石原知事記者会見

平成24年5月10日更新

石原知事定例記者会見録

2012年4月27日(金曜)
15時00分〜15時40分

知事冒頭発言

1 尖閣諸島について

【知事】冒頭、たくさん申し上げることがあります。
 1つは尖閣諸島について、本日、幹部を集めて購入に向けた具体的なロードマップについて議論しました。今後、東京として、現地入り調査のための、上陸に向けて国の承諾を求めるなど、購入のための手続きを進めていきますが、そのための実動部隊と事務局組織を5月1日から立ち上げます。また、東京都に対して寄付をしたいという声が、多数、寄せられていまして、中には10万円とか、インターネットのページを見ますと、どこに振り込んだらいいのかという、そういう問い合わせとか協賛の声が非常にありがたいんですが、こうした志を受けとめるための口座を開設いたします。寄附の具体的な方法は、後ほど知事本局から資料を配付します。

2 東京電力への株主提案について

 次いで、東京電力への株主提案についてですけども、総会のある前にいろんな提案をしなくてはいけないという制限があるみたいで、今日か明日が限度のようですが、東京電力の構造改革については、これまで猪瀬副知事が精力的に取り組んできてくれました。これをさらに進めるために、本日、東京電力の株主総会に向けた東京都としての株主提案を行います。内容については、この後猪瀬副知事から発表いたします。

3 2012東京国際ユースサッカー大会について

 次いで、2012年の東京国際ユースサッカー大会についてですけれども、来月、5月2日から5日にかけて、東京オリンピックのサッカー会場でありました駒沢オリンピック公園総合運動場で、東京国際ユースサッカー大会が行われます。
 昨年の大会は、残念ながら例の東日本大震災の影響で中止となりましたが、今回はオリンピック開催地であるロンドンをはじめ、海外から8都市と東京、そして被災した岩手県、宮城県、福島県、茨城県のジュニア選手を招聘し、過去最大規模の16チームで交流試合を行います。サンパウロなど強豪チームの中で、前回第3回大会では、東京ヴェルディジュニアが優勝しました。今年も楽しみにしております。
 スポーツの持つ力でみんなを元気に、またかけがえのない思い出をつくってもらいたいと思っております。新緑あふれる会場に足を運んで、未来のアスリートたちのさっそうとしたプレーに声援を送ってほしいと思います。

4 第65回都民体育大会及び第13回東京都障害者スポーツ大会「合同開会式」の開催について

 次いで、第65回都民体育大会および第13回東京都障害者スポーツ大会の合同開会式の開催についてですが、例年、開催している都民体育大会と東京都障害者スポーツ大会、この2つの大会の開会式を、1万5000人の規模で5月13日に駒沢オリンピック公園総合運動場で開催します。初の合同開会式で、障害のある人とない人が、お互いのスポーツ競技への理解を深めて交歓できる機会を創出したいと思っています。これまでない規模の画期的な試みであると思っております。この取り組みを契機に、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の招致、及び来年開催されるスポーツ祭東京2013を成功させ、日本全体に活力を与えていきたいと思っております。
 開会式の総合司会は、フリーアナウンサーの福澤朗(ふくざわあきら)さんが務め、オリンピアンの朝原宣治(あさはらのぶはる)さんやパラリンピアンの土田和歌子さんがゲストとして参加して、スペシャルライブやクイズイベントなども開催するので、ぜひ皆さんに楽しんでいただきたいと思っております。
 私から申し上げることはそれだけです。質問があったら、どうぞ。

質疑応答

【記者】先ほど午前中に、知事は野田首相に会われて会談をされたかと思うんですが、その後、記者団に尖閣の話はしなかったというお話をされていましたが、その後で自民党本部に行かれた時は野田首相と尖閣について何か話されたようなことを示唆されたと伺いました。実際のところ、尖閣のお話は何か…。

【知事】いや、ほとんどしていません。ただ、横田の問題についてもそうで、尖閣についても、一番のバリアは外務省だという事を事例を挙げて言いました。尖閣については、せっかく造った灯台を数年間、シナを気にして海図に載せまいというばかなことを国交省(国土交通省)に言ってきた。これは、あそこを航行するやつは、なまじ灯台が灯って、チャートに載ってないと危ないんですよ。そういうことは、私は9.11のときにアメリカに行って、国防総省に行ったときに、ウォルフォウィッツだったかな、国防副長官に、横田の問題でとにかく自分の国の外務省がバリアになっている話をして、ついでの例としてそれを言ったら、とにかく日本の外務省は大国にはおどおど媚びるしか能がない、それでその話をしたら、かえって危ないんじゃないですかと言っていましたがね。

 先般の、体当たりしてきた特殊船、あれだって装甲が厚くて、ぶつけられたら保安庁(海上保安庁)のほうが穴が空いて引っ込んじゃうんだから、その船長を一地方の検事の権限で釈放できますか。そんなものは外務省が命令して、しかもその晩に、二晩目かな、石垣の空港を無理やり夜中の2時半に開けさせて、特別機でかなり偉い人物が船長を迎えに来て連れ去った。こんなものは保安庁の差し金でできませんよ。検事の差し金でもできません、そんなことは。結局、外務省の外圧じゃないですか。内圧だ。そういうことを言ったんでね。横田の問題も、ちゃんとテークノートして、この間もちゃんとした地ならしをしてきたから、今度オバマとの会談で、小泉(純一郎)とブッシュのときみたいに、もう一回ちゃんと国事マターとして登録してくれと、その根回しをしているかという話をしたので、ついでに尖閣のことも、外務省がいかにだめかってことは話しましたがね。

【記者】それで、知事が尖閣に対する持論を述べられて、首相のほうは何かお返事はしましたか。

【知事】いや、外務省を、気をつけたほうがいいよと、あなたのイニシアチブでやりなさいということを言っただけですから、わかりましたと。ただ向こうも聞き取っただけでしょう。彼は経験がないんだから、外務省にひどい目に遭ったという。

【記者】尖閣なんですけれど、知事は正規の手続きに沿って購入したいというお話を帰国後、されておりますが、最終的にはやっぱり議会の理解というのを得ないといけない…。

【知事】そうでしょうね、それは。

【記者】それで、まだ議会に対する説明がなされてないと思うんですが、今後…。

【知事】これは、しかるべき時に、購入のプロセスが進んで、例えば仮契約ができるとか、そういう段階で議会に諮ろうと思っていますから、考えてみるとやっぱり4定(第4回定例会)ぐらいになるんじゃないでしょうか。
 はい。どうぞ。

【記者】横田についてお伺いしたいんですが、この間、ワシントンでCNAS(新アメリカ安全保障センター)にも行かれたということで、知事のご感触として、アメリカの認識としては日本にもうボールを投げているんだと、日本の問題なんだと、日本側の協議の準備が整えば、アメリカとしては前向きに応じるんだという感触を得られたということが……。

【知事】まさにそう言いました。現役のキャンベル(国務次官補)なんかもそう言ったし、今、政権に入っておりませんが、ヘリテージ(財団)の幹部というのは、閣僚クラスとか軍の元参謀総長とか、いろんなのが来ましたので、その人たちも、今までアメリカがやった、他の国とアメリカが管理している空軍基地の共同使用で失敗したことはないと。すべて成功しているので、これは問題ないと思うって意見もありましたが、そういうものも含めてボールはね。ただ、ゲイツ(元国防長官)も、日本側に問題があるのでこの問題はちゃんと登録しておきましょうと言っていますから、そういうことを認識した上で。やっぱり小泉内閣の時に、小泉君がブッシュにこの問題を登録してくれたので国事マターになったんだ。じゃないと日本の外務省というのは動かないんですよ。彼らはおごっていて、中央の官僚っていうのは、地方が国家的な大事な事をやっていても、「生意気なことを言うな、おれたちを差しおいて僣越だ」という意識を持っているからね。だから、東京がやって成功したこと、例えば大気汚染の問題だって、それからもっと大事な、一番主要な問題の、役人が金の問題で嘘をついてるのがばれる、新しい会計制度というものをやらないじゃないですか。それと同じですよ、外務省の姿勢も。

 それは、横田に関して言うと、この間、ホールっていう、前の日本にある総司令官が来て、陸海空の総司令官と、それからジアラという前の政権の(国防総省の)日本部長が来て、毎年やっているパネルディスカッションに参加してくれた。そうしたら、そういうビッグ・ショットが来たのをマークしたんですかね。外務省がシンポジウムの前日にその2人を外務省に呼んで、北米局長なる者が、日本の航空需要はすべて満たされたと。羽田に4本目の滑走路ができたので、もう問題ないんだと。あれをやったのは、僕と亀井静香が強引にやったんだよ。そんなことを知らずに、いまだに三十数カ国が日本の乗り入れを期待して待っているんだ。ホールディングになっているのにね。外務省の局長は何も知らないくせに、その2人を呼んで、これはもうナショナルマターじゃないからお前ら余計なことを言うなと言った。こんな役人というのは、昔なら報復されるね。僕は本当にぶん殴ってやろうと思ったよ。
 それで、外務省に行って、前原(誠司)の部屋で、なりたての外務大臣の部屋だ、私は彼を難詰したんですよ。大体、毎年外務省も含めて、国交省、防衛省の役人がそのシンポジウムに参加してるのに、何でこの日は来なかったって言ったら、前原が、一地方自治体の行事に国が参加する必要は全くないと言うから、お前何を言っているんだ、なりたての大臣が。この、局長に振り回されるかもしれないが、ずっと、谷内(正太郎)というすぐれた外務次官の頃から決まったことで、何で今度外務省で出ないんだと言ったら、もごもご言っている。おまえら一体どこの国の大臣で、どこの局長なんだと言ったら、しゃあしゃあと「日本でございます」と言うから、そうは見えねえなって言ったんだけどね。こんな役所に外交を任せていたら、日本は国益を失うばかりですよ。

 だから、本当は外務大臣がやることかも知れないけど、今度のよくわからんから。だから、総理大臣に直接その話をしまして、いちいち外務省にリファー(付託)せずに、ちゃんとその問題が是か非かということを、長島(昭久)君っていう消息通がいてね、立派な(総理)補佐官だから彼と相談してやりなさいと言ったら笑っていましたけどね。そういうことです。

【記者】ワシントンでの会談で、横田を取り上げるというお話は総理のほうからされたんですか。

【知事】いや。取り上げてくれと言ったの。あまり人気のない内閣だから、せめてそれぐらい国益に通じることをやったらどうだと言ったら、わかりましたと言ってたけれども、また横で外務省がどんな圧力をかけるかわかりませんよ。ただ、やっぱり、行ったらわかりました。これは国レベルの問題にしましょうということを現役のキャンベルも言ってくれていますし、それから今、野党である共和党の有力なヘリテージ財団の幹部というのは、皆そうそうたる閣僚クラスの人ですよ。それが同じようなことを言ってくれたので、力を得て帰って来ましたけれども。
 はい、どうぞ。

【記者】尖閣諸島の問題で、都が購入された後に国が買い取りたいと申し出てきた場合、どのように対応されますか。

【知事】恐らく国はそんな事を言ってこない。言ってこないということがわかっているから言ったんだ、こっちは。

【記者】今日の週刊誌で、石原知事の発言で、2倍で売るなんていう事…。

【知事】それは冗談だけどね。国が本当にやる気だったら、幾らでもお譲りしますよ。本来は国が買い取るべき事なんだ。安倍内閣のときもオファーしたが、オファーの仕方が間違っていて、向こうは向こうの事情があるんですから。等価交換をして日本の土地を差し上げますと言ったって、そんなものはありがたくないだろうね。所有者の一族の財政事情もありますし、そんな事も斟酌(しんしゃく)せずに、いきなり高飛車にそんな形で持ちかけたって、持ち主はそんなのちっともありがたくないわな。そこら辺がやっぱり、国の役人はずさんで、現場に行かずに、現実の事情も知らずに、持ち主の事情も知らずにそういうことを言うからはねつけられるんですよ。
 どうぞ。

【記者】先ほど、ロードマップというお話がありましたけれども、現地調査のためには上陸する必要があると思うんですけれども、いつ頃を今、現段階で予定されていますか。

【知事】これは仮契約ができてからだと思いますけどね。それをできるだけ急いでいますけれども。

【記者】仮に上陸許可が下りなかった場合、許可が下りなくても上陸するということを考えていらっしゃるのか。

【知事】いや。許可が下りないって、下ろさなきゃ、下りるまでやりますよ、こちらは。あなた方が許さないんじゃないの。尖閣を東京都が皆の拠金で、せっかく守ろうと思ってる時に、その調査のために国が上陸を許さないっていうのは理が通らないでしょう。理が通らないことを正すのがメディアの責任ではないんですか。
 どうぞ。

【記者】私は両親とも沖縄でして、第二次世界大戦の終戦で、日本が負けたときに引き揚げて来るのに、広島の大竹から沖縄に行くのにパスポートが要ったんです。自分の国に帰るのに。だから沖縄については知事とはちょっとまた違う異論を持っております。
 ただ、外国記者として、今、中国の記者とよく話する機会があるんですが、今、中国では、小学生にも配られる地図の中に、尖閣諸島は中国だと書いているそうです。非常に危惧するのは、万一、その中国の軍部の一部でも暴走して、今の北朝鮮の感じで、尖閣を日本の領土ではないというような暴走でもしてきた場合には、そういうことはあり得るんじゃないかと危惧するんですが、知事はそのあたりをどう考えますでしょうか。

【知事】あなたは、日本人なんでしょ。国籍を持っていて。国籍、日本人なんでしょ、もちろん。

【記者】今、琉球、奄美ですが、同化政策によって日本人になっています。

【知事】それは不本意ですか、本意ですか。

【記者】いや、今、子供や孫はアメリカ人でございますので、どちらつかず中途半端な……。

【知事】ああ、そうか。そういうのと私たちの心情はちょっと違うかもしれないけどね。僕はやっぱり、さっき猪瀬(直樹 東京都副知事)君が非常にいい指摘をしたけど、これは社会心理学的な問題だけど、尖閣の問題で私がオファーしたことでこれだけ多くの国民が共感して下さるというのは、やはり東日本大震災で、国土がああやって荒廃した時の、この私達の住んでいる国の国土というものがいかに大切かということを、潜在意識というものが揺り起こされて、国民はこの問題に強い関心を持ってきたのではないでしょうか。
 例えば自分の家族に強盗が入ったときに、素手でもそこの主人というのは戦わなければいかんじゃないですか。甘んじて、奥さんなり娘なり強姦され物を盗られて、暴力沙汰に及ぶから、あえて全てのものを譲ったということで済むんですかね。

 それから中国もそれほどばかじゃないと思います。ただ、彼らが非常に暗示的なことを言ったのは、日本が今実効支配している、この日本の実効支配を壊すことだ、そのために私たちは思い切った行動をすると。これ、見ようじゃないですか、何をやってくるか。もし軍隊を派遣して、軍事行動でこちらもそれを守ったら軍事紛争になって、これは即座に安保が出動します。その時にいきなり原爆の問題は出て来ない、核兵器戦争にならないでしょう。なりっこないです。そんな事をしたら、世界中が引っくり返って大変なことになりますがね。
 通常兵器での戦闘で、中国というのは、数は多いかもしれないがそんなに戦闘能力があるとは私は思いません。あれが持ってる航空母艦、あんなちゃちなものは世界中の笑い物ですよ。あんなジャンプ台のついたみたいな航空母艦1隻あったって、あんなものは一、二発のミサイルで沈みますよ。やっぱりタスクフォースというのは、2杯、3杯の航空母艦が揃わなかったら用はなさない。そんな能力はない。あいつらがあれを持っているその目的は、東南アジアに行って、フィリピンとかタイ国とかインドネシアとか、比較的軍事力の弱いところに行って見せれば威嚇になるかも知れないけど、そんなものは通用しませんな、専門家の間では。
 ということで、私たちは、だから日本はアメリカとも協力してしっかりと守るよと。場合によっては安保を発動するよということを踏まえて物を言ったらよろしいのでね。
 私は、彼らが日本の実行支配をぶっ壊すためにどういう行動をとるかわかりませんが、それに備えるために国が頼りにならないから東京がイニシアチブをとってあそこを領有しようと、そう思っているということです。間違っていると思う日本人がいたら、お目にかかりたい。
 どうぞ。

【記者】エネルギー政策についてお伺いします。再生可能エネルギー買い取り制度に基づく買い取り価格の原案が決定したんですが、推進を求めている電気事業者側の要望に沿った高い価格が設定されました。知事はこれまで、自然エネルギーというのは、原発の代替にはなり得ないということを述べておられましたけれども、今回の価格の設定を受けて、首都圏での、特に太陽光発電等のこれからの普及の可能性についてのお考えを教えてください。

【知事】いや、それは、採算が合うなら私は結構だと思います。
 要するに発電量の問題ですよ。自然エネルギーというもので日本の経済発展というものを担保できるなら、私は特に原発そのものは決して危険じゃないと思います。ただ、日本のような地勢学的な条件がある時に、過去にも、千年も昔かも知らないけれど大津波があったという記録が残っているのに、まあ大丈夫だということで海のそばに原発を造って来た。アメリカなんか、私も昔、シアトルのスタジオによく行きましたが、あの近くにセント・ヘレンという活火山が、この間、大爆発したけれど、そのそばにもちゃんと原発の発電所があります。海からかなり離れています。
 あれは恐らく川か何かの水を利用してるんでしょうけれど。そういう立地というものをきちんと考えれば、今度のような事故も無かったんだ。これは地震で壊れたんじゃないですからね。津波でやられたんですからね。と思って見れば、日本の発電所というのはほとんど海のそばですな。これは私はやはり考えなくてはいけないと思います。
 ですから、どういう代替エネルギーを担保することで日本の経済発展が何%確保されるかという事のシミュレーションをやって、個々の問題を説得してもらいたいけれど、そういう作業をやらない、政府は。もっとわかりやすく説明してもらいたい。

【記者】関連してですが、今度の東電(東京電力)への株主提案ですが、大阪市の橋下市長は同じ関電(関西電力)の株主提案で脱原発ですとか、発送電分離というかなり踏み込んだ提案をされると発言しています。それについてはどう見られますでしょうか。

【知事】私は「脱原発」反対。それは東京も大阪も、そのうち名古屋も、アライアンス(提携)を組んで中央集権をぶっ壊そうと思っていますよ。だけど、個々の政策に部分的に違うことがあっても良いじゃないですか。それはあとですり合わせて行けば良いので。大阪は果たしてそれでもつのかどうか。彼は大阪の復興を願っている訳でしょう。かつては京阪工業地帯というのは、日本一の、京浜をしのぐ工業地帯だ。これは全く衰微してしまった。ろくな会社が動いてない。そういう時に、これを元の大阪に戻して、日本の有数な第2の大都市にしていく。そのためにエネルギーの担保をどうするかという事は、具体的に伺いたい。

【記者】すり合わせが完全にできなかった場合でも、連携というのは可能なんでしょうか。

【知事】それは十分あると思います。目的は、中央集権の国の役人がすべて決める、この明治以来の体制、もうそろそろ壊さないと。かつては日本の官僚は優秀でしたよ。岸信介とか、あるいは賀屋興宣とか、戦犯になったけど椎名悦三郎とか、立派な人はいっぱいいました。立派な政治家がいました。だけど、彼らが何で立派かというと、戦争前、戦争中、軍の横暴というものに対抗して、軍のしっかりしたアンチテーゼだった。ところが今、日本の官僚がテーゼになっちゃった。彼らが絶対者になっちゃった。これに反抗するのは地方しかない。それを彼らは許さない。地方がやって成功したことを絶対、国は真似してやろうとしない。こんなことでこの国が賄えますか。
 どうぞ。

【記者】尖閣の話に戻るのですが、都知事が対中国ということで、そこまでの決意と覚悟で尖閣を購入するというお考えを、現政権がきちんと理解しているか、そういったメッセージが伝わっているかどうかについてお伺いしたいのですが。

【知事】いや、僕は何も今の政権だけに対峙しているわけじゃなくて、ずっと自民党の政権とも、自民党にいながらも対峙してきました。だから青嵐会のころ、あそこが物騒になってきた。もともとは、長い話になるけど、佐藤(栄作)さんの時、沖縄返還が行われて、佐藤さんが一番気にしていたのは、台湾の漁船がいっぱい尖閣の周りにいたんです。これは、沖縄返還という大ポリティカルイシューの中では、指に刺さった小さな棘かも知れないけど、とても気になった。
 それで、私が私淑した賀屋興宣さんが密使として働いて、蒋介石を説得し、蒋介石の大側近の張群(ちょうぐん)さんを説得して、とにかく理解をしてもらって、でも、実際どうなるかなと思って、沖縄が返還したその日に、沖縄担当の大臣は山中貞則さんだったけど、山中さんに真っ先に現地に行って調べさせたことは、台湾の漁船が尖閣にいるかいないかと。1隻も蒋介石の采配でいなくなった。これは、しかし、それから落ちついてきたんですけど。今度やはり、大陸の中共政権が力がついてくると、だんだんだんだん、これが怪しくなってきて、今度は向こうも言い出した。台湾も代が代わると言い出した。それで今日、あそこは一体どこの所属か非常に混乱してるけれども。

 日本は非常に迷惑して、アメリカに、ハーグの国際裁判所に、尖閣の領土権について訴えるから、一緒に証言してくれと言ったら、アメリカが割とつれなくてね、どういうタクティカルな思惑か知らないけども、我々はあの地域の政治的な支配権を日本には返還したけど、領土として返したということにはならないと。それはね、とってもおかしな話なんだ。ところが、アメリカはそれで逃げちゃったんですよ。未だにその問題というのは、くすぶっているけど、現にあそこでずっと戦争前から日本人が住んで、工場も造って、あの島で実効支配というか、あの島を活用してきた、あの資源をですね、海底資源を活用してきたのは間違いないことです。ただ、経済が進み、世界の技術が進んで、海底資源というものの発掘が可能になってきたら、急に中共の政府はあそこへ強い関心を抱き出した。
 一応、今、国際法に則って領海の線が引かれているけども、その線のすぐ横、向こう側で試掘をされたら、地面でつながっている、地下でつながっている日本の資源がみんな吸い上げられちゃう。こういうことは、やはり協定で慎まなくちゃいけないけど、向こうは聞かないね。それで、あまつさえ、今度、日本の領海の線引きの中にある尖閣諸島まで、俺たちの領土だと言い出した。これはもう典型的な悪辣な覇権主義じゃないですか。同じように内モンゴルも吸収された。チベットも、結局民族浄化ということで無理やりの混血を強いられて、肝心なチベット人はインドに逃げちゃったけども、ダライ・ラマなんていうのは、私に会いに来ても外務省が妨害して会わさないですよ。こんな外交ってありますか。
 どうぞ。

【記者】午前中総理とお会いになったときに、外務省に気をつけろよというふうな、尖閣のことに関しておっしゃったということですけれども、都のほうに一任してくれというようなことをおっしゃったりそういう事は。

【知事】いや、主に私は横田の話をしましたから。ただ、いかに横田の問題のバリアが外務省かという話をしたのと、今問題になってる尖閣で、いかに外務省が日本にとって酷いことをしたかということを言いました。

【記者】特に何か、じゃあ見守ってくれとか、そういった要請はされてはいないですか。

【知事】要請?誰に。

【記者】野田総理に対して、お願いというか、そういった話はされていない…。

【知事】今、国に頼む事はない。こっちが上陸して測量しようと思ったら、黙ってやらせたらいい、新しい地主になるんだから。それだったら私たちが買いますというのだったら結構ですよ。国が買ったらよろしい。そうはいかないでしょうから。
 どうぞ。

【記者】北海道の夕張市長のお話をお聞きしたいんですが。30歳だった鈴木直道さんが、北海道の夕張の市長になると言ってからもう1年になります。1年前に石原さんが彼を送り出した時に贈った言葉を覚えておられますでしょうか。

【知事】一々覚えてないね。

【記者】とんでもない勘違い野郎という風におっしゃったというんですよ。最初彼は怒られたと思ったんですけれども、後でその意味がだんだんわかってきて感激したと言うんですけれども、どういう思いを込めて、とんでもない勘違い野郎と言ったのか。

【知事】それはやっぱり、今の一般の男に比べて、「自ら顧みて直くんば、千万人ともいえども我行かん」という志を持った青年というのは美しいじゃないですか。それはやっぱりとんでもない野郎ですよ。ですけど、だから私は現地にも行ったし、猪瀬君は特にいろんな形で具体的に手を出してサポートしているけど、なかなかあの町の再生は難しいね。とにかくちっぽけな町でいながら、昔は10万の人がいたのが、今1万5000人ですか。その広さは東京23区より広い。それで、乱立してる炭鉱用に造った市営住宅というのは、もう殆どがら空きなの。
 だから私が言ったのは、東京もキャンペーンに参加してあげるから、ただで夕張に、この北海道に別荘を持ちませんかと言って、ただで売っちゃえと。ぼろぼろの家もあるし、まあまあの家もあるけど、それを住み良くするために、それを買った人達が、買ったんじゃない、ただで貰った人達が自分の費用で部屋を直すのは、これは責任でしょう。そうすると大工も来る、ペンキ屋も来る、いろんな事で経済活動も刺激されるだろうし、まずその人たちが、ただでもらった別荘に、自分でそれをリペアして夏ごとに来てくれたら、人口も増えるし、良いじゃないですか。それしか回生の道はない、あそこは。

【記者】その意味で言うと、勘違い野郎は日本にもっと若者に増えて欲しいと。

【知事】そうですね。全くそう思いますね。勘違いというか、自分の志で、何と言われようと俺は思ったことをやるんだという若者に増えてもらいたい。
 ベンチャーテクノロジーに関しては、本当に若い人達が2人、3人で寄り合って、研究所でとんでもないことを考えて発明しているんですよ。これは違った意味での現代で希有なる青年たちだけれども、ああいう、もう極端な貧困に突き落とされた町をどうやって復活させるか。これは、この国そのものもだんだん老齢化して少子化してきている時に、やがては国全体について考えなくてはいけない問題があると思いますけど。
 どうぞ。

【記者】昨日、民主党の小沢(一郎)元代表が無罪判決になりましたけれども、小沢元代表は亀井静香さんと連携する動きが一部ありますが、こうした事が石原都知事が前に発言した新党の白紙につながったのかどうかお聞きしたいんですが。

【知事】全然。私は、小沢君と亀井君が、非常に、いろいろ行き来しているのを知っていますが、彼に言っていることは、「新党も必要だろう、日本の政界の最前線で役に立つなら私もこの身を捨てますが、ちょっとでも小沢の影が差してくるような話は乗らないよ」と言っているんですよ。それは晩節を汚すしね。今度の判決は、無罪と言ったって灰色、それも限りなく黒に近い判決でしょう。国民だってそっぽを向きますよ。何を勘違いしているか知らないけど、こういう時代で、これが結果として無罪ということになった、濃い灰色なのに。国民がますますうんざりする。彼に関する金銭の山の問題というのは、もっと大きいのがあるんじゃないですか。
 ただやはり、インフラの整備のための建設事業の贈収賄なんていうのは、こんなものは両方ともが同じことを言わなければ絶対立証できないんだから。だから、彼に関するいろんな金の疑惑はもっとべらぼうな単位のものがあるんだろうけれども、これは埒外のものにされていて。まあ、4億といったって、我々にしてみれば大金だけどね、彼にしてみればちゃちな問題だったんじゃないのかな。しかもそれが共謀か、・・・まあいいや、判決のことには詳しく興味もないけど。
 いずれにしろ、彼の弁護団は「勝った、勝った」と言っているけども、告発している原告側の、弁護士出身の検事たちが、なかば勝ったみたいなものだというのは私も同感です。限りなく黒に近い灰色だから。これを白と言えるかね。

【記者】やはり小沢さんの名前がちらついたことは、やっぱり新党の白紙に…。

【知事】白紙も何も、私、全く小沢に関心がない。それから、彼の影がちょっとでも差してくれば御免だと言ってありますから。

【記者】実際にそういう動きというのをお感じになられたんですか。亀井さんと小沢さんが…。

【知事】亀井はしきりに僕にいろんなことを言っていたよ。その話は亀井に聞いてくれよ。
 はい、どうぞ。

【記者】がん患者について知事のお考えをお聞きしたいと思っているんですが、がん患者でも末期になりますと、モルヒネとかそういうもので痛みを取るしかなくなって来るんですね。今、都内には一般の患者が10万人いるんですが、そのうちの3万人が1年のうちにがんで死んでいくんです。その中で、皆末期患者になっていくわけですが、その時にホスピスという緩和ケア病棟の数が非常に少ないんですね。厚生省(厚生労働省)の問題かもしれませんが、東京都で少しでも緩和ケア病棟を増設してもらえる、やっていこうというお考えを持っていただけないものでしょうか。

【知事】それは現況をもっと詳しく聞いてから考えましょう。できることなら。

【記者】末期患者の苦しみとか、そういうものは都知事もご存じ…。

【知事】私はなったことないから、幸いにしてね。君だってわからないだろう、そんなこと。

【記者】ええ。知り合いの人では、非常に苦しんで亡くなっていくわけです。それが自宅ですとか一般病床で治療していくという事がとても難しいんですね。ですから、特別の緩和ケア病棟というものをたくさん作っていかないと、非常に苦しんだままで死んで行かなければならない。こういうところにもひとつ、3万人いますのでね、都内には。

【知事】その問題を考えるときに、決して残酷な突き放した言い方でないと思うけど、私は、人間にとって、死ぬ権利もあると思いますね。吉村昭君という、親しかった有名な作家が、やっぱり同じような状況になって、最後は自分でくっついてる管を全部外して死ぬんですよ。奥さんも医者も止めたけどね。
 私はね、ここで俺は死にたいんだ、すっと死なせて、楽に死なせておけと言って、安楽死という形でその患者を。いずれにしろ末期のがん患者は必ず死ぬんだから。死ぬんでしょう。末期がんの患者、助かった人はいるんですか。

【記者】末期患者ではいないでしょうね。

【知事】だったらやっぱり、死ぬ権利というのも保証して、その人たちに選択をさせて、それを医療がある意味で支えるぐらいの仕組みというのは、病院をつくる、つくらないの対比に考えるべきだと私は思いますがね。

【記者】苦しまないで楽に死ねるような道を患者が選択できると、これが大事なことではないかと思うんですが。

【知事】そうそう、まさにそうです。あなたもなったらそうしなさいよ、ほんとに。
 それじゃ。

(テキスト版文責 知事本局政策部政策課)