石原知事記者会見

平成20年4月3日更新

石原知事定例記者会見録

平成20(2008)年3月28日(金)
15:57〜16:15

知事冒頭発言

平成20年度予算について

【知事】皆さんも本会議、予算委員会を傍聴していただいたと思いますけども、20年度予算が終わりまして、それについて、重複することもあるかもしれませんがコメントさせていただきます。先ほど、都議会本会議で、平成20年度予算案など提案していたすべての議案を可決いただきました。本定例会では最大のテーマとなりました新銀行東京についてですけども、まず改めて都民の皆様に、ご心配をおかけしましたことをお詫びいたします。

 熟慮に熟慮を重ねた上で、新銀行が支援してきた中小企業を支え、その従業員とか家族の皆さんの生活を守り、都民の皆様の負担を今後最小限にするには追加出資するしかないと判断して補正予算案を提出いたしました。これは、大きな局面についてなかなか理解が得られないんですね。皆さんも専門家じゃないし、都民の皆さんも特にそうですから、日本の今の金融事情がどういう状況にあるかということをね、皆さん、よほどの関係者じゃないと精通しておられないと思いますけども、かなり際どいところまで来ていますね。片方じゃサブプライムの問題があったりしますけどね。私たちが一番恐れたのは、これが清算なんてことになったときに、追資の額以上にはるかに大きなお金がかかるんですけど、それだけじゃなくて、東京発の金融恐慌とか金融不安というものが広がったりするとえらいことになりますから。地方の銀行の倒産なんかと違うんですね、これ。やっぱり東京の、しかも東京がバックアップしてきたこの事業ですから、それが潰れることになると、非常に悪い影響が全国に広がる可能性があるので、それは何とか食い止められたということで非常にありがたいと思いますけども。何れにしろ、この選択肢しか私はなかったと思います、金目の問題だけで考えても。

 何れにしろ、この追加出資を是としていただいたのは、東京の中小企業と都民の生活を守ろうという都議会の強い意思と冷静な見識のゆえでありまして、これは非常に感謝し、重く受けとめております。同時に、追加出資によって新銀行東京の経営基盤が強化されることで、第2次ステージの大幅な、前と違った事業展開が非常に可能性が出てきましたというか、この成り行きを見守っていた外部者がある評価をして積極的に踏み込んできてくれることを期待しております。

 今後、これまでの反省に立って、監視組織を構築するなど万全を期して、新銀行東京の再建に当たってまいりますが、具体的な都側の体制についてはね、4月1日付で産業労働局に金融監理室を設置しまして、その配役も決めましたが、金融支援担当部長を置いて、監視並びに支援の強化を図っていくつもりであります。これは、東京もいくつか、ご存じのように局がある訳ですが、その局がいろいろ抱えている仕事がある、企画している仕事がある、私たち上まで伝わってこない計画があったりするんですけどね、少し各局の幹部にも勉強してもらってね、都が実質的に抱えているというのかな、監理しなくちゃいけないこの銀行のために、自分たちのこれから展開しようとしているこういう事業がこういう役に立つんじゃないかというふうな、そういう発想を持ってもらってね、やっぱり局をまたいだ横串で貫いたそういう共同作業というのを銀行のためにしていこうと思います。

 また、新銀行東京だけではなくて、可決された予算を着実に実行して、「10年後の東京」の実現に向けた確かな歩みを進めるとともに、子どもたちに心の財産を贈る2016年東京オリンピックの招致競争に何とか勝ち抜いていきたいと思っています。併せて、極めて深刻な地球温暖化など、歴史、文明の大きなうねりの中で私たちの子孫が胸を張って安心して住めるような、そういう東京をつくっていきたい。それが同時にこの国の未来を切り開くことにもなると思いますので、今後、職員全員、全身全霊を傾けて都政の運営にかかわっていくつもりであります。私もいい勉強をしましたね、今度は本当に。何かご質問ありますか。ないね、もう。みんなほっとしているよ。

質疑応答

【記者】先ほど、会見の冒頭で謝罪の言葉がありましたけれども、知事が最初に謝られたのが25日の予算特別委員会だったんですけども、通常こういった…。

【知事】いや、謝る、謝らないという言葉じゃなくてね、それは責任を感じていることは前から言っていることですからね。責任を感じていることは、やっぱり謝意を持っているということでしょう。ただ、その責任がね、何をもって責任の履行になるかということがさっぱり委員会のほうからも、議会のほうからも要求はないし、野党から特にですね。それから、あなた方がつくった世論調査というのはね、僕は敢えて言いますけどね、世論調査なんて気にしていたら政治なんかできませんよ。あなた方が対象にしている世論調査の対象の人たちが何知っているんですか。世論調査をやっているメディアが何知っているんですか。例えば、日本の金融の全体を大まかに把握しているんですか。こういった中でこの選択肢しかなかったという理解が得られなかったら、それはいつまでたっても悪者にされるけどね。それは敢えてこちらも覚悟して臨んだんだけども、やっぱり議会が混乱しますからね、ああいう、さしたる正確な論拠のない世論調査というのは善し悪しだと私は思いますよ。例えばね、共産党が言っている、当初の頃のね、要するに取締役と執行部の間の軋轢(あつれき)の中でのメモなんてあるんですか、あれ実際に。マスタープランを絶対やれなんていう押しつけっていうのがメモにあるっていうけど、じゃ、どんなメモで、だれが書いたか出してもらいたいんだ。そうすると、つまりマスタープランを押しつけたのは都側の責任、つまり取締役の責任に転嫁される訳でしょう。実際にそういうのがあるなら出してもらいたい。これから銀行が訴訟するかしないかわかりませんけどね、その過程でわかってくるでしょうけども、そういう点ではね、ちょっとやっぱり調査委員会の調査も、内容の出し方が少なかったというのは、私はそういう気がしますけどもね。まあその先のことを考えたこと、これはこちらが立ち入って言うことじゃありませんから。ということですな。

【記者】お詫びの言葉のタイミングはなぜここまで遅れてしまったのかということについて…。

【知事】いや、前から責任を感じていると言っているじゃないですか。責任を感じているから、謝意があるからですよ、そんなもの。ごめんなさいと言うことだけが責任の履行にならないじゃないですか。

【記者】知事のお気持ちは当初から変わらなかったと。

【知事】もちろんそうですよ。それは本当に私、責任感じていましたよ、ずっと。まさしく言い出したの僕だから。だけどね、これは1人が決めて、1人が運営して、1人が人を決めて、できるもんじゃないですよ、銀行の設立なんか。僕は全くの素人だから、その是非もやっぱり都で議論してほしい、あるいは議会で議論してほしい、とにかくやろうじゃないかということになって人を選んだ訳でしょう。この人選だって、私は金融関係のことはわかりませんからね。これはやっぱり人任せというか、人の責任転嫁じゃないけど、任せて、人を選んでもらったんですよ。

【記者】もう1点伺いたいんですが、野党側から、共産党からは不信任決議案が出されて、民主党から問責決議案を出されたと思うんですけれども、かなり何十年かぶりに出されたということで、議会としてもかなり重い決断だったと思うんですが、知事として、否決はされたんですけども、どのように受けとめたんでしょうか。

【知事】私は、この問題の本質を私が心得ているつもりですからね。ただ、やっぱりね、議会にとって非常に重大な選択だったということはよくわかります。それに付随して、不信任案が共産党から出たというのは、それはむべなるかなという気がするし、言ってみりゃ政治家にとって男の向こう傷みたいなもので、これを背負って私は行きますよ、これから。その責任でも、再建のためにもうちょっと口を突っ込んでいってね、自分が踏み込んでいって、監視しながらですな。やっぱりかなり時間はかかると思うけども、しかし、そう悠長に待てない。私の在任中にめどがつくように、再建を果たしていきます。

【記者】金融監視室を設けるということですが、この前、知事、答弁の中で、銀行法の制約とか、いろいろな監視について制約があるというお話をされていましたけども、それは今後、金融監視室を設けることによって、何か監視体制を強化できるものなんでしょうか。銀行法の制約とか変わってこないと思うんですが。

【知事】そうでしょうね。ですから、我々のできることは、どうなっているんだ、どうなっているんだとしつこく聞いて、できるだけの情報は、大株主としての責任でとるということですな。それから、やっぱりセカンドステージの多角的な事業展開のために、こういう案がありますよ、こういう物件というか案件がありますよ、これは証券にできますよ、債券にできるんじゃないんですか、そういうサジェスチョンはやっぱり、都の官僚にそういう発想力はないけどね、これから勉強して、あるノウハウだけはつかんだら、自分の局なら局が考えているこういうプロジェクトが非常に参考になるんじゃないのか、そういう持ちかけ方は、私はできると思います。また、それを実は過去1年近いヒアリングの中で、そういう可能性について一番指摘したのは、むしろ外国人だったですね。外国人のほうが、はるかにそういう意味で金融の商品にかかわる、何というんでしょうね、東京の可能性っていうのを、ある意味で、日本のいかなる専門家よりも熟知していました。日本にも少数、そういう人はいましたけどね。残念ながら、今までの新銀行東京の経営陣にはそういう発想はなかった。残念です。

【記者】再建に絡んでなんですが、26日の予算特別委員会終了後のぶら下がりの中で、知事は、400億円を毀損する訳にいかないというふうにおっしゃいました。そういうときに、もし毀損するようであれば、責任というようなこともおっしゃいましたが、これは知事としては、やっぱり400億円については1円たりとも毀損させない、そういうお考えなのか、どういうふうに…。

【知事】毀損するって、やがて減っちゃってなくなったということには絶対しちゃいけないし、すべきでもないし、そんなことのないような施策を立てていきたいと思っていますよ。

【記者】1円たりとも毀損させないという意味ではない訳ですね。

【知事】それは言葉のあやで、そんなものをとらえて、どういう責任を要求するか知りませんけど、そんなことじゃないです。ただ申し上げることは、これで、つまり、ある信用性がついた。ムーディーズの評価も変わってきた訳ですね(※)、1ランク上がったりして。その信用度も踏まえて、再三申してきたことですけれども、やっぱりセカンドステージの仕事は展開しやすくなった訳ですから、それが順調に展開していけば、私は、400億を毀損せずに、むしろそれを償還していくというんでしょうか、そういうことができると思うし、そのつもりでやりますよ。繰り返して申しますけど、今までみたいな中小企業だけの融資の業務だったら絶対儲からない、これは。それは低空飛行で、そのうちに着地しちゃうかもしれない。それだったらいけないから、つまり、ほかの何というか業務部門というものを開いていきたいと思っていますけど。

※東京都は、平成19年2月1日に、ムーディーズ・インベスターズ・サービスから、初めて都債の格付けを取得した。(平成20年3月時点の格付け:自国通貨建てAa1・外貨建てAaa)

【記者】先ほどの関連なんですけれども、今までのやり方では儲からないというふうにおっしゃっていましたけれども、今後は、じゃ、ある程度リスクをとるような部分での商品にも可能性を広げていくという意見ですか。

【知事】少なくとも、違う部門の営業をしようと思います。ですから、中小企業のためにつくったあれですから、中小企業に一切貸さない、そんなことじゃないですよ。その条件を変えて、要するに、そういう融資はするかもしらんけども、しかし、やっぱりそれでは先細りでしかないんでね。東京のポテンシャルを踏まえた金融業としての営業というのはあると思うし、また、あり得るし、それをやりたいと思っています。

【記者】その可能性というのは、リスクの高いものも、低いものも、両方含むものなんでしょうか。

【知事】それはやっぱりそれこそ営業する人たち、業務を執行する人たちの判断の問題でしょうね。ただ、そんなものは危ないからやめろとか、それならやっていいとかという権限はこちらにない訳だから、それはやっぱり人を選んで執行部に据えないと、とてもおぼつかないと思います。ただ、日本の金融の専門家が、うちの息子も含めてだけど、言っていることは、銀行は非常に難しい。ただ手数料だけで食っているような商売ってのは、これからも将来性はない。まさにそう思いますね。じゃ、ほかの外国の銀行は何をやっているか、あなた方、調べてごらんなさいよ。全然違うことをやっているから。何で日本はそれをやらないんですか。そのノウハウってのは、国の役人からも聞いたことないし、日本の学者からも聞いたことないね。それだけ日本は遅れているんですよ、残念ながら。

【記者】もう1点、済みません、ちょっと銀行から離れてしまうんですが、道路特定財源の暫定税率の撤廃なんですけれども、これがもし実行されれば、都の財源にも影響があると思うんですけれども、この一連の、与野党の攻防を含めて、事態をめぐるご感想と、何を政府・与野党に望むかというのをお聞かせ願えますでしょうか。

【知事】それはやっぱり、何も巧緻な推理小説を書いてもらう必要はないけどね、こういう大事な物事を、いくつかのステップを想定して、想定してものを考えなかったら、その場当たり、場当たりだったら、とんでもない結果になっちゃいますよ。どこがどう考えたって、東京だって800億ぐらいマイナスになる。やりかけている事業だって手控えなくちゃいけなくなるかもしれない。補正も組まなくちゃいけないかもしれませんけれどね、もっと経済的に余裕のない地方自治体というのは、もっと困ると思いますよ。ガソリンが25%安くなったからって、それだけで済むかというんだ。財源がなくなっちゃうんだから、ほかの事業がとまる訳でしょう。じゃ、ガソリンが安くなったから大いに走ろうという車はどこを走るかといったら、行ってみたら、そこで行き止まりみたいな道ばかりでしようがないから、新しい道もつくろうということになるんだろうけども、そこら辺の何か循環というものを、政治家もよく考えてやってもらいたいね。

【記者】先週もちょっと伺いましたが、オリンピックの開会式について、ヨーロッパの各国、ポーランドとかはもうボイコットという話が出てきておりますが、改めて知事、これに対するスタンスをお聞かせいただきたいんですけれども。

【知事】私は静観していますな。隣国でもありますしね。やっぱり日本は例の冷凍ギョーザも体験した訳ですよ。これ、この間、外国のあるジャーナリストが言ってたけど、石原さん、あんなことをオリンピックのとき、オリンピック村でやられたら、選手たち、壊滅しますなと。そういう可能性あるんでしょうか、ないでしょうか。それは中国の当局に聞いたらいいじゃないか、と。しかし、やっぱりそういう懸念はどんどん広がっていく可能性はあるわね、これは本当に恐ろしい話。あの問題というのは、実に何も解明されていないでしょう。現に日本人で、ああいうとんでもない被害者が出て、それを飲んだらもっと瞬間的に死んだだろうけど、パラチオンなんて猛毒のうちの猛毒が混入している。こういった事態が何で起こったかということが一向に解明されないままにオリンピックをやったときにね、食べ物に関しての不安ていうのは、どこの国の選手も持つんじゃないか。自分の国は自分で、要するに、食べ物は方途するといったって、抱えている選手の数によったら、とてもそんなことできないですよ。まあ、それは厄介な問題が一向に解決されないという感じがしますけどね。僕は、私にそういうことを聞いてきた外国人記者の危惧ってのは、なるほどなと思いますね。

 はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)