石原知事記者会見

平成19年3月8日更新

石原知事定例記者会見録

平成19(2007)年3月2日(金)
15:03〜15:38

知事冒頭発言

1.低所得者に対する個人都民税の軽減について

【知事】冒頭、3つほど申し上げることがありますけども、一部の新聞に一部出てたようですけども、低所得者に対する個人の都民税の軽減をすることにしました。

 これはまあ、国が税収を上げるために、今まで5%、10%、13%という所得によってランクをつけていたのを、そこを全部一律に10%にしたわけです(※)。

※三位一体改革の税源移譲に伴い、個人住民税の税率は従来の三段階の段階税率から、一律10%にフラット化された。

 やっぱりね、気の毒な人が出てきて、今まで払っていなかった人が払わざるを得なくなったりするんですけど、いずれにしろ、今回、都独自の税制改正として、低所得者の個人都民税の軽減を行うことにしました。

 これまでも、分権の流れの中で、銀行業に対する外形標準課税の導入を始めたり、新たな税制を東京からも発信してきました。外形標準は形は違いましたが、結局、一般の供与、つまり光熱にしろ電気にしろ、あるいは治安の問題にしろ、行政の行う利益を得ていた企業が、既往の経営内容は何であろうと、やっぱり応益負担はするべきだということで、税金を払うようになりました。

 これらも、国全体の税収にプラスになったんでしょうけども、しかし今回は、ちょっと違いますね。やっぱり、非常に差別や格差というものを言われている時代に、格差のない社会というのはないと思いますけどね、今回のように税収というものを上げる目的だけに沿ってこの措置をとるのは、私はやっぱり不公平だと思いますので、そういう措置を考えました。

 今回のこの試みも、これまでの取り組みを引き続き地方税制においてあるべき姿を示すものにしたつもりであります。

 我が国は、これまでさまざまな構造改革を推進してきましたが、その一方で、10年前に比べて生活保護受給者や非正規雇用者ともに非常に数が増えましたですね。いずれにしても、日本全体が増えてるわけですけれども、都の増加率は全国を大幅に上回る状況になっています。

 例えば、生活保護受給者の数は、全国で90万から150万に増えてますけど、10年前に比べて。東京は10万から19万、約倍になった。それから、非正規雇用者、パートですか、こういう方々も、全国では1,100万人だったのが、今は1,600万人になりましたけども、東京の場合は90万から170万、約倍に増えてるわけです。

 もちろん、一生懸命働いた、努力を多くした人がより多くの報酬を受けるのは当然でありまして、そういう意味では格差のない社会というのはないと思いますけど。しかしセーフティーネットが不十分な状況の中でゆがんだ税制を放置すると、社会の安定と活力が失われていくんじゃないかと思います。

 さきの三位一体の改革にも合わせて、所得税から個人住民税の税源移譲をさせられたが、これに伴い生活保護基準程度の収入しかない人に新たに税負担が発生するというのは、私はやっぱり気の毒だし、不公平だと思いますね。そういうことで、今度の措置をとります。

 生活保護の対象となる程度の給与しか、あるいは年金収入しかないにもかかわらず住民税が課税されている、およそ、調べますと60万の都民がいるわけですけども、税法上の不均一課税という考え方を活用して、都独自の税制として、均等割を除く都民税の全額を軽減いたします。

 これによって、現行税制のゆがみを是正し、今まで就任して以来、財政再建をしてきましたけども、その成果が出てきていますので、それを一部、また都民に還元するということになると思います。

 今後、都議会の賛同を得まして、平成20年度から実施していくつもりであります。また、実施に当たっては、都民税の賦課徴収をお願いしている区市町村の十分なご理解とご協力が必要と考えています。それ以上の詳細については、主税局に尋ねていただきたいと思います。

2.東京都関連特定失踪者ポスターの作成について

【知事】それから2番目は、東京都関連の特定失踪者ポスターの作成ですけど、こういうものをつくりましてね、東京都に関連する特定失踪者のポスターが完成しましたので、ご覧いただきたいと思います。

 このポスターは、特定失踪者問題調査会からの情報に基づきまして、都内在住または都内で失踪した特定失踪者48名について、その方々の顔写真を掲載しました。標語である「東京へ、帰せ!」は、都自らの積極的な取り組みを宣言し、多くの方々にメッセージを重く受けとめてもらうように私が選定しました。

 拉致問題は、小泉首相の平壌ですか、訪問から4年半が過ぎましたが、本質的な解決にはまだまだ非常に遠い状況にあります。現在進行形の危機である拉致問題を風化させずに、国家的・民族的関心を持続させることが何よりも大事だと思います。

 ポスターの作成、掲示によって情報収集が困難な状況を打開して、認定につながるきめの細かな捜査の手がかりを得られればと思ってます。誰かが、この写真見て、「この人どこかで知ってた」とか「見た」とか、そういう情報が改めて集まれば、また今後の失踪者の発見のよすがになると思いますが。

 今月中には、都庁、事務所、事業所を初め、都内警察署、区市町村などに掲示しますので、都民、国民の皆様からの情報提供を期待しております。

3.今年度の債券発行の結果について

【知事】次は、今年度の債券発行の結果についてでありますけれども、CLO、CBOの発行についてですが、今年度の発行金額は約867億円、参加企業は2,223社になる見込みであります。

 今年度の特徴は、新たな2つの自治体が連携に加わるなど、債券発行の一層の広域化により地域リスクの分散を図りまして、参加企業が負担する資金調達費用がより低減したことであります。

 また、三井住友銀行、みずほ銀行、東京都民銀行を初めとする28もの金融機関が地道に中小企業を回り、周知に努めてくれた結果、今年度も多くの企業が参加することになりました。個人投資家向けの債券も非常に好評なので、安全性が高いとされているAAAの格付が付与された債券を、昨年に比べ約20%増額し、CLO、CBO、合わせて110億円を販売いたします。どちらも1口100万円で申し込みを受け付けるつもりであります。

 都が国に先駆けて、過去8年にわたり債券発行に取り組んできた結果、約1万4,000を超える中小企業が6,600億円を超える資金を調達し、55社が既に上場を果たしました。これは大変うれしいことですね。

 こうした取り組みは、国や他の自治体にも波及して、無担保による中小企業の有力な資金調達手法として着実に今定着してきました。今後ともCLO、CBOを初めとしたさまざまな金融手法を活用して、高い技術力を持った中小企業が、持てる力を存分に発揮できるよう支援していきたいと思っております。

 以上であります。質問があったらどうぞ。

 このCLO、CBOというのはどういうのかわかるよね。英語で言ったってわからない。コラテラライズド・ローン・オブリゲーション、これがローン担保証券ですね。それから、CBOはコラテラライズド・ボンド・オブリゲーション、社債担保証券。社債担保証券の方が後から出発しましたけれども、両方とも非常に効果が上がっていると思います。


質疑応答

【記者】先ほど発表されました住民税の軽減なんですが、これは、知事、この前からおっしゃっていましたけれども、選挙の公約として考えられているということでよろしいでしょうか。

【知事】言い出したことですから公約にもなるでしょうね。しかし、そんなものじゃなくて、ちょっと長いこと研究してきました。特に、国がかなり乱暴な10%一律の課税体制になったんでね、これはやっぱり随分困る人が出る。これは、私は一種の福祉だと思いますね。決してばらまきじゃなくてね。弱い人だけでね。弱い人というのはいろいろ観念があるでしょう。識別の度合いもあれですけど、やっぱり生活を支える収入というものが低い人というのは弱い人だと思いますから、その人に過重の負担を与えちゃいけないと思うんでね。ということです。

 かつての銀行のときもそうでしたね。銀行というのは、国民の税金をつぎ込んで、真水でやっと息をついて、今は隆盛の勢いだけども、あのころだってね、かなりいろんな問題があったんでね、社会的な公平を期するために外形標準、あれは銀行に絞ってやりましたけど、今度もその裏返しというか、そういうことですな。

【記者】あと、同じく知事選で、前の宮城県知事の浅野(史郎)さんが出馬の意向を表明されているようなんですが、それについて、知事、受けとめはいかがでしょうか。

【知事】だれが出たっていいんじゃないんですか、開かれた選挙ですから。まあね、お嫁さんが決まってよかったと私言ったんだけども。でも、まだ決まったのか決まってないのかよくわからないね、いろんな情報が乱れてて。

 はい、もうその話はいいよ。どうぞ、ほかにいませんか。

【記者】その話はいいよと言われたんですが、「お嫁さん」という表現は、どうして「お嫁さん」というふうに表現をされたんでしょうか。

【知事】いや、「お婿さん」でもいいんですけどね。まあ要するに、選挙ってのは1人で戦うものでもないからね。それに越したことはないかもしれないけど、やっぱり政策論争をすることで都民の意識も啓発されるでしょうし、そういう点で活発な選挙戦を行うのは、当選のために結構だと思います。

【記者】事実上の一騎打ちというふうにとらえていらっしゃるということですか。

【知事】もう1人、高名な建築家がいるじゃないですか。あの人、言っていることがよくわからんけどね。

【記者】引き続き選挙のことで恐縮ですが、海江田(万里)さんの名前も上がるなど、ちょっと民主党が迷走しているような感じがするんですけれども、この点の評価は、知事はいかがでしょうか。

【知事】政党のことは政党に任せておけばいいんでね。ただ、どうもね、(都議会民主党は)予算を今度は否決するようですからね。それなら、僕はやっぱり対案として共産党のように、組みかえ動議というのを出すべきだと思うんですがね。どうもそれもされないようでしてね。ちょっと何か政党としての責任の姿勢とすると、疑義を感じますな。

【記者】続いて、また選挙なんですけれども、浅野さんが都知事選への興味として、「都庁の職員の心が荒廃している」、「もうだめだ」という声を多分に聞いたということをおっしゃっていたんですが、どうですか。

【知事】それは誰がどういう情報を渡したのか知らないけど。しかし、やっぱり都政で今までやることやってきたじゃないですか。やっぱりね、スピリッツ賞(東京スピリット賞)なんかもたくさん応募してくれる人がいてね、うれしいような、何ていうのか、業績が上がっていますからね。まあ、誰がどういうふうな言い方したか知らぬけどね、都庁の職員が荒廃していたらね、例えば、主税局を見たってそうじゃないですか。あれだけ高率の打撃率を上げている自治体の税務局なんてないですよ。それはみんな、そういう点でね、とてもいいチームワークで、みんな知恵を凝らしながら、汗かいてやってくれていると思いますよ。だって、実績見てもそうじゃないですか。税収だってね、あれだけの打率を上げている自治体なんかないんだしね。

 それから、このCLO、CBOにしたってね、まあ私が言い出したことですけども、これはやっぱり実施するために随分みんなで勉強したしね、研究してやってきましたよね。

【記者】もう1つ、浅野さんが、東京都は教育、福祉の現場が完全に荒廃していて、東京オリンピックを含めて、お金と労力の使う優先順位が違うんじゃないかと感じたからとおっしゃっていたんですが、どうですか。

【知事】それはちょっと具体的に、はっきりもっと実証して物を言ってもらいたいね。それで、オリンピックに対する期待率だって非常に高いですしね。

 それから、成功したから偉そうに言うわけじゃないけど、この間のマラソン(東京マラソン2007)だってね、やっぱり都庁のスタッフが頑張ってやったからね、あのボランティアだって非常に機能的に動いてくれましたしね。それから、警察だって東京のスタッフですけど、これは画期的な動員をかけてですね。

 僕、おもしろかったのは、フィニッシュして着がえている人たち、みんな遅く入ってきた人だよ。僕は最後のランナーに、要するに握手に行ったんだけどさ、その20〜30分前に入ってきた連中ってのはみんな、7時間切るか切らないかで走ってきたんだけど、その人たちが非常にうれしそうに言ったのとね、警察官にまで声かけられてね、あるおまわりさんにね、「頑張れよ、もうじき晴れるよ」と言われたとかね。そういうコミュニケーションというのは今までなかったと思うしね。これはやっぱり東京都の全体のチームワークがああいう結果を生んだと思いますよ。

 だけど、荒廃しているって、誰がどういうふうに言ったか知らぬけどね、一部の業界紙か何か知らぬけどさ、何でもいいよ。そんなこと気にしたって。都民がわかってくれることですよ。

【記者】浅野さんの関係で、大いに政策論争したらいいんじゃないかということなんですけど、知事として、3期目を狙われているわけで、3期目にどういったことを優先的にやっていきたいというか、その辺の3期目に向けての思いというのはどうでしょうか。

【知事】まあね、去年の暮れに発表したワンディケード、10年先の東京の未来図、それを今年から1段1段積み上げていくわけですけども、いろんな項目がありますがね、緑化の問題にしろ、あるいは環境問題、CO2の規制にしろ、今までやってきたものの延長だと思いますよ。別にとんでもなく新規のものを始めるわけじゃありませんが。ただ、やっぱりそれはオリンピックにつながればいいと思っていますしね。

 それから、オリンピックもね、うれしいことに、大体75%か80%に近い支持率があるようですけども、これはやっぱり都民だけじゃなしに、国民全体の連帯感を育成する大きな行事になると思いますが、その準備も政府の説得から始めてやらなくちゃいけませんしね。これは僕が言い出しちゃったことなんでね、私の責任でやろうと思っています。

 それから、まあそれに付随して、本来オリンピックを主唱してもしなくても、やらなくちゃいけないことだけども、東京のとにかくインフラの整備も最後の弱点の、要するに環状線はびっくりするぐらい放置されてきたわけですからね。まあ都市工学から言ったって、もう不可欠な要因ですし、あれが完成できれば、東京もずっと住みやすくなるし、東京にある集中集積というのは生かされますからね。これはやっぱり政府とのかけ合いでやらなくちゃいけないし。

 例えば端的に言って、あの凍結された道路なんかだって、まだ計画路線に載っていないんですからね。凍結された間にシステムが変わっちゃったものだから、「九千何百キロ以上道をつくらん」というものに入っていないので、その優先順位をどうするかというのは、かなり国とのいろんな掛け合い、そういう国の認識というものをこっちがせっついてつくっていかなかったら、何たって首都の環状線ですからね。オリンピックが成功するかしないかだけじゃなしに、IOC(国際オリンピック委員会)に、私たちがあのコンペ(候補都市の選定)に勝てるか勝てないかは別にしても、とにかくどんな口実を設けてでも、これは首都の東京ですからね。いつも言っているみたいに日本の頭脳部、心臓部なんで、これがあるべき環状線がああいう形でほったらかしにされていてできなかったといったら本当にシェイム(恥)だし、恥ずかしいし、これはやっぱり一刻も早く修復することが、東京のためだけでなしに、国のために必要だと思いますよ。これはこれからの仕事ですね。

【記者】住民税の関係なんですけど、先ほども公約かどうかというお話もあったと思うんですけど、条例案を多分出す必要があると思うのです。

【知事】えっ。

【記者】条例を出す必要があると思うのですが。

【知事】ああ、そうですね。

【記者】それは知事選後の議会に出すということになる。

【知事】当然。こっちは予算委員会が終わりますからね。知事選が終わった後の第二定例会ですか、そこでの問題になってくると思います。

【記者】知事が当選されれば、そこに出すという意味。

【知事】ええ。

【記者】話が戻ってしまって恐縮なんですが、まだ浅野さんご本人がはっきりなさっていないので、お嫁さんになるかどうかわからないというのを承知の上で聞くのですけれども、宮城県知事時代も含めて、人物評価はどう見ていらっしゃいますか。

【知事】それはあなた方の仕事じゃないかな。僕は宮城県の県政にまではあまり詳しくないけど、大分借金が増えているみたいですね。

 あの人、3期やったのでしょう。その間の財政がどうなったかというのは、あなた方が調べて、これからの評価というか期待のための素材にされたらいいんじゃないですか。私はあまり詳しくわかりません。

【記者】ありがとうございました。

【記者】ちょっと知事選から外れますが。

【知事】外れてくれた方がいいよ。

【記者】日比谷公会堂(日比谷公園大音楽堂)の利用について、朝鮮総連関係の団体の申し出を拒否というか使用承認の取り消しをされて、地裁、高裁とそれが却下されましたが、それについてはいかが思われますか。

【知事】これは妥当な判決(決定)だと思います。

 ただね、都が心配したのは、向こうの要するに通告でも3,000人が限界のところに5,000人、人が集まる。それから、こういう時期に彼らがそういう集会をするということで、またそれに反対する勢力などもどういう動きをするかわかりませんし、これは治安の問題になってくるのでね。

 結局、あそこでそれが行われる限り、一般の都民の方には注意していただかなければ困りますな。そういう懸念を持っているから、ああいう措置をとったんだと思いますけども、私はこれは無理かなと思いました、基本的に。

 ただ、やっぱり時期が時期ですし、あの組織そのものがいろんな問題がありますからね。それはやっぱり拉致の手伝いをしてきた、脱税してきた、日本の治安に関係ある要因というものを、彼らが非常にマイナスな形でつくってきた。しかも、この時期に3,000人のキャパシティ(収容数)というところに、それだけの人を集めると向こうは言ってきているわけですからね。不測の事態というのもこちらは想定せざるを得ないので、できればやめていただきたいということを申し上げたんですけど。

【記者】知事、改めてちょっとお伺いしたいのですけれども、知事、自民党さんの推薦、自民党の推薦を受けないことにしたと。

【知事】もともと僕は誰の推薦も受けずに。組織は違いますよ、一般の組織はね。だけどね、自治体の首長というのはね、あまり政党の看板を背負わない方がいいと思うし、現に、今度は妙なことになったけども、今の予算案だって民主党は否決するみたいだけど、民主党の、何というのかな、復活折衝も受けて、予算も民主党の言うことを随分聞いた部分はあるんですよ。原案そのものがどこで大きく齟齬(そご)を来したか、とてもそうは思わないし、だから復活折衝になった。共産党とはとにかく全部組みかえ動議してきましたけども。だから、僕はよくわからんね、本当にもう。

 ですから、民主党の中にも、私の賛同者はたくさんいます。支持者の中にいます。ゆえもって私は、共産党が私を推薦することはなさそうだけども、そういう意味で私は特定の政党の推薦は今まで受けて来なかったし、今度も受けずにもっとフリーな形でやりたいし、政党という形の枠で阻害されるいろいろな都民の方の意見というのも幅広く聞き取りながら選挙したいなと思っていますけども。

【記者】自民党の方が推薦するという形でどんどん話は進んでいったわけで、理解はしてもらえたというふうに思っていますか。

【知事】それはもちろんずっと友党ですし、仲間もたくさんいますし、私の息子そのものは都連の会長をしていますし、私も長くいました。国会にいるときにほかの政党に移るつもりもなかったし。そういうことですよ。

【記者】あと、都知事選挙について、今、浅野さんですとか黒川(紀章)さん、吉田(万三)さんですとか、周りを見渡して、今のところそういった名前が挙っていますが、今回、知事はどんな選挙になりそうだというふうに見ていらっしゃいますでしょうか。

【知事】さあ、わからんね、これもねえ。わからんですな。最初の選挙だってものすごくたくさん候補者がいたからね。

【記者】風を制す者が都庁を。

【知事】風?

【記者】どうでしょう。

【知事】どんな風ですか。

【記者】知事選でどんな風が吹けばいいというふうに思っていますか。

【知事】それはあなた方の仕事じゃないの。

【記者】風は吹くと思いますか。

【知事】どんな風が吹くって、風はいつも吹いているじゃない。どこかで。

【記者】ちょっと古い話になるのですが、最高裁の方で「君が代」のピアノ伴奏を拒んだ音楽教員に対して都教委が懲戒処分をしたことについて、それは合憲だという判断をしたのですけれども、石原知事のその判決に対する評価というのをちょっとお聞かせいただければ。

【知事】私は判決のとおりだと思いますね。

 「君が代」に対するいろいろな価値観みたいなものが違っても、音楽の先生なんだから、それはやっぱり弾いてもらわなきゃ、みんな歌えないじゃないですか。お宅の会社は何かご不満のようだけどね。私は合憲だと思いますね。

【記者】一応4人の裁判官のうち1人が反対意見を述べたのですけれども、そういうふうな形で評価は分かれるところであるんですけれども、それについてはいかがですか。

【知事】それは裁判官にもいろいろな考え方があるでしょう。

【記者】これから知事選があるんですが、仮に知事が3選を果たしたとしても、そういった都の教育行政の姿勢というのは変わることはないということですか。

【知事】変わらんでしょうね。それは、しかも最高裁が保証したことですからね。そのために司法というのはあるわけだから。それでなかったら、司法の権威なんかないじゃないですか。

【記者】知事選がらみになってしまうのですが、各候補者の主張を整理しますと、次の選挙の焦点はオリンピックの賛否というようなところも、あるいは東京の再開発をどう進めるかということになってくるかと思うんですけれども、知事がその辺をどのようにお考えで、どういう主張をされていくかというところを教えてほしいんですが。

【知事】やっぱりオリンピックは1つの争点になるでしょうね。ただ、意識調査をすると大阪なんかと違ってかなり高い期待率があるんで、私はとっても心強く思いますし、妥当な数字だと思いますけども、やっぱりそれに沿っての社会資本の整備ということだけではなくて、東京に決定的に欠けているものを、オリンピックを1つの口実に踏まえて、促進していきたいというのが私の本心ですから。

 だから、やっぱりこれから、さっき言ったみたいに、外環(東京外かく環状道路)を計画路線に組み込むことなんかも、かなり手こずる作業だと思いますよ。いろんな道路族(国会議員)がいるわけだから。だけど、これはやっぱり社会工学的に、都市の環状線というものがどういう意味があるかということを国会でも考えてもらって、組み込み直すということの作業が必要だと私は思います。

 それから、経済効果というのは、わかるようでわからないですが、しかし明らかに経済効果はあるわけですから、その額はどういうことになるか試算によって違うでしょうけども、やっぱりそういうものも期待してますしね。

 しかし、オリンピックが実現するまでには、今度はIOCでのコンペティション(候補都市の選定)もあるから、これもどういう推移だったか、やっぱり国際情勢というものが左右するでしょうし、アメリカの存在感というのがこれからどうなっていくのか。希薄化されていくのか、アメリカが孤立していくのかしていかないのか、まさにハンチントン(サミュエル・ハンチントン 米国政治学者)の言った文明の衝突が起こっているわけで、昔、冷戦構造というのがあって、今も中国の存在を誰がどう評価するかわかりませんが、しかし、何か新しい大きな極ができつつあるような気がするけども、それもそんなに続かないというのが、これからの文明論の専門家たちの意見ですね。

 だから、マルティポラリティー(多極化)という体制が崩れてくる、両極性というのが崩れてくる。そうすると、非常に過激な宗教的なエネルギーが働いて、結果として非常に社会が世界が混乱するだろうというのが大方の見方だけど、その中で、先進国が必然的に閉じこもっていくだろうと。そういう世界情勢の中で、オリンピックの位置づけというのはまた違った意味を持ってくると思うんですけども。

 まあ日本は、今まで随分疎んじられながらも、しかしいろんな努力をしてきた。それはやっぱり、ある機関の調査なんかによれば、途上国には非常に評価されているようですから、そういったものを踏まえて、私たち、オリンピックの推進をしていきたいと思っています。

【記者】住民税の軽減措置についてなんですが、ここで区市町村に協力を求めたいとあるのは、周知活動どまりなのか、それとも都につき合って減税をしてほしいのかということが1つと、あともう1つは、共産党なんかは盲導犬のえさ代問題とかよく取り上げて、石原さんは福祉軽視、弱者切り捨てだと批判されてきたわけですけど、選挙の1カ月前になって、こういう政策を打ち出されたというのは、もともとそういう批判が当を得てなくて、石原さんは昔から弱者重視だったということなのか、やはりそれは選挙の勝算というものを考慮に入れて、決められたのか。これは率直なお気持ちを。

【知事】それは、あなた方の見方と私の考え方はまた違ってくるでしょうしね。ただ、政策なら政策として出て行くとき、いろんな意味合いを持つわけですよ。ですから、それはどう解釈されようと結構ですが、しかしやっぱり、明らかな弱者というものは、新しい税法で、要するに不遇な扱いを受ける、新しい被害を強いられるということは、私はおかしいと思うんです。

 何でもかんでも税収を上げればいいというもんではないと思いますよ。やっぱりそれを10%に一律課することで、得する人もいるかもしらんけどね。今まで13%払わざるを得なかった人たちは、10%で済むんだから。ただ、もっと底辺にいる人たちが、要らざる支出を強いられるというのは、私はやっぱりちょっと不公平だと思いますね。

 この間も、名前を言わない方がいいや。やっぱり自民党の中にも、「格差はありますよ」と言う幹部もいるんです。もちろんあるでしょう。いろんな形でありますが、目の届くところの限りで、1人2人の意見じゃなくて、主観でなくて、多くの人たちが「明らかにこれは新しい格差だ、新しい弱者いじめになる」という問題があるなら、それに対する措置をするのが行政の責任だと思うから。私はやっぱり今度の税法改正っておかしいと思う。

【記者】関連してなんですけど、資料の中に、知事も言及されましたが、生活保護者と非正規雇用者が東京でかなり増えていると。この増えた時期というのは、石原知事の都政の間と重なる部分があると思うんですが、それについての都政の責任というのはどう感じていらっしゃるんでしょうか。

【知事】これは都政の責任じゃないでしょう、やっぱり。日本の社会全体の経済動向の中で、例えば地域格差みたいなのが出てきた。例えば、私、この間、久しぶりに秋田の私の後援会の会長が亡くなったので行ってみましたが、ああいう地方の大都市でも新しい家が建ってないね。そういう東京との格差を感じましたよ。

 これは何も東京の責任じゃなくて、東京ひとり勝ち論でもない。だったら、やっぱり国が国で考えて。あなたが乗ったかどうかは知らんけど、つくば新線(つくばエクスプレス)に乗ってごらんなさいよ。あの横の空き地みたいなの、国家が大計を立てて、あそこで新しい人口の流動というのを考えたら、日本の地域との格差というのはかなり変わっていくと思うけどね。

【記者】また都知事選なんですが、浅野さんがまだ態度を明らかにされていませんが、近く態度を明らかにするのではないかと見られていますが、これまで立候補したいとおっしゃっている黒川さんだとか、共産党の吉田万三さんに比べて、敵としての手応えというか、手強さというか、その辺はどういうふうに考えていらっしゃるんですか。

【知事】それはわかりませんね、やってみなければね。

 あなた方、随分世論操作をしているふしもあるしね。それによってどういう影響が出てくるかわかりませんけども、選挙は選挙ですから、こちらは一生懸命戦う以外ないですね。1票でも多く積み上げようと努力をするのがやっぱり候補者の責任だと思いますよ。

 ただ、困ったことに、まだ喉が治らないんだよな。せっかくの美声で演説したかったんだけども。

 それじゃ、どうもありがとう。

【記者】区市町村には、協力を求めるかどうかという部分は。減税ということも含めて。

【知事】もちろん周知徹底というのは区市町村通じてお願いしますけど、区市町村における住民税の徴収の形がどうなっているか、ちょっとつまびらかにしませんので、それは主税局に聞いてください。

(テキスト版文責 知事本局政策担当 細井)