石原知事施政方針

平成20年6月10日更新

平成20年第二回都議会定例会知事所信表明

平成20年6月10日

 平成20年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 去る4月11日、名誉都民である加瀬三郎さんが逝去されました。また、4月15日には、同じく名誉都民である辻清明さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

1 オリンピック招致活動は国際舞台へ

 さて、今月5日未明、IOC理事会において、東京はマドリード、シカゴ、リオ・デ・ジャネイロとともに、2016年オリンピック・パラリンピック大会の立候補都市に決定されました。

 大会理念や世界一コンパクトな運営はもとより、充実した公共交通網や宿泊施設、治安体制、そして、大気汚染の改善等、先進的な環境政策の実績など、都市としての総合ポテンシャルを7都市の中で最も高く評価されたのであります。

 しかし、今回の決定は、あくまで通過点に過ぎず、来年10月のIOC総会を目指し、いよいよ招致レースは正念場を迎えます。慢心することなく気を引き締め、都議会と手を携え、都民・国民の皆様の力を結集して、是が非でも勝ち抜いてまいりたいと思います。

 日本だからこそできる、最先端技術を駆使した新しいオリンピックを目指して大会運営に一層の磨きをかけるとともに、8月の東京芸術文化評議会の答申を踏まえ、東京と日本が誇る豊穣な歴史と文化を活かした「文化プログラム」を作成いたします。来年に提出する「立候補ファイル」にこれらを盛り込み、他に絶対に負けないものに練り上げてまいります。また、国際的な招致運動が解禁されたことから、北京オリンピックをはじめとした国際的イベントで東京と日本の魅力を世界に余すところ無くアピールしたいと思います。

 オリンピックは、国民にかけがえのない心の財産を贈る国家的事業でありまして、その招致は国同士の戦いであります。国を挙げて大会を必ず成功させる強い意志を示さなければ、招致はあり得ず、工夫を重ねて日本全体の招致気運をさらに燃え上がらせてまいります。政府の万全な協力体制も、招致レースを勝ち抜くために必須であり、福田首相には、明確な財政保証を示すことを強く求めます。

 さらに、東京が開催都市に相応しいことをアピールするためにも、スポーツ振興に力を入れてまいります。その指針として、「スポーツが都市を躍動させる」という大会の理念を具体化する新たな「スポーツ振興基本計画」を、この夏に策定いたします。

 また、誰もがスポーツに親しむことのできる社会を作るにあたり、障害者スポーツの振興は重要な位置を占めております。その契機として、来年、アジアの障害のある青少年が集い、技を競う「東京2009アジアユースパラゲームズ」を東京で開催することになりました。この大会を成功に導き、日本とアジアに障害者スポーツを普及し、障害のある青少年に夢を贈ってまいります。そして来るべきパラリンピックの成功にも繋げていきたいと思います。

2 東京から「政治のあるべき姿」を取り戻す

 東京がオリンピックを通じて日本の可能性を世界に示そうとしているにもかかわらず、国政は混迷し、目を覆うばかりの惨状を呈しております。歴史学者トインビーは、その著書「歴史の研究」の中で、国家衰退の決定的要因は、国家が自己決定能力を欠くことにあると述べております。この言葉を思い出さずにはいられません。

 米国のサブプライムローン問題が国際金融市場に深刻な影響を与え、世界景気の後退も懸念される中、4月には金融政策を司る日銀総裁が一時空席となる前代未聞の事態が発生し、国際社会で築いてきた日本への信頼が著しく損なわれました。そればかりか、資源価格の高騰という国家の存亡に繋がる問題を前にして、国政は道路特定財源の暫定税率を巡るガソリン価格のみに目を奪われ、近視眼的な議論に終始しております。かつてオイルショックの危機に際して、環境技術の活用により経済の足腰を鍛えるなど、国を挙げてしたたかに乗り切った国家とは到底思えません。

 この国のかたちを根底から改良するための地方分権の実現も、百年河清を待つが如しであります。現場で必死にこの国を支えている地方に対して、国政は正当な認識を欠いたまま、税財源の移譲を中長期のものとして棚上げし、財政運営の失敗を地方に尻ぬぐいさせて憚りません。

 根源的なものへの認識を欠いて混迷する政治を目の当たりにして、強い危機感を感じない訳にはまいりません。未来への視座を持ち、戦略と戦術を構築して、確固たる意志で実行するという政治本来の姿を取り戻さなければ、間違いなく日本は衰退への道を辿るのであります。

 ゆえにも、日本の頭脳部・心臓部でありダイナモである東京から、自らの未来を自らの手で切り拓いていくという政治のあるべき姿を体現し、この国を覚醒させていきたいと思います。

 未来を見据え、都民・国民にとって真に必要な現実性のある政策を力強く進めてまいりたいと思います。また、国の地方分権改革推進委員会の動向を注視しつつ、あるべき地方自治の姿や、法人事業税国税化の解消と地方消費税の拡充、さらに、地方の責任と権限に見合う税財源の移譲を目指した抜本的な地方税財政改革について、あらゆる機会を捉えて都の主張を展開してまいります。

3 東京の総力を挙げた地球温暖化対策が地球の未来を拓く

 我々の未来を見据えた時、何をおいても取り組まなければならないのは、地球温暖化対策であります。

 地球温暖化対策は、人間の欲望を充足させるために化石燃料の無制限な消費を容認してきた現代文明のあり方を、根本から転換することに他なりません。国政においては、様々な意見の相違や対立を乗り越えるリーダーシップが発揮されておらず、我が国全体の対策を確立するに至っておりません。また、国際社会においても、先進国と発展途上国との間に深い溝が横たわっております。

 繁栄を謳歌する現代文明は、深刻な地球環境の異変を引き起こし、5、6年のうちに徹底した対策を講じなければ取り返しがつかなくなるところまで自らを追い込んでおります。だからこそ、CO2の劇的な削減に思い切って舵を切らなければならず、それは、今をおいて他にありません。とりもなおさず、社会の針路を決めるべき政治が、いかにその役割と責任を果たすかを問われているのであります。

 そこで、東京から世界に先駆けて低炭素型都市を実現していきたいと思います。環境と調和した高度な都市機能を東京から実現するならば、都市の世紀における地球の未来に新しい航路を拓くに違いありません。東京の持つ英知と力を結集して、世界の目標となるような魅力溢れる都市の姿を実践的に示すことで、日本と世界の環境政策をリードしていきたいと思います。

(子や孫たちへの責任を果たすための先進的な施策)

 都民・企業などあらゆる主体が、その役割と責任を果たさなければCO2の削減は到底不可能であります。特に、多量のCO2を排出する大規模排出事業所には従来、自主的な取組みを促してまいりましたが、さらに大幅かつ確実にCO2を削減するため、取組みの強化が不可欠であります。

 そこで、大規模排出事業所に削減義務を課すとともに、排出量取引制度を導入するため、「環境確保条例」の改正を本定例会に提案いたしました。削減義務化は日本初の取組みであり、大都市に多いオフィスビル等も含め義務化の対象とするのは世界初であります。公平・公正で合理的な削減義務の水準を設定し、実効性を高めるために罰則も整備して、東京のCO2の排出を着実に削減してまいります。

 先月、東京商工会議所が、都の制度提案に賛意を表すなど支持が広がっております。子孫への責任を履行しようという志を、CO2削減の確かな潮流にするためには、省エネに関するノウハウや資金が不足している中小企業での対策を加速させなければなりません。中小規模事業所向けの省エネに関する報告書制度を新設するほか、新たな融資制度の創設といった金融面での支援や技術面での支援などを複合的に講じて、中小企業の取組みを力強く後押ししてまいります。

 一方、CO2削減の取組みは、中小企業にとって飛躍のチャンスでもあります。11月に東京ビッグサイトで開催する「産業交流展2008」に、最先端の環境技術を有する中小企業の出展を全国から募るなどビジネスチャンスを創出し、技術開発を促進してまいります。

 事業所と並んで家庭での取組みも重要であります。火力発電など化石燃料の使用によって多量のCO2が発生することから、家庭での電力やガスの消費を太陽エネルギーなどに代替すればCO2の大幅な削減に繋がります。太陽光発電は、国の政策が後退し普及が足踏みしておりますが、今後、太陽熱利用機器も含めて、初期投資を10年程度で回収できる仕組みを構築し、東京から普及を飛躍的に拡大してまいります。

 今回の条例改正により、削減義務化だけでなく、大規模新築ビルの省エネ基準を定めるほか、大規模開発において未利用エネルギーや再生可能エネルギーの活用などを積極的に誘導いたします。施策を契機として、エネルギーを徹底的に有効活用する都市へと東京を生まれ変わらせてまいります。

 都市づくりと合わせて、便利さのみを追い求めてきた生活スタイルもCO2削減の観点から見直さなければなりません。深夜に煌々と灯るネオンなど広告用照明を消灯し、デパート等の営業時間を短縮するなど、省エネ・節電に繋がる具体的な行動を業界団体等に働きかけてまいります。

(東京から世界に変革の輪を広げるために)

 都民・企業などの皆さんと手を携え、東京の総力を挙げて投じた一石は、日本を変え、世界に変革を迫るうねりとなるに違いありません。

 本年10月に、志を同じくする「世界大都市気候変動グループ(C40)」参加都市の実務者を東京に招きます。専門的知見と危機感を改めて共有した上で、ヒートアイランド現象や渇水など、眼前で頻発している深刻な事態への対処策を検討いたします。

 また、「国際炭素行動パートナーシップ(ICAP)」にも、アジアで初めて東京が参加し、東京の先進的施策を世界に向けて発信いたします。

 東京から変革の輪を地球全体に広げ、人類が地球温暖化を阻止するための足場を固めていきたいと思います。

4 都民・国民のため、常に先を見通し積極果敢に行動する

 地球温暖化対策に止まらず、都政は、日々、生きた現実に直面し課題解決を迫られております。これを十全に対処するため、常に先を見通しながら、積極果敢に行動してまいります。

(羽田空港の国際化)

 21世紀において、人、物、情報の自由な往来無くして都市も国家も発展はあり得ません。空港は単なる空の玄関口ではなく、我々の命運を託し、極めて戦略的に整備・運用されるべき日本と世界の結節点であります。ゆえにも、国には、羽田空港の潜在力を十二分に引き出す国際化を求めてきたほか、従来の自治体の枠を超えて第四滑走路の建設にも1千億円の無利子貸付を行ってまいりました。

 先月、国は、これまでの都の主張に沿って航空政策を転換し、羽田空港の国際線発着枠を倍増することや就航距離制限を外して東南アジア諸都市への就航を可能にすることなどを発表いたしました。当然のこととはいえ、大きな前進であります。今後も、未だ十分とは言えない昼間の国際線の増加など、さらなる国際化の進展を国に求めてまいります。

(道路整備の着実な推進)

 道路も将来を見据えた着実な整備が必要であります。日本の心臓部たる東京の道路は、全国の道路に繋がるハブとして重要な役割を果たしており、日本の効率的な経済運営に欠くことのできない動脈であります。

 昨年には中央道と関越道が圏央道により結ばれ、中央環状線の池袋から新宿までの区間も開通し、渋滞の緩和に著しい効果が現れております。しかし、三環状道路の整備は未だ途上でありまして、スピードをさらに上げなければなりません。

 特に、外環道は、東京が首都の役割を果たす上で欠かすことができず、日本の発展にも直結する極めて重要なインフラであります。昨年12月、福田首相が協力を約束した経緯からも、国は平成21年度に事業着手するのが当然であります。国の速やかな対応を改めて要求いたします。

 道路特定財源の一般財源化が行われようとも、日本の生命線たる、三環状道路をはじめとする東京の道路が確実に整備されるよう、財源の確保を国に求めてまいります。

(都民の生命・健康を守るために)

 都民・国民の生命・健康を守るためには、直面する課題の本質を見極め、眼前の危機に対して迅速に対処することが必要であります。

 新型インフルエンザの発生が時間の問題と言われており、ひとたびこれが発生すれば、感染の爆発的な拡大や、深刻な社会的・経済的混乱が懸念されます。都は、これまでに抗インフルエンザウイルス薬の備蓄、新型インフルエンザの発生を想定した訓練など独自の対策を進めてまいりました。しかし、国家的危機管理の問題として、国の責任で行われるべきワクチンの確保や、企業活動・公共交通の運行等の社会活動を制限するための法整備などは大きく遅れております。

 このため、先般、関東各県の知事と共同で国への要求を行うことといたしました。今後とも、あらゆる機会を通じて、国が責任を果たすように強く求めてまいります。

 医療の充実、とりわけ深刻化する医師不足を解消するためには、重層的な取組みが求められております。

 今年度には、勤務医の過重な勤務環境の改善や女性医師の復職対策等に着手してまいります。今後さらに、地域医療を担う志のある医師の育成にも取り組むため、来年度から、小児医療や周産期医療など東京で医師が不足する分野を志望する医学生のための奨学金制度を開始するべく、本定例会に条例案を提出いたしました。都立病院に開講した東京医師アカデミーとも合わせて、優秀な医師を確保し、東京の医療の質をさらに向上させてまいります。

 7月には北海道洞爺湖サミットの開催が予定されており、都内でも、全力でテロを未然に防止しなければなりません。

 4月には東京駅周辺で、国や民間事業者と提携したテロ警戒対応訓練を実施いたしました。今後、5月に設置した「東京都テロ警戒推進本部」を中心に、官と民とが密接に連携して、多くの人々が利用する駅や集客施設などの警戒警備を強化し、万全を期してまいります。

 昨今、食品の安全性について、都民・国民の不安が高まっております。その根底には、海外への食糧依存がこれだけ高まりながら、食品を選択するための十分な情報を得られていないことがあります。

 先般の消費生活対策審議会の答申を踏まえ、国に先駆けて、都民生活に欠かせない調理冷凍食品について原料原産地を表示することを義務といたします。我が国最大の消費地である東京から先鞭を付け、国を動かし、事業者の取組みを促して、食の安心・安全の底上げを図ってまいります。

(産業力の強化)

 東京には世界最先端の技術や匠の技を駆使して活躍する中小企業が数多くあり、我が国の産業力の源泉となっております。しかし、中小企業にとって、原材料価格の高騰等に伴うコスト増を価格に転嫁することが難しいことなどから、下請取引に関するトラブルが最近、頻発しております。そこで、本年4月に「下請取引紛争解決センター」を中小企業振興公社に設置いたしました。同センターについては、地方自治体では初めてとなる、下請取引に関する裁判外の紛争解決機関としての認証を夏にも国から取得し、中小企業を下支えする機能を拡充してまいります。

 さらに、将来を見据えた支援も一層強化してまいります。都の空き庁舎等を活用して、中野にコンテンツ分野、浜松町に健康・バイオ関連分野のインキュベーション施設をそれぞれ新たに開設いたします。区市町村が行うインキュベーション施設整備への支援とも合わせ、今後の東京と日本の発展を担う新産業の芽を見出し、育成してまいります。

(低所得者対策)

 低所得の状態から抜け出せず不安定な生活を送る方々が未来への展望を開くため、都では4月から緊急3か年対策をスタートしております。

 インターネットカフェ等で生活する方々を対象とした相談窓口「TOKYOチャレンジネット」では、最初の1か月で延べ347人が相談に訪れ、電話・メールでの問い合わせは600件を超えました。こうした取組みをさらに広げるため、今月中にも、インターネットカフェが多い地域に相談員が直接出向き、現場での相談を開始してまいります。

 また8月からは、生活の安定に向けた支援が必要な方々のため、相談窓口を区市町村に順次開設し、就業相談専用の窓口も都内4か所に設置いたします。生活資金を無利子で貸し付け、当面の生活を安定させた上で、職業訓練や訓練後の就業支援をきめ細かく実施し、できるだけ早く、より安定した雇用に繋げてまいります。

(新たな東京都教育ビジョン)

 いつの時代もどんな社会も、いかにして子供たちを逞しく育てることができるかに、その行く末が懸かっております。

 平成16年に「東京都教育ビジョン」を策定し、「東京教師養成塾」の開設や「奉仕」の必修化など、国に先駆けて改革を実行してきました。

 さらに今回、社会全体で子供の生きる力を育むことを柱とする、新しい「東京都教育ビジョン(第2次)」を策定いたしました。児童・生徒の確かな学力や規範意識の向上のほか、豊かな社会経験や多様な専門性を有する外部人材の積極的活用、親の教育力の再生など新たな課題に取り組み、次代を担う子供たちを育成してまいります。

(多摩・島しょの振興)

 次に、多摩・島しょ地域について申し上げます。

 多摩地域には、エレクトロニクスや機械分野等における優れた中小企業が数多く集積しております。こうした企業への技術支援を充実・強化するため、最新の試験設備を整えた多摩の産業支援拠点を昭島市に来年度、整備いたします。製品開発を力強く支えるとともに、産学・産産連携等による中小企業の経営課題に応える体制を整えてまいります。

 平成25年に、多摩・島しょ地域を中心として開催する東京国体の準備も着々と進行しております。先の定例会でいただいた開催決議を添えて、今月4日に大会の開催申請を行い、間もなく東京での開催が内定する予定であります。

 国体は、昭和21年以来、毎年開催されてきた国内最大の体育・スポーツの祭典であります。スポーツの素晴らしさを、さらに広く国民にアピールする大会へと変貌させ、オリンピックの気運盛り上げにも繋げるため、来月に策定する基本構想で新たな国体像を提示してまいります。

 世界自然遺産の登録を目指している小笠原諸島は、美しく多様な自然に満ちております。豊かな自然と人間の活動との調和を図る試みは、自然環境の保護にとって極めて重要であります。

 都は、今月下旬に東京都景観計画を変更して、島民の生活の中心地でもある父島の二見港周辺を景観形成特別地区に指定いたします。海上や山頂からの眺望に配慮するなど良好な街並みの形成に努め、世界自然遺産の登録に相応しい美しい景観へと誘導してまいります。

5 地球と人類の未来に繋げるために

 今月1日、スペースシャトル・ディスカバリー号が打ち上げられました。ディスカバリー号には、東京都出身で、宇宙飛行士という子供の頃からの夢を実現した星出彰彦さんが搭乗しております。

 星出さんには、駒沢オリンピック公園にあるケヤキの種子を託しました。昭和39年の東京オリンピック以来、公園から東京と日本の発展を日々見守ってきたケヤキの種子が、星出さんと一緒に宇宙へと飛び立ち、地球に帰還いたします。後日、これらのケヤキを海の森や公園、小学校などに植樹し、「宇宙ケヤキ(仮称)」として大切に育ててまいります。緑あふれる東京のシンボルとなり、無限の可能性を持つ子供たちにとって、夢を実現する大きな心の糧にもなるに違いありません。

 今日の我々は、世界規模での地球温暖化問題をはじめ、人間の旺盛な活動に伴い生じる都市の病理や次代を担うべき子供や若者たちの心の荒廃など、様々な課題を抱えながら生きております。

 かけがえのない地球の危機的状況を宇宙から眺めてきた宇宙ケヤキと共に、東京もまた、様々な課題の解決に向けて現実を直視して取り組み、成熟した魅力溢れる都市へと変貌を遂げていきたいと思います。

 現在、「10年後の東京」を羅針盤とし、あらゆる分野で展開している先進的な政策を種子や苗として、子や孫たちが生活する時代には見事な大木となるように育ててまいりたいと思います。そして、世界に範を示すことのできる21世紀の都市モデルを実現し、地球と人類の未来に対する我々の責任を果たしていきたいと思います。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案17件、契約案5件など、合わせて28件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。