石原知事施政方針

平成22年9月21日更新

平成22年第三回都議会定例会知事所信表明

平成22年9月21日

 平成22年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 このたび名誉都民の候補者として、安達雅一さん、川崎富作さん、中村芝翫さんの三名の方々を選定させていただきました。
 安達雅一さんは、東京手描友禅の染色家として50年余りにわたって活躍され、伝統を尊重しつつも絵画的な表現法を取り入れた独特の技法を完成し、伝統工芸全体の振興・発展にも尽力してこられました。
 川崎富作さんは、小児科医として、長年、診療に携わる中で、乳幼児に多く発生する新しい疾患である「川崎病」を発見し、診断・治療法の確立に献身されるなど、医学の発展に大きく貢献してこられました。
 中村芝翫さんは、5歳での初舞台以来80年近く研鑽を積んで歌舞伎界を代表する女方として芸を極められるとともに、後進の指導にあたるなど、日本の伝統芸能の継承と発展に尽力してこられました。
 お三方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。

1 価値の基軸を取り戻す

 さて、人間は他者と関わり連帯すること無しには生きていくことができません。人と人との繋がりは血縁で結ばれた家族に始まり、会社や地域などを通じて広がり、堆積重層して社会全体のエネルギーを生みながら国家を成立させ、発展させてきたのであります。
 しかし、この夏、ミイラ化した親を30年以上も自宅に放置したまま、子供が年金を不正に受け取っていた事件を発端に、信じ難い事件が相次いで明るみになりました。連帯の最小単位である家族の崩壊ぶりを示す事象は、歴史上も希有な平和と物質的繁栄を謳歌する中で、金銭欲が第一となった今日の日本を象徴しております。儲かりさえすれば良しとするエゴから企業が罪を犯し、モンスターペアレントなる身勝手な権利主張が横行するのも、社会・国家への責任と愛着が薄れているからに他なりません。
 日本が根底から崩れつつあるにもかかわらず、肝心の国政に携わる政治家の多くは、大局を把握するに不可欠な歴史観が痩せていて目先のことしか捉えられずにおります。支持率調査の結果を国家運営の羅針盤の如く崇めて国民の顔色を窺う甘い約束を重ねており、行政への過剰な期待を掻き立て、自助・共助・公助のバランスを蔑ろにしております。過日の我が国の最高指導者選びでも、国家の未来図は一向に語られず、その不毛さは国民を甚だ白けさせました。
 国民の間に刹那的な空気が広がり、国政がそれに拍車をかけては、深刻な財政危機などの山積する課題を当然乗り越えることはできません。熾烈を極める国家同士の生存競争にも敗れ、大切なものと引き替えに手に入れた戦後の繁栄さえも無となりかねないのであります。

 根深い危機から脱するためには、戦後の我が国が何を失い、何を狂わせてきたのかを冷静に見つめる必要があります。かつて日本では拝金主義とは対極にある、節度、自己犠牲、責任感などが、ごく当たり前のこととされておりました。こうした立場や時代を超えて守るべき価値の基軸を構えて、確かに連帯し支え合う国へと日本を立て直していかなければなりません。国民が本来持っているエネルギーを束ねて収斂させてこそ国力は回復し、自らの明確な意思を持った国家としての存在感も国際社会で確立できるのであります。
 そのためにも、先ずもって政治は自らの責任を問い直さなければなりません。その上で、長い時間軸で複合的に発想し、国民を奮起させるビジョンを示して成熟した輿論(public opinion)を形成していくことが求められます。不人気な事柄からも逃げずに、歴史の判断に自らを委ねる孤独にも耐え、社会・国家を踏まえた大きな志を貫かなければなりません。

2 東京から日本を再生していくために

 ゆえにも、東京から日本の活路を拓くべく、政治が果たすべき責任を踏まえた都政運営を行ってまいりたいと思います。歴史の蓋然、必然に適った目標を掲げ、首都東京ならではの地に足のついた率先行動をさらに加速させることで、日本が進むべき道を示し続けてまいります。

(アジア大都市ネットワーク21・10年の足跡と次なる一歩)

 戦後の日本は、よろずアメリカに依存してきました。しかし、いわゆる文明の衝突を内包し世界が複雑さを増す21世紀では、他力本願は全く通用せず、文明と歴史の大きな流れを見極めて、戦略的に進路を選びとらなければなりません。

〈アジア大都市ネットワーク21・10年の足跡〉

 21世紀に入り、全人類の半数が都市に住むまでになっております。また、アジアは豊かな潜在力をいよいよ開花させ、世界の新しい極となりつつあります。こうした「都市の世紀」、「アジアの時代」にあって、アジア各国の頭脳部・心臓部である大都市が連携・協力しながらその直面する課題を解決することは、アジアの発展とともに、世界の安定をも導くのであります。
 それゆえ、10年前、「アジア大都市ネットワーク21」の創設を主唱しました。従来の儀礼的な都市外交と一線を画して、実務家同士が課題の解決に向けた共同事業に取り組んでおり、東京も、我が国にとって最も重要な地域・アジアの発展のために力を尽くしてまいりました。
 危機管理面では、国境を越えた恒常的な協力体制の構築を進めております。毎年、各都市の担当者がアジア危機管理会議に一堂で会し、テロや災害に関する情報や対処のノウハウを交換するほか、東京での総合防災訓練にも台北・ソウルなどから消防チームが参加しています。また、鳥インフルエンザなどの感染症に備えるために、専門家が症例や治療法などを共有するネットワークも整備いたしました。
 アジアの存在感・交流の象徴とすべく中小型ジェット旅客機の開発も促進しております。都の取組みが実を結び、YS−11以来の国産旅客機開発にあたっては、アジアで大きな需要が見込まれる座席数の機体に変更されました。設計・製造に台湾・インドの企業が参加しております。
 アジアの発展を担う人材の育成でも、都は延べ250人を超える行政職員などを受け入れ、彼等は、帰国後、各国の第一線で活躍しております。

〈アジアの調和のとれた発展のために〉

 こうした取組みを重ねた10年間、アジアはめざましく変貌を遂げました。しかし、著しい経済成長の反面で環境問題が深刻化するなど、アジアの前途には光と陰が交錯しております。大都市は環境・経済・文化など幅広い分野でこれまで以上に重層的・複合的に結びついて協力関係を築くことで、アジアの調和のとれた発展を目指していかなければなりません。
 本年11月に東京で開催する第9回総会では、連携をさらに深化させるべく、大都市が軸となりつつ企業や住民など各界各層が一段と強固に結びつく次なる一歩を踏み出してまいります。
 総会では、各都市が悩む水・ゴミ・大気の問題について東京の経験・ノウハウも伝えながら、対策を議論するほか、東京の官民を挙げた低炭素型都市づくりの戦略を披瀝いたします。
 また、中小企業のための日本最大級の見本市である「産業交流展2010」を総会と連動して開催し、各都市の企業と東京の中小企業との交流を図り、新事業の創出や販路開拓を支援いたします。10月・11月を「東京・アジア月間」とし、都内各地で文化イベントなどを開催して、都民・国民のアジアへの理解を深めてまいります。

 都独自でも、アジアとの関係をより緊密化してまいります。
 先般、調査団をマレーシアに派遣し、現地の水事情を把握して、ビジネスとしての事業化の可能性やリスクを精査するための有益な材料を数多く収集できました。今後、上下水道の国際展開に向けて、インドなど4か国でも調査を行い、東京への熱い期待に応える事業戦略を立案いたします。
 さらに、アジア人材育成基金で整えた国よりも手厚い支援策を活用し、首都大学東京に優秀な留学生を受け入れ、航空機用新素材の開発などアジアの発展に資する高度の研究を支援してまいります。

(日本が世界に伍していくための都市機能拡充・魅力向上)

 東京と日本がアジアや世界との関係を深めつつ発展を遂げるには、長期的な視点で社会資本を充実させ、有効に活用しなければなりません。

〈羽田空港の新滑走路・国際線ターミナル開業を機に〉

 人間の歴史において、文明を刺激し、発展・成熟させてきたのは人・物・情報の交流であり、その玄関口となる羽田空港では、いよいよ来月、新しい滑走路と国際線ターミナルが開業いたします。
 この機を捉えて外国人旅行者の誘致を一段と強化するならば、日本経済を大いに活性化すると思います。先日も、世界8都市から現地の旅行社39社を招聘し、多彩な食文化や「おもてなしの心」など東京の魅力を実際に味わってもらいながら都内観光事業者との商談会を実施いたしました。
 今後もシティセールスによる情報発信のほか、江戸から続く歴史と文化の堆積を実感できるよう浜離宮恩賜庭園、小石川後楽園を修復して大名庭園を現代に蘇らせるなど、様々な施策を展開してまいります。

〈道路ネットワークの整備促進〉

 羽田空港が真の実力を発揮するには、今後、昼間の国際線を既定路線に沿ってさらに増加させるとともに、空港へのアクセスをより向上させる必要があります。平成23年度に東京港臨海道路を、平成25年度には中央環状品川線を開通させて車の流れを大幅に改善するなど道路ネットワークを充実させてまいります。
 他方で、外環道の整備は、羽田空港や、8月に「国際コンテナ戦略港湾」の選定を受けた京浜港などとともに、日本の陸・海・空のネットワーク形成に不可欠でありながら、国の財源確保の枠組みは依然として不透明であります。完成が遅れれば遅れるほど都民・国民の利益が損なわれることを肝に銘じ、文明工学的な視点に立って決断してこそ真の政治であります。国は必要な財源を揺るぎなく確保するよう強く求めます。

〈地下鉄のあり様を見直し、都民・国民に還元〉

 東京の地下鉄は世界に類を見ない稠密さと正確さで、首都の旺盛な活動を支えております。高度成長期に拡充を急いだ歴史的経緯もあり、東京メトロと都営交通とが二元的に建設・運営してまいりましたが、ネットワークが成熟段階に入った今、そのあり様を見直す必要があります。
 国は、状況の変化にもかかわらず、法で定められた東京メトロの持ち株の売却を急いでおりますが、こうした教条的姿勢は決して是とはできません。国に設置させた都との協議の場であります「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」を通じ、利用者の利便向上はもとより、世界に誇る地下鉄ネットワークにふさわしい姿を目指してまいります。

(安全と安心の確保)

 日本を立て直し次なる発展を目指すためには、社会の連帯を結び直す縁となる取組みを進め、都民・国民の安全と安心を確保していくことが必要であります。

〈景気低迷への対応〉

 小惑星探査機「はやぶさ」の壮挙は日本の技術力を改めて世界に示しました。その航海を支えたバッテリーにも東京の町工場の技術が大いに活かされたように、東京には独自の技術を究め、社会の発展に役立たんとする志に燃えた企業が多数存在しております。現在、円高によって景気が下押しされ、悪化することが懸念されておりますが、資金繰り対策や下請対策など、都内企業への支援に引き続き万全を期してまいります。
 また、依然厳しい雇用情勢に対応するため、雇用創出や職業訓練、離職者への支援策など切れ目無く講じてまいります。
 なかでも、大学生の就職率が悪化するなど若年層に影響が及んでおりまして、彼等の社会への門戸を閉ざしてはなりません。都内では人材確保に強い意欲を持つ中小企業が少なくないことから、企業と学生のミスマッチを解消すべく、東京しごとセンターできめ細かく支援をいたします。合同就職面接会も規模を拡大して「産業交流展2010」と同時に開催するほか、都立高校でも進路指導を徹底し、就職が決まらないまま卒業した生徒からの相談等にも積極的に応じてまいります。

〈高齢社会に安心をもたらし、次世代を健やかに育てる〉

 安全と安心を確保する上で、少子高齢時代にふさわしい支え合いの仕組みを整えていかなければなりません。
 介護保険制度は発足から10年が経過し、制度自体は定着しましたが、団塊の世代の高齢化に伴う介護ニーズの増大を見据えて、地方の裁量を拡大し、地域に即したサービスをより効率的に提供していく必要があります。また、高い地価や物価といった東京の実情を介護報酬に正確に反映させ、慢性的に厳しい現場の経営を改善しなければなりません。
 この秋にも制度改正に向けた議論が本格化することから、国に緊急提言を行います。介護保険制度が都民の安心の拠り所として現実に即し安定したものとなるよう、今後も国に求めてまいります。
 また、高齢者が地域で安心して暮らすことができるように、絆の再生や見守りの充実にあたってきた区市町村とも連携して、必要な手立てを講じてまいります。

 社会全体で子育てを支える上で重要な保育サービスの充実も進めてまいります。この秋には、従来の時間を延長して子供を預かる「都型学童クラブ」への補助を開始いたします。民の力を活用して子供にとって安全で、親にとっても安心な放課後の居場所を着実に確保してまいります。
 こうした次世代のための施策に力を注ぐ中、先月、明るいニュースが相次ぎました。東京の若者たちが、世界で初めてシンガポールで開催されたユース・オリンピックで大活躍し、アメリカで行われたリトルリーグ世界選手権でも世界一に輝きました。彼等は、この得難い経験と誇りを胸に、日本の将来を逞しく担ってくれるに違いありません。
 都は、スポーツの力で人を育て、親子の絆を太くし、地域への愛着も呼び覚ますために取り組んでおります。7月には、平成25年に多摩・島しょ地域を中心に実施する東京国体と全国障害者スポーツ大会を「スポーツ祭東京2013」として開催することが正式決定いたしました。スポーツで社会を元気にする起爆剤ともすべく準備を加速いたします。

 次代を担う青少年を健全に成長させることは、私たち大人の、ひいては社会の責任であります。
 にもかかわらず、子供たちは、インターネット上に氾濫する有害な情報や悪質な性行為を描いた漫画等を容易に手にすることができる現況にあり、これを放置すべきでないことは誰の目にも明らかであります。
 現在、各方面とも議論を重ねており、早期に、青少年健全育成条例の改正を議会に提案したいと考えております。

〈記録的な猛暑〉

 今年の夏は記録的な猛暑が続きました。気象の異変は全国各地での豪雨という形でも現れております。都においても引き続き、河川の拡幅をはじめ、古川と白子川の地下調節池などを整備してまいります。また、浸水の危険性の高い20地区で重点的に下水道の幹線やポンプ所などの整備を進めるとともに、雨水浸透ますの設置を促進するなど、治水対策を総合的に展開いたします。
 猛暑や豪雨は、ロシアの大干ばつやパキスタンの大洪水のように世界各地でも発生しておりまして、地球の未来を想わずにはいられません。人間は死が不可避なのにもかかわらず自分自身の死を信じないのと同様に、地球環境問題は遠いものと考えがちですが、自然からの警鐘を正面から受け止め皆で手を携え、子供や孫たちへの責任を果たさなければなりません。
 東京では、都民の拠金による海の森づくりや地域に支えられた校庭の芝生化、企業による省エネ設備への投資など多様な主体の取組みを引き出し、都自らも4年間で東京ドーム26個分の都立公園を新たに整備しました。今後も、既に導入したキャップアンドトレード制度を広域的に展開するために埼玉県との連携をさらに深めるなど、低炭素型社会への転換で日本をリードしてまいります。

〈火災予防条例の改正〉

 テナントの入れ替えが激しい小規模雑居ビルにおいては、ビル関係者の防火意識が希薄なこともありまして、法令違反が繰り返されております。都民が予期せぬ災害に巻き込まれるおそれがあることから、違反の是正はもちろんのこと、都民自らが建物の安全に関する情報を入手し、利用を判断できる取組みが必要であります。
 雑居ビルが数多く立つ東京の実情を踏まえ、立入検査で把握した違反を公表する制度を、全国に先駆けて創設してまいります。

(築地市場について)

 次に、築地市場について申し上げます。
 築地市場は、既に老朽化が限界に達しておりまして、震災に遭えば、機能麻痺により都民生活に甚大な影響を与えることは必至であります。我々に与えられた時間は多くありません。都議会において、現在地再整備の可能性について検討が進められておりますが、築地市場の現況を考えれば、一刻も早く検討結果が得られるよう、お願いいたします。

3 東京から日本を変える不断の挑戦を一心に進める

 先般、国は、今年6月末時点での借金が900兆円の大台を突破したことを発表しました。このまま借金が増え続ければ日本が早晩立ち行かなくなるのは不可避でありまして、国政は、消費税から決して逃れることなく、国家財政の立て直しの道筋を示すべきであります。
 また、国が成長戦略で掲げる医療・介護・観光の分野を実際に担うのは地方であり、一丁目一番地として公約してきた地方への権限と財源の移譲を前に進め、来年度の国家予算では地方の力を削ぐようなツケ回しと完全に訣別すべきであります。法人事業税の暫定措置も即刻廃止を求めます。

(公会計制度改革は官を変える切り札)

 先の参院選で財政再建が議論されましたが、都議会の皆様と塗炭の苦しみを嘗め取り組んだ内容に比べ、国政は周回遅れの感が否めません。
 都では、知事部局と公営企業を合わせて、この10年余の間に2万人、平成元年からみれば約6割にまで職員を削減し、民間とかけ離れた意識やスピード感の欠如を叱咤する一方で、不正軽油撲滅など、これは体を張っての果敢な挑戦を職員が行って、最前線の職員のスピリットを称えました。政権も政治主導を掲げるのならば、直ちに二重行政や出先機関に大鉈を振るい、前例踏襲で事なかれの官の風土に鋭くメスを入れるべきであります。
 公務員にコスト意識やリスク感覚が欠如するのは、個人意識の問題だけではなく、行政システム自体にも根本的な原因があります。これを克服すべく、都では会計制度を改革し、ストック情報・コスト情報を詳らかにして、事業別の財務諸表を駆使した事業分析を可能にしました。包括外部監査も導入して、専門家が毎年、半年にわたって現場の奥深くまで入り込み問題点を指摘し、指摘後も改善状況をチェックしております。
 木も森も見ながら政策を検証して無駄を省き、しっかりと磨きもかける仕組みを行政に作り込んでこそ、太政官制度以来続く時代遅れの官の体質を根本的に変えることができます。大阪府や東京の町田市など既に意欲的な自治体が都と同様の会計制度改革に動いております。11月には、「公会計改革白書(仮称)」を公表し、シンポジウムを開催して気運をさらに高め、改革を日本全体へ一段と拡げてまいりたいと思います。

(監理団体のさらなる改革)

 都政の一翼を担う監理団体の改革も、現状に安住することなく加速いたします。
 これまでも、民間経営者を登用し、包括外部監査を導入したほか、国は一向に手をつけようとしない役員退職金も全廃いたしました。経営を効率化して団体数を半減し、都から団体に委ねた事業は増加しているにもかかわらず都の財政支出は5百億円以上縮減いたしました。一連の取組みを経て、団体は自らの役割をそれぞれに果たしております。例えば、東京しごと財団は厳しい雇用情勢の中にあって求職者を着実に就職に結びつけております。
 これからも都が行政としての責任を果たしつつ、都民サービスの向上を図っていくためには、監理団体を政策推進のパートナーとして一段と機能させていかなければなりません。また、監理団体には指定管理者制度の運用や公益法人制度改革の実施により、一層の創意工夫や公益性の向上が求められております。
 そこで、改めて各団体を徹底検証し、それぞれの存在意義と今後の活用方針を明らかにするほか、透明性のさらなる向上のために監理団体の契約情報の公表範囲を拡大するなど、都民への説明責任を一層高めてまいります。
 また、都庁版人材バンクも整備し、都幹部職員の再就職情報を監理団体を含めて一元管理し、公表いたします。
 今後も、手綱を緩めることなく監理団体改革に取り組んでまいります。

(都民・国民のために不断の挑戦を一心に進める)

 もとより、行財政改革は重要でありますが、それ自体が目的ではありません。あくまでも、国家の大計や都市の将来像を実現するために、政治と行政が自らの手足を強化する過程に過ぎません。再建された財政基盤を賢く使いこなして都民・国民のために新たな価値を生んでこそ、改革は真の目的を達成するのです。
 国政のはるか先を行く改革の積み重ねを梃子に、東京から日本を変える不断の挑戦を一心に進めてまいります。東京と日本への責任と愛着を一層強く持って、都政運営に全力を尽くしてまいります。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案4件、契約案8件など、合わせて22件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。