石原知事施政方針

平成23年9月21日更新

平成23年第三回都議会定例会知事所信表明

  平成23年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 去る7月1日、樺山たかし議員が逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

 このたび名誉都民の候補者として、小野喬さん、水木しげるさんの二名の方々を選定させていただきました。
  小野喬さんは、体操選手としてオリンピックで5個の金メダルを含む、日本人最多の13個のメダルを獲得し、体操選手の育成や高齢者などを対象とした地域におけるスポーツの普及にも尽力してこられました。
  水木しげるさんは、戦争で左腕を失いながらも漫画家として50年以上にもわたり活躍し、独特の感性で「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめ誰もが魅了される作品を生み出し続け、文化の興隆に尽力してこられました。
  お二方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 先般、自然の宝庫である小笠原諸島が世界遺産に登録されました。都が国に先駆けて進めてきた外来種対策や都独自のエコツーリズム、都レンジャーの配置など、長年の取組みが評価された結果であると思います。
  世界遺産登録とは、小笠原を永遠に保全することを世界に宣言したに他なりません。この美しい島を次世代に確実に引き継いでまいります。

1 国の新政権に対する建言

 さて、日本は、戦後、長きにわたって、僥倖とも言うべき平和を享受してきました。国家の存亡に関わる緊張に遭遇することもない中で他人任せの平和に溺れ、政治は大局観や戦略を持たないまま、場当たり、その場しのぎに陥っております。国民も心の「たが」が緩み、物欲・金銭欲が第一となって、政治も保身ゆえにそれに媚びるばかりであります。我が国は、「平和の毒」とも呼ぶべきものに蝕まれていると思います。
  今日、国際情勢は厳しさを増し、戦後の唯一の勲章とも言うべき経済大国の地位は新興国から猛追を受け脅かされております。国益を顧みない政治は足元を見透かされ、近隣の国々が、我が国の領土を虎視眈々と狙い、手を伸ばしております。その上、東日本大震災により痛烈な打撃を受け、歴史的水準にある円高も追い打ちをかけております。
  まさに、日本は、沈没寸前であります。残された猶予はほとんどありません。ならばこそ、復興への道程を「平和の毒」から脱却して、日本を根底から再生していく契機ともしなければならないわけであります。
  そのためにも、政治は、毀誉褒貶に囚われて現実から目を背けるようなことがあってはなりません。国家として確かな座標軸を構えて、国民の力を結集し、為すべきことを果断に実行すべきであります。
  そうした強い危機感に立って、首都の知事として、今、緊急に為すべきことを、先日、新政権に強く建言いたしました。

(現実的で複合的なエネルギー戦略)

  先ずもって必要なことは、政治が正当な歴史観、文明認識に立った大計を打ち立て、実行することであります。
  原発事故とそれがもたらした電力不足をきっかけに、我が国のエネルギー供給のあり方が問われております。前首相は、唐突に「脱原発」を叫びましたが、これは国家の安危に関わる問題を我がこととして考えていない戦後の悪しき習い性の典型であります。
  歴史を紐解くまでもなく、エネルギーは国家発展の要であり、その確保を巡っては、時としては国同士が争う原因ともなる国益そのものであります。エネルギーの議論をいたずらに弄ぶならば、その先には国家の衰退しかありません。
  今、政治に求められていることは、高度に発達した社会を支える我が国の経済を発展させるため、いかなるエネルギーを、どれだけ確保するかを複合的に冷静に見極めることであります。同時に、地球温暖化への影響、資源の多くを海外に依存せざるを得ない日本の実情も踏まえ、戦略を組み立て、責任ある決断を下していかなければなりません。
  新政権は、歴史と文明の巨きな流れを見極め、あらゆるエネルギーの最適な組み合わせを追究する現実的かつ複合的なエネルギー戦略を構築すべきであります。

(法人事業税の暫定措置の即時撤廃)

 現在、首都のバックアップ論がかまびすしく叫ばれておりますが、これもまた、日本を駄目にしてきた議論の繰り返しと言わざるを得ません。
  我が国は、長年にわたり、政治家たちが我田引水の如くに費用対効果を無視して道路や橋を作り続けてきました。近年、これへの批判として、「コンクリートから人へ」なる必要な公共事業までも否定する極端な動きも生まれましたが、どちらも文明工学的な視点を欠いていることに変わりはありません。こうした国の態度が、羽田空港の国際化や三環状道路の整備を遅らせ、国家をも支える政策を実行するための財源を東京から奪い、日本全体に多大な損失を与えてきたのです。
  今後、震災リスクの分散を口実に無駄な箱ものづくりが行われれば、実質的に破綻した国家財政をさらに傷つけるばかりでなく、日本の盛衰を左右する存在である首都東京の機能強化も蔑ろにされかねません。
  もとより、首都のバックアップを否定はしません。しかし、既にある首都圏の体制を活かしながら、東京に財源を投下し、最大の弱点の一つである木造住宅密集地域を徹底して耐震化・不燃化するなど、高度に防災力を備えた都市へ進化させることが先決であります。
  これを進めるためにも、国は、約束どおり法人事業税の暫定措置を即時撤廃すべきであります。ことの成り行きによっては、訴訟も辞さない覚悟で、国に迫ってまいります。

(放射性物質への三位一体対策)

 官僚という行政を運用する手段に支配されてきた政治にも、その反動として生まれた政治主導なる、官僚の経験と専門性を使いこなせない素人政治にも訣別しなければなりません。
  とりわけ、放射性物質への対応では、誤った政治主導によって縦割り行政がかえって助長され、国民の安心の拠り所となる安全基準も省庁ごとに泥縄に設定される有様であります。生産者・事業者は国に振り回され、風評被害にも苦しめられております。このままでは国民の不安が益々増幅し、経済にも大きな影響が及ぶだけではなく、日本は世界からの信用を失いかねません。
  都は、都民・国民の不安を払拭するため、自前の検査機器を総動員し放射性物質の測定を行い、被災県にも最大限協力しております。今後、区部と多摩にモニタリングポストを増設するなどの取組みも進めてまいります。しかし、いかに地方が現場で局地的に奔走しても、汚染物質の最終処分は困難を窮めるなど、限界があります。
  放射性物質への対策の第一義的な責任を負う国が、統一的な安全基準の設定、国を挙げた検査体制の確立、最終的な処分方法の確立という三位一体の対策を早急に講じることを求めます。

2 現場を持つ東京が日本再生の端緒を拓く

 国政の低迷を前に座して待つことで、日本のダイナモである東京を止めるわけにはいきません。東京が最先端の現場から具体的な策を着実に実行することで、日本再生の端緒を拓いてまいります。

(電力の安定供給に向けた東京独自の取組み)

  先ず、電力の安定供給について申し上げます。
  この夏、電力需給の逼迫が想定されましたが、都民・国民、企業それぞれ懸命な努力により節電に取り組んだ結果、計画停電なしに乗り切ることができました。
  しかし、これで終わったわけではありません。現代社会に不可欠な電力に関し、今回の震災が我々に突きつけた問題に対して、本格的な答えを出していくこれからが正念場であります。とりわけ、独占的に供給している電力会社や遠隔地からの電力に頼り切ってきたことの脆さは誰の目から見ても明らかであります。また、電力会社は、老朽化して効率の悪い火力発電所を再び稼働させましたが、COの排出量が多く、故障のリスクがつきまとい、地球温暖化の面からも、安定供給の面からも望ましい姿とは決して言えません。
  肝心の国は眼前の事態への対処に手一杯となり、震災の教訓を踏まえた現実的なエネルギー戦略を全く描けておりません。そこで、都民・国民、企業の活動を守るためにも、東京はエネルギー問題に果敢に取り組んでまいります。
  先月にはプロジェクトチームを設置し、発電効率が高く、他の化石燃料と比べて格段に環境負荷が少ない天然ガスを燃料とする100万キロワット級の発電所の整備に向けて検討を行っております。一定の条件を満たす都有地を数か所選定いたしましたが、今後、詳細な調査を行うとともに、電力事業への参入障壁の突破についても検討してまいります。
  合わせて、震災時のリスクを分散するため、電力会社だけに頼らない地域分散型発電の導入を進めます。災害時にも都市機能を維持するため、民間の都市開発とも連携し、発電施設の設置を後押しする仕組みを具体的に構築いたします。
  首都圏全体も巻き込みながら、東京が具体の手立てを講じることで、この国の電力供給体制を変える突破口にしてまいります。

(東京の防災力の向上)

 東日本大震災は、ともすれば災害が自らには降りかからないと考えがちな我々の安易な危機意識を呼び覚ましました。同時に、行政による公助の限界、大量の帰宅困難者、物流ネットワークの混乱など極めて多くの課題を浮き彫りにいたしました。これを、先般、「東日本大震災における東京都の対応と教訓」として取りまとめました。
  今回の震災が残した貴重な教訓を、11月に策定する「東京都防災対応指針(仮称)」に盛り込み、首都直下地震や東海・東南海・南海三連動地震への備えに万全を期してまいります。

〈共助の最大限の発揮〉

  東日本大震災や阪神・淡路大震災の経験からもわかるように、一分一秒を争う災害発生時には、先ず自らの身を守り隣近所で助け合うことが一人でも多くの生命を救うことになります。
  そこで、防災隣組の構築に着手いたしました。地域の絆が希薄となった東京では、一朝一夕には進みませんが、先ず手始めに、震災に直面した方の生の声やこれまで実際に行われた共助の効果的な取組みを集め、身近な支え合いの大切さを説いてまいります。また、区市町村と連携して、実際に活動している共助の取組みも後押しし、「共助の仕組みこそ、これが命を救う」というムーブメントを巻き起こしてまいります。

〈高度な防災性を備えた都市基盤の実現〉

 東京には、戦前からそのまま残された古い木造の街に加え、戦後の急速な復興の中で無秩序に開発が進んだことにより、多くの木造住宅密集地域が形成されてきました。いわば20世紀の負の遺産でありまして、震災発生時には火災により甚大な被害を引き起こすことが懸念されます。
  そこで、先程申し上げた法人事業税の暫定措置の撤廃により、国から取り戻した財源も投じて、「木密地域不燃化10年プロジェクト(仮称)」を新たに立ち上げ、従来からの取組みを一段と加速させます。
  阪神・淡路大震災で起きた大火災の事実をありのままに伝え、地元自治体も巻き込みながら都民に訴えてまいります。同時に、延焼を遮断する道路の整備、移転先の確保などの施策も複合的に講じ、壊れず燃え広がらないまちづくりを推進してまいります。

 災害時に救援物資を輸送し、迅速な復旧・復興活動に資する道路ネットワークづくりにも力を注がなければなりません。本年の第一回定例会で制定した条例を活用して、緊急輸送道路の沿道建物の耐震化を進めるとともに、区部環状道路や多摩南北道路など東京の骨格となる道路整備を推し進めます。また、外環道・圏央道が未整備の状態で、東京が被災し首都高速道路が使えなくなれば、我が国は事実上東西に分断されてしまいます。新しい政権には、首都東京の道路の国家的な役割を認識し、必要な財源を措置するよう強く求めます。

(日本経済の再生のために)

〈現下の経済情勢に果敢に対処〉

 現下の我が国経済は、円高や株価の低迷に見舞われ、企業を取り巻く環境は厳しさを増しております。国は本来責任を有するこれらの問題に実効性ある手立てを講じ、新たな成長戦略も早急に構築すべきであります。
  一方、現場を持つ東京が、手を拱いているわけにはまいりません。都は円高対策として、既に制度融資の特別枠を設けております。これを活用し資金繰りに万全を期すとともに、専門家を派遣し経営に関する具体的な助言を行うなど、中小企業を確かに支えてまいります。
  雇用面でも、大学卒業者の就職率が過去最低となっております。そこで、就職先が決まらないまま卒業した若者を都内中小企業で就労体験させ、正社員への道を拓くべく支援しております。既に500人以上が参加しており、一人でも多くの若者が活躍の場を得られるよう応援してまいります。

 さらに、日本が再び立ち上がるため、円高などの経済環境に左右されない確固とした力を養うことが必要であります。先日、東京の町工場の技術も取り入れた小惑星探査機「はやぶさ」の開発者から直接話を聞く機会がありました。非常に強い感銘を受けました。我が国のものづくり技術は、日本人の稀有なる感性が結実したものでありまして、国力の源であることを改めて実感いたしました。
  東京は、これを磨き育てるべく、中小企業の開発・研究を応援してまいります。都立産業技術研究センターの新本部を来月開設する運びとなりました。これを機に、超小型電子部品や航空機部品の開発を支援するため、ナノレベルでのより微細な加工を可能とする機器をはじめ、最高水準の装置を揃えます。新製品開発のためのスペースも大幅に拡充するとともに、個々の中小企業の要望に沿った支援メニューも充実させるなど、中小企業の技術向上を強力に後押ししてまいります。

〈アジアのヘッドクォーターたるべく〉

 合わせて、我が国が経済全体の底上げを図るため、その牽引役である東京ならではの成長戦略を果敢に実行いたします。
  そのためには、日本を開き東京に外資を積極的に呼び込んでまいります。国に規制緩和や税制優遇を求める総合特区制度では、東京の呼びかけに応え、民間から有力な提案がいくつも寄せられております。こうした民間の知恵を取り入れながら、国際競争力を強化する具体的な道筋を示し、国に特区を認めさせてまいります。羽田空港とリニア中央新幹線の結節点として成長の可能性の高まる品川駅周辺については、特定都市再生緊急整備地域に新たに指定するよう国に申し入れます。
  総合特区と特定都市再生緊急整備地域の指定を合わせて、税財政や都市計画上の優遇措置を重層的に講じ、外国企業にとって魅力的な環境を整え、東京をアジアのヘッドクォーターへと発展させてまいりたいと思います。

(あるべき日本人像を描く)

 いつの時代、いかなる国家社会においても最も重要な社会資本は人材であります。
  近代以降の我が国の教育は、強大な産業国家を急速につくり上げるために、あるレベルの画一的な人材の育成を主眼としてまいりました。しかし、目標が成就した段階でも、次なる目標や育てるべき日本人像を描かずにおります。その上、権利ばかりを主張し、結果の平等をいたずらに重視する戦後の悪しき風潮が教育の混乱に拍車をかけております。
  戦後教育の宿痾を打破するとともに、あるべき日本人像を描き、知力・体力・人間力を備えた次代を担う人材の育成に本気で乗り出さなくてはなりません。このままでは、日本は21世紀の国際社会をただ漂流するしかないと思います。
  そこで、「教育再生・東京円卓会議」を新たに設置し、制度や仕組みに囚われない議論を開始いたします。先ずは、こうした危機を肌で感じている各界を代表する方々と順次、対談してまいります。その内容を発信することで、社会全体にも論議を巻き起こし、現状を憂う「声なき声」にも応えてまいりたいと思います。意見やアイデアは、できることから教育の現場で実行し、国には制度改正を建言いたします。

(被災地支援)

 次に、東日本大震災の被災地支援について申し上げます。都は現在、被災三県に事務所を構え、現地の切実なニーズを酌み取り、復旧・復興を応援してまいりました。今も、多くの警察官が、治安を守りながら、かけがえのない肉親のご遺体を遺族に引き渡すための地道な努力を続けるなど、日々、600人の都の職員が東京を離れ、被災地で活動しております。施設やインフラの復旧はもとより、学校教育を支え、被災者の心のケアにも力を尽くしております。
  都内で避難生活を送る方々は、先月の時点で8千人を超えています。都営住宅などでの受入れを継続するとともに、上下水道料金の減免期間も延長するなど、引き続き強力に支えてまいります。
  被災地企業との商談会も開催しております。先日、宮城県で現地の企業150社と都内企業等約80社の参加を得て商談会を行いましたが、今後、岩手県、福島県でも順次開催いたします。また、来月の「産業交流展2011」では被災地企業のブースを設置するなど、復興を経済面からも後押ししてまいります。
  さらに、スポーツを通じた支援も行っております。先月、原発事故の影響で離ればなれを余儀なくされた福島県の高校生が、元の高校ごとにチームを組み、都から派遣されたオリンピアンの指導の下に、バレーボールやサッカーなどの試合を楽しみました。久しぶりの友人との交流は、子供たちに力を与えることができたと思います。
  今後も全力の支援で被災地を元気づけ、我が国に連帯の心を呼び起こす縁ともしてまいります。

(オリンピック・パラリンピック招致)

 被災地の子供たちがスポーツで一体感と友情を深める姿は、勝利という目的に向かった肉体や精神の営みを介して、人に夢や希望、感動を与え、人々を結びつけるスポーツの持つ力を象徴しております。
  先般、宮城県知事が「日本でオリンピックをやるということになれば、国民こぞって盛り上がる」と述べておりましたが、我が国の復興と再生のために、今必要なものは、国民が一つになれる夢であります。
  スポーツの力で人々を結び、オリンピック・パラリンピック開催という共通の夢に向けて、9年後の日本の姿を思い浮かべながら進む国民の意志を、日本再生の原動力にしたいと思います。同時に、被災地での競技なども通じて、日本が立ち直った姿を世界に披瀝し、支援に対する感謝の気持ちを示す機会ともしてまいります。
  オリンピック・パラリンピックの招致を是が非でも実現しなければなりません。そのためには、外交力と政治力を駆使した、国家間の熾烈な戦いを勝ち抜かねばならず、国、スポーツ界、経済界などを束ねた国家を挙げての総力戦が絶対に不可欠であります。新政権には、その要となる担当大臣を設けるよう強く求めております。東京も前回の経験を糧にして、為すべきことを確実に実行してまいります。
  都議会の皆様、都民・国民の皆様の力を招致に結集していただきますよう改めてお願いいたします。

3 震災を乗り越え再びその先に雄飛するために

 先日、サッカー女子ワールドカップにおいて、なでしこジャパンがアメリカを打ち破り、優勝を成し遂げました。過日、その功績を称え、東京ゆかりの選手4人の方々に、東京都栄誉賞と都民スポーツ大賞を贈呈いたしました。ロンドンオリンピックでの活躍も期待しております。
  なでしこジャパンは、恵まれない環境の中でも、決してあきらめることなく、目標に向かって努力を重ねてきました。今回の快挙は、ひたむきな心を持ち続けた選手たちが、監督や主将の強いリーダーシップの下、持てる力を存分に発揮したからこそ、成し得たものであります。
  日本人のひたむきさは、被災者同士が支え合い秩序正しく行動する姿、復興を支える無償のボランティアといった形でも現れております。今回の震災は、我が国に甚大な被害をもたらしましたが、戦後、多くの日本人が忘れてきた美質を呼び覚ましてもおります。そのきっかけになりました。今こそ、政治が大局的な戦略を持ち、リーダーシップを発揮し、そうした美質が生み出す可能性を引き出し束ねたならば、日本は必ず震災を乗り越え、再びその先に雄飛できるに違いありません。
  国政が停滞する今、多彩な人材や志のある企業などが高度に集積し、それゆえ計り知れない可能性を持つこの東京という現場から日本再生の活路を切り拓いていかなければなりません。
  同じ首都東京の政治家である都議会の皆様と共に、建設的で質の高い議論を交わしながら、その使命を十全に果たしてまいりたいと思います。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案9件、契約案9件など、合わせて21件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。