石原知事記者会見

平成20年1月10日更新

石原知事定例記者会見録

平成20(2008)年1月4日(金)
15:01〜15:13

知事冒頭発言

年頭所感

【知事】まず皆さん、明けましておめでとうございます。あまりおめでたくないんだね。風邪は治らないし。というよりもね、先ほど、職員の皆さんへの年頭のあいさつで申し上げたんですがね、昔、とんちで有名な一休和尚というのがいましてね。一休さんが、年とってから、京都の町を正月元旦にいつも杖をついてね、その杖の上にしゃれこうべが乗っかっていてね。それで、みんなびっくりして見るとね、「正月は冥土の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」と言ったそうだけどね。地球はやっぱり非常に難しい時期に差しかかってきましたな。まあ経済の問題、テロの問題、いろいろありますけどね。このままで行くと、ちょっとやっぱり地球はもたないんじゃないか。もたないなということを15年か20年たったら、みんなひしひしと感じるようになるだろうけども、そのときは学者の皆さんが言っているみたいな、チッピングポイントという、要するに振り子の振り戻しの限界を過ぎていてね。つまり、よく言うポイント・オブ・ノーリターンを過ぎていて、取り返しのつかないことになるんじゃないでしょうかね。そういうことを改めて感じますね。

 年末のバリ島の会議もね、ああいうふうにゴア(アルバート・アーノルド・ゴア・ジュニア 前米国副大統領)がね、「この会議の進展を妨げているのは、主に私の母国のアメリカだ」と、恐縮ざんげしてみせたけどね。日本もその片棒を担いだ訳ですがね。とにかく刻一刻、ものが要するに現実化してきて、有無を言わさず突きつけられて、そのうちに、昨日もヒマラヤの氷河湖のルポをやっていましたがね。あれを見てもそうですしね。あれが決壊すると、その下にあるブータンなんていう国は本当に、前も言ったと思うけども、雪崩が天から降ってきてだな、津波か、流されちゃう訳でしょう。それがさらに下に行くと、バングラデシュという世界で一番大きなデルタ地帯の国です。これはもうね、ほとんど数日で水没してしまって、元へ戻らない。まあ、そういう現実が、自分の国で起こらない限り、やっぱり所詮、他人事なんですな、世界は。

 それで、国は国で今の姿勢だし、せっかく京都議定書を主宰した国がアメリカに追従して、指標を設定して義務化するというのは絶対反対だと言う。それが一体だれの救いになるのかね。

 生きている間、自分の企業なら企業に対する、どういうんでしょうね、経済利益のための奉仕になるかもしらぬけど、しかし、15年、20年先には自分たちの子孫を殺すことになるんで、ちょっとやっぱりみんなで考えなくちゃいけない時が来たんじゃないかという気がしますがね。新年早々物騒なことを言いますけども。

 暮れにあるコラムに書いたんだけども、ジャンケレヴィッチ(ウラジミール・ジャンケレビッチ フランスの哲学者)という、ソルボンヌ大学の哲学の主任教授の人が『死』というとっても分厚いおもしろい本を書いているんだけど、その中で、これはだれでも知っていることですが、ジャンケレヴィッチが特に言ったことじゃないけども、人間はだれでもみんな死ぬんだということを知っているけど、自分が死ぬと信じているやつはいない。と同じように、死というものは、人間にとって最初で最後の未来であり、未知だと言うんですね。

 地球全体も、本当に地球にとっての最初で最後の未知、未来に差しかかっているんじゃないかという気がしますけども、相当なことを考えませんと、本当にポイント・オブ・ノーリターンを過ぎて、積み過ぎのダンプカーが障害物を見てブレーキを踏んでも効かないみたいに、実際に人間ってのは衝突しないとわからないところがありますから。

 特にメディアの皆さんは、この問題は、本当に折節に視聴者がそれなりの認識を持ってもらう努力をしていただきたいと思いますね。

 私から申し上げるのは、そういうことですけれども。今日は別に特段申し上げることはありませんが。風邪が治らないんでね、どっか治してくれるったら共産党にでも入るよ、おれは(笑)。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】今日午前中の職員の方々への訓辞で、かなり厳しいこともおっしゃっていらっしゃいましたけれども、どんなことを念頭に浮かべて、また、どんなことを期待しておっしゃっておいでだったのか、教えていただければと思います。

【知事】それはいくつもありましたね。小さな指摘のようで実は大事なことで、ちっちゃなことができない人間ってのは大きなことはできないんだよ。ちょっとしたことで気をつけりゃいいことを気がきかないからやるんでね。

 前はかなりライン化を阻止するために言いたいことを言ってきて、人も替えたりしたけど、ちょっと強面(こわもて)し過ぎたから、それをはばかったせいかどうかしらんけど、たるんできたね、都庁は。特にオリンピックみたいな新しいことをやると、人のやっている仕事に無関心で、ちょっと気をきかせりゃ随分みんなのためになることをやらないね。これは私並びにそこに並んでいる偉い人たちの責任だな。

【記者】今五輪招致の話も出ましたが、今年は五輪招致レースが本格化して、そういう意味では国を巻き込んだ闘いというのが求められますし、一方では…。

【知事】巻き込みたいけど、国がね、どこにあるかわからねえんだよ、この頃もう。

【記者】法人事業税をめぐる実務者協議では、総力戦で国から実を得ていくという戦いが求められますが、これまでも国に対しては毅然とした姿勢で臨まれてきた知事なんですが、今年1年、国に対しましてどのようなスタンスで向き合い、あるいはけんかしていくというふうなお気持ちなのか、意気込みのほどをお聞かせください。

【知事】あのねえ、今のやっぱり国会の状況見てるとね、次の選挙を念頭に置いてかしらぬけど、非常に悪いポピュリズムだね、言っていることが。これはもうやられたら、かなわないしね。実は国民はそういうもの好きなんです、案外ね。ポッと飛びつく。

 例えばね、要するにガソリン税の、あれは目的税の税率を下げる云々と言うけど、それは下げるとね、油が25%安くなるでしょう。それは国民、車に乗っている人は喜ぶだろうけどね、そのかわり、その金なくなったら、道路というのはできなくなりますよ。そういう、何ていうのかな、一種のトレードオフ、取りかえっこをどういうふうに冷静にするかという問題だけども、別に特定の政党を非難する訳じゃないけど、それに便乗して与党も野党もみんなポピュリズム合戦になるとね、政治は非常に効率が悪いものになって、結局ツケは国民に回ってくるんですよ。次の選挙、その次の選挙を考えたってしようがないんでね。だから、もうちょっとね、政治家が大きな使命感を持ってもらいたいね。

【記者】午前中の年頭の訓辞では、官僚に対して都の職員のアドバンテージなんていう言葉も持たれましたが、そういう意味では、官僚、対官僚という意味では、今年はどういうふうなことになるんでしょうか。

【知事】だからやっぱり地方公務員じゃなしに首都公務員という自覚を持って国とやっぱり対峙してくれと言っていますし、この間の特別協議会も、やっと発足しましたがね。出るときは私も出ていきますけども。

 つまり、首都公務員も国家公務員も、国家公務員をあごで使っている政治家もだな、物事の大きな流れというのはどう動いているかということをやっぱり腰を据えて眺めないとね、具体的な、何というのかな、いい案というのは出てこない訳ですよ。戦略の流れというものをとらえないと、戦術は出てこないんでね。

 そういう点では、毛沢東の言った矛盾論じゃないけどね、やっぱり目の前にあるような問題を、主要矛盾、つまり大きな根本的な問題が派生している訳だから、我々エンドレスな、まことに従属矛盾ということになるんでしょうけども、しかしやっぱりもっと大きなものの流れというものがどう動いているかということをやっぱりとらえないとね、本当のいい案は出てこない。特に国会にはそれを願いたいですな。

 彼らの現場感覚って、私もいた所だから言いたくないけども、ますますこうなってくると現場感覚、何があるのか、選挙の利益でしょ。そんなもんで大事な問題を左右されたらかなわんと思いますよ、本当に。

【記者】全国高校サッカー選手権で都立の三鷹高校が都立初のベスト8進出を決めたんですけれども、明日、準々決勝があるんですが、この活躍を知事はどのようにご覧になっていますでしょうか。

【知事】なるようになるさ、あんなものは(笑)。別にこっちがやきもきしたってさ、どうなるもんじゃないし、監督、選手が一生懸命やるということだよな。

【記者】ちょっと先の話なんですが、首都高の料金制の問題なんですが、今年の秋に現在の均一料金から距離別に応じた、走行距離に応じた料金制に変わるかと思うんですが、初乗りが400円ということで、短距離については現状より安くなるんですが。長距離というか、最大1200円ということで、長距離は高くなる可能性があるということで、比較的長距離を走るトラック業界などが、この料金制発表以降に非常に不満というか反対の声を上げておりますが、そのほかにETCを持ってない人に対しても、代替システムということを首都高会社のほうでは考えているようですが、いったん最高額を徴収するということで、これも手間がかかるということで不満の声が出ているんですが、この件につきまして、知事の所見をもう一度お伺いしたいんですが。

【知事】所見たってね、私もユーザーの1人ですけど、特にトラック協会に非常に世話になりましたよ、大気汚染の問題でも。業界の言うことは妥当だと思いますね。トラックのように特別の業種というのはね、普通の自家用と違って、かなり長距離を走る訳ですから。本当は外環ができていればね、首都高を使わずに済んだ訳で。

 しかし、私はやっぱり個人的には業界びいきというか、業界にも恩義あるしね、考えてみても、やっぱりちょっと、一番高い料金の水準というのはもうちょっと下がるんじゃないか、下げたほうがいいんじゃないかという気がします。

【記者】何かしらその辺は首都高会社…。

【知事】やっぱり700円で初乗り、慣れてきたんだからね。僕はやっぱり初乗りを400円じゃなしに500円とかね、適当なところで設けてね、それで上の、上限というものを下げたほうがいいんじゃないかと思いますけどね。

 はい、それじゃ、どうも。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)