知事の海外出張

平成21年3月30日更新

ツバル・フィジー諸島共和国出張

 知事はこれまでも国に先駆けたディーゼル排ガス対策の実施など、地球温暖化対策に先進的に取り組んできました。
 本年6月には東京都気候変動方針を策定し、温暖化対策を推進しているところです。
 このたび、地球温暖化の影響を深刻に受けている国々を訪問し、現地の状況を視察しました。

★出張の主な目的

(1)地球温暖化の影響を深刻に受けている南太平洋の島しょ国である、ツバル及びフィジー諸島共和国を訪問して、現地の状況を調査・視察する。
(2)世界で最も環境負荷の少ない先進的な環境都市の実現のため、現地から温暖化対策の重要性をアピールし、都民に具体的な行動を呼びかける。

★出張の概要

  ○期間 平成19年9月10日〜9月15日
○出張人数 7人(知事、特別秘書などの職員を派遣しました。)
○総経費 13,114千円

★出張先での主な行動

 石原知事は9月10日の夜に成田を出発し、9月11日の早朝にフィジー諸島共和国のナンディ(Nadi)市に到着しました。午後からマングローブの植林とフィジー気象局の視察を行いました。

○マングローブの植林
 フィジーでは、海岸浸食を防いだり、水資源を浄化したりすることを目的として、様々な場所でマングローブの植林が行われています。
 まず、石原知事は、ビチレブ(Viti Revu)島の北西部のナモリ(Namoli)村へ行き、村人から伝統的なセブセブの儀式(※)で歓待を受けました。この村では8万平方メートルの場所に6万本の植林が計画されており、村人と一緒に最初の植林を行いました。

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セブセブの儀式
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ナモリ村でのマングローブ移植

※セブセブの儀式
 南太平洋諸島地域で飲まれるカバKavaは、特にフィジーでは色々な儀式で飲まれる。堅苦しい儀式から、来訪者のもてなしの儀式にまで用いられる。カバ(Kava‐英語)(フィジー語でヤンゴーナ yaqona)とは、南太平洋帯に生える胡椒科の木のこと。カバの儀式では、この木の根を乾燥させ、それを水でぬらし、絞り出した汁を飲む。(出典:フィジー政府観光局ホームページ)

 次に、ビセイセイ(Viseisei)村に移動し、マングローブの移植後数年が経過した植林地の状況を視察しました。ここは、近くに石油コンビナートがあるために水質が悪く、マングローブの移植にあまり適していない場所でしたが、苗木の周りを木枠で囲むなどの工夫を重ねることにより、木々が根付いた状況を視察しました。

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ビセイセイ村のマングローブ植林地

○フィジー気象局訪問
 9月11日午後3時20分から、日本のODA(政府開発援助)を受け、太平洋諸国の基幹気象局として活動しているフィジー気象局を訪れ、ラジェンドラ・プラサド(Rajendra Prasad)局長などから、フィジーにおける気候変動の状況とその因果関係についての説明を受けました。この中では、フィジーの年間降水量と降雨日数が増えていることやサイクロンの個数が増加傾向にあること、また、気候変動と海面上昇については、人工衛星を用いた正確な観測が始まってから10年程度しかなく、科学的に断定はできないものの、フィジー各地で海岸浸食が進んでいることなどの説明を受けました。

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フィジー気象局での視察

 9月12日は8時15分(日本時間5時15分)にフィジーのNadi(ナンディ)国際空港を出発し、気候変動の影響が顕著に現われているツバルを訪問しました。

◇ツバル政府首脳との会談
 午前10時45分にツバルのフナフチ(Funafuti)国際空港に到着し、午前11時頃からウイリー・テラビ(Willy Telavi)内務・国土開発大臣と会談を行いました。
 会談では、ツバルにおける地球温暖化による海面上昇の影響が話し合われました。知事からは、「いろいろな意見もあるかもしれないが、ツバルの国土の中で人の住んでいない島を潰し、その土で防波堤をつくるなどの大胆な発想も必要」との話があり、今後の対策についての率直な意見交換が行われました。

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ツバル政府関係者との会談

◇フォンガファレ島内視察
 政府首脳との会談の後、フォンガファレ島内の視察を行いました。

1)海水淡水化施設
 日本のODA(政府開発援助)により2000年及び2006年に導入された施設。ツバルでは井戸水や雨水が利用されているが、井戸が海面上昇の影響を受けて飲用に適さなくなったりするため、海水をろ過して飲料水等に用いている。

2)イモ畑の塩害
 ツバルでは、プラカ芋(タロイモの一種)を主食としてきたが、潮位の上昇等の影響から土壌の塩害が生じており、芋の耕作に適さない土地が増えた。このため、主食として芋を食べるひとが少なくなっている。

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海水淡水化処理施設
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イモ畑の塩害

3)海岸浸食
 フォンガファレ島の北部は、陸地の幅が狭く、長いところで十数メートルしかない。また標高も1〜2メートルと低いため、海面上昇に起因する高波の影響などで海岸線が削り取られ、椰子の木が倒れていた。

4)ゴミ集積場
 かつてツバルでは、漁業とプラカ芋の耕作により自給自足の生活をしていた。現在、海水浸透などの影響から、主食がプラカ芋から米に変わり、オーストラリアから多くの食料品等が輸入されており、その包装紙等がゴミとして捨てられている。また、ツバルにはごみ焼却施設がなく、島内で埋め立て処理されているが、ゴミの量が増えて埋立地からあふれていた。

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フォンガファレ島北部の海岸浸食 ゴミ処理場

5)集会場における浸水状況
 年間で最も潮位の高くなる大潮のときには、島内の様々な場所の地面から水が湧き出す。特に、集会場付近は標高も低く、月毎の満潮時にも水位が上がってくる状況が見られる。ここでは、集会場の周辺の状況を見ると共に、フナフチ役場のアピネル・ティリ氏から水があふれてくる状況や水位が最も高くなったときの様子について説明をうけた。

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集会所の視察

◇ツバル国営放送の取材
 ツバルにはテレビ局がなく、国営のラジオ局があります。事前に予定はされていませんでしたが、石原知事のツバル訪問についての関心は高く、視察の目的などについて取材を受けました。

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ツバル国営放送の取材

 なお、予定されていたフナフチ環礁内にあるテプカ島やバサファ島の船による視察は、荒天のため、中止となりました。

 9月13日は、体調が思わしくなかったため、知事は日中に予定されていた視察を取りやめました。夕方から、JICAフィジー事務所からテレビ会議システム(JICA-Net)を通じ、東京で開催された地球温暖化について考えるシンポジウムに参加しました。

○現地からの報告(地球温暖化について考えるシンポジウム)
 石原知事がツバルとフィジー諸島共和国を視察し、現地の状況をつぶさに見た様子の報告を行いました。また、ツバルの代表として、サミュエル・ラロニウ(Samuelu Laloniu)ツバル高等弁務官代理から、温暖化による影響と対策の必要性についての話がありました。
 その後、東京の会場で基調講演を行った西澤潤一首都大学学長と温暖化対策の重要性について意見交換を行いました。

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JICAフィジー事務所からの現地報告

 →シンポジウムの内容
 →参考(9月14日報道記事)(PDF形式:89KB)

 9月14日は、スバ市からナンディ市まで車で移動しながら、ビチレブ島の南側の沿岸で実施されている珊瑚の移植事業や海岸浸食の状況を視察しました。

○珊瑚移植プログラムの視察
 ボトゥア(Votua)村では、約4万平方メートルの海域で珊瑚の保護移植事業が行われています。知事は、村人から伝統的な形式のセブセブの儀式で歓待を受けたのち、珊瑚移植の詳細について説明をうけ、移植場所の視察を行いました。
 珊瑚の移植には様々な方法がありますが、この場所では沿岸かから50メートルほどの場所で枝珊瑚を育てたのちに分割してセメントで固定し、沿岸から100〜200メートルの場所に移設して育成することが行われています。また、この村では広範囲に珊瑚保護・移植区域を設けて村外の人の立入制限などを行うことにより、技術的に難しいといわれている珊瑚の移植を成功させています。

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ボトゥア村での歓待 珊瑚移植の視察

○海岸浸食状況
 当初、ビチレブ島内で海岸浸食が顕著であるヤンドゥア(Yadua)村を訪問して視察する予定でしたが、急遽、村の都合により中止となりました。視察先をボトゥカラサ(Votukarasa)村に変更し、海岸浸食の状況を視察しました。

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ボトゥカラサ村の海岸浸食
(浸食による倒木)