石原知事施政方針

平成20年12月2日更新

平成20年第四回都議会定例会知事所信表明

平成20年12月2日

 平成20年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

1 岐路に立つ日本

 サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱は百年に一度と形容される経済危機へと発展し、世界を飲み込みました。震源地である米国は深く傷ついただけでなく、超大国として世界に睨みを利かせてきたその地位を大きく低下させたのであります。これにより世界は、多極化の度を深めようとしております。

 危機の只中にあって刮目すべきは、現代の錬金術の破綻が、却って、先進的な技術とそれを製品化する能力などの日本の本来の強みを、鮮明に浮かび上がらせたことであります。豊かな潜在能力を持った日本が、危機を乗り越えないはずがありません。

 問われているのは、自らを信じて確固たる意志を持ち、主体的に、戦略的に行動できるか否かであります。しかし、国政は危機感に乏しく、浮かんでは消える解散・総選挙の話題に右往左往するばかりであり、この国は、国際社会の荒波の中で舵を失い漂流する難破船ともなりかねません。

 これに対して、都は着実に行動を起こしております。米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除したことなどから、膠着状態にある拉致問題を解決に向けて動かすため、先月、「北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会」を立ち上げ、改めて「日本人を帰せ」とのメッセージを発信いたしました。また、粘り強く取り組んできた横田基地の軍民共用化も、米国の現政権にはこれまでの交渉の積み重ねを新政権に確実に引き継ぐよう求め、新政権にも早期実現を強く働きかけてまいります。

 時流に翻弄されることなく、未来を見据え、活路を見出してこそ政治であります。固い決意を胸に果敢に行動しながら、あるべき政治の有り様を東京から示し、国を先導してまいりたいと思います。

2 都民・国民の不安を受け止め活路を開く緊急対策

 言うまでもなく、未曾有の混乱を沈静させ、さらなる危機への芽を摘み、景気回復への道筋を付けるのは国家の責任であります。しかし、我が国では、ねじれ国会の下での与野党の対立により、危機への対処がもたついております。

 こうしている間にも危機は進行していきます。企業業績は悪化し、国内消費が低迷するほか、経営体力を大きく殺がれた金融機関が貸し渋りや貸し剥がしに走ることが懸念されており、手を拱いていれば、不安が不安を呼び、景気悪化に歯止めがかからなくなるに違いありません。

 ゆえにも、都民・国民の不安を正面から受け止め活路を開くべく、第二弾の緊急対策を策定いたしました。現場を熟知する東京が、国に先駆け、実効性の高い施策を展開することで、日本のダイナモたる東京から危機克服に向けた確かな歩みを進めてまいりたいと思います。

(小零細企業に対する支援)

 日本経済の力の源泉である小零細企業を取り巻く状況は日に日に悪化し、年末に向けてさらに厳しくなることは確実であります。

 こうした中で、懸命な努力を続ける小零細企業を支えるため、既に10月から、都の制度融資において、最優遇金利を適用し、信用保証料の負担も大幅に軽減する緊急融資を実行しております。また、今後、連鎖倒産の防止にも取り組んでまいります。

 金融面での支援と併せて、道路や上下水道の維持など都市活動に必要な公共工事の予定を早め、年度内契約を増加させます。これにより小零細企業の受注機会を拡大して景気を下支えしてまいります。

(雇用対策と生活困窮者への支援)

 近年、非正規雇用者が増加したことなどから、今後、過去の景気後退局面以上に雇用への深刻な影響が現れると考えられ、より即効性のある雇用対策が求められます。しごとセンターやTOKYOチャレンジネット、さらに先月開設した年長フリーター等への専用相談窓口によるきめの細かい就労支援はもちろん、行政自ら雇用を生み出し、失業者の増加を抑えていかなければなりません。そこで東京では、都道等での樹木剪定作業などを通じて当面の雇用に繋げ、区市町村とともに連携しながら、延べ50万人分の雇用を生み出してまいります。

 また、困難な状況を自らの力で克服せんとする意欲を持った人を後押しし、その家族の生活を支えなければなりません。再就職を目指す離職者への緊急融資制度を創設し、子育て世帯はより手厚く支援いたします。

(国の政策の綻びを正すために)

 都民・国民の不安を解消するための国の政策、中でも要となる医療・介護などの分野で綻びが目立っております。そこで、先月、提案要求を行って国の対応を迫るとともに、現場を持つがゆえに発想できる知恵と工夫を凝らした独自の取組みを全力で進めてまいります。

〈周産期医療対策〉

 今般、墨東病院などで出産を巡る大変痛ましい事態が発生いたしました。亡くなられた御方のご冥福を心からお祈り申し上げます。

 現場では、日々、医師たちが限られた人員で、まさに骨身を削りながら頑張っております。しかし、産科・小児科の深刻な医師不足が問題の根底にあるのは間違いなく、これは国の失政に他なりません。

 都は、国を待つことなく、民間病院における医師の負担軽減、女性医師の復職支援、都立病院における大幅な給与改善、若手医師を育成する東京医師アカデミーの開講など独自の医師確保策を重ねてまいりましたが、今般の事態を重く受け止め、さらなる対策に着手いたします。

 都立病院の医師と地域の開業医や民間病院とが協力して出産等にあたる「産科診療協力医師登録制度」を創設するほか、全ての周産期母子医療センターにおける搬送調整業務や休日診療体制を強化いたします。また、周産期母子医療センターと連携して患者を迅速に受け入れる「周産期連携病院」を新たに指定し、早急に協力体制を構築してまいります。

 こうした対策とともに、周産期医療の現場に精通した医師等からなる「周産期医療協議会」でも、緊急に対策をまとめております。さらに庁内横断組織も立ち上げ、医療の現状を都民の視点で検証してまいります。

 これによって、より安全で安心できる医療の実現に向け、重層的に取り組んでまいります。

〈福祉施設等への支援〉

 医療と並んで都民の安心の拠り所である福祉サービスを提供する施設は、介護保険制度等が、高い地価など大都市の実情を反映した仕組みになっていないため、慢性的に厳しい経営を余儀なくされ、昨今の物価高騰がさらに追い打ちをかけております。

 そこで、都独自の緊急融資制度を新設して、施設経営の安定化を支援し、業務改善計画の策定など経営改善のサポートも行ってまいります。併せて、福祉施設のみならず民間病院でも懸案となっている耐震化を促進するため、新たな補助制度を創設し、建物の安全性を高めて利用者の安心を確保してまいります。

 これまで述べてきた施策を強力に推進するため、とりわけ早期の対応が必要な施策を補正予算案に計上して本定例会に提案いたしました。今、打つべき手を全速力で、かつ確実に打ってまいります。

(国の不合理な動きにNO)

 景気回復を目指す国は、「生活対策」において、地方が地域活性化に取り組むことを支援するとしておりますが、地方は、霞ヶ関が財源を握り全国を支配する構造の下、国の政策に追従することを余儀なくされ、巨額の借金を積み上げてきました。加えて、三位一体改革の際に国が責任を持つべき財政負担まで付け回されております。地方は取組みを行うにも既に疲弊し切っているのであります。

 太政官制度以来の官僚統制から地方を解き放たなければ、地方再生も地域活性もありません。地方が自らの才覚と責任で地域を主宰できるよう、国から地方に権限と財源を移譲することが不可欠であります。

 国は、こうした本質論からは目を背け、道路特定財源の一般財源化でも、相も変わらぬ小手先の議論に終始しております。

 道路特定財源は、三環状道路をはじめとする道路整備はもとより、開かずの踏切を解消する連続立体交差事業や、今春の開業以来既に1千万人が利用した日暮里・舎人ライナー等の公共交通機関の整備などに投入されてきました。いずれも東京の最大の弱点である渋滞を解消し、日本の屋台骨を支える都市インフラを整備する重要な事業ばかりであります。

 道路特定財源が地方交付税化されれば、不交付団体である東京の道路整備は頓挫し、致命的な悪影響を生じて、この国の再生は到底あり得ません。また、地方全体にとっては、従来、地方に交付されてきた道路特定財源が、無定見な削減の続いた地方交付税の穴埋めに回されるに過ぎません。地方交付税の復元は別途、国の責任で為されるべきであります。

 全くの数字合わせでしかない道路特定財源の地方交付税化には断固反対であり、一般財源化は地方分権の本筋に沿った税源移譲で行うべきであります。それが直ちにできないならば、当面、税源移譲を前提とする「交付金」の形をとるように強く要求いたします。

3 地球温暖化対策を止めるな

 今般の経済危機の影響は多方面に及んでおり、地球温暖化対策にブレーキがかかるのではないかとの懸念が広がっております。

 しかし、豪雨や干ばつといった地球環境の異変が各所で顕在化しており、あと5、6年の内に徹底した対策を講じなければもはや取り返しがつかなくなるところまで来ております。経済と環境とをトレードオフの関係で捉えることはもはやできません。

 むしろ、環境技術や代替エネルギーを開発して新しい市場を創出し、社会を低炭素型へと転換していくことが今後の経済発展を導くのであります。このことは、先月、東京ビッグサイトで開催された「産業交流展2008」において、全国から集まった珠玉の最先端環境技術の数々が雄弁に語っております。

 環境と経済とが調和した社会への道筋を切り拓くために、環境産業を振興するほか、太陽エネルギー利用機器の普及を着実に進め、電気自動車など環境負荷の低い次世代自動車の普及にも取り組んでまいります。また、10月に立ち上げた「省エネ型営業スタイル推進協議会」を中心に、都民生活に密着した小売店や飲食店での省エネ対策を促進いたします。広告用照明についても事業者と共に深夜の消灯に取り組むなど、都市の活動に対してきめ細かく省エネ・節電を働きかけてまいります。

 こうした具体的行動が急がれながら、昨年のCOP13・バリ会議も今年の洞爺湖サミットも国家間の利益が錯綜するばかりでしかありません。

 そこで世界を具体的行動に踏み出させるため、現場を預かる大都市の実務者による会議を提案し、この10月にC40気候変動東京会議を開催いたしました。CO2削減に関する緩和策だけでなく、水不足や食糧問題に関する適応策などを話し合い、世界の大都市がこれまで培ってきた技術や経験を分かち合って、13の共同行動を実施することを決めました。また先月、クアラルンプールで開催されたアジア大都市ネットワーク21総会でも、局地的集中豪雨に伴い発生する洪水への対策について熱心に意見を交換いたしました。

 今後、都市間で最新の技術情報や人材などを積極的に交流し、来年5月のC40ソウルサミットに繋げてまいります。京都議定書に続く新たな目標を決める来年のCOP15・コペンハーゲン会議において国家を動かすべく、都市の行動を糾合し、強力にアピールしたいと思います。

4 オリンピック・パラリンピックを日本に

(地球再生へのメッセージ)

 日本招致を目指す2016年のオリンピック・パラリンピックにおいても、地球環境の再生にかける東京の取組みの成果を全世界に披瀝してまいります。先程述べました先進的な環境政策に加えて、緑あふれる東京の形成も加速しております。海の森では、先月、公募による都民の方々が多数参加して7千本の苗木を植樹するイベントを開催いたしました。また、来年度には、皇居周辺を景観誘導区域に追加し、緑や水辺などと調和した風格ある景観を誘導する取組みを開始いたします。こうした緑の拠点を、街路樹を倍増させた緑の道で結んでまいります。

 東京が持てる力を結集し、環境と調和した快適な住み心地の良い都市へと率先して生まれ変わり、「10年後の東京」で描いた21世紀の都市モデルを具体的に提示したいと思います。

(夢と希望を取り戻すために)

 現在、我が国は物質的な豊かさを極めながらも、自ら拠って立つ価値の基軸や新しい目標を見い出せずに自信を失い、夢や希望を抱くことができにくくなっております。人間の多様な可能性に気付かせてくれるスポーツを引き金として、こうした状況に風穴を明けていきたいと思っております。それには、誰もが生涯を通じてスポーツに親しみ、健康で豊かな人生を楽しむ都市へと変貌を遂げる必要があり、オリンピックに向けた取組みこそ、その梃子となるのであります。

 26万人を超える参加申込みがありました「東京マラソン」や来年9月の「東京2009アジアユースパラゲームズ」など多彩なスポーツ大会を開催し、身近でスポーツに親しむことのできる地域スポーツクラブの設立を支援するなどの多角的な施策を展開してまいります。また、オリンピック本番では、トップアスリートたちの活躍を間近で目にし、大会運営にもボランティアとして参加することで得られる深い感動、心の財産を若者たちに贈っていきたいと思います。

(招致レースを勝ち抜くために)

 このように、オリンピック・パラリンピックは社会を変え、人の心も変える力を持っております。さらに、開催によって都内では、最低、1兆6千億、全国で2兆8千億円に上る経済効果も期待されております。

 東京と日本にとって千載一遇のチャンスを掴むべく、残り1年を切った招致レースを何としても勝ち抜かなければなりません。

 来年4月にはIOCの評価委員会が会場視察等のために来日いたします。トップアスリートに最良の環境を整え、IOCからも高い評価を得るべく、現在、開催計画の最後の詰めを行っております。自転車競技ロードレースについては、オリンピックに相応しい好勝負を演出するために、多摩の自然の起伏を活かし、皇居外苑と多摩丘陵部を往復するコースを設定するほか、北京大会での実地調査を踏まえて、メディアセンターの予定地を、取材や報道に一層便利で機能的な東京ビッグサイトに変更してまいります。既に東京が持つ数多くの競技施設や都市としての計り知れないポテンシャルを最大限に活用しながら、近年の諸大会とは全く異なる、日本だからできる、新しいオリンピックを実現してまいりたいと思います。

 また、先月のアジア大都市ネットワーク21総会では全ての出席都市が、アジアの友情をもって、日本招致に賛同してくれました。こうした追い風を受けながら、今月12日には、1万人が集う「オリンピック・パラリンピック招致サポーター結成集会」を代々木第一体育館で開催し、招致気運をさらに盛り上げたいと思っております。

 21世紀の坂の上の雲を目指して、全員で肩を組み合って様々に工夫し、力を出し合って東京オリンピック・パラリンピックを実現し成功させ、日本の確かな再生と世界の繁栄の大きな縁としていきたいと思っております。

5 都政の主要課題

 次に、都政の主要課題について申し上げます。

(安全・安心の確保)

 日々の生活の安全・安心は、都民の強い願いであります。

 新型インフルエンザはいつ発生してもおかしくなく、都は独自に抗インフルエンザウイルス薬の備蓄を拡充するなど対策を行っております。

 先月20日には、爆発的な感染拡大と職員の4割が欠勤する事態を想定し、区市町村や八都県市、ライフライン事業者等が参加して、連携の強化や対応力の向上などを目的とした図上訓練を実施いたしました。

 今後とも、あらゆる事態を念頭に置きながら、都民の生命を新型インフルエンザから守る取組みを進めてまいります。

 昨今、家族・親戚の情愛に付け込み、主に高齢者を食い物にする卑劣な振り込め詐欺による被害が後を絶ちません。都民の注意喚起に努めるとともに、10月を撲滅月間としてATM(現金自動預け払い機)1千箇所に警官を連日配置して警戒に当たった結果、都内の振り込め詐欺認知件数が前年の同月比で約45%減少いたしました。

 しかし、まだまだ多くの被害が発生しておりまして、各警察署に摘発組織を新設し、11月以降も警察官700人の専従捜査体制を敷いてまいります。また、金融機関の窓口と連携したATMでの声掛けやコンビニエンスストアからの不審者通報などの取組みも進めてまいります。

 10月1日に大阪で発生した個室ビデオ店での放火事件は、狭い空間での火災の恐ろしさをまざまざと見せつけました。

 都では、関係機関が連携して、先月末までに都内の個室ビデオ店など1388施設を対象に、緊急査察を実施して防火管理や設備面等の状況を検査し、違反施設には是正を強力に指導いたしました。

 奇しくも事件発生の当日から、消防法令の改正により、全ての個室ビデオ店やインターネットカフェ等の施設に自動火災報知設備の設置が義務付けられております。今後とも厳しい姿勢で定期的に査察を行い、設備の設置を徹底して、火災による被害を未然に防止してまいりたいと思います。

(学力の向上)

 教育は国家・社会の発展の礎であり、確かな学力の習得は、生きる力を育み、子供たちの未来を広げます。

 国が推し進めてきた、いわゆる「ゆとり教育」の弊害として子供たちの学力低下が心配されており、都では、平成15年度以降、独自に実施してきた学力調査を分析して、全国で初めて、10月に「児童生徒の学習のつまずきを防ぐ指導基準(東京ミニマム)」を策定いたしました。

 今後、区市町村教育委員会と連携して、東京ミニマムを小中学校に定着させ、子供たちに基礎的・基本的な内容を徹底指導するとともに、指導方法をより効果的なものとするよう改善・充実してまいります。

(新銀行東京)

 昨今の経済危機により、貸し渋りや貸し剥がしの再燃が懸念され、零細企業に生きた資金供給を行う金融機関の必要性が改めて浮き彫りになっております。新銀行東京はその設立目的である零細企業支援を継続するため再建に全力を尽くしておりまして、先月発表された中間決算では、ほぼ再建計画どおりの業績となっております。都としても引き続き、再建計画の着実な達成に向け、経営の監視と支援を行ってまいります。

 一方、旧経営陣の時代に、行員自らが闇勢力と結託して愚劣な行為に手を染めていたことが明らかになりました。新銀行東京に期待した全ての皆様を裏切る事態が起きたことは、極めて遺憾であります。新銀行東京には、これまでの経営を徹底して見直し、過去の膿を全て出し切るよう、株主としても強く求めてまいります。

(多摩・島しょ地域)

 次に多摩・島しょ地域について申し上げます。

 地域医療の拠点である多摩・島しょの公立病院等では、深刻な医師不足によりまして、診療体制が縮小するなどの問題が起きております。

 そこで来年度から、都が採用した「東京都地域医療支援ドクター」を、多摩・島しょの公立病院等に派遣いたします。まさに命綱である救急医療を守り、小児医療やへき地医療などを支え、多摩・島しょにおける都民の安全・安心を確保してまいります。

 近年、多摩地域では林業が衰退しており、放置され荒廃した森林の再生を進めるために、植林や間伐への補助事業などを行ってきました。さらに企業が森林整備に関する費用を負担する等の「企業の森」事業を4つの企業・団体により約10ヘクタールにわたって進めております。

 この度、この中の企業から、さらに広域的な森林整備への協力提案があり、先月28日に「多摩の森林整備に関する基本協定」を締結いたしました。このような包括的な協定は、都道府県と民間の間では全国初でありまして、今後10年間、企業の協力を得て、社員ボランティアによる植樹や歩道・標識等の整備などを進め、都民・企業が主人公となる「緑のムーブメント」の輪を広げてまいります。

 災害から復興を目指す三宅島では、島の観光の起爆剤として、10月、2回目のモーターサイクルフェスティバルが開催されました。

 新たな企画を加えるなど関係者が並々ならぬ熱意で精一杯、力を尽くされた結果、この3日間で多くの方々が来島し、島民の方々との交流も深まりました。三宅島の本格的な復興に結びつけるべく、これからも強く支援をしていく決意であり、さらなる充実に向けて、今後とも関係各方面の協力を求めてまいります。

6 不断の改革

 かつて都財政は、バブル崩壊後の低迷の中で、財政再建団体転落の瀬戸際まで追い詰められました。徹底した内部努力や施策の見直し、都債残高の圧縮などに取り組み、都議会の皆様とともに手を携えて、ようやく危機を乗り越えたのであります。

 現下の経済危機により、再び都税収入の大幅な減が想定されます。こうした時にこそ改革により蓄えた力を活かし、都民・国民にとって真に必要な施策を機動的に実行し、未来への積極的な布石も打ってまいりたいと思います。

 もとより、施策を着実に展開し続けるには、今後一層、厳しさを増していくだろう社会経済情勢を見据えた舵取りが求められます。平成21年度予算の編成では、新しい公会計制度も活用しながら、事業内容や執行方法の見直しをさらに徹底して、より効果的に施策を練り上げてまいります。

 経済危機の行く末は混沌としておりますが、東京が活路を開かざるして日本に未来はありません。日本の首都として、日本の頭脳部・心臓部として、その持てる力を遺憾なく発揮し、役割を十全に果たす決意であります。ゆえにも、徹底して政策に磨きをかけ、首都公務員の奮闘を督励しながら、都民・国民の期待に全力で応えてまいります。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案4件、条例案28件など、合わせて66件の議案を提案しております。

 よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。