石原知事記者会見

平成24年1月26日更新

石原知事定例記者会見

2012年1月20日(金曜)
15時03分〜15時25分

知事冒頭発言

1 平成24年度予算原案について

【知事】平成24年度の予算原案について、私から申し上げます。平成24年度の予算原案が何とかまとまりました。この国の経済は、さきの東日本大震災に加えて、ヨーロッパの債務危機や歴史的な円高の影響を受けておりまして、都税収入は5年連続の減少が避けられない、非常に厳しい状況にあります。一方、昨年の大震災は、災害に対する都市の脆さをあからさまにしまして、生活の安心を根本から覆して、都民も未だに、色々な形の不安を抱えておりますが、来年度予算は、その財政環境が厳しさを増す中で、東京が直面する新たな、こうした課題にも真正面から向き合って、それをいかに克服していくかという非常に難しい舵取りが求められる編成作業となりました。そのため、強い意志を持って、全体の支出を抑制する一方、経済への波及効果の高い投資的経費など、真に必要な施策を厳選して、限られた財源を重点的に配分しました。同時に、税収の好転がこの先も期待しにくい中で、財政基盤の強化にも一層目配りしたつもりです。都庁の自己改革を揺るぎなく進めて、新たな公会計の視点も活用しながら、無駄を排し、施策の効率性や実効性を向上させる取組を歳入歳出全般にわたって徹底しました。これによって、虎の子であります基金残高も、8,300億円余りを確保するなど、将来に向けた手立てもしっかりと講じました。この平成24年度予算を一言で申し上げますと、「将来を見据えて強固な財政基盤の堅持に心を砕いた『総額抑制・重点配分予算』」とも言えると思います。
 以下、施策の主なものを申し上げますと、まず公共建築物などの耐震化や、防災隣組の構築を進めるなど、首都東京の防災力強化に資する、重層的・複合的な対策を講じてまいります。また、国が明確なエネルギー戦略をいまだに示さない中で、多分日本で初めてでしょう、発電所の設置に向けた官民連携インフラファンドを創設するなど、都独自の対策を進めてまいります。さらに、東京外かく環状道路や東京湾の整備など、国際競争力の強化に不可欠なインフラの整備を戦略的に進めてまいります。加えて、大都市の特性を踏まえた実効性の高い少子化対策や厳しい経営環境が続く中小企業に対する多面的な支援など、都民の先行きへの不安の払拭にもしっかりと取り組んでまいります。なお、23区の固定資産税等については、小規模非住宅用地の減免など、既存の軽減措置を継続していきます。国は、未だ復興への確たる道筋を描けずにおりますが、この迷走の中で、東京都は場当たり的ではなく、中長期な視点で対策を講じること、現場からの発想を活かして、先進的かつ効果的な施策に積極果敢に取り組むことを心がけて、編成に取り組みました。この予算を梃子(てこ)として、都民生活に安心と活力をもたらすとともに、首都東京を成長と発展の軌道に乗せて、東京から日本の再生を牽引していくこと、そういう確かな流れを作り上げていきたいと思っております。予算については、私から申し上げることは以上であります。詳しいことは、発表が近々あると思いますから、財務当局に聞いてください。概略の説明は以上です。他の問題でも質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】政府が、原子力発電については40年を寿命とする、そして、再度テストを受けて60年まで認めようということを法律化するということまで踏み出すようなのですが、東京都としては発電インフラを自分で持っていきたいということを考えているようですけれども、将来の形は、どういうエネルギー政策を見通しているのかということをお聞きしたいと思います。

【知事】そんなものは、政府に聞いてくれよ。俺が総理大臣だったらはっきり答えるけれどね。

【記者】石原都知事が発電インフラをつくるわけですから。将来、原子力発電がどれだけ……。

【知事】国そのものがふらふらして、原発をどういう形で残すのかも決めていない時に、原子力はエネルギーの有力な要因ですから、それが定まらない中で、私に全体の構想話せと言っても無理ですよ。そういう定まらない状況の中で、東京は東京なりの財政力をもって、最低限のエネルギーを担保する、そういう設備はこれからつくっていきたいと思っていますけれども。

【記者】原子力発電をどんどん定期検査をやりながらやっていきますと、再稼働するものが、今年の夏の前、5月、6月にはゼロになってしまう。そういう見通しを考えると、例えば、もっと東京都は発電インフラをたくさん作るべきじゃないかとか、そういう考えを持っていくのでしょうか。

【知事】違いますな。筋違いな話で、東京は政府じゃないんだから、お金の限界だってありますよ、そんなもの。国ができない分、東京が全部補えと言ったら、あちこちからもっと要望があって、にっちもさっちもいかなくなるよ。はい、次。どうぞ。

【記者】予算のことなのですが、投資的経費、公共事業を8年連続増加と、そこを確保されたというところがポイントなのかなと思うのですが、都債発行額が増えたり、基金も2割ほどは取り崩されたということだと思うのですが、知事も就任直後は財政再建を優先されて、投資的経費もかなり切り込まれたと思うのです。この先、収入が落ち込んでいくだろう、景気もなかなか回復しないだろうという中で、今後この投資的経費をどういうふうに確保していくのかという、そのお考えをお伺いしたいのですが。

【知事】こういうマンモス都市で、都市の機能を担保、運用するための人間の住居に関わりないような施設がたくさんあるわけです。橋もそうですよ。人間が住んでいる大きな建物でも、耐震性の問題があったりすると、夜中はいなくても、昼間は生徒が来て、これから日本の将来を託していく大事な子供たちを育てる学校そのものが、台湾の地震の援助に李登輝さん(元中華民国総統)に頼まれて行きましたけれども、時間がずれていたら、子供たちが犠牲になるくらい、学校が壊滅していましたけれど、ああいうものを見ると、学校の耐震性というのは、地震の来る時間帯によるけれども絶対に必要だという認識を持ってきましたから、各々が住んでいる家の耐震性の問題は、家族全体の物の考え方でしょうけれど、せめて、子供が集まる、そういう公共的な建物は。
 病院にしてもそうです。神戸へ行きまして、神戸の病院が残っていると思ったら、何と4階で完全に座屈してつぶれたと。ああいうものを見ますと、公共の建物の耐震性は本気で考えなくちゃいけないと思うし、そういう点で、伝統のあった赤坂のプリンスホテルなんかも色々問題あるみたいだから、建て直すんですか。ある意味で天の啓示といいましょうか、去年の3月11日の大災害というのは、東京都に限らず大都市にとっての一つの警告だと思いますんで、それはそれで受けとめないと、設備投資のためにお金を出すということは不可欠だと思って、今度裁断しました。

【記者】ただ、今後もどれだけ出せるかという部分もありますし、その出す中身の問題があって、耐震化のお話をされたのですけれども、新しい道路もたくさん投資されていますよね。道路も防災に役立つというお考えなのかもしれませんが、投資的経費の中身をもう少し精査していく必要性が今後、財政が厳しくなる中であるのかなという気がするのですが。

【知事】それはそうでしょうね。財布が乏しくなってきたら考えなくちゃいけないけれど。あなたが道路網についてどういう考え方を持っているか知らないけれど、その外環にしても、何も東京のためにやるわけじゃないですよ。日本全体の機能のためにやるんで、ああいう災害がもし東京で起こったら、東西分断されちゃうわけだし、それでなくても今、東京に関わりない流通の問題で車が迷い込んできて、東京は迷惑しているわけだから、環境問題でも。あれは、凍結されたのを、私と扇(千景 元国土交通大臣)さんが強引に凍結解除して巻き戻したんだけれど、それにしても着工までは随分時間がかかりましたが。インフラというものの設備投資の優先順位というのは、人によって価値観が違うでしょうけれど、東京は隣で現場というのを眺めながら、都としての合理感覚でやっていきたいと思っています。確かに、ない袖は振れなくなってくるかもしれない、そのうちに。はい、どうぞ。

【記者】今の質問にも関連するのですが、今回の予算編成に当たっては、都債の発行水準と基金の取り崩し、どこまで取り崩すかということで苦慮されたのではないかと思うのですが、この2点に関して、知事のお考えがどのように反映されているのか、教えていただけますか。

【知事】東京の都債のランキングを知っています?ずっと、国より2つ上だったんですよ。それが、ムーディーズとかスタンダードアンドプアーズというアメリカの一企業が、地方自治体の債券が国家の債券に比べて、ランキングが高いというのはおかしいというだけの理由で、東京の財政が国に比べて非常に健全だということは承知しているけれども、訳の分からない理由で、国並みに下げちゃったんだよ。ちゃんちゃらおかしいよ、こんな話は。理が通らないんだ。国のメンツで、国はどんな対応をしたか知りません。そんなことで外国の会社も動かないと思うけれど、いずれにしても、国債、地方債も含めて、債券の自治体の発行率見てごらんなさい。東京は地方自治体の中で圧倒的に低いし、圧倒的に信用がありますよ。国に比べれれば圧倒的に少ないんです。今度ぐらいの都債の発行率なんて別に気にもしていないし、本当はもっと出してもいいぐらいだけれど、それだと放漫財政になりますから。だから、数字を正確にとらえて、総体的に考えて、物を言ってもらいたい。はい、どうぞ。

【記者】今週、猪瀬(直樹)副知事が福島県のほうに職員の激励に行かれました。全国の自治体が被災地に職員の派遣を当初やっているのですけれども、東京はかなり当初から手厚く派遣していまして……。

【知事】やっていますよ。

【記者】今でも150人程度常駐していると思います。これについて、来年度以降はどのようにされるお考えでいらっしゃいますか。

【知事】仕事が続く限り、お手伝いした方がいいんじゃないですか。東京は、まだまだ人が余っているよ。そう言うと、お役人は首筋寒くなるか知らないけれど、私に言わせると、もっと人間減らしても、十分に東京の行政は機能できると思う。

【記者】人の配置だけでなくて、例えば、旅行を助成するなど、かなり肩入れした支援はされていると思います。その金銭的な面についても、来年度以降も、都は被災地支援を苦しい中でやっていく……。

【知事】相身互い身(あいみたがいみ)だからね。困っている仲間だから、できる限りのこと、助けたらいいじゃないですか。しかも、旅行で3,000円程度のインセンティブをつけるというのは、今の東京の財政力だと、そんなに痛い思いじゃないから。傷ついた仲間が潤っていけば、都民だって喜んでくれると思うし、まして、そのインセンティブを利用して、旅行に行かれた方々からは、感謝もされるだろうし、新しく、東京とそういう被災地と地方の連帯ができ上がってくる大きなよすがになると思います。はい、どうぞ。

【記者】東京大学が秋入学への全面移行の本格的な検討に入りました。グローバル化に繋げる狙いがあるそうですが、知事はこの入学時期についてどのようにお考えでしょうか。

【知事】難しいね。僕はもう受験生の域を卒業しましたんで、痛くも痒くもないけれど、学生たちはちょっと混乱すると思うね。就職の問題もあるし、それから、秋までの時間をどうやってつなぐかの問題もあるし。ジャイアンツに行き損なったんで1年間遊んでいるどこかのピッチャーみたいにはいかないんじゃないかな、なかなか。はい。どうぞ。

【記者】国歌斉唱をめぐる最高裁判決について、もし知事、伺えるならお教えください。

【知事】僕は、非常に不満です。さっきも教育長に言ったんです。教育というのは色々なすべがあるし、色々な形で子供を先生たちが教育できると思うの。国歌を歌わない、国旗に向かって起立をしないという先生の価値観はそれなりにあるんだろうけれども、その先生が何を専門にしているか知りません。しかし、国家と個人の連帯というものを、私たちが維持していかなかったら、どんな政治体制にある国家にしても、それはぬぐい去ることのできない、大事な基本的なものだと思います。それを体感させるというのは、特に小学校、中学校というのは、一種の刷り込みの段階ですから、理屈じゃなくて、自分と肉体の動作をもって、体罰も含めてそうかもしれないけれど、刷り込むことを、その段階で小学校、中学校、高校ではまたちょっと意味があるかもしれないけれど、そこにいる先生たちの教育者として、基本的なルーティンだと思います。それを、自分個人の判断で放棄するということは、教師としての怠慢というか、職務放棄だと私は思います。だから、裁判の結果は何だろうと、もう1回、東京の教育委員会で、その問題を確認してくれと。先生にとっては大事な仕事だと思うんです。行事の時に、国家というものを意識させる。「国家なんかいらないんだ」という者は教師の資格はないね。それで、「国家いらない」という子供が相当いたら、えらいことになる、社会は。国家というものを意識する1つのメタファー(隠喩)として、国旗があり、国歌があるんだったら、行事の中でそれを刷り込んでいくことを、先生が体現してみせずに、それを否定したら、一番大事な教育の責任というものを放棄していることにしかならないと思う。どうぞ。

【記者】知事がずっと務めてこられた芥川賞の選考委員なのですが、先日、もう辞めるというようなことをおっしゃったのですが、先ほど、(日本文学)振興会の方からも正式に了承したというような発表がありました。

【知事】そうでしょう。私が辞めるというのを辞められないんじゃ、何の拘束力もあるわけないよ(笑)。こっちは飽きたから辞めるんだよ。全然刺激にならないから。はい、どうぞ。

【記者】国政の方では、民主党が衆院定数を85議席減らす案を決めております。都議会の方では、今の定数について、知事はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

【知事】その問題については、あまり今考えていませんな。別に声もありませんし。政治家の数は少ないに越したことはないけれど。都議会はまあまあじゃないの。国会は多過ぎるよ。僕は、参議院にいたから分かるけれど、参議院なんて要らないと思う、僕は。チェック・アンド・バランスなんて体裁のことを言いますけれど、実質的に、そういう言い方をすると怒るかもしれないけれど、衆議院と同じことやっているんだったら、かつても自嘲を込めて、参議院の連中が、「うちはカーボンコピーだ」と言ったけれども、もうちょっと違う審議をするならともかく、やっていることは参議院と衆議院と全く同じですから、私は、参議院は要らないと思います。この時代になって、重要な委員会の中継をテレビでやっているぐらいの時に、情報はどんどんどん伝わっていくんで、そういう意味でも参議院は余計なものだと思う。これは、議論の対象にして、私は個人の意見です。はい、どうぞ。

【記者】昨年末にもちょっとお伺いしたのですけれど、外環の関連で、外環の地上部の街路について、新年度予算でも3,300万円、調査で盛られているのですけれども、知事、昨年末、現地をご覧になるというふうにおっしゃっていたのですが、そのご予定は、その後どうなったでしょうか。

【知事】ちょっと風邪引いていたんですけれど、近々行きます。ごく暖かい日に。はい、どうぞ。

【記者】先ほどの芥川賞の選考委員の件で、先日受賞された田中慎弥さんの『共喰い』という作品が、石原さんの評価された中の最後の作品ということになった訳ですけれども、田中さんに対して、何か良いアドバイスを、今後の。

【知事】とてもひねくれて生意気でいいじゃないですか。小説家はああいうものだ。はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)