石原知事記者会見

平成24年3月2日更新

石原知事定例記者会見

平成24(2012)年2月24日(金曜)
15時00分〜15時36分

知事冒頭発言

【知事】冒頭、私から申し上げることありませんので、質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】先日、都議会自民党の新春のつどいで、知事は「憲法を破棄せよ」とおっしゃっていましたが、趣旨としては、本当に破棄せよということなのですか。

【知事】破棄ということは激しいかもしれないけど、歴史的に無効なんだから。主権を奪われた国が占領されたためにつくられた、憲法を上位とする法律体系を、独立した後でも続けるのは、歴史的に、どこにも例がないね。歴史的な例といいますか、正当性がないんですよ。改正なんかじゃないんだよ。向こうが一方的につくったものだから、前文も間違った日本語がたくさんあるし、時の政府が破棄をして、新しい憲法を即座につくったらいいんですよ。皮肉な話だけど、日本の法体系でいうと、これが破棄された瞬間どうなるかというと、明治憲法が生きてくるんだよ。それを相続するつもりはないし、する必要もないから、私は破棄したらいいと。改正なんていうのは手間取ってしようがないし。世界がこれだけ狭くなって、あちこちで色々な紛争が起こっている、みんなでそれを防ごうと、世界が非常に物理的、時間的に狭くなった今、そこで集団自衛権が発揮できずに、例のインド洋での給油なんかも途中で打ち切るとか、ソマリアに呼ばれていく兵隊が、どういう事態が起こるかもしれないのに、小銃しか持って行かないみたいな、こういうことは、本当にばかげていますよ。あれを押しつけたアメリカが、色々な形で牽制するでしょうし。そうじゃないですか。日本の側に、北朝鮮という同胞を数百人、拉致して省みない国がある。ロシアみたいに北方4島を奪っておいて、しかも、この間、爆撃機が侵犯してきて、日本が警告したら、日本なんて2発の水爆で全滅させてやるなんて、うそぶく。中国は、もともと尖閣はおれたちの領土だと言い出して、日本がその領海で資源調査しようと思ったらやめろと言ってくる。これに対して、日本の政府は外交上の抗議しかできない。全部、今の憲法の制約じゃないですか、実質的に。私たちは、自分の国は自分で守る手だてをきちんとして、危険を防ぐために、集団自衛権認めて、協力して事に当たるの。世界がこういうふうに狭くなってきたら、当たり前のことじゃないですか。それができないのは、憲法の制約なんですよ。憲法だれがつくったかといったら、やってきたアメリカの高官が、日本の代表に「早く決めろ。俺たちは外でひなたぼっこしているから、その間に決めろ」と言ったの有名な話だけど、その時に、原爆をちらつかせて、「我々は太陽の与える原子力の恩恵に浴しているから、その間に頭冷やして考えろ」と言って、その間に押しつけていくわけでしょう。日本は、全面降伏じゃないけど、全面認めたわけだ。こんな、歴史的にも世界にも例のない、全く無効な法律の体系というものを、いまだに、国の命運を決める形で甘んじている国というのは、世界中ないですよ。歴史的にもないですよ、そんな国は、ということです。誰かが決心してやればいいんだ、こんなことは。簡単なことなんだから。改正なんかじゃないんだ。破棄して、新しいものを全く新しくつくったらいい。前文読んだことある?3つか4つか間違いあるよ、助詞のほうに。あんなものは、英文訳だったら75点だな。はい、ほかに。どうぞ。

【記者】先日の施政方針で、他の都市との連携ということをおっしゃっておられましたが、これは新党ということも含めた第三極……。

【知事】全然違います。

【記者】具体的にはどのような。

【知事】大したこと、やってきたじゃない、今までも。広域行政、その中には横浜も川崎も全部含まれていますよ。首都圏を構成している県の中で、政令市がたくさんあるわけで、それも含めて、広域行政やってきたじゃないですか。大気の汚染対策もそうだし、首都圏だけのFEMAもつくりました。災害が起こった時のネットワークというのは、国がやってくれないから我々がつくった。小泉(純一郎 元内閣総理大臣)君に言ったら、「要らない」というから、「俺たちがつくるぞ」と、首都圏だけは横の連絡がつきます。その他、この他、私はそういう理解でやってきたし、それから、物議醸したかも知れないけど、青少年のための好ましくない発刊物の規制というか、これを隔離するみたいな、そういうことも、ほかの県と一緒にやってきたので、そういうことを言っているの。これからもそういう事例出てくるでしょう、幾つか。大阪なんかも、東京の真似と言っては失礼かも知れないけれども、橋下(徹 大阪市長)君はものを理解して、東京がやった新しい会計制度も採用してくれたし、愛知県もやるようになったし、新潟もやるようになった。これは大事なことじゃないですか。そういうことです。はい、どうぞ。

【記者】TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に関してですが、米国と事前協議をした外務官僚が米国から、全品目を交渉対象にしないと参加できないと言われて、オーケーをしてしまったと。閣議決定では、日本の国益にかなったものだけに関して交渉の対象にすると言っていたのですが、アメリカに強く言われて、ノーと言えずにオーケーしてしまったのですが、こういう外務官僚の交渉能力について、どうお考えなのか……。

【知事】全く、無能で腰抜けだね。日本の外務省というのは、日本の財務省もそうだけど、向こうの国務省の東京支店とうそぶく、その所以は、それですよ。外務官僚というのは、どういう育て方をしたか知らないけど、外務省に入ると外務研修所というのがある。そこで真っ先にやることは、外国との紛争を起こさないようにしろと。これは第一義なんだ、こんなばかな話はないよ。国と国の利害が対立するのは当たり前ですから。その時に、それをどう調整するかが外務省の仕事で、外国と紛争を起こすんだったら、あなたのおっしゃるとおり、TPPの問題でも、アメリカの言うことで、逆らってはいけないということで自分の首を気にしながら、そういう様になるんですよ。全くおっしゃる通りだ。

【記者】TPPのひな型である米韓FTA(自由貿易協定)について、ソウル市長が給食に遺伝子組み換え食品を使ってはいけないという条例を破棄せざるを得ないかもしれないと。要は、米韓FTAが地方自治体の条例に影響を与えるという懸念を表明しているのですけど、こういう点については……。

【知事】全くその通り。この間も、あなたがいたかどうか分からないけれど、TPPで質問出た時に、東京と首都圏を連帯して、遺伝子組み換えの食べ物についてはステッカーを張りなさいと。これは幾分安いかも知らないけど、それを選ぶか、普通のものを選ぶかということは、消費者の判断によるようにタグをつけろと言ったの。これを外せと言っているんでしょう、アメリカは。

【記者】そうですね。

【知事】じゃあ、アメリカは、危険かもしれない、何十年か先に証明されない、そういう問題について責任をどう持つんですか。こんなチャンチャラおかしい話を、私は都民の生命を預かる者として許すわけにいかないね。

【記者】橋下市長はTPP推進なのですが、この点については、十分に……。

【知事】それについて、詳しい話を知りませんが、どういう意味で賛成なのか。部分的には、アジア全体で連携を組んだ方が日本の国益にとって有利なものもあるかもしれません。だから、個々について、日本は日本の立場で議論したらよろしいので、アメリカの欲求に、日本を代表するはずの外務省の役人が腰が引けて、「はい、分かりました」と。それは間違いだ。こんなものは、昔は天誅だったよ。本当に。はい、どうぞ。

【記者】先ほどの憲法破棄の話、誰かが決心してやればいいというふうにおっしゃられましたけれども、第三極の理念であるとか、新党の綱領にその辺りを盛り込むお考えというのはあるのでしょうか。

【知事】第三極、新党というのはよく知りませんので、周りは色々言ってくれるけど。私がそれに参加するなら、持ち出しますな。それは全部、集団自衛権とか、色々な問題が波及してくるんですよ。教育の問題も波及してくるでしょう。はい。どうぞ。

【記者】大学のあり方についてなのですけども、東京大学が秋入学を打ち出しました。先般、一橋大学では、春入学、春卒業を維持したままで、秋に年度を始めると。実質3年半で大学の課程を終えるということを検討しているということなのですけれども、同窓、どのようにお考えでしょう。

【知事】その方が、東大が4年かかるよりもいいんじゃないかな。利口だと思います。我が一橋の方が利口じゃないかと思うよ。はい。

【記者】先週、ソウル市の方から都教委に手紙が届いたようなのですけれども、この度……。

【知事】竹島の問題?

【記者】ええ、竹島の問題で。

【知事】あれは、ちょっと怪しげな文書でね。ほかの2つの自治体に届いた文書には、ちゃんとした公印が押してあるけど、あれは押していないんですよ。ですから、本物かどうか、今確かめています。

【記者】誰かが、ソウル市をかたって送ってきているということですか。

【知事】分からないね、それは。ほかの県に届いたソウル市の文書には、ちゃんと、公印が押してあるけど、東京に届いたものにはついていない。礼儀の問題では、それが非常にオーソライズされるものだったら、きちんとしたソウル市の公印が押してあるべきじゃないかね。竹島の問題というのは、向こうは向こうの言い分があるけど、こんなものは李承晩(大韓民国初代大統領)が勝手にどさくさで決めたもので、1回、正式に私たちはこれを合議する必要があると思いますよ。ハーグの(国際司法)裁判所にかけるなりして。

【記者】差出人名としては、知事はどのように書いてあったと……。

【知事】ソウル市と書いてあっても、ソウル市の公印が押していないんだよ。そういうこと。
  はい、どうぞ。

【記者】今週、都庁にいらっしゃった愛知県の大村(秀章)知事と、民主党の小沢(一郎 元幹事長)さんのことについて、ちょっと質問したいと思います。
  まず、大村さんの件なのですが、今週に入ってから、猪瀬(直樹 東京都副知事)さんと会うだけの予定だったそうですが、急に知事と会うことになった経緯というのはどういう。

【知事】知らないね。会いたいから会ったんで、何の話したかよく覚えないね。甚だ内容のない会談だったよ。

【記者】お話を30分ぐらいされたとのことですが、知事が再三言っていらっしゃる、例えば、国家像であるとか、東京と愛知の連携のことを大村さんはおっしゃっているのですが、その内容というのは何か伝わってくるものはありましたでしょうか。

【知事】全然伝わらんね。そんな具体的な話、しなかったな。

【記者】小沢さんのことなのですが、新党について、「これはうまくいかない。だめだと思う」というような発言をしているということが新聞に載っているのですが、これについて……。

【知事】新党、この間もできたよ。民主党から欠けた連中がつくって。あれはあまりうまくいってないわね。しかし、選挙は当分ないだろう。小沢の裁判で、検察のああいう資料が採択されなかったということは、彼にとって非常にいいインパクトになると思うけど。おそらく、原告が控訴もするんでしょうが。しかし、あれは、あの人の影の部分で、一部の問題であって、もっと大きな問題があるから、これが俎上(そじょう)にのってこない、変な形で集約されているけど、私は裁判のことは分かりません。予測もつかないけど、おそらく原告は控訴するんだろうが、そんなこんながあって、裁判の決着がきちんとつくまでは、彼は選挙をやりたくないだろうし、マイナスイメージになるのは必定だから、自分の定評を失うことにもなりかねないから、私は、色々な形でごねて、民主党は政権にしがみつく形で、選挙は任期の満了ぐらいまでないと思います。

【記者】石原新党について、「だめだ、うまくいかない」ということを言っているそうなのですが。

【知事】聞いたことないよ、そんな話は。亀井(静香 国民新党代表)に聞いてくれよ。船中八策は、俺が言ったんだけど。亀井君は非常に焦って、年内と言うから、それはおかしいんじゃないか、数合わせするものじゃないから。何をやるかということに、「明治維新は下級武士の反乱で起こった」と言うから、「それは結構、その通りだ」と。歴史の事実だけども、坂本龍馬という天才がいて、船中八策を講じたから薩長連合もできたんで、そういうものを構えずに、年内に政党助成金の問題だけで政党を作ってもしようがないんじゃないかと言ったんです、ということです。
  はい、どうぞ。

【記者】下級武士がつくった明治維新ですけれども、石原さんを含めたその新党について言うと、下級武士の反乱ではないような気がするのですが。

【知事】下級武士か上級武士かは知らないけど、国会議員は国会議員なんだから、うだつの上がらない連中のことを、亀井は下級武士と言ったんだろうけれど。いずれにしろ、政界が再編成されて、割れるものは割れて、戦後できた、三木武吉(元衆議院議員)が頑張ってつくった保守連合のようなものができないと、この国はとても助からないと思う。それは今度の選挙制度の問題なんかでも、最高裁の判決が出ているのに、足踏みしてやらない。これは国民を愚弄した話ですよ。
  はい、どうぞ。

【記者】知事は以前、都という表現は芳しくないということをなさっていましたが。

【知事】それはそうですよ。都というものは、元首がおられて、国会があるところを都というんで、大阪は逆立ちしても都にはなり得ない。東京が遷都するなら別の話だけども。それは言葉の問題なので、彼らが考えているイメージが、そういう形で直截に表現しているんだろうけれど、しかし、「都構想」というのは、聞く人をちょっと混乱させるし、あまり好ましい表現じゃないと。だから僕は、「大・大阪」と言ってくれと言っているんですよ。

【記者】今度、東京マラソン2012が開催されますが、先日、AED(自動体外式除細動器)の研修で、東京消防庁の方にちょっとお話を伺ったのですが、東京マラソンでは、ほかのマラソンとは違って、AEDを持った自転車が伴走して走っているし、ポイントごとにAEDを完備している、そういったことというのは、むしろ誇らしいことであって、もっと公にするべきではないかなと思ったのですが。

【知事】準備されているから安心して無理して走ってくれと言うわけにいかないし。天気がいいと、逆に……。

【記者】今年は晴れそうですね。

【知事】天気が良過ぎると、みんな無理をするから、事故が起こるんですよ。普通、ああいう大きなマラソンで3万人を超すエントリーがあった時は、大体、今までのアベレージ(平均)をとると、1人以上、死者が出るんだけど、それは望ましくない。そういう準備をすべくしてやっていますから、あまり無理してもらいたくないね。今度は猪瀬副知事も頑張って、40キロ走ると言うんで。倒れられると困るのよ、優秀な副知事だから。代えがたいんで、これこそ。

【記者】先日、愛知県の市長が問題発言というか。

【知事】南京ね。あれは、河村(たかし)君の言うことが正しいと思います。色々な問題があるんだけど、昔、本多勝一(ジャーナリスト)というやつがいたんだよ。結局、彼は最後に修正したけど、南京の占領の間だけで40万の人を殺せるわけがない。あの時、陥落した2日後か3日後に、大宅壮一と石川達三と林芙美子という、代表的な日本の識者が報道班員で入っているんです。林さんは、私はあまり親しくなかった、すれ違いで亡くなっちゃったんだけども、石川達三というのはどちらかというと反体制的な人でしょう。大宅壮一だって非常に、シビアな評論家でしたよ。この人たちに聞いたら、「死体はあったけれど、山と積むような死体なんか見たことない。あれはけげんな話だな」と言っていました、彼らの滞在中も。本多君は、広州湾に上陸してから、南京に攻め込むまで40万人、中国側で被害が出たというけど、これもちょっと数字としてまゆつばなんだけど、少なくとも、あれだけの装備しかない日本軍が、敗れて、残った連中だから、無抵抗に近かっただろうけれども、あれだけの期間に40万の人なんて殺せるわけ、絶対にない、物理的に。それだけはっきりしておきたい。ただ、ああいう戦争のどさくさですから、無辜(むこ)な人を殺した数字もあったかもしれない。しかし、それをもって、大虐殺という、その裏打ちで40万人と推算されるのは、私は心外だと思うし、違うと思いますね。さんざん我々は検証してきたんだから。河村というのは、私の後輩で粗暴な男だから、何の根拠があってそう言ったかは知らないけれども、私は、それについては彼を弁護したいね。はい。

【記者】知事は知事になる以前から日本と中国で、共同の調査団をつくるべきだという発言をなさっていますが、現在もそれについて働きかけてはいますか。

【知事】そうですね。それは大事なことだから検証したらいいんじゃないですか。向こうはやる気ないでしょうな。ああやって声高に日本を非難していればそれで済むことですし、何といっても国力を増してきたから、日本なんかそのうち、我々の喧伝の下に屈伏するだろうと思っているだろうけど、そうはいかないな。
  はい、どうぞ。

【記者】先日、立川市のマンションで、母子2人暮らしの世帯のお母さんが急に亡くなられまして、知的障害を持った4歳の子供がその後衰弱死して、その死が2カ月間放置されていたという痛ましい事例がありました。知事としまして、今回の件をどう感じるのかと、あとこれは行政として、これまで個人情報というものをすごく重視してきて、なかなかそういった情報を出してこなかった、そのとばっちりのようなものが来た時代に入ってきたのかなと思うのですが……。

【知事】まさにそうだね。

【記者】知事は防災隣組ですとか、地域の力の復活を強く訴えられておりますが、東京として何かできることがあるとお考えですか。

【知事】そのお母さんの病状が今までどうだったのかな。はた目で見ても、衰弱しているのか、危ないなという兆候があったんなら、一声かけ合うみたいな習慣を取り戻してもらいたいけど、突然、脳出血とかそういうもので倒れたんだったら、声のかけようもないんでしょうし。いずれにしろ、「隣は何をする人ぞ」じゃないけれど、ごくごく間近な向こう3軒両隣の連帯とまではいかなくても、交流というのか、それがなくなったことは確かだね。これは、1つの都会の典型的な兆候だと思うけれども。かといって、それを無理やり壊して行政が指導して、「隣組のような形態をつくりなさい」というと「嫌だ」という人もたくさんいると思います。プライバシーとか。それは最も難しい問題ですよ。その家屋の形態、特にマンションみたいな形の形態が跋扈(ばっこ)してくると、どうしてもそういうことになっちゃうんだと思うね。本当に痛ましい話ですけれど。これからも起こってくるんじゃないのかな。お母さんに持病があったか知らないけれど、その人が突然亡くなって、そのたった1人の子供が知的障害者というのは、本当に悪いカードの引き合わせで、誠に無残というか、気の毒というか、むごい話だと思いますね。
  どうぞ。

【記者】今のお話に関連してなのですが、私も防災に携わって随分長い間やっているのですが、私たちの覚える言葉として、「自助・共助・公助」という言葉がありますが、そこに「近助」という言葉をお隣さん同士という意味で、漢字は違いますけれども、その言葉をみんな頭の中に思い浮かべて、いざというときに一番最初にそこから町全体を助け合うという、そういう考え方というのをスタートさせるべきだと思うのです、改めて。

【知事】それはいい提言だね。「自助・共助・公助」というのよりも、「自助・近助」の方が分かりやすいもんな。それはいただきますよ。

【記者】ぜひ。

【知事】別に木密地帯を擁護するわけじゃないけど、木密地帯に行くと、さっき指摘があった、ああいう悲劇というのは起こらないんだよ。家もぼろぼろだし、「どう、元気?」とか、「声が聞こえないけど、坊やどう?」とか声をかけると、薄っぺらい家だから、その声がつながって、「大丈夫ですよ」とか、「今おなか痛いから」とか何とかあるんだよ。昔はそれがあったし、今、それがあり得る地域というのは皮肉なことに、災害の時に一番もろい木密地域なんだな。あそこだと、何回も言うけど、トイレでおしっこしながら、隣の台所見て、「ああ、今晩はサンマですか」と言って、「そうなのよ」という会話があったの。震災には一番脆いところだけど、逆に何か起こった時の連帯感が一番強いのは木密地域のああいう町なんだな。そうですね。「近助」はいいですね。「自助・近助・公助」だね。ありがとうございました。
  どうぞ。

【記者】大村知事に関連してなのですけれども……。

【知事】あの人のこと、よく知らないんだよ。

【記者】そうですか。橋下知事に対しては、都の公会計制度を入れたこともあって評価されることが多いと思うのですけど、大村知事についての評価は。

【知事】評価をする基準が何もないもん。この間、私の親友が、愛知県の商工会議所の会頭になったの。それで、講演頼まれて行きましたら、そこに大村君がいたので、みんなの前で「おまえ、この時期に減税なんてばかなこと言うな。住民税の話、銭しか安くならないじゃないか、あんなものは取り消せよ」と言ったら、「あれは間違っていました」と言うから、「取り消せ。みんなの前で」と言ったら、取り消しましたよ。そういうところは素直でいいんじゃないの。
  はい。

【記者】教育改革の中で、今、留年制というのが話題になっていますが、知事のご見解を教えていただけますか。

【知事】小学校では昔、落第はなかったんですか。無理やり進学させたんですか。

【記者】私は高校で留年しているんですけど、同級生が2世代できて非常にいい友達が増えていいのですけれども。

【知事】僕も中学の頃、落第してきたお友達で、それはおもしろいやつで、ちょっと不良っぽくて仲よくなったし、私も実は、流行の最先端を行った人間ですから、高校時代の時に、登校拒否しまして、学校1年間行かなかった。しようがないんじゃないですか。一律に卒業させるだけじゃなしに、逆に、発奮して、成績を上げるということになるだろうし。私の何番目かの息子の、非常に親友で、この男は慶応大学を8年間で卒業しましたが、非常に優秀な男だったね。卒業してから、仕事を始めて、最初、株屋をやっていたんだけれども間違いなくて、あとは、自分の家を継ぎました。分からないですね、人間の資質というのは。学校のカリキュラムの採点、そんなもので、人間をはかるわけにいかないと思うし。だから、留年をさせることで逆に発奮したり、余裕ができたりして、そういうこともあるんでしょう。これは国民全体が考えることじゃないでしょうかね。

【記者】中学校とかに行っても、漢字が読めない、九九ができない、そういう子たちが、中学もまた卒業して高校へ入っちゃうと。この辺が今の現実というふうに言われているのです。小学校できっちり教えてから出すべきじゃないかとは思うのですが。

【知事】九九算なんていうのは、昔は小学校で教わったものだけど、今は中学ですか。

【記者】小学2年生で教わりますが、ほとんど、文科系を出た女の先生が多いんです。だから、九九が必要という意識がないのです。

【知事】あれはお経みたいなもんで、暗記すればいいんで、別に掛け算じゃないんだから。それを根底に、ほかのものを考えたらよろしいんで、昔は、九九に含めて、教育勅語なんていう、いかめしい言葉で道徳の刷り込みをされましたが、「朕惟フニ云々」というのは今になってはナンセンスな言葉かもしれないが、しかつめらしい、漢語に近い、古典的な日本語でつづられた、教育勅語の幾つの条項というのは、平常の文書に直しても、決して間違いじゃありませんから、「親子は仲よくしろ」とか、「朋友相信じ」とか、そんなことありますよ。「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」は、この頃の若い人は忌避するかもしれないけれども、元寇の役の絵とか、孝女白菊とか、そういった絵本を添えて、ビジュアルに頭に刷り込まれたんで、とても良かったと思いますけれども。刷り込みということは、私は必要だと思います。はい。

【記者】痴漢対策から女性専用車両というものが、今、どこの鉄道でも行われているわけですけれども、一方で、女性の専用車両は悠々と座っていられるのですが、片や男性群がいっぱい入っている車両の方はすし詰め状態、こういう形が通勤ラッシュの時間帯に行われているわけです。これは差別じゃないかというふうに考える人もいるのですが、いわゆる男女の差別です。昔でいえば、アパルトヘイト、黒人と白人との差別とかいうこともありますけれども、この問題については、都知事はどういうふうにお考えになりますでしょうか。

【知事】そんなに、ラッシュの時に、女性専用車はがらがらで、一般の車両は混んでいるわけ?

【記者】混んでいますね。すし詰め状態が2両目からあります。

【知事】片方はがらがら?

【記者】がらがらと言いましても、座っている人は多いですよ。だけれども、悠々と座っていられます。

【知事】立っている人はいないの?

【記者】立っている人は、まばらにしかいませんね。

【知事】それは問題だ。今度1回乗ってみよう。それで、痴漢扱いされたら、問題提起するよ。

【記者】それで、専用車両。その専用という言葉を使うと、男性が入れないわけです。女性しか入れない。そういうことで、その言葉をなくして、もっと違う言い方で、例えば障害者が入って行けるような弱者専用列車、専用というのを使うのがいいかどうか、分かりませんけれども。

【知事】女性は弱者じゃないよな。

【記者】そうですね。健康な若い人が女性専用車両に入っているわけです。こういう不公平といいますか、男女の差別意識がそこで助長されてくるんじゃないかという気もするのですけれども、一ついい方向に解決してもらえればと思っております。

【知事】1回乗ってみます(笑)。満員の時に、女性の車両に。

【記者】女性の車両。間違えられないでくださいよ。

【知事】どういう反応が起こるか見る。「石原さんならいいわ」と言われるかもしれないけれども。
分かりました。はい、どうぞ。

【記者】大阪の橋下市長さんが、全職員にアンケートをとりまして、その中に、組合が人事に影響を持っているかとかいう内容の項目があったようなのですけれども、これについてどう思われますか。

【知事】いいじゃないか。大阪の市の組合というのはかなりなものだから、それは一種の市長としての牽制というか、恫喝というか、それによって何が出てくるものでもないだろうけれども、おれはそういうものに非常に強い関心を持っているぞという意思表示になると思うから、なかなかうまい方法だと思うよ。

【記者】それに対して、弁護士会だとか……。

【知事】当然あるでしょう。それはそこで、かんかんがくがくやったらいいんだよ。「じゃ、過去に一体何をやったのか、君らは」と話したらいい。「だから俺はこういう調査をするんだ」と言えば、過去の事実というのは事実として重い形であるから、大阪をゆがめて。はい。

【記者】橋下市長が、消費税増税について、全否定はしていないものの、まずは年金制度を含めて社会保障制度の一体改革をするべきだと。特に、今の賦課方式だと破綻は確実だと。高齢者激増に対応できる、積立方式に変えるべきだとおっしゃっているのですけど、その点についてはどうお考えでしょう。

【知事】年金の問題は、エキスパートじゃないんで。ただ、増税は結果として必要でしょう。そういう対策をしても、年金の問題は恒久的な問題ですが、公務員の数を減らすとか、政治家の数を減らす、給料減らす、それは結構な話だけど、一時的なものでしかない。恒久的に財政というものを補てんして、担保するためには、増税は絶対に必要と思います。じゃなかったら、とてもこの国の財政はもたないですよ。今の政府がだめなところは、何だかんだ言って役人には言うこと聞かないとか何とか言いながら、役人の数も減らさない、人事院の勧告をしぶしぶ従うけど、最初は忌避したんでしょう、役人にけつたたかれて。東京は随分やりましたよ。15万人いる人間、2万8,000人削ったんだから、何年間か。人件費が一番高いんだよ。その給料も減らしましたよ。それも思い切ってしないで、消費税で言えば、財務省の言い分をそらんじている、その印象にしか出ないんで、やるだけのことをやった上で増税ということになれば、国民も納得するけれども。だから結局、小沢みたいに反対のための反対の論も出てくるし、ということですね。
  はい、それじゃ。

※本記者会見において、事実に基づかない質問があるため、映像及びテキスト版の一部を削除いたしました。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)