石原知事施政方針

平成17年9月20日更新

平成17年第三回都議会定例会知事所信表明

平成17年9月20日

 平成17年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 はじめに、名誉都民について申し上げます。
 このたび、名誉都民の候補者として、岸本忠雄さん、野村萬さん、古橋廣之進さんの三名の方々を選定させていただきました。
 岸本忠雄さんは、三代にわたって江戸木彫刻を受け継ぎ、後世に残る作品を創作する傍ら、体験学習を通して小・中学生に木彫りの素晴らしさを伝えておられます。野村萬さんは、和泉流狂言師の重鎮として狂言の普及に力を尽され、新作狂言や現代劇に取り組むなど伝統芸能の枠を超えて活躍を続けていらっしゃいます。古橋廣之進さんは、かつて「フジヤマのトビウオ」との愛称で次々、水泳の世界記録を樹立し、占領下の日本人を大いに勇気づけて下さいました。後進の育成にも尽力され、現在の水泳ニッポン復活に貢献されておられます。
 お三方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。

1 東京発・自治改革

(進まない国の改革)

 さて、我が国は今、戦後日本を支えてきたシステムが、加速する少子高齢化や流動化する国際情勢によって激しく揺すぶられ、憲法をはじめ、外交、教育、社会保障制度など、国家の根幹にかかわる設計図を抜本的に見直す必要に迫られております。
 本来、改革とは、こうした歴史の大きなうねりを乗り越え、新しい国のかたちをつくり出すためになされるべきであります。しかし国政の場では、「日本をどうするのか」という最も重要な縦軸が置き去りにされ、実質的な改革は思うように進んでおりません。官僚主導の国家運営が依然として幅を利かせ、国の舵取りを担うべき政治からは危機意識があまり感じられないのであります。
 先に行われた総選挙において、都民・国民はこうし現況を是としたのでは決してなく、新たな展望を切り拓くため、さらなる改革を期待し強い意思表示を示したのだと思います。今こそ、太政官制度以来続く官僚支配の構造に風穴を開け、国際的にも国家としての意思をはっきりと示すことのできるよう、改革を前進させるべきであります。

(東京発の改革の推進)

 改革に求められるのは、巨きな視点に立って国のあり方を問い直し、現場から具体的に行動を起こすことであり、この姿勢は、国のみならず地方の改革においても同様であります。
 6年前、私は東京から日本を変えようと、「危機意識の徹底」と「スピードの重視」を基本理念に掲げて、都政の改革に乗り出しました。
 その結果、職員定数の大幅な削減や監理団体の統廃合など行政改革で所期の成果を上げるとともに、厳しい財政状況が続くなかで都財政の建て直しに向けて道筋をつけることができました。あわせて、数次にわたり重点事業を策定するなど、都政が直面する様々な課題に対し迅速かつ戦略的に政策を展開してまいりました。
 八都県市が一丸となって取り組んだディーゼル車排出ガス規制や、都民ニーズと民間の力を結びつけた認証保育所の設置などはその典型であり、いち早く危機的な状況を把握して行動を起こした治安対策や教育改革もまた然りであります。東京の産業を支える中小企業を支援するため、CLO、ローン担保証券やCBO、社債担保証券の発行により、都独自の債券市場も創設いたしました。
 こうした「東京モデル」ともいえる取組みは、様々な形で全国に波及し、新しい行政の形を多少なりとも都民・国民に示すことができたと思います。世界全体が時間的、空間的に狭小になった今日、地方が知恵を出し合い広域的に連携すれば、国をも凌ぐ大きな力になり得るのだと思います。

(終わりなき改革)

 しかし、東京の改革に終わりはありません。
 都庁内部の改革である行政改革や財政再建に止まらず、都政を取り巻く制度全体を視野に入れた抜本的な自治改革に取り組み、より効率的で効果的な都政を実現する必要があります。自治制度から行財政システム全般にわたる改革に一体的に取り組むための新たな指針を、11月を目途に明らかにしてまいります。
 現在、国では道州制を巡る議論が行われておりますが、地図上の区割りや線引きを先行させても、国と地方の新しい関係を創出することはできません。都には、これまで八都県市などで積み上げてきた実績があります。今後、広域連携や基礎的自治体との関係も踏まえた大都市行政のあり方について、外部の専門家も交え、地に足の着いた議論を通して東京発の自治論を展開してまいります。
 新たな行財政改革では、組織、財政、人事制度などの改革を社会の変化に即して徹底的に行ってまいります。同時に、世界標準である複式簿記による新しい公会計制度を国に先んじて導入し、指定管理者制度や地方独立行政法人など新たな制度を取り入れることにより、経営改革や職員の意識改革をさらに進めていきたいと思っております。
 改革の継続と深化には様々な困難が予想されますが、10年後、20年後の東京の姿をしっかりと見据え、東京発の改革に全力で取り組んでまいります。

2 東京が直面する様々な課題への対応

 続いて、東京が直面する課題への対応について申し上げます。

(災害への万全の備え)

 このところ、東京で大きな揺れを感じる地震や記録的な集中豪雨など自然災害が続いております。被害を受けた方々に心よりお見舞いを申し上げます。

〈震災対策の見直しと充実〉

 去る7月に発生した千葉県北西部地震では、交通機関の混乱やエレベータの停止による閉じ込めなど、都市機能のもろさが露呈しましたが、都の初動体制の問題点も明らかになりました。震度計情報の送信の遅れに対して早急にシステムを増強するとともに、直ちに参集・連絡体制の再点検を実施いたしました。今回の教訓を十分に活かし、全庁的に危機意識を引き締め直して、危機管理体制の一層の強化を図ってまいります。

 昨年来、全国各地で頻発している大規模地震により、山間部で孤立する地域が発生するなど、想定外の被害が顕在化しております。今月1日の総合防災訓練では、2万6千人の参加者のもと、多摩南部の直下地震を想定した実践的な訓練を行いました。都県境を越えた広域連携や感染症対策に取り組むとともに、奥多摩町において孤立地域を想定したヘリコプター部隊による救助訓練などを実施いたしました。
 今後とも、都民と連携した訓練を積み重ねて災害対応能力の一層の向上を図り、今年度中に被害想定を見直すとともに、木造住宅の耐震化の促進に取り組むなど、いつ起きてもおかしくない地震に対して万全の備えを講じてまいります。

〈集中豪雨への対応〉

 今月はじめ、杉並区や中野区などを1時間に100ミリ以上という想定をはるかに超えた猛烈な雨が襲いました。局地的には短時間で260ミリを上回る極めて異例な豪雨となり、約5千棟の住宅が浸水するなどの被害をもたらしました。
 都では、神田川・環七地下調節池をフル稼働させるとともに、使用開始の直前でありました第二期工事部分にも、現場の判断により水を急きょ取り入れるなど、被害の拡大を阻止するため総力を挙げて対策を講じました。道路、護岸の復旧にも早急に取り組むとともに、災害救助法を適用するなど被災者の方々の生活再建や事業再建に迅速に対応いたします。
 今後とも、水害から都民生活を守るため、着実に対策を進めてまいりたいと思います。

(都民の安全・安心の確保)

〈テロへの備え〉

 去る7月、ロンドンの中心部において連続爆破テロが発生するなど、国際的なテロが新たな拡がりを見せております。
 武力攻撃や大規模テロなどの際、都民の避難・救援を速やかに実施するため、都では国民保護計画の策定を進めております。国が緊急事態と認定する前であっても、知事独自の判断により避難指示や自衛隊の派遣要請などを実施いたします。また、ターミナル駅など大勢の人が利用する施設の危機管理やNBCテロへの対応など、大都市特有の課題にも取り組んでまいります。都民、都議会の皆様の意見を聞きながら、今年度中に計画を策定いたしたいと思います。

〈治安・青少年問題への一体的取組み〉

 青少年・治安対策本部が8月に発足いたしました。これまでの様々な取組みを一つに束ね、治安の回復と青少年の健全育成に一体的に取り組んでまいりたいと思います。
 強盗や空き巣、ひったくりなど都民が治安の悪化を肌で感じる犯罪は、警察、行政の対策はもとより、地域での自主的な取組みが大きな威力を発揮して、目に見えて減少しております。しかし一方では、振り込め詐欺が依然として続発するなど、身近な知能犯罪が著しく増加しており、こうした新たな手口の犯罪に対しても有効な手立てを講じる必要があります。都と警視庁が中心になって、金融機関、通信業界、弁護士会等による対策会議を来月設置し、総合的に取り組んでまいります。

 子どもたちを取り巻く環境は、悪化の一途を辿っているように思われます。携帯電話やパソコンさえあればあらゆる情報が手に入る一方で、彼らは犯罪にもつながりかねない情報に無防備のままに晒されております。来月から、有害なホームページを閲覧できないようにするソフトウエアの提供や利用促進を接続事業者、保護者に促すなど、インターネット上の有害情報から子どもたちを守ってまいりたいと思います。
 また、過度に残虐性を強調したゲームソフトが犯罪の引き金になっているとの指摘もなされております。適切な措置を取る必要があると思われます。メーカーや販売店などに働きかけて、来月、「テレビゲームと子どもに関する協議会」を立ち上げ、業界による従来の自主規制をさらに強化するなど、実効性ある対策を検討してまいります。

〈都民の健康を脅かす脅威への対応〉

 鳥インフルエンザなどの新興感染症が、アジア地域において依然として大きな脅威となっております。
 今月はじめ、デリー、ハノイなどアジア大都市の実務担当者が東京に集まり、感染症対策のプロジェクトの会議を開催いたしました。この場において都は、各都市の行政機関、研究・医療機関が感染経路や治療方法などの情報をリアルタイムで共有化できるシステムの構築を提案いたしました。来年1月を目途に稼動する合意を得ました。今後とも新興感染症の発生の予防や早期制圧に、アジアの諸都市と連携して取り組んでまいります。

 アジア大都市ネットワークに関しては、先月末、北京から突然、今年の総会を放棄し脱退するとの申し出が事務局宛にありました。
 そもそもこの問題は、昨年のジャカルタ総会において全会一致で合意した宣言に北京市が署名しないことに端を発しているのでありまして、これまで理を尽くして辛抱強く交渉を続けてきた事務局の努力を無にするものと言わざるを得ません。危機管理や中小型ジェット旅客機の開発など、様々な案件で取組みが進められている最中での脱退は、誠に無責任極まりない行動であり、国際的ルールも礼儀もわきまえない身勝手な振る舞いにたいへん驚いております。
 先日、急きょ台湾を訪れ馬台北市長と善後策を協議した結果、来年の総会を半年前倒しにして来春、台北で開催することを合意いたしました。年内に臨時会議を開き、正式に決定したいと思います。今後とも、参加都市と協力して、国境を跨いだ都市間連携が大きな成果をもたらすことを具体的な行動をもって示してまいります。

 アスベストによる健康被害が次々に明らかになり、都民にも不安が拡がっております。都は平成元年の時点で既に対策推進会議を設置し、全庁的に取り組んでまいりました。今回の事態に対しても、解体現場への立入検査や周辺大気中の濃度測定を行うとともに、関係団体に対して飛散防止対策の徹底と周辺住民への情報公開を実施するよう緊急要請をいたしました。引き続き区市町村とも連携を図りながら、相談窓口の充実を図るなどアスベスト対策を進めてまいります。
 この問題は従前から指摘されていたものでありまして、ディーゼル車排出ガス規制と同様、国の対策の遅れが被害の拡大を招いていることを指摘せざるを得ません。国に猛省を促し抜本的な対策を求めてまいります。

(都民生活の充実)

 次に、都民生活の充実について申し上げます。

〈環境問題への対応〉

 地球温暖化に対する取組みが国家レベルで求められており、都庁自身も具体的な対策をさらに拡充する必要があります。 
 先月、都庁の行動計画を改定いたしました。公営企業局や東京ビッグサイトなどの管理委託施設を新たにCO2削減の対象に加え、平成21年度までに16年度比10%削減という高い目標を自らに課しました。
 都庁全体のCO2排出量の45%は、下水処理の過程で発生しております。これまでも下水汚泥によるバイオマス発電や廃熱利用などに取り組んできましたが、今年度、汚泥を炭化し燃料として再利用する事業に着手いたします。処理コストを約2割減らせるうえに、大幅なCO2削減が可能となります。平成19年度の事業開始を目指してまいります。

 大都市特有のヒートアイランド現象は、熱帯夜や熱中症を惹き起こす一因となるなど、都民生活に少なからず影響を与えております。
 今年4月に指定した対策推進エリアを中心に、都内の公立学校において校庭の芝生化に取り組むとともに、都心エリアと新宿エリアで、約4万平方メートルの都道を保水性舗装に改良いたします。丸の内周辺では、夏休みに合わせて都独自に路面散水を実施してまいりました。今後とも、国や関係区と連携して集中的に対策を進めてまいります。

〈文化・教育・福祉の向上〉

 新進気鋭の芸術家を支援するため、トーキョーワンダーサイトを開設して3年半、二つ目の施設が7月、渋谷にオープンいたしました。
 文化政策とは、単にハコをつくれば済むものではなくて、そこに何を入れ、何を造成するかが最も重要であります。そうした意味からも、この二つの芸術発信基地が若い芸術家たちの試練の場として機能し、近い将来、ここから多くの才能が開花することを期待しております。

 来年度、大島南高等学校に海洋国際科を新たに設置いたします。海を通じて広く世界を知る体験型の国際教育を実践するとともに、全寮制を導入して、自律の精神や規範意識を養い、たくましい人材を育成していきたいと思います。
 この春開設した都立初の中高一貫教育校・白鴎高校附属中学校に続き、来年度、小石川中等教育学校など3校の中高一貫校を開設いたします。6年間の継続した教育により、社会の様々な分野でリーダーとして活躍する人材を育ててまいります。
 生徒の多様な希望に応えるため、引き続き、独自の高校改革を進めてまいります。

 昨年8月の福祉保健局の発足以来、誰もがそれぞれの能力や状況に応じて地域で生活できる社会の実現を目指し、福祉と医療がこれまで以上に一体となって施策に取り組んでまいりました。
 本年12月、重症心身障害児施設が未整備であった区部東部地域に、東部療育センターを開設いたします。医療的ケアを必要とする方々に手厚い療育サービスを提供するとともに、在宅の障害児や家庭のための相談窓口を設置し、地域の福祉施設への技術的支援を行うなど、重症心身障害児が地域で安心して暮らすための基盤づくりを推進してまいります。

(東京の活力の向上)

 次に、東京の活力の向上について申し上げます。

〈中小企業への支援〉

 都はこれまで、CLO、CBO合わせて6回の発行により、中小企業1万社以上に対して4500億円を超える資金を供給し、42社の上場を実現しました。来春、全国初の試みとして、大阪府や神戸市、横浜市などと共同で広域CBOを発行いたします。東京発の取組みを全国に拡大することにより、東京、ひいては日本をリードする中小企業を支援してまいります。
 来年度、産業技術研究所を地方の試験研究機関としては全国で初めて、独立行政法人化をいたします。外部人材の大幅な登用や外部資金の活用など民間の経営手法を大胆に取り入れ、中小企業への最先端技術の迅速な移転や産学との弾力的な共同開発などに取り組んでまいります。今定例会に、関連する条例案を提案しております。

 来月、ICタグなどを活用して観光情報を提供する実証実験を、上野公園及び動物園で実施いたします。最新のIT技術や専用の携帯端末を使い、園内各所の地図情報や施設情報を簡単に受け取ることのできるようにいたします。純国産技術であるトロンをはじめ我が国の最先端技術を結集して、まちづくりにおける情報技術の新しい活用方法を提唱したいと思います。併せて、実験内容を秋葉原で紹介し、日本の優れた技術を国内外に発信してまいります。

〈交通・物流機能の拡充〉

 秋葉原は今や国際的なIT拠点として発展を遂げつつあり、産学連携機能を持つダイビルがこの春オープンしたのに続き、来年3月には情報関連企業が集積するUDXビルの完成も予定されております。
 先月、つくばエクスプレスが開業し、秋葉原とつくば市が最短45分で結ばれました。二つの高度技術の集積地を直接結ぶこの路線の開業は、社会工学的にたいへんな大きな意味を持っておりまして、つくばは、もはや都心の一部になったのであります。沿線の広大な土地の有効活用も含め、つくばエクスプレスが首都圏の未来を切り拓いていくことを大いに期待しております。

 三環状道路は、首都圏のみならず日本全体の道路ネットワークの充実のために不可欠な交通インフラであります。
 中央環状品川線では、有料道路事業に先駆けて都が街路事業を進めており、圏央道については、来年秋の中央道との接続に向け、あきる野インターチェンジから南の区間の整備を促進してまいります。
 外環道については、具体的な計画を取りまとめる時期と判断し、道路の構造や本線と同時に整備するインターチェンジなど、基本的な考え方に関して国と共通の認識を得ました。今後、沿線区市などの意見を聞き、事業の推進に努めてまいります。

 都心部と並び首都東京の一翼を担う多摩地域では、都市計画道路の完成率が約5割に止まるなど、道路ネットワークの整備が急務となっております。厳しい財政状況にあって多摩地域の道路を重点的かつ効率的に整備するため、現在、関係28市町と共同で計画の見直しを行っており、今後、地元の意見を踏まえ、横田基地の軍民共用化も視野に入れながら、新しい整備方針を策定したいと考えております。

 経済のグローバル化の進展により、物流を巡る国際競争が激しさを増しております。こうしたなか、7年連続でコンテナ取扱量日本一を誇る東京港の果たす役割は、ますます大きくなっております。
 都はこれまでも、24時間フルオープン化や京浜3港の連携強化など、物流拠点としての改革を進めてまいりました。先週、第7次改訂となる港湾計画の中間報告を取りまとめました。10年後の東京港を見据え、大井、青海に次ぐ新たな国際コンテナふ頭を建設するとともに、羽田空港再拡張への対応や耐震強化岸壁の拡充などに取り組んでまいります。

〈島しょの活性化〉

 伊豆諸島と小笠原諸島は、美しい自然と豊かな海洋資源に恵まれ、観光地としても一層の発展が期待されるなど、大きな可能性を秘めております。
 都では今年度、観光産業の再生に意欲的に取り組む島に対して専門家を派遣する事業を開始しました。7月から、二人のプロデューサーが神津島と八丈島に赴き、島内の現況を検証しております。年内に具体的な活性化戦略の提案を受け、今後の観光振興に反映してまいります。

 三宅島では、避難指示解除から半年以上が経過しました。未だに火山ガスの噴出が続くなか、生活再建に取り組まれる村民の皆様のご努力には計り知れないものがあると思います。5月から始まった観光客の受入れについては、この夏、9千人以上の方々が釣りやダイビングなどに訪れるなど、島に活気が戻りつつあります。
 また、現在閉鎖中の三宅島空港については、生活の利便性の向上や観光、産業の振興をさらに後押しするため、早期再開に向け、関係機関と協力し検討を開始するように指示いたしました。一日も早く島が本来の姿を取り戻すように願っております。

3 おわりに

 最後に、オリンピックの招致について申し上げます。
 快晴の空の下、神宮の杜の国立競技場に聖火が灯されたあの日から40年余り、東京は、政治、行政、経済そして文化の諸機能が高密度に集積する世界に類を見ない大都市に発展いたしました。
 今日、再び日本でオリンピックを開くとすれば、都市のキャパシティや都市機能の充足度、さらには国際イベントの開催実績などから考えて、この東京を置いて他にはあり得ません。成長を遂げ成熟期に入った都市での開催は、発展の途上にある国での大会とは異なる意義を持っており、成熟した都市の姿を世界に示し、改めて日本の存在をアピールする絶好の機会になると思います。
 21世紀の東京五輪では、単なる国際的なスポーツ大会の枠を超えて、膨大な都市施設のストックを有効に活用するとともに、我が国の高度な技術力や多様な歴史文化の蓄積とスポーツとを組み合わせ、日本ならではのまったく新しい価値観を提示することができるはずであります。
 招致を実現するには、国際的な都市間競争に国家の総力を傾けて勝ち抜かなければなりません。東京都だけでの努力には自ずと限界があり、国を挙げてのバックアップと周到な招致戦略が不可欠であります。
 オリンピック開催を起爆剤として日本を覆う閉塞感を打破するためにも、是非、日本の首都である東京に招致したいと思っております。来月には、庁内に準備組織を立ち上げ、大きな目標に向かって第一歩を踏み出したいと考えております。都議会の皆様をはじめ、都民・国民の皆様のご支持、ご協力をよろしくお願いいたします。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案15件、契約案3件など、合わせて24件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。

 ありがとうございました。