石原知事施政方針

平成21年9月7日更新

平成21年第三回都議会定例会知事所信表明

平成21年9月7日

 平成21年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 天皇陛下におかせられましては、本年御在位満二十年を迎えられました。首都東京の知事として、1300万都民とともに、心よりお祝いを申し上げます。このよろこびを都民とともに分かちあい、祝賀の意をひろく表するために、都は即位礼正殿の儀が執り行われた11月12日を中心に記念事業を行うことといたしました。また、来る12月25日に各界を代表する方々とともに、「天皇陛下御在位二十年東京都慶祝の集い」を挙行いたします。

 このたび名誉都民の候補者として、王貞治さんと加藤一冑さん、二名の方々を選定させていただきました。

 王貞治さんは、プロ野球選手として本塁打の世界記録を更新し、監督として第一回ワールド・ベースボール・クラシックで日本代表を優勝に導くとともに、少年野球を通じた諸外国との友好親善や青少年の健全育成にも尽力をしてこられました。

 加藤一冑さんは、鎧兜の製作等を行う甲冑師として約60年にわたり匠の業を究め、日本の伝統工芸の粋を今に伝えるとともに、後継者の育成や江戸節句人形の振興にも尽力してこられました。

 お二方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、今月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。

1 政治が今こそ果たすべき役割

 さて、我が国は、戦後一貫して、経済的にも軍事的にもアメリカに大きく依存してまいりましたが、そのアメリカも、もはや衰退しつつあり、真の意味で自立することを模索していかなければならないと思います。国内に目を転じても、人口減少という社会構造の大きな変化が始まっておりまして、国が抱える天文学的な借金など数々の難題も山積しております。

 しかし、我が国は、国の将来がかかった重要な時期であるにもかかわらず、国家の大計もないまま、内向きの議論に終始しておりました。このまま国家の根幹に関わる設計図を抜本的に見直さなければ、日本もまた衰退しか道はありません。先ずもって政治は、文明工学上最も大きな力を託された自らの役割を改めて認識しなければならないと思います。

 もとより日本は、計り知れない潜在力・可能性を持っております。急速な近代化をもたらし、欧米へのキャッチアップを遂げさせたのは、歴史の中で培った高い知識水準や勤勉な国民性、優れた感受性、独自の文化でありまして、ふるさとを愛し国を想う国民の強い意思でもありました。今日も、数多くの最先端的技術を有し、多くの人材を擁しております。

 こうした日本であればこそ、政治は今、巨きな視点に立って新しい目標を国民に明示しなければなりません。そして、その目標に向け正当冷静な議論によって「輿論」(public opinion)を形成しながら、この国の潜在力と可能性を戦略的に束ね、新しい活力を創り出さなければならないのであります。分権改革を断行し、地方の力でこの国を動かしていくことも不可欠であります。

 ゆえにも、日本の潜在力と可能性が集中・集積する首都東京から日本の活路を開くべく、今果たすべき政治の役割を十二分に踏まえて都政運営を進めてまいりたいと思います。東京と日本の真の実力を解き放つ具体的な施策を展開して、国を先導し、日本再浮上の道筋をも示してまいりたいと思います。

2 オリンピック・パラリンピック招致・決戦に向けた決意

 次に、都民・国民に対して夢と感動をもたらすとともに、この国の新しい目標である環境と調和した社会を実現する梃子ともなる、オリンピック・パラリンピック招致について申し上げます。

(オリンピックを通じて世界が地球環境問題への共通認識を持つ)

 先般公表されたIOC評価委員会の報告書では、「日本だから、できる。あたらしいオリンピック・パラリンピック」の開催理念や環境を重視したコンパクトな大会計画、東京の優れた開催能力などが高い評価を得たと思います。平和に寄与しスポーツを通じて友情と連帯を育み、若者たちに心の財産を贈るだけでなく、世界初のカーボンマイナスオリンピックを実現することが、十二分にアピールできたからであると思います。

 人類にとって最大の難問は、地球環境問題であります。この夏の我が国の集中豪雨や台湾における台風被害は、地球の未来を黙示録的に示していると思います。このままでは、気象の異変によって我々の生活は致命的に破壊されるかも知れないのに、しかし、人間は、死が不可避であるにもかかわらず、自分自身の死を信じないと同様に、地球環境問題を遠い彼方の問題と捉えがちであります。地球環境問題を世界中の指導者に最優先課題と認識させ、全人類に危機感と解決の道筋を共有させなければなりません。それには、人種と国境の壁を取り払い世界を一つに結ぶ平和の祭典オリンピック・パラリンピックに勝る機会はないのであります。

(地球環境問題について世界にメッセージを発信)

 東京は、2016年大会を「環境の世紀」のモニュメントとする決意で招致に名乗りをあげました。

 改めて申し上げるまでもなく、東京は、文明発展の悪しき副産物とも言うべき大気汚染を急速にかつ大幅に改善するなど、環境問題に果敢に挑み克服をしてまいりました。そして、今、日本はもとより世界が目指すべき環境と調和した社会、いわば21世紀の範となる社会を創り上げるために、都民・国民の力を凝縮しながら、大きく前に踏み出しております。

 ゴミの埋め立て地が、都民の植樹によって森に変わりつつあります。地域の人々の協力の輪で校庭を芝生化し、緑の回廊を形成する街路樹の整備にあたっても、都民や企業などからの拠金によるマイツリーに限っても1500本以上が寄せられております。また、都内の全小学校で本格的な環境教育を実施し、子供たちの家族も巻き込んだCO2削減を推進しております。さらには、世界初の都市型キャップアンドトレードを来年4月から開始するため、事業者の協力を得て準備を加速させております。

 こうした具体的な行動を踏まえて、国内外の招致活動では、地球環境問題についてのメッセージを発信し続けてまいりました。立候補ファイルしかり、IOC評価委員会の来日調査しかり、ローザンヌでのプレゼンテーションまたしかりであります。先月には、世界陸上ベルリン大会に赴き、そこに集まるIOC委員たちに東京の決意を言葉を尽くして説いてまいりました。

 来月2日、いよいよコペンハーゲンのIOC総会で開催都市が決まります。この地では12月に、ポスト京都議定書の枠組みを決める国際会議COP15が開催されます。これに先駆けて、都市としては世界で初めてICAP(国際炭素行動パートナーシップ)に加盟を果たした東京が、カーボンマイナスオリンピックの青写真と環境と調和した都市の姿を世界に訴えることは、地球環境問題に取り組む国際的な気運を高める大きな縁になるに違いありません。それぞれの国で指導的立場にあり社会的影響力もあるIOC委員は、先駆的行動に裏打ちされた東京のメッセージに共感し、賢明な判断を下してくれるものと期待しております。

 招致実現を確かなものにするべく、最後の最後まで、全力で招致活動を戦い抜いてまいります。都議会の皆様、都民・国民の皆様の力を、是非とも決戦に結集していただきますよう、よろしくお願いいたします。

 新しい政府にも万全の態勢でIOC総会に臨むように求めてまいります。

3 都民の英知と力が21世紀の都市モデルを造形する

 東京は、環境問題に止まらず、数多くの課題を克服しながら、今日、都市として世界に類を見ない高度な集中・集積を遂げてまいりました。

 東京には、1300万の人々が住み、300万を超す人々が、毎日、学び・働くために近隣から集まり、また、国家にも匹敵する経済規模を構えております。これだけの巨大都市が清潔で機能的に維持され、諸外国の大都市と比較してもはるかに良好な治安を保ち、多彩な食文化をはじめとする魅力に溢れる姿は世界を惹きつけております。イギリスの有名な都市専門誌「モノクル」が調査した世界の住みやすい都市のランキングでも、東京は2年連続で3位となりました。東京より上位に選ばれた都市は、コペンハーゲンやミュンヘン、これは人口や経済規模においてはるかに小さく、「モノクル」の編集長の言では、東京は実質的に世界一位である、とのことでありました。

 こうした東京をより高い次元で成熟させ21世紀の都市モデルへと飛躍させるために、都は、福祉や医療、産業、都市づくりなど様々な分野で「10年後の東京」計画を羅針盤としながら歩みを進めております。目指す未来に向け、都民・国民の英知と力を結集して計画を着実に実現し、この国が進むべき進路に火を灯してまいります。

(少子高齢時代にふさわしい新しい仕組みづくり)

 先ず、この国の未来を大きく左右する少子高齢化に対する取組みについて申し上げます。

 少子化は、個人の価値観の問題がその根底にあるものの、国家という単位で見た場合に、経済のパイを縮小させ、年金や医療、インフラの維持を困難にし、伝統・文化までをも失わさせかねません。

 これまでも、都も国も育児と仕事の両立を支援するなど様々な対策を講じてはまいりました。しかし、子育てへの不安を解消する決定打とまではなっておらず、昨今の雇用環境の悪化なども加わって、都民・国民は、子供を持つことに益々踏み切れなくなっております。

 このまま子育て世代で大きな割合を占める団塊ジュニアの出生数が伸びなければ、少子化はさらに加速いたします。今が少子化の傾向を反転させるラストチャンスと言って過言ではありません。社会総がかりで、子供を産み育てようとする家族を支える態勢を組み、質・量共に充実したサービスを選択可能にして不安を一掃しなければならないと思います。

 少子化は国力に直結するがゆえに、対策は、当然、国の責務であります。一方で、「現場」ならではの発想を活かして東京から国の縦割りの壁を破り、新たなモデルビルディングを行ってこそ、より効果的な少子化対策が実現いたします。これまで力を注いできた保育や医療、教育の拡充はもとより、雇用の安定や住宅の確保など重層的な、複合的な施策を構築し、3か年にわたり集中的に取り組んでまいります。

 少子化と並行して世界でも類を見ない速度で高齢化が進んでおりまして、単身や夫婦のみの高齢者世帯が急増しております。核家族化が進み、地域の繋がりも希薄化する中でも、都民が、安全と安心に満たされて明るい第二の人生を送ることを可能にしなければならないと思います。

 そのためにも、国の縦割りに縛られてきた住宅政策と福祉政策を「現場」で融合させてまいりたいと思います。自宅で暮らす都民が、必要とする介護などの支援をより幅広く受けることができるように、従来の「在宅」と「施設」の両者の長所をあわせ持った「ケア付きすまい」の新しいモデルを東京から年内に提起いたします。

(安全と安心の確保)

 安全と安心が十二分に確保されてこそ、都民・国民は、目指す未来に希望を持つことができるはずであります。そのためにも、現下の緊急課題に迅速に対処してまいります。

〈新型インフルエンザ対策〉

 新型インフルエンザは、それに対する免疫をほとんどの方が持っていないため、通常のインフルエンザが収まる夏場にも感染が広がっております。今後、感染が爆発的に拡大し、多くの重症患者が出ることも懸念されることから、事態の推移を的確に把握しながら、十分な医療体制を整えなければなりません。

 東京都医師会の協力を得て全ての一般医療機関で外来診療を行い、早期の診断・治療を可能にするとともに、感染により重篤な状態となった妊婦や透析患者、急増が懸念される小児の患者などの入院受入体制を強化いたします。同時に、医療機関を通じて発生動向などを監視し、健康安全研究センターの検査体制も一層強化して、懸念されるウイルスの変異などを厳重に警戒いたします。

 感染拡大の起点になりやすい学校においては、児童・生徒の健康状態を注意深く観察し、早期に感染を把握して適切に学級閉鎖等も行います。さらに、抗インフルエンザウイルス薬も、既に備蓄している400万人分に加え新たに200万人分積み増すなど、東京の総力を挙げて対処してまいります。

 一方で、感染を防ぐには、一人ひとりが自らできる予防策が何にも増して重要であります。都民の皆様には、手洗い・咳エチケットとともに、体調に異変を感じた場合には、マスクを着用するなど感染予防に留意した上で速やかに身近の医療機関での受診をお願いいたします。

〈緊急輸送道路の沿道建築物耐震化〉

 さて、先月の静岡沖を震源とする地震では東名高速道路に崩落が起こり、大きな影響が生じました。東京においても、必ず来る大地震に備えるために、発災時に迅速な避難や消火活動、緊急物資の輸送などを担い、復興時の動脈となる緊急輸送道路の確保は最優先課題であります。

 そこで今年度から沿道建築物の耐震診断の補助割合を引き上げるとともに、建築の専門家による総合相談窓口を開設いたしました。緊急輸送道路沿道を含む建築物の耐震化全般について、既に600件の相談に応じております。

 さらには、第一京浜など優先度のとりわけ高い路線の建物所有者に対し、耐震化を直接働きかけるローラー作戦を進めてまいります。地元自治体と連携して、旧耐震基準で造られた、倒壊した場合には道路を塞ぐおそれのある建物を個別に訪問することで、沿道建築物耐震化への取組みを加速してまいりたいと思います。

(経済危機を突破し、新たな成長へ)

 我々が目指す未来を、より活力に溢れたものにするためには、現下の経済危機を乗り切るとともに、その先をも見据えた経済・雇用面での方策を講じなければなりません。

〈中小零細企業支援〉

 在庫調整の一巡などにより、景気に持ち直しの動きが見られるものの、日本の力の源泉である小零細企業は、資金繰りの悪化や受注の減少など、依然として厳しい経営状況に置かれております。

 高い技術力や優れたビジネスプランを持ちながらも資金繰りに悩む小零細企業を支援するため、地域の金融機関の目利き力を最大限に活用した都独自の新しい融資制度を、今月を目途に立ち上げてまいります。

 こうした資金面と並行し、経営力の向上も図ってまいります。都と商工会議所・商工会などが連携して企業を訪問し経営診断を行うとともに、その結果を活用しながら企業間の商談を仲介するなどして、小零細企業の優秀な技術・サービスに新たな販路を開拓していきたいと思います。

 今後の高い成長が期待される分野に対する新規参入なども強く後押ししてまいります。本年11月に東京ビッグサイトで開催する「産業交流展2009」では、新エネルギーやロボットに関する優れた技術・製品を持つ企業を全国から集めるほか、「東京国際航空宇宙産業展」も同時に開催をいたします。また、多摩地域では、産・学・公に金融機関も加えたネットワークを構築し、半導体や計測機器の分野での新事業創出を支援してまいります。

〈雇用・就業支援〉

 失業率や有効求人倍率は依然厳しい状況が続いております。昨年来、切れ目無く雇用の場の創出に努めており、これを引き続き進めながら、雇用のミスマッチ解消にも取り組まなければなりません。

 このため、しごとセンターにおいて、就職支援アドバイザーを増員して相談体制を強化するなど、雇用・就業支援を進めてまいります。

 また、多くの若者が仕事を通じて技能と経験を身に付けることができずにおり、本人にとって不幸なばかりか、将来、深刻な人材不足として社会全体に跳ね返ってまいります。就職氷河期世代に対して正社員への採用と定着を粘り強く支援するほか、就職先が決まっていない学生向けの合同面接会を11月にも実施いたします。さらに、優れた技術を継承しつつ、雇用の場を確保するため、企業の現場で企業ニーズに即した訓練を行ってまいります。

(長期的視点に立ったインフラ整備)

 首都東京における都市インフラの整備は、都民・国民の暮らしを一段と便利で快適にするだけでなく、国際競争力の強化にも繋がります。長期的な視点に立った国を挙げた取組みが必要不可欠であります。

 これまで都は、国に対して日本を牽引する首都東京への重点投資を求めてまいりました。一昨年、国が法人事業税の税収の一部を東京から奪った際にも、これを逆手にとって国との協議の場を設置させました。この協議を通じて、羽田空港のさらなる国際化や外環道の事業着手など、首都東京の真の実力と豊かな可能性を解き放つ施策を国に認めさせました。また、都は、従来の自治体の枠組みを超えて、羽田空港の再拡張にあたって1千億円を超える無利子貸付を国に行うとともに、中央環状品川線においては、自らも事業者となって整備を進めております。

 こうした国をも突き動かす不断の努力によって、東京の弱点克服と国家的経済ロスの解消に向け、一歩一歩着実に前進をしております。東京から全国に伸びる高速道路を繋ぐハブの役割を担う環状道路では、外環道において、いよいよ大泉ジャンクション部などで事業に着手し、また、中央環状新宿線の新宿・渋谷間は、来年3月にも開通いたします。多摩においても、その骨格を成す南北方向の道路や連続立体交差事業を重点的に実施しておりまして、12月にはJR中央線三鷹・国分寺間の高架化を完了して13か所の踏切を全て除却いたします。

 今後も、粘り強く都市インフラを整備し、次世代に遺してまいります。新政権にも、首都東京の都市インフラが担う国家的役割を十分に認識し、必要な財源を安定的に確保して確実に配分することを強く求めてまいります。

(都立高校改革)

 いつの時代も、国家の活力の源は意欲に溢れた人材、特に若い力であります。しかし、戦後の我が国の教育制度は、結果の平等を重視し、大きく伸びるはずの才能の芽を潰してきました。

 一人ひとりの可能性を十全に発揮させる教育のさきがけとして、進学指導重点校や基礎的学力の習得と体験学習に力を入れたエンカレッジスクールなど、多様な要望に応える都立高校を整備してまいりました。学区制を廃止し、学校長のリーダーシップを高め、各学校が個性と特色を打ち出すことで魅力を競わせてきました。

 今年7月には、世界の高校生が競う国際物理学研究論文コンテストにおいて都立高校生4名が入選する快挙を成し遂げ、進学指導重点校では、難関大学への進学実績が大幅に向上しております。スポーツの分野でも、例えば野球でも、本年夏の東東京大会で決勝に駒を進め、西東京大会ではベスト4に2校が食い込んでおります。ものづくり教育の分野でも、近年、全国規模の技術コンテストで科学技術高校生が活躍しております。

 これらの象徴的な事例をはじめとして、都立高校改革は着々と成果を上げつつあると思います。全日制高校の中退率がこの10年間で3分の2に低下したこともまた、その証左であると思います。

 来春には、八王子などに設置する中高一貫教育校4校をはじめ、音楽科、美術科に加えて舞台表現科を新たに備える芸術高校など計7校を開設いたします。これにより、都立高校の改革推進計画を概ね達成いたします。今後もカリキュラムの拡充や教員の資質向上を進め、引き続き一人ひとりを鍛えて伸ばす教育を充実してまいります。

4 一秒の先に未来がある

 科学者たちの分析によれば、今という一瞬、この一秒の間にも、北極の氷はテニスコート9面・2500平方メートルずつ溶けていき、アマゾンからは駐車スペース66台分・984平方メートルの森が失われております。一秒、一秒の堆積が子供や孫たちの時代を決定していることを、我々は片時も忘れてはなりません。政治は、未来への想像力を働かせ、歴史認識と文明観に立脚して、眼前の課題に決断を下さなければならないのであります。

 近年、国は、この国の将来に関わる重大な、重要な決断を先送りしてまいりました。それに対して都政は、都議会の皆様とともに、「東京が倒れれば日本が倒れる」との危機感を踏まえて、日本の頭脳部・心臓部である首都東京という「現場」に根ざした真剣な議論を尽くしてまいりました。そして、東京を再生し、この国を変える先進的施策を積み重ねてきたのであります。こうした都政の蓄積こそ、政治本来のあり様を示していると思います。

 今後も、都議会の皆様とは、これまでの蓄積を踏まえた建設的で質の高い議論を交わして、ひとり東京のためだけではなく、この国を牽引し未来を切り拓く施策を生み出してまいりたいと思います。

 都議会の皆様の一層のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案4件、契約案6件など、合わせて16件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。