石原知事施政方針

平成18年6月6日更新

平成18年第二回都議会定例会知事所信表明

平成18年6月6日

 平成18年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

1 今再び、オリンピックを東京で

(ロンドン視察を終えて)

 先週、2012年のオリンピック開催都市であるロンドンを視察してまいりました。明治から大正にかけて、丸の内の赤煉瓦街を「一丁ロンドン」と呼び慣わしたように、東京とロンドンの間には、国家間のつながりと同様、歴史的に深い関係があります。

 昨年のオリンピック最終選考においてロンドンは、卓越した理念と国を挙げての活動が実を結び、パリなどのライバル都市を押さえて五輪開催の切符を手にいたしました。今回、ロンドン市やオリンピック組織委員会の関係者と議論を重ねる中で感じたのは、オリンピックを契機として成熟した都市を再生しようとする彼らの強い意欲でありました。ロンドンの招致活動は東京の良き手本であり、成熟を遂げてもなお新しい発展を模索するロンドンの姿勢から、東京も学ぶべき点が数多くあると思います。視察を通じて、東京への招致に強い手応えを得ることが出来ました。

 視察の折、ケン・リビングストン市長と会談を行い、交通政策や環境問題、治安対策など大都市問題の解決をはじめ、スポーツ・観光振興、さらには文化交流など幅広い分野で、世界を代表する東西の大都市が互いに政策を磨き合っていくことで合意いたしました。今回の政策協定により、五輪招致に弾みをつけるとともに、今後、世界を視野に入れた大都市間の新たな協力関係を築いていきたいと思います。

(アジアで初めての2回目の五輪開催)

 アジア初のオリンピック開催から40年、当時、奇跡の戦後復興を成し遂げ、その姿を世界に披瀝した東京は、今やアジアの躍進をリードする世界屈指の大都市に成長いたしました。日本の確固たる再生と世界の新たな繁栄の縁とするため、今再び、この東京にオリンピックを招致いたしたいと思います。

 都市の力が人類の未来を規定する今世紀にあって、オリンピックもまた、新しいあり方を求められております。成長する都市から成熟した都市へ、オリンピックの舞台は大きく転換しようとしております。

 2016年の東京オリンピックでは、アスリートたちに最高の自己表現の場を提供し、これまでにない感動を世界中の人々と分かち合うとともに、都市機能や最先端技術の集積など、東京が持つ都市の力を最大限に発揮し、成熟した都市の姿を世界に示してまいります。拡大・成長のステージを経て成熟しつつある東京が、数多くの難題を乗り越え克服してきたありさまを明らかにし、世界の諸都市に「範」を示すことこそが、21世紀におけるオリンピック精神の具現化に他なりません。

 これまで欧米諸国では、ロンドンを筆頭に、同一の国、同一の都市でオリンピックが繰り返し開催されてきました。東アジアの飛躍的に高まったプレゼンスを背景に、東京がここまで成熟を遂げてきたことの大いなる証として、欧米の地域以外で初めてとなる2回目のオリンピック開催を目指してまいります。

(東京オリンピックの基本コンセプト)

 日本は、戦後60年以上にわたり、他国との戦火を交えることも社会的な騒擾を起こすこともなく、徹底した平和を貫いてきました。その間、独自の技術革新を重ね、数多くの分野で人類の平和と繁栄に貢献してきた日本の姿は、私たちが考えている以上に、国際社会に好感を持って受け入れられております。

 こうした日本の誇るべき点も含め、首都東京の様々な強み、特性をオリンピックに反映させていく必要があります。

 先月発表した基本方針で明らかにしたとおり、東京大会では、メインスタジアムと選手村、プレスセンターの主要3施設を、臨海部の都有地に集中的に配置いたします。用地を一切取得せず、かつ新たな埋立ても行わずに、世界一コンパクトな大会を実現してまいります。また、近年のオリンピックでは環境が大きな柱に据えられておりまして、東京大会では、選手村など主要な施設のエネルギーを再生可能エネルギーで供給するなど、最先端の環境技術を駆使して、これまでのどの大会よりも環境最優先の大会としてまいります。

 日本の技術の底力は環境分野に止まりません。ユビキタスやロボット、ITなど日本が得意とする技術を、大会運営や観光などに幅広く活用するため、先月から、専門家の英知を集め検討を開始いたしました。

 オリンピックを舞台に、肉体の限界に挑戦するアスリートたちの姿は、私たち大人のみならず子供たちにも、国家、民族の枠を超えた一個の人間としての輝きを見せてくれます。スポーツがもたらす純粋な感動や全身全霊を込めてスポーツに打ち込む喜びを、次代を担う青少年が体験できるよう、大会後、オリンピックの関連施設を、アジアをはじめ世界各国の青少年のために積極的に開放してまいります。

 今後、8月末の国内選考、さらには世界の強豪都市との戦いを勝ち抜き、「都市文明の英知と日本の技が結集したオリンピック」を東京で実現したいと思っております。来年2月に開催する東京大マラソン祭りを、五輪のプレイベントとして位置づけ、全庁を挙げて取り組むとともに、オリンピックの3年前に予定されております多摩・島しょ地区を中心に行う東京国体を成功させ、オリンピックに向けた気運を段階的、継続的に盛り上げていきたいと思います。

 都議会の皆様、都民の皆様のご支持、ご協力を切望いたします。

2 オリンピック開催に向けた取組みの展開

 2016年のオリンピック開催に向け、今後、10年後の将来を見据えた東京の都市像を明らかにするとともに、東京をさらに機能的で魅力的な都市につくり替えていく必要があります。

(環状道路ネットワークの整備)

 なかでも最優先で取り組むべきは、首都圏全体をにらんだ環状道路のネットワークの整備であります。

 先週、環状第8号線の最後の工事区間約4kmが完成し、全線が開通いたしました。環状道路の開通は、昭和60年の環状第7号線以来21年振りであり、完成区間の混雑時の通行時間が約半分に短縮されるほか、周辺の交通渋滞の緩和にも大いに貢献いたします。

 環状道路の整備が、東京のさらなる発展は言うには及ばず、日本全体のダイナミズムの発揮のために必要不可欠であることは、誰の目にも明らかであります。特に、首都圏を結ぶ三環状道路は、膨大な経済効果はもとより、東京都全域への植林と同程度のCO2削減効果をもたらすなど、環境対策としても重要な役割を担っております。

 にもかかわらず、外環道の整備が30年以上凍結されていたことは、不可解としか言いようがありません。5年前、当時の扇国土交通大臣とともに現地を視察し、錆び付いた時計の針を動かし始めました。以後、地元との意見交換を約3百回以上実施するなど、整備再開に向けた取組みを積み重ね、先週、大深度地下方式への都市計画変更に着手いたしました。

 今後、圏央道や中央環状品川線の整備と併せ、早期完成に向け、国を動かし、事業を前進させてまいります。

(空のアクセスの充実)

 空のアクセスの充実も不可欠であります。

 先月、日米両政府は米軍再編成に関する行程表を発表し、そのなかで、横田基地の軍民共用化について、具体的な条件や態様の検討を12か月以内に終了することで合意いたしました。これにより、共用化が名実ともに実務的な段階に入ったことが、日米共通の認識となったのであります。

 都は、実現に向けた動きを加速させるため、先月、首都大学東京と連携し、具体化のための検討組織を立ち上げるとともに、先般開かれた国と都の連絡会において、直ちに日米の実務的な協議を開始し、一刻も早く結論を出すよう、国に強く申し入れました。

 羽田空港の再拡張・国際化も具体的な整備の段階に入っておりまして、一連の動きを重層的に進めることで、首都圏の航空事情が一気に改善されると期待しております。

(臨海地域の機能強化)

 次に、オリンピックの主要な舞台となる臨海地域についてであります。

 東京港の国際競争力を向上させ、臨海地域のエリアマネジメント機能をさらに強化するため、この地域を活動基盤とする団体を監理団体改革の一環として経営統合し、持ち株会社を設立いたします。当面、ゆりかもめや東京ビッグサイトなどのほか、民営化する東京港埠頭公社を順次傘下に収めるとともに、先般、民事再生の申立てを行った第三セクター3社については、統合したうえで子会社化する予定であります。こうした取組みが、オリンピックの運営にも大きな効果をもたらすものと考えております。

(観光の視点に立った都市の整備)

 オリンピックの開催をにらみ、東京の街を観光の視点から見直していく必要があります。

 東京には、近代化の過程で生み出された風格のある建築物が数多く残っておりまして、貴重な観光資源にもなっています。こうした建物を中心に、周辺の眺望を一体的に保全するための新しい仕組みを創設いたしました。国会議事堂や迎賓館などを対象に、今後周辺で計画される建築物の高さや色彩などを規制・誘導し、美しく魅力溢れる景観を次代に引き継いでいきたいと思っております。

 併せて、民有地を活用した民設公園や建物の屋上・壁面緑化など、民間が自ら緑を守り増やす仕組みを整え、みどり豊かで潤いのある街並みを形成していきたいと思います。

 また、東京の鉄道網は、稠密に配置された駅の数では世界一を誇りますが、案内板や乗換えルートがわかりづらいなど、利便性の面で改善の余地を残しております。都営地下鉄の案内板をホーム中央に統一的に設置するとともに、デザインについて東京メトロとの共通化を図るなど、より一層、利用者の立場に立ったわかりやすいサインの整備を推進いたします。第一回の東京大マラソンが開催される来年2月までに、都心部の駅で集中的に整備を進め、来年度以降、その他の駅においても順次実施してまいります。

 駅に限らず、まち全体の案内サインを観光の視点から総合的に検討するため、先月、全庁的な推進会議を立ち上げました。今後、東京を初めて訪れた人でもわかりやすいまちづくりを積極的に進めていきたいと思います。

(環境政策の新たな展開)

 都はこれまで、ディーゼル車排出ガス規制だけでなく、先駆的な地球温暖化対策や全国初の屋上緑化の義務化など、我が国の環境政策を先導してまいりました。10年後のオリンピック開催を見据え、東京をさらに快適で安心して住み続けることのできる都市としていくために、環境基本計画を改定いたします。

 世界の大都市で最もきれいな大気環境の実現を目指し、最新鋭の環境対応車の普及や自動車交通量の総合的な抑制策などに取り組むとともに、世界最高水準の温暖化対策として、より厳しいCO2の排出抑制や再生可能エネルギーの飛躍的な利用拡大など、新たな方策を検討してまいります。

 2016年の東京五輪では、選手たちが東京の澄んだ空気の中で、最高のパフォーマンスを繰り広げられることのできるようにしたいと思います。

3 東京のポテンシャルを引き出す政策の推進

(東京の産業を支援する取組みの充実)

 この春、産業技術研究所を全国で初めて、地方独立行政法人化いたしました。平成23年度までに江東区青海地区に移転したうえ、区部の産業支援拠点を統合し、高度先端技術やデザイン分野等の支援機能を強化するとともに、多摩地域の拠点についても再編整備をいたします。大学や国などの研究機関とともに連携を図りながら、中小企業を技術、経営の両面からサポートしてまいります。

 日本の技術の生命線であるものづくりを再生するため、この4月、2つの教育機関を新たに開設いたしました。新しい産業技術高等専門学校では、本科5年のうえに大学の3、4年に相当する専攻科を設け、ロボット工学や航空宇宙工学など、将来有望な分野のスペシャリストを養成してまいります。

 さらに、同じく新設した産業技術大学院大学への進学の道を確保することにより、ものづくり人材を9年間一貫して養成するシステムを全国で初めて構築いたしました。今後、高等専門学校や大学院大学を活用しながら、未来の日本を支える技術者を育ててまいりたいと思います。

 また、若者の社会的な自立を促すため、就労に向けた基礎訓練などを提供する支援プログラムや、若者が活動主体となるNPOからの企画・提案に対する助成制度を創設するとともに、来月、就業に関するあらゆる相談に対応する「若者しごとホットライン」を開設いたします。

(都民の健康と福祉の向上)

〈花粉症の撲滅〉

 今年は例年に比べて花粉の飛散量が少なかったとは言え、花粉症はもはや一種の国民病であり、このまま放置すれば取り返しのつかない損失を国全体に及ぼしかねません。

 都はこの春から、本格的な発生源対策に取り組むため、「花粉の少ない森づくり運動」を開始いたしました。花粉症の撲滅には、息の長い継続した取組みが不可欠であります。スギの伐採と花粉の少ない品種の植栽のため、1500円で1本のスギを植え替える「3コイン・1ツリー」募金を始めるなど、都民の皆様と協力して有効な手立てを多角的、重層的に講じてまいります。

〈AEDの都営地下鉄全駅設置〉

 今年3月、大江戸線・都庁前駅で倒れた男性を、駅職員がAED(自動体外式除細動器)を使って救助し、一命を取り留めることができました。心臓発作など体の異変は、時と場所を選びません。来月までに都営地下鉄の全駅に設置するとともに、都バスの全営業所などにも8月中に配備いたします。

 すでに、都庁や区市町村の本庁舎をはじめ、美術館や動物園など人が多く集まる場所に設置したほか、機械操作や応急手当の講習にも積極的に取り組んでおります。今後とも、都民の不測の事態に万全を期してまいります。

〈認知症高齢者対策の推進〉

 都民の4人に1人が高齢者という超高齢社会が、10年後に迫っております。そのうちのおよそ1割の方々が、何らかの認知症の症状を持つと推測されており、認知症高齢者対策は喫緊の課題であります。

 認知症高齢者を地域で支える対策を総合的に検討するため、支援の担い手である都民をはじめ、専門家や小売店、飲食店等の生活関連企業、公共交通機関など、高齢者の日常に係わる関係機関が一堂に会する連絡会議を来月発足いたします。今後とも、関係機関と連携を図り、高齢者が尊厳を保ち地域で自立して暮らせる社会の実現を目指してまいります。

(子どもの力を伸ばす取組み)

 生徒一人ひとりの力を伸ばす都立高校改革が、着実に成果を上げつつあります。5年前に初めて進学指導重点校に指定した日比谷高校など4校では、この春、難関国公立大学への現役合格者が、指定前と比べて5割以上増加するなど、高い実績を上げてきました。

 生徒の力を引き出すには、教師個々人の力量はもとより、学校ごとの特色ある取組みが不可欠であります。4月、中堅教師が若手に指導の技術を伝授する東京教師道場を開設するとともに、都内6か所に学校経営支援センターとその支所を設置し、校長がリーダーシップを発揮して、より自律的な学校経営を行えるよう、機動的、総合的に支援してまいります。

 昨今の子どもたちに見られる行動や精神の乱れは、生活規範そのものの乱れに他なりません。小さい頃から朝食をろくに摂らず、また家族が食卓を囲んでの団欒をほとんど経験しないなど、歪んだ食習慣が蔓延しております。

 都は現在、「子ども応援協議会」を中心に、子どもの生活習慣の改善や青少年の心と身体の健全育成に取り組んでおります。今後さらに、食を通じての家族の大切さや自然への理解を深めるため、農業や食品加工、流通における現場体験を促進するなど、大都市の特性を活かした食育推進計画を策定し、食の持つ多様な機能を、家庭はもとより学校や地域全体で取り戻す契機としていきたいと思います。

(多摩・島しょ地域の潜在力の発揮)

 区部と並び東京の活力を担う多摩地域は、時代の先端を行く企業や大学、研究機関などが数多く集積し、東京全体の1割強の工場で5割を超える製造品出荷額を産出するなど、東京の産業活性化に大きな役割を果たしております。今後、圏央道などのインフラ整備が進めば、そのポテンシャルがさらに高まるものと大いに期待しております。

 多摩地域の産業を支える中小企業を技術、経営の両面から支援するため、都立短大の跡地に、産学公交流センターの機能を含めた本格的な支援拠点を、平成21年度を目途に再編整備いたします。産業特性に対応し、エレクトロニクスや情報通信の技術分野への支援を強化するなど、多摩の産業振興を一層推進してまいります。

 ロンドン視察の折に、アイリッシュ海に浮かぶマン島に立ち寄ってまいりました。淡路島ほどの面積の、人口8万に満たないこの島は、百年前から続く公道を使った国際的オートバイレースで世界的にたいへん有名であります。民家のすぐ脇の公道を200キロを超えるスピードで疾走するオートバイの迫力に圧倒されるとともに、住民の皆さん一人ひとりがモータースポーツを心から愛し、レースを島全体で盛り立てる様を間近に見聞することができました。

 一時は観光客の低迷に悩んだマン島は、レースだけではなく、IT産業の誘致など独自の産業振興策により、今では、一人当たりの国内総生産がイギリスを上回るに至っております。こうした先駆的な取組みから、東京の島々も大いに学ぶべきであり、同行した三宅、八丈の両島の首長さんも同じ思いであったと思います。

 今後、オートバイレースを観光の起爆剤に据え、島の皆様が一致協力して、実現に向けた具体的な第一歩を踏み出すことを期待しております。都としても、地元の創意工夫を活かした島の新たな発展を積極的に支援してまいります。

4 おわりに

 都はこれまで、アジア大都市ネットワークの活動を通じて、新興感染症対策のネットワークの構築や中小型ジェット機の開発促進など、国境を越えた都市連携の有効性を証明するとともに、国内では、八都県市を中心に首都圏FEMAを創設し、広域的な危機管理体制を整えるなど、国全体を見据えた施策を積極的に展開してまいりました。

 またこの4月から、全国に先駆けて、複式簿記・発生主義の新しい公会計制度をスタートさせました。先般の八都県市首脳会議などでも、日本のスタンダードを目指し連携して取り組んでいくことを確認しましたが、これも、国家的な無駄を省き、日本を変えるための取組みのひとつであります。

 他方、国は、日本全体の利益を考え、この国のグランドデザインを真剣に描こうとしているとは到底思えません。国が来月にもまとめる「骨太の方針」なるものでは、最大のテーマである我が国の歳出削減にからめて、地方財政の圧縮が俎上に上がっております。なかでも、最近とみに高まっているのが、東京の財源を地方に回し歳出削減に結び付けようとする考え方であり、背後には、税収の大きさや増加だけで一面的にものを捉えての、相も変わらぬ「東京富裕論」が見え隠れしております。

 しかし、先月明らかにした反論の書で示したとおり、東京の税収を地方へ再分配しようとするのは、合理性をまったく欠いた暴論であり、法人2税の配分基準の見直しに至っては、課税権の侵害以外の何物でもありません。政府の議論を紐解くと、都税は年間最大で1兆2千億円の減収に見舞われると危惧されますが、東京には、渋滞解消や犯罪対策など膨大な財政需要がありまして、また、羽田空港の再拡張や三環状道路の整備は、国全体の利益に直結する事業に他なりません。

 こうした文明工学的な見識を欠いたまま、闇雲に東京の財源を狙い撃ちしようとする動きに対しては、組織の総力を挙げて、また都議会の皆様とスクラムを組んで、断固反対の姿勢を貫いてまいります。

 現在、国では道州制の検討が進められていますが、国と地方の役割分担をなんら議論することなく、上辺だけで、区割り論に終始しております。都では、地方自治のあるべき姿を見据え、東京発自治論の議論を進めており、都と区の関係についても、大きな視点に立って見直す必要があります。これまでの発想に捉われずに、東京の力が日本全体の発展を大きく左右するという共通認識を持って、都と区の新しい関係を構築するため、先週、新たな検討の場を都区共同で設置し、今後、根本的で発展的な議論を進めてまいります。

 真の地方自治の確立を目指し、都議会の皆様と力を合わせて取り組んでいきたいと思います。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案23件、契約案3件など、合わせて31件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。