石原知事記者会見

平成24年3月23日更新

石原知事定例記者会見

平成24(2012)年3月16日(金曜)
15時02分〜15時36分

知事冒頭発言

1 気仙沼での救出について

【知事】冒頭、正式に申し上げることはありませんが、さっき猪瀬(直樹 東京都副知事)さんが介在した気仙沼での救急劇の保育園の園長さんたちが来たんですが、そこへ皆さん立ち会った?立ち会わない人もいた?いや、メディアはチャンスだ。
 テレビを見ている皆さんに申し上げたいんだけど、素晴らしいドラマがあったんです。気仙沼で障害のある子供を預かっている園の園長さんが津波が来たんで、その子供たちを連れて逃げる。それで、たどり着いたところがちょっと頼りにならないんで、さらに奥の何階建てかの建物に逃げ込むんですけど、結局そこも津波が押し寄せて、2階か3階まで水に浸って、みんなその屋上へ逃げて助かるんですけど、そこへ障害のある子供たちだけじゃなくて、近くの保育園の園長さんも子供を連れてきて、一般の市民加えて、400人ぐらいの人が屋上で、二晩、過ごすんです。その時に、障害の子供を連れてきた園長さんが、大変な目に遭っているし、下手すると、周りにも火が起こったりして、助からないかもしれないというメールをロンドンにいるお子さんに送る。何とか、屋上にたどり着いて、命だけは助かったけれども、この分だと、周りに火が起こって外へ出れないんで、どうなるか分からないと。そのメッセージを受け取った、ロンドンで宝石の加工の技術を勉強している息子さんが、ツイッターで何とかならないだろうかと打ち直すんだ、日本に向かって。それをスズキさんというサラリーマンの人が読んで、「これは大変だ」と、何とか知らせたいけど、行政に頼むしかないし、誰がいいだろうかといったら、時々、猪瀬副知事のツイッターをその人が読んでいるんで、猪瀬さんに今度、打ち込む。猪瀬副知事がそれを読んで、「これは大変だ」ということで、消防庁に言って、即時に、手続きなんかとらずに、ヘリコプターを送って救出しなさいということで、2日目にヘリが飛んでいって、救出するんですけど。これは現代ならではのドラマだと思う。
 昔、『空と海の間に』という有名な、評判になった映画があった。これは白黒の映画でしたけれども、まだ冷戦構造が続いている時に、大西洋で操業している漁船でハムを食べて中毒になる、みんな死にそうになる。これは豚の肉に当たるんだ。そうすると、1人だけ、アラブ系の乗組員がいて、イスラムの戒律で自分は豚を食べないというんで、そのハムを彼だけ食べないで助かるんです。あとの人間が死にそうになる。刻一刻、死期が迫ってくる、みんな七転八倒して。その時に、電信で本国を呼び出して、血清をどうやって送るかということで、あの頃、冷戦構造で、ソビエト、ロシアは門戸を閉ざしていたんだけれど、ソビエトまでが協力して、空港の便宜を図って、共産圏経由で、どういうルートか詳しくは忘れましたけれど、いずれにしろ、血清が送られてきて、最後は飛行機が飛んできて、それをパラシュートで、漁船の近くに落として、1人だけ元気なアラブの水夫が、みんなから、色々な嫌味を言われているんだけども、自分は戒律を守ったから食べなかったんだと。中には、「おまえが毒を入れたんだろう」と言うばかがいたらしいんだけど、これが海へ飛び込んで、その血清を拾って、届けて、みんながそれを打って助かるという話でした。非常にドラマチックで、感動的な、人間性のあふれたドラマだったけど、それをしのぐ話だと思います。諸君に言ってもしようがないから、私がどこかの映画会社に取り次いで、私がシナリオ書いてもいいから、これは本当に素晴らしい、津波の中での、現代の通信のメカニズムがなかったらあり得ないドラマだと思うけれども、自分の一人の息子に、最後は遺言のつもりで別れのメールを打って、何とか助かったけども、しかし周りは水が引かない、火事が起こっている。そのメールをロンドンの息子がまた受け取って、当てはないんだけども、日本に向かって打ち返して、それが、偶然の偶然で、最後は猪瀬副知事に届いて、猪瀬さんが決断して、全ての手続きを排してヘリコプターを送り込むというのは、これは本当に、ちょっとやそっとでは想像がつかない、見事な、小説なんかを超えたドラマだったと思います。どこか、プロデューサーいないかな。いたら、シナリオ書いてやるから、映画にしろ。これは本当に世界に通用するドラマだ。
 はい、質問があったらどうぞ。

質疑応答

【記者】先月、知事が会見で、3月の議会が終わったらワシントンの方に行かれるというふうなお話をされていたのですが、その経緯ですとか、目的ですとかを改めてちょっとお聞かせください。

【知事】まだ言えない。相手の都合もあるし。
 ほかにありますか。

【記者】先日の3.11(東日本大震災)から1年の民間主催の式典で、平沼(赳夫 たちあがれ日本代表)さんですとか亀井(静香 国民新党代表)さんと知事がご同席したかと思うのですけれども、新党のお話がある中、お三方がそろったということで、我々も何かこれは特別な動きなのかなという印象を受けたのですが。

【知事】特別な動きじゃないね。あれは、村上正邦君(元参議院議員)が、日本人はこういう機会をとらえて祈る習慣を取り戻そうと言ってやった会合で、我々3人との共通の友人ですから、私は講演を頼まれて行きましたが、坊さんが司会しているのは気に食わない。祈りなんていうのは簡単なんだ。祈るだけじゃなくて、行動を起こさなきゃしようがないんだ。まして、坊主なんて何もしないで、お布施で食っているんだから。今、日本の神官なり、坊さんなりが本気で祈っているか、何をしているかね。出向いて説法しても、そんなものは何の意味もないとは言わないけど、やらないよりやった方がいいだろうが、心の癒しになるかといったら、口だけじゃなく行動しなければ、色々なことで。宗教団体がこぞって拠金をするとか、寄附するとか、したことありますか。
 はい、ほかにあったらどうぞ。

【記者】今の3月11日の件の続きなのですが、亀井さんと少し会談されて、その時、亀井さんの方から、志ある者がいろいろ動いているというような話に対して……。

【知事】そう言ったの? 亀井が。

【記者】知事は、「行動しないと意味がない」というふうに応じたというふうに伝えられているのですが、このやりとりというのは実際あったのでしょうか。

【知事】一般論として言ったことはありましたよ。

【記者】一般論という、ただそれだけということですね。

【知事】しかし、そんなことを、何かとんでもないことを考える時に、メディアに向かってべらべらしゃべるばか、いるか。爆弾仕掛ける時、私は仕掛けますよと言って爆弾仕掛けるばか、いるか。何も物騒なこと考えているわけじゃないけれども。

【記者】亀井さんが……。

【知事】亀井のことは亀井に聞いてくれよ。

【記者】消費税に関することで、野田(佳彦)政権に反対を突きつけて、連立から出るというような構えも今、見せております。野田政権と一線を画して、新党への支持を広げる狙いがあるというような見方も出ているのですが、これについて知事は……。

【知事】それは亀井君の所存だから、私は別にその論及する立場でもありません。彼が言っている論は、確かに一理あるんです。例えば、この間、ナベツネさん(渡邉恒雄 読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆)の論文に出ていたけれど、眠っている貯金が30兆円ぐらいあるというの。その中の10兆円は聖徳太子の昔の旧札なんだと。それを、ずっと持っている人いるんだと。ある税理士が頼まれて、事例として彼の論文に出ていたんですよ、300億円の貯金持っている人と140億円くらいの貯金を持っている人がそれぞれいて、旧札で持っていてもあれなんで、新札に換えたいんで、1割手続き払うから換えてくれと頼まれた税理士がいるくらい。日銀で調べると分かるらしいんだ。だから、旧札で貯金して、じっと抱えて持っている人がたくさんいて、その額が10兆円。それから、全くのたんす預金でしまっている総額が30兆円というのを、これを何とか吐き出させて、何に使うかと強制的ではありませんけれど。だから渡邉さんなんかが言っているのは、相続税を払うかわりに無利子なり、あるいは減額される国債を買わせて、相続税を払わずに、それを免じて、そのかわり無利子の国債を買わせるとか、償還する時は5%引かれる国債を買わせるとかしたらどうかと言うけど、確かにその策は僕は一つあると思います。ただ、それは一時的なものですから、瞬間的には財政がちょっと支えられても、続くもんじゃないし、その他この他で、すべき手も講じないで、いきなり消費税を上げるというのは、印象的にもよくないというのは亀井君の論だけども、今の政府が、財務省が嫌がる、日銀が嫌がる、そういうことをするかといったら、これはしません。せずに消費税を上げると言うから。ただ、消費税というのは、税制学的に言うと、一番経済に悪い影響を与えない税なんです。くどくど説明しないけれども。識者は知っていることなんで。やがては消費税を上げなければいけないと思うし。
 日本のような高福祉低負担、例えばこの間も私の家内が手術受けた南淵(明宏)さんという心臓の手術の名人の一人ですけど、彼が『文藝春秋』にも論文書いたけれども、外国では、心臓の手術受ける人間というのは、例えば人工弁なら人工弁をつける時、その人工弁を自分で買ってから、手術受けないと受けてくれない。日本の場合には、全部ほとんどただでやってくれているんだ。外国へ行ったら膨大なお金のかかる手術を、ごく安価に、保険が賄ってやっている、こんな国はないと。心臓手術に関しても、今の日本の制度は最高だと。しかし、それは財政的に非常に危ないんじゃないかということを南淵さんも述べていましたが、私もそう思います。だから、ヨーロッパみたいに、心臓の手術受ける人間は人工弁、自分で買ってこいということまでしなくても、高負担ということにしないと、これでは日本の財政もちっこない、誰が考えても。日本の国の借金が、繰り返して言うけれども、国内のものだけに、そういうものを相対的に眺めると円が高くならざるを得ないというのは、外国のアナリストたちが言っているんですけども、うれしいような、うれしくない話で。いずれにしろ私たち、この財政再建というのは何かの方法でしなければいけないけれど、その方法の一つとして、私は消費税が上がらざるを得ないし、絶対的な生活の必需品、例えばお米屋さんで売っている袋に入っている米は無税にしても、コンビニで売っているおにぎりは課税の対象になるとか、そういう識別をすることで、消費税はまかり通ると思うし、通さなきゃいけないと思っていますけども。亀井君は、その前にやるべき措置を講じろと、そうじゃないと政府の姿勢を示したことにならんぞというのは、これは確かに一理あるんですよ。ただ、あくまでも一時的なもので、貯金をうまい形で吐き出させて流通させても、それで日本の財政が完全に健全化されるということにはならないということです。
 どうぞ。

【記者】「一寸先は闇」とおっしゃっている中ではあるのですが、自民についても、民主についてもだめであると、第三極が必要だということを再三おっしゃっていらっしゃるので、そういう方、今回の場合でいうと民主党と連立を組んで……。

【知事】それは、亀井さんに聞いてください。

【記者】組んでいない方が、一緒にやっていきやすいというような気持ちというのはありますか。

【知事】私がもし政党をつくったら考えることで、これから先の先の先の話だろう。
 はい、どうぞ。

【記者】ディーゼル規制についてお伺いしたいのですが、ガソリン価格の高騰で、欧州のようにディーゼル車を選ぶ利用者が増えています。クリーンディーゼルというものなのですが、ディーゼル車の普及について、現状でどうお考えになっているのか、ご所見をお願いします。

【知事】歴史的には必然だと思います。ヨーロッパに行きますと、ほとんど、ディーゼル車です。この頃は遠いし、退屈だから行かないんだけど、ダボス会議に何年か前に行った時に、渋滞でホテルまでちょっと歩いたんだけど、ずっと停まっている車はみんなディーゼルでしたが、排気ガスの臭いというのは全然違うんです、日本と。日本の業界も工夫して、このごろ協力してくれるようになりましたけれど、まだ全般的なものじゃありませんが、必然的にディーゼルで走る車は増えざるを得ないと思うし、結構なことだと思います。
 どうぞ。

【記者】東京の1世帯当たりの人数が1.99になり、ひとり暮らしの高齢者で見ると、30年間で6倍の62万人に増えましたが、知事はこの数字、どのようにご覧になりますでしょうか。

【知事】アイム・ショックドだね、本当に。あまりうれしいニュースじゃありません。かといって、家族というものの構成の形をどう変えるかというのは、結局それぞれの選択の問題ですから。私だって、今、家内と2人だけで住んでいるわけです。どちらかが死ねば1人になっちゃうわけだけど。これは、非常に望ましくない、社会全体で考えると非常に危険な、恐ろしい兆候だと思います。ただ、親子3代になって住めといっても、若い人の価値観とか、健康の時の条件みたいなのがあるし、この頃の若い夫婦の話を聞くと、男の方は「君の方のおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでもいいぞ」とか、「その方がいいんじゃない、君が楽じゃないか」と言っても、若い女の人が「嫌だ」と言うらしいね。年寄りと住みたくないと、住むんなら夫婦2人だけというのが、一般の通例らしいけれども、これも損な話で、本当はじいさん、ばあさんと一緒に住んでいると、育児なんかも楽だし、知恵も働くし、若い母親が、初めて赤ん坊が熱出しても動揺せずに済むと思うんだけれども。法律で規制するわけにはとてもいきませんから。日本人の価値観が変わってきたので。もっと長期のことを考えれば、私は親子3代で住む方がはるかに得だと思うし、幸せになれると思うんですけど。そうはいっても、嫌なものは嫌だったらしようがない。それ聞いて、非常にショック受けました、私も。
 はい。どうぞ。

【記者】原発の再稼働についてちょっとお聞きしたいと思っているのですが、大飯原発の再稼働が近く政府によって認められるのではないかというふうな動きになってきております。そのほか、伊方原発もあるようですが、原発の再稼働につきまして、都知事はどういうふうにお考え……。

【知事】結構でしょうね。条件次第だと思いますけど。きちんと整備をして、福島の原発というものを一つの反面教師にして、すべき整備をしたら。私は原発を稼働させなかったら日本の経済はもたないと思います。それでもいいというなら別の話ですよ。

【記者】それから、原発が40年で寿命だというふうな考え方が政府から打ち出された経緯があるのですけれども、原発の寿命という点ではどういうふうにお考えになるでしょうか。

【知事】分からない、私は素人だから。政府だって、素人の集まりなんだから、専門家にリファー(照会)して、そういう知見の上で、そういう結論を出したんでしょうけれども。40年しかもたないんだったら、新しい原発をつくる時は、もうちょっと立地を考えたらいいし、それから原発の運営のシステムをフランスみたいに一貫したものにしたら、結局、人災でこういうことになったんだから、それは反省のよすがにして、これから新しい原発をつくったらいいと思いますよ。

【記者】再稼働の原発の数というものは、もっと促進すべきであるというふうに、これからのことなのですが、お考えになりますでしょうか。

【知事】これからのことは政府に聞いてくれ、大体、いかなるタイムスパンで、どういう経済の拡充を求めるかということも設定せずに、それをベースにしたシミュレーションもせずに、原発がシロだのクロだの言ってもしょうがないことなんだから。何年先にこれだけの成長というのを目指すんだったら、それに必要なエネルギーというのはどうやって担保するか、その中に原発は何%必要かということの計算の上で初めて、原発の増設なり廃絶というのは決められるわけでしょう。だから、そういう長期のシミュレーションをしないで、シロだクロだと言ってもしょうがないんだよ、今。どうぞ。

【記者】知事が会見の中で原子力をめぐる話で引用される吉本隆明さん(詩人、思想家)の、本日訃報が入ってまいりましたが、知事はそれをどのように受けとめられましたでしょうか。

【知事】彼は、ある意味で反体制、左翼じゃないんですよ、権威というものに対抗するオピニオンリーダーだったと思うし、一つの世代の象徴的な存在だったと思います。年取ってきて、何年か前、海水浴へ行って、溺れかかったんだね。随分身体がへたっているんだなと思って、痛ましい気がしたんですけど。なかなか彼を継ぐような論客というのはあらわれてこない。どちらの体制、反体制にしろ。江藤淳(文芸評論家)も死んじゃったし。そういう意味では、ろくな評論家はいないな、日本には。これも何か、国力の衰退というか、社会全体の衰退の現象だと思います。日本に激しい議論がなくなった。文壇でも、ポレミック(論争)はなくなった。侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がなくなった社会というのは成長しないと思います。知的な刺激というのを相互に与え合ってこそ、成長があるんで。僕なんかの青春時代には、みんなそれぞれ論客というか、よくしゃべった、議論したな。小説家に問わず、映画界にもいたし、評論界にもいたし、同世代の人間が体制・反体制含めて、相互に侃々諤々、口角泡を飛ばして議論したけど、この頃そういう議論そのものがなくなってしまったんです。残念です。
 はい、どうぞ。

【記者】きのう毎日新聞が書いた、元環境局長さんが東電に行っています。我々の取材に、知事、どうせ行くなら向こうの情報を伝えてほしいとおっしゃったのですが、今、青山(やすし)元副知事が社外取締役をお辞めになられて、長い間、都から出身者が行っていたわけですが、今、欠員になっている、空席になっているのですが、誰かしら、都から大株主として人を出した方がいいというふうにお考えになりますでしょうか。

【知事】もちろん、都が派遣したんじゃないんですよ。東電から請われて行ったわけですけど。彼は東京都のどういう情報を伝えるだろうかね。東京都に、彼が東電の情報を伝えてくれたという節はないんだけど。今の段階で、東電に伝わって、具合の悪い計画があるわけじゃないけれども、ただ、東電側になった人間に、べらべら、都庁の問題をしゃべる人間がいたとしたら、こっちの方が危険だと思う。それはこれから精査していきますけれども。

【記者】いわゆる天下りという問題以外に、都から、都出身で社外取締役として、ずっと人を出されていたわけですが、それが今空席になっているのです。その天下りの件とは別に。誰か、そういう社外取締役、チェック的な立場だと思いますが、人は入った方がいいというふうにお考えでしょうか。

【知事】私もそう思います。天下りとか、そんなことじゃなく。こっちは大株主でありますけど、同時に大ユーザーでもあるわけで、値上げに反対しますから。特に東京都下に多い小零細企業にとっては致命的な問題になるから。その前に、彼らがどれだけ誠意を持って、権利としての値上げを主張するなら、彼らの義務である内部の合理化というものをするかしないかということは、お目付役で東京都の代表という人がいて、やってないじゃないか、無駄じゃないかという指摘をした方がいいと私は思います。

【記者】その件で、猪瀬さんなんかはずっとそういう発言されているのですが、例えば兼務なりで、取締役に入れろというようなことを都として求めるというようなことはどうですか。

【知事】そうですね。人を選んで考えましょう。猪瀬君が行ったら貴重だけど、ちょっともったいない気がするし、向こうは頭が痛くていれないだろう。

【記者】議会のほうでもおっしゃっていたのですが、原発の事故はシステムの問題なんだと。例えば、(千葉県)内房の鋸山の名前を出されて。

【知事】一つの例としてね。

【記者】ええ。そういうこともあるんじゃないですかというようなことをおっしゃっているのですが、都としても、100万キロワットの天然ガスの発電所を検討されていると思うのですが、いろいろ調達コストの問題とかもあると思うのですけど。例えば、そういう原発について、それこそシミュレーションなり、例えば、千葉の知事に声をかけてみるとか、具体的に何かしようというようなお考えがあって、おっしゃっている話なのでしょうか。

【知事】それはちょっと違います。そこまで考えていませんが。僕は、ワシントン州、シアトルの近郊に用事があって、たびたび行った時期があるんです。オリンピックかな、あそこに国立公園がありますが、すぐその横に1基か2基、大きな原発がありました。それは、海からはるかに入ったところでしたけれど、ちゃんと運用されてたし、事故も起こしてないし、例えば、近くにセントヘレンという大爆発を起こした大火山があるんだけれども、その裾野の延長の上でしょうけれど。それ見て、なるほど、こういうところに立地を構えて、うまく運営してるんだなという印象で眺めていましたし、その後、原発が問題を起こしたという話も聞いたことありません。ヘレンが大爆発を起こした時だって、それに鳴動して、その余波でその原発が云々ということは聞いていませんが。ああいうものを見ても、これだけの地震国で、再三津波に襲われている地政学的な条件の中で、海のそばに原発を設けることそのものが、僕はちょっとずさんだったと思いますし、よく例に引かれるけども、貞観年間のあの大津波のことを、清少納言のお父さんが歌にも書いていて、それに啓発された優秀な地質学者が、歌に沿って、仙台の奥の奥まで調べたら、とんでもないところまで津波が来た痕跡があったということを、ごく最近、政府に提言しても、通産省も、東電も、いかなる発電会社も聞き入れることなく、日本の原発、ほとんど海岸の近くにあるわけです。これは、大きな考え間違いだと思います。これは人災でしょう。そういうデータ、知見というものを斟酌(しんしゃく)せず、評価せずに。なぜ僕は海のそばがいいのか分からないけど。私なんか、ヨットレースでよく間近に通りますが、あの御前崎の手前の浜岡ですか、あそこの原発なんかでも、ヨットすれすれで通るわけだけど、「ああ」と思います。こういう時期になってみると。しかも、あそこは地震の震源地としての最有力候補になっている辺り。そんなこと前から分かっているんだろうけど。
 それから、あなたの会社の『アエラ』が送ってきたんだけど。100人近い地震学者にアンケートして、地震の予測なんかそう簡単にできるものじゃないというんで、回答したのは二、三十人の人だったけど。私も非常に気になるから見ましたが。その学者たちは、中には、地震の予測はそう簡単にできないぞということを言って、はっきり回答の中で言っている人がいるけど、次の地震がどこで起こるかという可能性について言ったら、東京の直下型の地震について言及している人は一人もいなかった。どれだけ信憑性があるか分かりません。みんなが一番言っているのは、再び、東北の奥の今回の地震が起こった、あの一帯、それから東海、東南海、その辺りのポテンシャル(可能性)が高いというんで。ある人が、4年のうちに70%云々と言ったから、その学者にただしたら、別の計算をすると、100年のうちに5回か、これを何か、どういうふうに換算すると、4年のうちに70%ということでしたが、よく分からないけれども。それでもなお、あなたのところの『アエラ』という雑誌がアンケートして、答えた学者の中で、一人も東京湾の直下型が次に来る一番大きな地震だろうと予測した人がいなかったというのは、それでほっとするわけにもいかないかもしれないけれど、なるほどという感慨で読みました、私は。
 どうぞ。

【記者】新年度本格着工する外環道の関係なのですけれど、練馬−世田谷間は2020年、オリンピック招致のタイミングで完成させるということなのですが、東名から先の羽田までの区間について、都の方は早期着工というのを求めていらっしゃると思うのですけど、知事ご自身のお考えとしてはいかがでしょうか。

【知事】ちょっともう一回。

【記者】東名から先の羽田空港までの区間、20キロぐらいあるということなのですけど。

【知事】これも相当高い優先順位で考えていかないといけないと思います。羽田が国際空港化し、あそこに、国交省と打ち合わせしましたけれども、吸引力のある、非常に大きいものは国際会議場をつくりますから。そうなればなるほど、羽田に結ぶ外環の高速道路のニーズというのは増してくると思うし、非常に高い優先順位で考えるべきだと私は思っています。それから、この間も質問に出ていたけど、第二外環(外環の地上部街路(外環ノ2))というのはやめてもらいたい。これ、外環じゃないんです。外環は地下につくるんだけども、それに付随した道路の整備というのは、都市工学をやったら、当然必要になってくるし、一部の人たちにご迷惑がかかるかもしれないけど、それはそれなりの代償で措置をしますけれど。地上に2つもの外環をつくるという、そういうイメージじゃないんで、これはちょっと、呼称そのものが間違っていると私は思います。

【記者】都の予算として、外環の関連街路事業として計上されていると思うのですけれど。

【知事】ぜひ必要ならつくらなくちゃいけませんよ。ただ、呼称を二環とか、そういう言われ方をすると、外環2本つくるみたいなイメージになります。そんなばかなことはしないわけですから。

【記者】東名から羽田の区間なのですけれど、田園調布とか二子玉川とか、練馬から世田谷までの区間と同様に、かなり良好な住宅地を通る形になると思うのですが、あの区間も大深度でやるべきだというふうにお考えでしょうか。

【知事】今言った外環が羽田に結ばれたら、今言われたみたいな道を新規につくる必要がそんなにあるのかなと思いますけど。かなり便利になりますから、アクセスは。そういう住宅地を抜けるとしたら、地下という形にしかならざるを得ないでしょう。行うとしての話ですけれど。はい、それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)