石原知事と議論する会

平成12年10月24日更新

防災都市東京の確立 〜都市災害の危機に備えて〜
平成12年度第1回「石原知事と議論する会」議事概要


テーマ  防災都市東京の確立 〜都市災害の危機に備えて〜

日時  平成12年7月19日(水)午後3時から午後4時30分まで

場所  東京消防庁消防学校 5階講堂(渋谷区西原2−51−1)

趣旨  阪神・淡路大震災から5年余を経過し、大地震に対する都民の危機意識の風化が指摘されています。今、改めて大地震はいつか必ず来ることを自覚し都民一人ひとりが「自らの生命は自らで守る」「他人を助けることのできる都民へ」という考え方に立ち、日頃から怠りなく備えることが必要です。
 このような考えを基本に、都では震災対策の一層の充実を目指し、東京都震災予防条例の全面改正に取り組んでいます。さらに本年は、災害発生直後の迅速な初動体制の確立に向けて、警察、消防、陸・海・空3自衛隊等が相互に連携する総合防災訓練を9月3日に実施する予定です。
 今回の「議論する会」は、都市災害の危機に備えて何が必要か、知事が災害ボランティア活動経験者の方々と活発に議論し、防災施策の参考とします。
   
参加者
写真:12年度1回知事と議論する会の模様(公募都民)
発言者 10人(災害ボランティア活動経験者等)、一般参加者 226人
(コメンテーター)
藤本 義一さん(作家)、M渦 武生さん(東京都副知事)、志方 俊之さん(帝京大学教授、東京都参与)
(都側出席者)
知事、関係局長、政策報道室長(司会)

発言要旨
 以下は、出席者の発言内容を、政策報道室都民の声部で要約し、とりまとめたものです。

○石原知事

 藤本さんは、関西の例の地震をまっただ中の西宮で経験された。

 それから、M渦は、尼崎で地震の渦中にいた。

 志方さんは、日本で初めて、今度東京が行う陸、海、空の三軍を出動してもらう大救急作戦の北海道版を実は先んじてやられた方。

 それぞれの体験を踏まえた率直な意見というものを伺って大いに参考にしたい。

○藤本さん(コメンテーター)

 黙ってやりながら、皆に心をうまく配る人が本当のボランティアだと思うが、神戸のときは帽子かぶって、ワッペンつけて、自分の食べる物を持ってこないで、カメラを持ってきて、トイレも清掃しないで帰ったボランティアもいた。 こういう建前のボランティアが一番日本に多いと思う。

 隣人のフルネーム、家族構成もわからない状況だと、避難所に行ったときにどこの誰だかわからないので、寒々とした人間関係が生まれてくる。

 僕自身が感じたことは、それまで生きていたと思ったことが震災経験後は、誰かに生かされているという気持ちになった。

M渦副知事

 震災直後は、どんな知らない人でも生きていてよかったという気持ちになったが、1週間経つと、不幸さに差があり、なぜ自分の所はまだ水も出ないんだろうという気持ちになったのも事実。

 また、卑怯かもしれないが、助かる人から助けようという感じを持ったことも事実。

 自分も被災者なんだが、みんなが仲間だから、自分のできることをどうしたらいいかということを自発的に考えた。

○志方参与

 何か起こったときには、どこが所管かではなく誰がやれば一番いいかと言うことを考えなければいけない。危機になった場合には、リーダーシップとそれを支えるフォロアシップが必要。

 地震のような場合には、最初に来るのは隣人。そして警察、消防が来て、最後に自衛隊が来る。鉈のような自衛隊の力、ボランティアのように毛細血管的な心のこもったサービスを個人のところへ届ける、そしてプロフェッショナルな警察、消防、こういう4つの力が重複しないように機能するのが重要。

○鶴木さん(都民)

 震災時、町会は大学を避難場所に指定し、大学では学生を構内から出すこととしている。単に災害時に避難場所が出来ているというだけではなく、それが現実にどう動く可能性があるのかということを含めて細かく検討する必要がある。

○藤本さん(コメンテーター)

 自分の目標とか何か精神的なものをつかもうとした人が、自分を立て直していく。ボランティアは、私はこれができるというものを登録しておく必要がある。

○鶴木さん(都民)

 東京都の災害時ボランティアは、何ができるかを消防署に登録している。常に起こる前からどういうことをしようかと考えているのがボランティア。

○志方参与

 支援部隊が来る拠点と避難民が逃げ込むところと日頃から別にしておくべきだ。しかし、そういうのは非常に厳しい。

○小澤さん(都民)

 行政にすべてを依頼する、助けを求めるのは間違い。できることは自分でやらなければならない。

 ガソリンスタンドの敷地を、情報の発信源として優先的に行政に使用してもらったらと考えている。ガソリン等を行政に優先供給していくことも方法の一つ。

 ガソリンスタンドを救急ステーションにすれば、ジャッキやハンマー等を使って救命活動の応援も可能なのでは。

○伊藤さん(都民)

 東京消防庁災害時支援ボランティアは、庁の下部組織であると認識し、何かあったときに体制をフォローアップするのが役割と考えているので「ボランティア」という名称を変えてもら いたい。

 同じ人が区のボランティア組織や警察、消防という2,3カ所に重複して登録をしているので、整理する必要がある。

 区の訓練の時に、所轄の消防署等も一緒になるなど、連携のとれた訓練を実施することが必要。

○角本さん(都民)

 警察も消防もある程度の規模以上の災害になると基本的に機能しない。一番役に立ったのは隣人。

 平常時に使っている情報システムが災害時など、どういうときでも使えるようなシステム又は体制が必要。

○上原さん(都民)

 神戸ではそれぞれのボランティアグループが必ずしも連携を十分にとれなかったという問題があった。そのことから、東京で東京災害ボランティアネットワークという組織を立ち上げた。

 それぞれの自治体が小中学校を避難所にするが、私立学校や教会、寺社等々はどうするのか。様々なグループ、団体がこれに備えなければならない。

 地域の中で「行政はこれをしたいと思います。だけれどもここから先のことはできません。後はみなさんの力で地域を支えてください。」ということを明確に言うべき。

 行政とボランティアがどうやって役割分担をして、パートナーシップをつくり、人々の命と暮らしを守るか論議すべき。

○M渦副知事

 ここに地震がきたら消防も含めて被災者になり、動きが取れないはず。むしろ、自分たちの外郭にいかに協力をしてもらえるかが重要であり、そのための協力関係を今からしておくことが必要。

○松尾さん(都民)

 大規模な災害の時は行政機関も被害者。国や都への期待や責任の押しつけはおかしい。市民が救命、救助等行わなければならない立場に立たされるということを認識すべき。

 地域社会の崩壊、核家族化の進行で、自治会等の組織的な取組みができない可能性もある。個々の都民が防災に関する知識に、自分が可能なときにアクセスできるようなシステムができないか。たとえば、消防庁の持っている救命資機材の使用方法を講習すべき。救命講習会等は平日の昼間に開催するだけでなく、都民が参加しやすい日時、会場で開催したりすべき。

○石原知事

 人工呼吸法を習ったが、考えているような簡単なものではない。各町会で講習会を開くなどが必要。

○伊藤さん(都民)

 普通救命講習は、どこの消防署でも希望があれば日曜祝日を問わず出前でやってくれる。

○黒田さん(都民)

 消防庁の資機材は、いざというときに使えなくならないように管理をしっかりするべき。帰宅困難者に対しての備蓄が十分にされていない。

○M渦副知事

 東京都は分散して最低限のものは、二、三日分備蓄してある。また帰宅者の問題はこれから議論として詰める作業だ。

○松尾さん(都民)

 もし、組織を重視して資機材を使わせないのであれば、もっと数を増やすべき。

○角本さん(都民)

 備蓄は誰のための備蓄か。よそで被害が起きたときのための備蓄と考えるべき。運ぶ手段はいくらでもある。

○M渦副知事

 それが届くかどうかという想像を超える現実があったわけだから最低限のものの用意は必要。

○市川さん(都民)

 自分の命を守ることから防災はスタートする。ボランティアの位置づけとして、周りに周知することが大切。どこに誰が住んでいるのか明確にする必要がある。

○村田さん(都民)

 町会の防災訓練に参加しているのは、大部分が高齢者の方。若者に防災の必要性を訴えるには、学校教育の中で防災教室を義務化していく必要がある。

○山口さん(都民)

 平常時に、救命の経験や体験をすることによって実際の震災が起きたときに経験を活かせるのではないか。

 情報伝達をメディアだけでなく都民の近いところで情報をすぐ流せるような方法を考えてもらいたい。

○藤本さん(コメンテーター)

 ボランティアも被災者になる。自分で責任もって、楽しみながら自覚するような制度が必要。

○M渦副知事

 災害とは一体何か。自分の命を自分で守る。東京都の防災会議にはメディアの方が入っていない。責任ある方が入って、正確な報道をしていく必要がある。

○志方参与

 電話をかけても相手の顔が見えるという、ボランティアも含めて、組織間の日ごろの訓練はものすごく大切。訓練の時に使用できない機材は、本番では絶対使えない。ボランティアの人のための機材、訓練のための機材を用意し、場所と指導者を整えて訓練をすることが必要。

 人知れず一生懸命に活動するボランティアを作っていかなければならない。そして、日頃から行政と一緒にやることが大切。

○石原知事

 町内会が一番身近な共助だが、それが地域住民の家族構成を把握するなどのきちんとした活動をしていけば、あの人はどうしたろうかという心遣いをする。

 困っている人をふつうに助ける、ことさらの親切ではない当たり前のことができなくなっている社会で、災害というのは、ある意味で失われたものを取り戻す一つの機会にもなり得る。そのためにはいざというときに支え合う訓練が大事。

 公助である東京都は、とにかく急いで警察や消防、自衛隊を動員することを心がけるがやはり一番大切なのは、自分で自分を助ける、助けきれなければ隣人が隣人を面倒みるという意識習慣を取り戻すこと。訓練をする中で、社会が失いつつあるものを取り戻し、日本を作り直していく。

 東京にあるボランティアの代表会議を開催していきたい。