません。また、これ以上改革を先延ばし
 することは、将来に大きな禍根を残すことにもなります。
  こうした状況を踏まえ、先月、福祉施策の転換の必要性と基本的方向をお示しいたしました。今
 後、子育て家庭への支援、高齢者や障害者の自立支援など、緊急性、必要性の高い在宅サービス事
 業について充実を図る一方、各種の医療費助成や福祉手当の支給など、経済給付的な事業の見直し
 に着手してまいります。
  国全体としても、福祉の基礎構造改革に取り組んでおり、来年4月から始まる介護保険制度は、
 その第一歩と位置づけられるものであります。これに連動して、都の福祉もこれまでの仕組みを根
 本から変える構造改革を実行することが必要です。
  私は、都民の皆さんに、転換期にある福祉施策の危機的状況を率直に申し上げ、都議会とともに
 十分議論を尽くし、将来世代にわたって真に安心できる社会福祉を実現してまいりたいと思います。
  今日の青少年をめぐる問題は、戦後社会の有りようにもかかわる問題であります。現在の日本社
 会をみると、人間社会で最低限守らなければならない基本的なルールについての認識が希薄になる
 とともに、人権と公共の福祉、権利と責任など、本来等価であるべき価値相互のバランスが大きく
 崩れております。また、自分と周辺の限られた範囲の私事にしか関心をもたず、公共に対する貢献
 に価値や喜びを見いだしたり、自らがよって立つ家族や地域、国家、あるいは国際社会に目を向け
 ることが少なくなっております。
  次代を担う子どもに対して、正義感や倫理観、思いやりの心を育み、人が生きていく上での当然
 の心得を伝えていくことに、社会全体で取り組んでいくことは、まさに焦眉の急ともいえます。
  健全な子どもの育成については、これまでもそれぞれの部署で取組を進めてきましたが、私は、
 全庁的な課題としてこの問題を取り上げることといたしました。近く「心の東京革命」推進に向け
 た取組の方向素案を作成し、多方面からの意見を聴取した上で、来年6月を目途に、都としての取
 組方針と行動計画を策定いたします。
  今年度は、社会的な気運を醸成するために、MXテレビを活用した親への問題提起、職場体験や
 奉仕活動などを内容とする「トライ&チャレンジふれあい月間」の開催、親と子のふれあいフェア
 の実施など、様々なキャンペーン活動を展開してまいります。
  学校教育の改革については、まず、都立高校の入学者の選抜方法が、来年度から生徒が都内全域
 の学校を選べるものとなります。このことにより、私がかねてお約束していたとおり、都立高校の
 学区制は実質上撤廃されることになります。
  また、生徒の多様なニーズに応じた特色ある学校づくりを進めるため、中高一貫教育を行う学校
 や、スポーツや福祉に関する専門学科をもつ学校の設置を新たに盛り込んだ、都立高校改革推進計
 画の第二次実施計画を、来月に策定することといたしております。
  責任ある学校運営を確立するための取組としては、教員の意識改革と資質の向上を図るため、能
 力と業績に応じた新しい人事考課制度を、早期に導入すべきと考えます。
 (環境問題への当面の取組)
  東京の大気汚染は、ここ十数年、改善が進んでおりません。窒素酸化物や浮遊粒子状物質は、気
 管支ぜんそくなど呼吸器に対する害を引き起こす原因物質として疑われております。
  大気中に存在するこれらの物質の7割以上が、自動車走行によって発生しております。なかでも、
 ディーゼル車は走行量では全自動車の2割にすぎませんが、排ガスに含まれる物質については、窒
 素酸化物では7割、浮遊粒子状物質ではほとんど全てを占めております。
  自動車公害の改善に向けて、新たな対策を実施するためには、国の制度や技術開発などの壁を乗
 り越えなければならず、都民や事業者の皆さんの協力と力強い世論の高まりが不可欠であります。
  このため、先月末、「ディーゼル乗用車には乗らない、買わない、売らない」、「排気ガス浄化
 装置の開発を急ぎ、ディーゼル車への装着を義務づける」など、自動車公害に挑む5つの提案と
 10のアクションを推進する「ディーゼル車NO作戦」を開始いたしました。
  貨物輸送の多くを大型ディーゼル車に依存している中で、この規制について様々な議論があるこ
 とは十分認識しておりますが、私は、深刻な都民の健康被害を防ぐことが、何よりも優先すべき課
 題であると考えます。
  今後、東京において、どのようにディーゼル車対策を進めていくべきかについて活発な議論を広
 げ、11月に策定する「自動車利用に関する東京ルール」にその考え方を反映させるとともに、来
 年中に予定しております公害防止条例の改正などにより、施策の実現を目指してまいります。
  多種多様な化学物質を利用することにより、私たちは、生活の便利さを得る一方で環境を著しく
 汚染しております。特に、大気中に排出されるダイオキシンは、生命の存続に対する影響さえ懸念
 されております。
  このため、「東京都ダイオキシン類対策取組方針」を年内を目途に改定し、削減目標の設定やコ
 プラナーPCB、塩素含有プラスチックなどへの対策を進めます。また、公害防止条例の改正にあ
 わせ、小型焼却炉対策を強化するとともに、今後決定される環境基準の達成に必要な場合には、ダ
 イオキシン類対策特別措置法に基づく、排出基準の上乗せ規制や総量規制を導入してまいりたいと
 思います。
  私は、かねてより、東京の美観の確保や交通渋滞の回避のために、ごみの収集を都市の活動が朝
 始まる前に実施したいと考えておりました。迅速な業務改善の努力によって、先月30日から、す
 でに都内4か所のモデル地域でごみの早朝収集を開始し、11月には、23区全域の主な商店街や
 駅前通りなどにおいて本格的に実施をいたします。
  また、清掃工場へのごみの受入を早朝や日曜日にも拡大し、民間の業者が行っているごみの収集
 についても、夜間又は早朝へ移行するように要請しております。
 (東京の活力再生に向けた取組)
  自らリスクに挑戦し、経営環境の変化に機動的に対応できる中小企業の役割が、東京の活力再生
 に向けて、いまこそ重要となっております。経営革新や創業などに取り組む自立指向型の中小企業
 を支援するには、資金、技術、人材などの経営資源に対する施策を充実することが必要であります。
  各企業の経営状況や技術力など、支援の基礎となる情報へのアクセス性を高めるために、来年度、
 都内の主要な中小企業のデータベースを構築し、世界に情報発信いたします。
  新たな債権市場の創設については、まず第一段階として、企業への貸付債権を多数集めて証券化
 する、いわゆる仕組み債を開発することにいたしました。年内にその基本的なフレームを公表し、
 来年3月を目途に第一回の債券を発行するよう準備を進めてまいります。
  また、特に、物的な担保力が乏しい創業やベンチャー企業への資金供給を活発化するため、技術
 力の評価を重視する観点から制度融資のあり方を見直すとともに、都が主導して内外から出資を募
 るベンチャーキャピタルファンドの設立を検討しております。
  さらに、中小企業のニーズに応じ、大学等の研究機関が有する技術の活性化や実用化を図るため、
 技術移転機関等を活用したコーディネートを行うなど、産学公の連携を一層促進いたします。
  私は、先日、総理の督励を受けた通産大臣と面談し、新しい中小企業振興策を協力しながら推進
 していくことを求め、支援についての政府の合意を得たところであります。
  「産業振興ビジョン(仮称)」の策定については、都として初めてインターネットを活用して政
 策提案を募集しており、この1か月余りの間ですでに40件を超える実に独創的なプランをいただ
 いております。今後、電子メールによる意見交換などを進め、政策として具体化をしてまいりたい
 と思います。
  依然として厳しい現下の雇用情勢に鑑み、都内で3万人強の雇用創出を目標とした緊急雇用対策
 に取り組むことといたしました。東京産業交流展、ホームヘルパーや保育士の養成研修など、効果
 が大きく必要性の高い事業を、都と区市町村とで速やかに実施してまいります。
  20世紀から21世紀への世紀越えを契機に、「ダイナミックでエキサイティングな東京リーダ
 ーシップの確立」をコンセプトとする「東京2000年祭」を開催するため、近く、都と各界の代
 表からなる実行委員会を設立いたします。
  本年12月31日の「臨海副都心カウントダウンイベント」を皮切りに、1年にわたって、民間
 団体などと連携した事業を都内各地で展開し、最後の1週間は「21世紀への出発(たびだち)ウ
 ィーク」として、東京から世界に向けて新世紀の幕開けを告げてまいりたいと思います。
 (都市づくりビジョンの策定に着手)
  東京は、都市の膨張を前提とする都市化社会から、安定・成熟した都市型社会に移行するととも
 に、グローバル化・情報化への対応や豊かな都市生活の実現のため、水面を含めた都市空間の再生
 と有効活用に向けた再構築を迫られております。また、地方分権が進展し、まちづくりの主体とし
 て、より住民に身近な区市町村が重視されていく一方、特に大都市地域では、広域的視点に立った
 都市政策の展開がますます重要になっております。
  これからの東京の都市づくりは、集中が進む人口や産業の受け皿づくりに追われる需要対応型か
 ら、目的や目標をより明確にした政策誘導型に転換していかなくてはなりません。
  私は、こうした状況を踏まえ、今後の都市計画の基本的方向や都市整備の方針などを内容とする、
 「東京の新しい都市づくりビジョン(仮称)」の策定に着手いたします。ビジョン策定の過程では、
 首都圏全体を視野に入れた都市構造のあり方等を中間のまとめとして発表し、来年度策定する都市
 構想に反映させてまいります。
  神奈川県や千葉県を含む東京湾沿岸地域は、21世紀の東京圏が活力を取り戻し、日本を牽引す
 るとともに、世界に向けて文化、技術、情報を発信するための拠点となり得る地域であります。こ
 のため、現在、国や隣接県の動向も視野に入れながら、東京臨海地域再編整備指針の策定を進めて
 おります。
  この地域は、大量の未利用地が存在し、長期的・広域的視点から、東京の再構築に有効利用して
 いくことが重要であります。なかでも、こうした地域の一翼を担う臨海副都心では、広域交通基盤
 の整備や国際研究交流大学村、業務商業施設の立地が進みつつあります。また、その周辺地域では、
 羽田空港の国際化、豊洲・晴海地区の再開発など多様な動きが展開されております。今後の開発整
 備に当たっては、この地域全体を視野に入れた総合的・一体的な開発計画が必要となっております。
  このため、東京臨海地域再編整備指針と整合を図りつつ、臨海副都心とその周辺を含む地域を対
 象として、新たな開発整備ビジョンの策定に着手することといたしました。
  私は、都心部の機能更新とあわせて、東京臨海地域の再編整備を積極的に進め、これを首都東京
 を蘇らせるための起爆剤にしてまいります。
  臨海地域を活性化する上でも、羽田空港の国際化は極めて重要であります。先月、東京都におけ
 る航空政策を充実させるため、執行体制の強化を図りました。今後、首都圏全体の空港容量の拡大
 策の一環として、羽田空港を最大限活用した場合の可能性と課題を明らかにし、国際化に向けた具
 体的な取組を進めてまいります。
  去る9月1日、政府機関および7都県市と合同の防災訓練を実施いたしました。災害時における
 東京の大きな課題の一つは、膨大な昼間都民への対応であります。このため、今年度は帰宅困難者
 に対する船舶を利用した実戦的な訓練を行いました。今後、さらに強化、充実した訓練を行うなど、
 東京の危機対応能力を高めてまいりたいと思います。
  一方、震災復興への対策も重要であります。首都東京は、政府機関をはじめ、国際金融、情報発
 信機能など中枢機能が集中しており、大震災が発生した場合、国の内外から速やかな復興が求めら
 れます。
  そのためには、まず木造住宅密集地域の整備や公共施設の耐震化など、防災都市づくりを着実に
 推進することが大切であります。その上で、震災後、都民生活を支える自治体として、東京都自ら
 が速やかに復興に向けた計画を示し、復興に対する都民の理解と協力を求めていく必要があります。
  私は、こうした視点に立って、先日、全国で初めて震災復興本部設置訓練を実施いたしました。
 今後、震災復興グランドデザインの策定に着手するとともに、復興のための法的措置を含めた現状
 の問題点と対策を検討してまいります。
4 首都東京からのメッセージ発信
  次に、国の制度改正に向けた取組など、首都東京からのメッセージの発信について申し上げます。
 (地方税財政制度の改革)
  真の地方自治を確立するためには、財源問題の解決が不可欠であり、国、地方間の事務配分に見
 合った税源の移譲を実現させなくてはなりません。また、義務教育教職員給与費等国庫負担金など
 に見られる、地方交付税の不交付を理由とした二重の財源調整は、何らの合理性がなく、都の財政
 を圧迫しており、直ちに撤廃されるべきであります。
  先月、都議会において、「地方税財政制度の改善を目指す東京都議会議員連盟」が設立されまし
 た。未曾有の財政危機の中で都政の舵取りを担う私にとって、誠に心強い限りであり、設立の労を
 執られた発起人の方々をはじめ議員の皆様に、改めて感謝申し上げます。
  また、先日、私は、政府主催の全国都道府県知事会議において、地方税財政制度の抜本的な改革
 を速やかに行うとともに、大都市の実情に即したものとするよう、総理に強く求めてまいりました。
  今後とも、あらゆる機会を捉え、都議会をはじめ、他の地方自治体との連携を一層緊密にしなが
 ら、「地方主権」の確立を目指して国に働きかけてまいりたいと思います。
 (米軍基地対策)
  1605ヘクタールに及ぶ都内の米軍基地は、都民生活に直接様々な影響を与えているだけでは
 なく、地域の発展に対する足かせともなっております。
  横田飛行場の軍民共同使用については、民間航空機の就航による経済効果や生活への影響などを
 把握するため、現在、基礎的な調査を進めており、10月に結果を公表いたします。今後は、基地
 周辺だけではなく、さらに広範囲の区市町村や隣接県、経済団体などの参加も求め、新たな協議会
 を設けて意見交換を行っていく考えであります。
  近く、私は、多摩サービス補助施設を視察いたします。この膨大な施設は、単に米軍関係者のレ
 クリエーション施設という性格から、直ちに返還されるべきものと考えます。地元自治体とも連携
 を図りながら、跡地の具体的な利用案を取りまとめ、国に要望してまいります。
 (アジアを重視した都市外交)
  アジアの諸都市は、経済の振興や都市問題の解決を図り、持続可能な発展を目指しております。
 今後の国際政策は、アジア地域を重視し、実質的な事業を展開することが必要であります。
  私は、東京が牽引車となってアジア諸都市全体の発展を目指す「アジア大都市ネットワーク(仮
 称)」の結成に向け、具体的な準備に着手したいと思います。
5 おわりに
  先月、環境と自動車をテーマに「知事と議論する会」を初めて開催し、都民や関係する事業者の
 皆さんと議論を交わしてまいりました。来月は、中小企業の活力をテーマとし、大田区産業プラザ
 で城南地域の経営者の皆さんとお話しをいたします。今後とも、都政の重要課題について、私の考
 えも申し述べながら、都民の皆さんの建設的な提案を直にお聴きしたいと思っております。
  今月8日には、東京の危機的状況の解決を目指し、有識者からご意見を伺うため「東京の問題を
 考える懇談会」の初会合を行いました。広く東京の問題全般について忌憚なく語っていただき、様
 々なアイデアや提言を新しい政策の苗として育んでまいります。
  都庁においても、意欲と創意をもった若い職員の発想力を活かすため、「職員によるブレーンス
 トーミング」を実施しており、この成果を11月に発表する「危機突破・戦略プラン」にも反映さ
 せてまいります。
  また、私は、就任以来、防災施設や福祉施設など都政の現場を自分の目で見、実感しようと努め
 てまいりました。それぞれの施設に寄せられる都民の声、第一線で働く職員の意見をつぶさに聴き、
 都政の問題をともに考えていくことが、私の目指す都政の実現に繋がるものと確信しております。
  今後とも、庁内はもとより、東京の財産ともいうべき各界各層の英知を結集し、広範な議論を巻
 き起こすことによって、首都東京の再生に向けて前進してまいります。
  改めて、皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
  本定例会には、条例案6件、契約案18件など、あわせて25件を提案しております。よろしく
 ご審議をお願い申し上げます。
  以上をもって、私の発言を終わります。ありがとうこざいました。