石原知事記者会見

平成22年5月20日更新

石原知事定例記者会見録

平成22(2010)年5月14日(金)
14時59分〜15時23分

知事冒頭発言

【知事】冒頭、私から申し上げることはございません。質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】普天間基地に関連して1点伺いたいと思います。
 昨日の九都県市会議の後にも伺いましたが、総理が全国知事会議で、沖縄の基地負担軽減について、知事会議の開催を要請いたしまして、昨日、大阪府知事からは、全国で受け入れられるかどうかということが、分権の1つの試金石だというような趣旨のお話もされていますが、この件について、知事の見解、改めていただければと思います。

【知事】普天間が象徴する沖縄のアメリカの陸海空、海兵隊を含めた戦力の存在意義というものを全国の知事が認めて、その機能というものを担当する基地というものを、できればあちこちで引き受けてくれということなんでしょうけども、アメリカの、沖縄というものを主な起点として展開している、軍事力の配備というものの抑止力の構造というものを眺めれば、かつては、アメリカの報告にもあるみたいに、日本における在日米軍基地の最も大事なものの1つが三沢であり、岩国であり、嘉手納であったんです。これは、冷戦構造の中で、たびたび三沢にある日本の空軍とアメリカの空軍が協同して領空を侵犯してきたロシアの空軍に、スクランブルをかけて追っ払っていた。そういう時代というのはほとんど解消しました。冷戦構造も崩壊して、ヨーロッパでの西東の軍備配備も大分形が変わってきましたけど。今、この東アジアにおいての、日本とアメリカが協同して守らなくてはいけない仮想敵国というか、危険というものの存在の温床と言えば、それは北朝鮮と中国でしょう。
 そういったものを想定して考えるときに、基地というのは相手の近くにあればあるほど有利なわけだし、間近過ぎてかえって不利なこともありますけど。これが、どれほど日本以外の国にも頼りにされているか。韓国もそうだし、台湾もそうだし、東南アジアの国々もそれに期待している。
 そういう中で、かつて、私の親友の奥さんだったコーリー(コラソン・アキノ)という人がフィリピンの大統領になって、しきりに、フィリピンにある米軍の基地に出ていけと言うから、ナショナリズムは結構だけど、コーリーさん、あんまり言い過ぎると、アメリカは出ていってしまうよと。それで、実はアメリカは、フィリピンにおけるスービック海軍基地と、それからクラーク空軍基地とは全然評価してないんだよと。これを見なさいと言って、私が手にしていた、アメリカの極東における軍事基地の評価分析というのを渡してやりました。そのときに、そこに何が書いてあったか、気の毒な話だけど、クラーク・エアフィールド、スービック湾の海軍基地というものの存在価値はほとんどない。特に日本における基地に比べれば全く見劣りする、ほとんど価値がない。唯一の価値は、Absolutely cheaper prostitutionと書いてあった。決定的に安い売春だと。これにコーリーが怒ってしまった。けしからん、出ていけと言ったら、出ていってしまった、アメリカ。
 その後、あの基地の経済といったら、疲弊しているというか、基地がもたらした経済というのは全くなくなって、それで、あそこへ企業誘致の特経区をつくりましたが、あんまり流行ってません。何が怖かったといって、その後、フィリピンが、ちょうど日本の尖閣諸島と同じように、ぎりぎりの境界線で持ってるスプラトリー諸島というのは、完全に中国に取られたんですよ。
 彼ら何をやったかといったら、もともと中国の領土だと言い出した。その常套手段で、調査団がやってきて、そのときに、昔の小銭とかいろんなものを海の中にばらまいて、次の調査のとき、こんなものが出てきた。これ間違いなく、中国の領土という証拠だということで、そこら辺というのは、考古学者というか、それ見た人もいるわけだけど、とにかく内部告発があって、そういうことで、あっという間に非常にきわどい領海線にある、どこの領土か決めかねるから、海底資源のある、あそこは非常に浅い海ですから、それが中国に席巻(せっけん)されました。
 そういう事例を、鳩山大先生が知ってらっしゃるか知らないか知らないけれども、一国の総理が、この時期になって勉強したら、海兵隊などの機能からしての抑止力というものを、初めてとは言わないけれども、つくづく大事だと認識しましたというのは、ナンセンスなんだよ。
 私は、前も言ったことあるかもしれないけど、外国人記者クラブの、おそらく国会議員時代から、今の政治家であそこのアソシエイト・メンバー(準会員)は私一人だと思うけれど、この間も行って、話を聞きましたときに、ある経済人が言ったって同じことを聞かされた。それは、僕は怒りっぽいものだから、嫌な情報を聞くとかっとなるんだけど、それがおもしろいから、親しい外国人の記者が教えてくれるんだけど、ワシントンでのコンフィデンシャル(機密)というのは、10日以上たつと伝わってくるんだ、ベテランの記者には。その中の1人がこう言ってた。かつては日本バッシング(叩き)だったと。その次、日本パッシング(外し)になったと。今、石原さん、何だか知ってるかと。ジャパン・ディッシングなんだと。ディッシングというのはどういう言葉かというと、例えばディスカウントとかディスは否定的、つまり、彼らの語感で言うと、日本無視です。これは、非常に屈辱的だし、日本にとって好ましいことじゃないし、明らかに危険です。
 そういう評価しか国際的に受けてない総理大臣が、この段になって、戦術、戦略というものの様式、図式、本質を知らないでここまで来た人が、何をもって日本中の知事を集めて、どこかいいところないかって聞いたって、仮に、福島県とか岩手県が手を挙げたとすると、そんなところはアメリカがうんと言うわけないです。距離感から言っても。何のためかさっぱり分からないね。
 橋下(徹 大阪府知事)君は、どういうつもりでか、沈下しつつある、あまりユーティリティー(有用性)のない関西空港を提供してもいいと言うけど、別にあそこへ、海兵隊持ってきてもどうなるものでもないでしょう。演習はしなくちゃいけない。そのスペースはどこにあるわけでもない。和歌山の山の中でやるのかな。
 色々なこと、推測もされますけれども、私は全国の知事会開いて、どこか受け手ないですかと聞くことそのものがナンセンスだと思う。それは何か国民に対するプレゼンテーションになるんでしょうか。私は全くならないと思う。
 はい、どうぞ。

【記者】今の質問に関連して、知事のおっしゃられるような国益上、極東の戦略上の部分で、沖縄というのが重要だというのは分かるのですけれども、その一方で、今回の問題で、沖縄県民の負担軽減の声というのがあるというのも、広くもう一度再認識させられたと思います。それで、国際戦略上の部分の中で、沖縄の人たちに基地への負担を納得してもらうためにどうするべきだというふうにお考えでしょうか。

【知事】これはやっぱりアメリカとの合議の上でしか選択というのは許されないと思います。アメリカが、例えば今言ったような観点から言って、仮想敵国視している北朝鮮なり中国というものに対する抑止というものを展開するために、新潟が近くていいとか、あるいは、日本海側のどの県がいいって言って、それで済むことですか。地元の問題あるでしょう。
 沖縄は、過去にあそこは激烈な戦場になった。その後占領、分割統治されて、かつては日本の領土でなかったわけだから、その期間、アメリカが、自分たちの世界戦略を考えて、あの頃はまだ冷戦構造もあったし、中国はだんだん共産化されてるプロセスだったけれども、その中で、嘉手納含めての沖縄に、基地を築いて、アメリカにとっての要塞化したっていうのは、それなりの理由があったし、それを、沖縄の県民の人たち、はね返す力なかったです。日本に統治されてなかったのだから。佐藤(栄作)政権のときに、沖縄が返還された。基地ごと返還されて、それで、基地を返せというときに、色々な条件があった。有形無形、極秘にされたものもあるけど、核の持ち込みを。
 ただ、あの時点で、激戦地として奪われた領土を、ある理念を掲げて、佐藤政権が、アメリカに返せと言った。これは画期的なことでしょう。アメリカもそれに応じた、色々な判断で。しかし、その時つけた条件というのは、沖縄の、アメリカにとって戦略展開の意味というのは失わないし、私たちもこれは変えるつもりはないということをはっきり言ってます。
 ですから、そういった歴史の経過を眺めれば、沖縄の人たちは本当に気の毒だけど、しかし、歴史を逆戻しするわけにいかないわけです。だったら、もう1回もっと我慢してください。ただ、そういうものに変に火をつけちゃったんだね、現政権は。過去のそういう歴史も知らずに、どこまで熟知してるか知りません。しかし、日米交渉で、沖縄が持ってきた機能、見えるところ、見えないところの対応というもの、沖縄のことについて、県外ということを発言するんだったら、そのために外務省や防衛省に、今までのいきさつについて聴取すべき、知識を備えるべき聴取が行われてしかるべきだったんじゃないですか。それについて聞かれた専門家は1人もいない。内部ではどんな話があったか知りませんけど。
 そこら辺が問題だったわけでしょう。私は、役人嫌いだ。役人の方がいいなと言う自民党なんかうんざりしてやめました。しかし、役人は役人で経験があるし、知識があるのです。彼ら、得意としているコンティニティー、コンシステンシーというのは、継続性、一貫性って、そんなのは通用しない変化の時代になってきたけど、それでもなお、彼らが自負している、その姿勢の中で蓄積したノウハウとか、事実というものは、継承されているわけだ。政治家はそれを熟知した上で自分の判断したらいいんじゃないですか。そういう努力もしないで、思いつきだ。理念じゃない、ただのセンチメントの域を出ない思いつきで物を言っても、やたらに混乱が広がるばかりで、自縄自縛(じじょうじばく)になると私は思いますけど。普天間の問題が典型的にそうじゃないですか。

【記者】一度、全国の知事会でもいいんですけども、どこかで、例えば新潟という話が出ましたけども、そういうどこかでできないのかという、話し合う機会があってもいいような感じもするんですけど。

【知事】いいんじゃないですか、それは。やったっていいと思う。しかし、この時点でこんなふうに物事が深刻化して、非常に感情的な問題になりつつあるときに、徳之島の問題なんかだって、ああいう形で持ち上げれば、結局それは需要のある人だっています。そんな議員の映像も出ていたけど、そういうことを全部圧殺されて、これまた非常に悲壮なセンチメントで、否定される。そういうものの中で物事をなし遂げようっていったって、本当に難しいことで、自分で自分の穴掘ってるとしか思えない、僕は。やり方見てると、下手くそだ。私に言わせると。
 どうぞ。はい。

【記者】参院選に絡んで、民主党も、かなり苦境に追いやられてるのかどうか分からないですけれども、オリンピック選手の谷亮子さんを出馬させるなど、ある意味、有名選手に頼った選挙戦に陥ってるような感じがするんですけれども、こういうポピュリズムじゃないですけれども、人気とりに頼った選挙戦が果たしていいのかどうか。本来ですと参院選に絡んで、政局ですとか、政策で争われるべきだと思っておるんですけれども、この辺、知事のお考えを……。

【知事】それは国民の一人一人が判断すべき問題で、私が総括的に言う必要はない。君なら君自身がどう思ってるんだ、それは。今思っているとおりに君は感じ取ってるわけか。

【知事】どういう候補者が、この政局の中で、参議院の候補者とふさわしいと君は思うの?例えば。

【記者】私自身はやっぱり政治に関心があって、それなりに日本をどういうふうな国にしていこうという、政治的な素地があって……。

【知事】政治的な素地って何だね。議員の経験かね。そんなものはナンセンスだよ。

【記者】やはり日本をどう変えていこう……。

【知事】じゃあ、谷亮子さんに聞いてみてよ。君は日本を考えたことないのか、あるのか。聞いた上で質問してよ。それが記者の責任じゃないか。

【記者】ただ、国民の目から見ると、やはり……。

【知事】国民の目は君らがつくってるのだろう。だから大事なんだ。一人一人の記者が自分の見識で、責任で、物事を見届けてきた上で質問しなさい。

【記者】なるほど。ということは、政策っていうのを争われるように聞いてくべきだと、マスコミの人たちは。

【知事】彼女は政策持ってないとは言えないんじゃないですか。確かめてきなさいよ、あなた。
 はい、どうぞ。

【記者】羽田空港の国際化の関係でお伺いします。10月31日から、国際定期便が就航ということが発表されましたけれども、今まで東京が国に要望してきた方向性だと思うんですけども、改めてこの受けとめと、今後は成田とすみ分けして一体的に活用していくという方向だということなんですけども、東京のほうから国に対してこれからどういったことを要望して期待していくのかということをお願いします。

【知事】知られてることは手のうちを明かすみたいな話だけども、何人かの人間が画策して考えた通りになってきたんです。だから、羽田の4本目の滑走路つくるときも、何を想定したかっていえば、それができたところで最初の発表みたいに北京とごく近くの外国しか行かない、そんなことは毛頭考えてなかった。だんだん、くだらない反対もあるから、こういうこと言うとすぐ。最初から、とにかく、やがての時点で拡大してって、滑走路の距離の問題もありますから、近い将来ヨーロッパの入り口、それから、アメリカの西海岸までは飛ばすということは決まってた、そんなことは。国交省との兼ね合いで、最初から。
 さらに、ある滑走路の延伸というものが出来れば、これは大型機を満員、満タンにして、ヨーロッパの奥、あるいは東海岸、つまり、ニューヨーク、ワシントンに飛んでいける、そういう空港にしようというつもりでやってきました。やりつつありますということです。
 役人も政治家もそうばかじゃないんだよ。ただ、世間は何だかんだ言うし、最初のうちは穏やかというか。だから、何で北京しか飛ばない、アジアまで飛ばせって声は当然ありますよ。そういうの出させてくることで、積み上げていったので、思ったとおりになりました。
 はい。どうぞ。

【記者】今日、知事は東宮、皇太子のほうに御進講に行かれたと。

【知事】行ってきました。

【記者】はい。やはり、都政等、いろいろ課題をお話しになられたんですか。それに対して、皇太子のご反応というか、対応はどのようなものだったでしょうか。

【知事】大変興味深く聞いていただきました。それから、私がお勧めして、今まで幾つか、東京の、案外人の知らない、地下の貯水池、そんなものを見ていただいて、石原さん、見てびっくりしたと、とてもおもしろかったと言っていただいたし、今度はちょっとあることをお勧めしました。君らに言うとまた大騒ぎになるから、実現した後で行きなさい。
 はい、どうぞ。

【記者】政府が来週実施する、いわゆる事業仕分けの対象に全国知事会(を取り上げるという方針を固めたという件について)。

【知事】あれはナンセンス。事を知らないから。国から金をもらってやってる組織じゃないので。確かに、あの中に天下りの役人います、国からの。しかし、それは全然違って、あれは、各県の分担金でやってるので、政府が口出していいとか悪いとか、ただ、あそこにいる国から来た役人、いてもいなくていいんだ、あんなものは。
 私は、昨日の九都県市の首脳会議で言ったんだけどね、いまだに、大阪はやってくれてるけれども、同じことを。こちらはもう随分お金をかけて作ったんだ。ただで提供しますって言ってるんだけど、ほかの地方自治体は、会計制度やりません。それで、自治省が進めてる会計制度、これはなし崩しなもので、全然、公会計の体をなしてない。
 専門家に言わせたらぼろくそなもんだけど、なぜそんなことになるかということで、ある地図を見せた。東京を含む、都道府県の中で、県のお役人の偉いところで総務省から来てない県っていうのは、本当5、6県で、あと全部来てるんだよ。結局、ああいう役人というのは、自分の古巣振り返って、古巣の言うとおりのことしなさいという取次ぎしかしない。それで、各県知事も、県のお役人も、会計制度については、こんなものに精通してる人間っていうのはあんまりいません。そうすると、結局、言いなりになって、相変わらず無駄の多い、財務諸表もない。それから、外部監査やれって言ったってやってない県もたくさんあるから、やったところで、その後の更なる監査ってしてないから、東京は指摘受けたものを、1年同じ、指摘した、公認会計士とか外部監査員に、1年たって、やってないじゃないかって事例というの摘出されて、ほとんどやってました。
 ですから、それやってるから、神奈川県を見て、ああいう気の毒な、副知事が2人も責任とらざるを得ないようなああいう事態というのが起こらずに済んできたので。国もやったらいいんじゃないですか、人事院勧告なんて、あんなでたらめなものないんだよ。あれは、プロテクション(保護)になって、役人の数は減らない、役人の給料は減らない、国会議員の歳費は減らない、ばかなこと続いてるんです。それから、政策調査費なるものも、どこの県でも問題になって、国なんかべらぼうなものじゃないか。それで、実際にそれを配られて、勉強してる議員なんてほとんどいなくて、しかも勉強しようと思ったら、その金は政党がピンはねするから、潤沢な金が出てない。ああいう制度っていうのはどうなんですかね。私は、外部監査入れて、正当な監査をしないというのは、とんでもないことで、外国では通用しないと思います。そういうことです。
 どうぞ。

【記者】羽田空港へのアクセスについてお伺いします。京浜急行が羽田(空港へのアクセス向上のため、京急蒲田駅は通過になるという件について)。

【知事】あれは、大した問題じゃない。時刻表とかダイヤグラフ見なさいよ。9本のうち3本停まらないだけの話で、あとは停まるんだから。あれは、あそこの区長さんがちょっと1つのプレゼンテーション、コメントせざるを得ないコメントをしたんだろうけど。
 それで、あそこで乗り降りする羽田行きのお客が痛痒を感じることはほとんどありません。

【記者】そうすると、大田区のエゴだというふうに……。

【知事】エゴとは言いませんよ。そこら辺等は、政治家のプレゼンテーションで、9本走ってる特急の中で3本は停まらない、いいじゃない。あとの6本行ったらいいじゃない、それは。蒲田から羽田に行く客って、一体羽田に用事がある客の何%あるんだ。目と鼻の先だから、自転車でだって行けるところだ。それは大騒ぎすることじゃないの。あなた方がそれあおるからいけないの、かえって。
 はい。

【記者】それに関連して、大田区は、都の事業である連続立体化事業の負担金も払わんとまで言ってるんですが。

【知事】あんなくだらないこと言わしておけばいい。みんなごねるんだ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)