石原知事と議論する会

平成13年1月10日更新

千客万来の東京をめざして 〜観光資源の発掘と発信〜
平成12年度第2回「石原知事と議論する会」議事概要


テーマ  千客万来の東京をめざして 〜観光資源の発掘と発信〜

日時  平成12年11月29日(水)午後2時30分から午後4時まで

場所  アジュール竹芝 14階天平の間(港区海岸1−11−2)

趣旨  東京は、新宿の高層ビル群や臨海副都心などの近未来的都市としての顔、江戸時代から続く伝統文化・景観の残る歴史都市としての顔、ファッション・音楽など新しい文化の発信都市としての顔など、多様な顔を持つ魅力あふれる都市です。しかし、それらの魅力は観光資源として十分に活かされているでしょうか。
 東京都では、様々な産業への経済波及効果の高い「観光」の充実を主要な施策のひとつと位置づけ、今後の取組みを強めていくことを重要課題とし、新たな観光資源の発掘や諸外国に向けての発信を行っていきます。
 そこで、都民のみなさんと「観光」を通じての東京の活性化について活発な議論をして、東京都のこれからの観光政策はどうあるべきかを考えます。
   
参加者
12年度2回知事と議論する会の写真(公募都民)
発言者 8人、一般参加者 141人
(コメンテーター)
深田 祐介さん(作家)、兼高 かおるさん(ジャーナリスト)、加納 典明さん(写真家)
(都側出席者)
知事、関係局長、政策報道室長(司会)

発言要旨
 以下は、出席者の発言内容を政策報道室都民の声部で要約し、とりまとめたものです。

○石原知事

 東京は人気が無くて困っている。飛行場だって足りない。

 来てもらっても何を見るか、その辺の整備が遅れている。東京の名物はいろいろあるし、あってしかるべき。

 伊豆七島は、本当にすばらしい。奥多摩もきれいな美しい渓谷も山もある。都内にもいろんなものがあるが、不案内、不親切。もう少しいろんな知恵を出したらいいと思う。みなさんに都民として、またユーザーとして知恵を貸していただきたい。よろしくお願いします。

深田さん(コメンテーター)

 日本は観光資源に恵まれているが、そういう自覚が全くない。

 日本人は、外国からの観光旅行者は金髪碧眼の人だと思っている。ところが日本に来る外国人の60%がアジア人。中でもリピーターが多いのが台湾人。この人達は深く日本のことを知っている。

 観光は作り物であるのだから作るべきだ。

○兼高さん(コメンテーター)

 外国の人を日本に呼ぶ観光を考えている。外国ではその国のカルチャー、歴史を見に来る。日本は外国に見せることができる日本の美しさをずいぶん壊した。

 日本に来る半分以上であるアジア人は作り上げたものを見に来る。それ以外の欧米人は、日本といえば京都・奈良だと思って見に行く。しかし、彼らのイメージとあまりに違う。ヨーロッパの場合は、壊されたものを、お金と時間をかけて復元している。我が国もなぜ壊したものを復元しないのか。日本の古来の歴史というものを見せるようにしないのか。

 「観光」という言葉には物見遊山的な印象があった。だから「観光」という言葉を使わないで「ツーリズム」という言葉で産業を興すべき。「観光産業」というよりももっと適切な言葉を使った方がよい。次の世紀は「ツーリズム」という産業が大きな産業になる。

○加納さん(コメンテーター)

 東京に住んでいるが東京のイメージは、はっきりしない。外国の方から見て東京にイメージがあるのか。東京のイメージを世界に定着させることこそが必要である。

 一番大事なのはゾーニングの問題。どこに行ったら何ができるのかが集約された紹介が必要。地域による人々の違いも観光(資源)になる。東京都としての指針が必要なのではないか。世界に対して東京のイメージをもう少し明確にしていく。「TOKYO」をダイナミックに認知させるやり方はあるか。

○高畠さん(都民)

 海外の友人の意見として東京の印象は「最悪」であるという。東京が日本になっているようなところがある。自分も東京の良さを説明できなかった。文化・歴史・景観・人の表情など全体が魅力的に醸し出されてこないと本当の意味で観光都市になれないと思う。安易に手を打たずに難しいテーマにチャレンジしてほしい。

○石原知事

 東京は都市計画がない。めちゃくちゃな街だがそれはそれでおもしろい。東京は一種のカオス(混沌)。

○加納さん(コメンテーター)

 都の問題ではないけれど、物価の高さなどの問題はある。

○深田さん(コメンテーター)

 お金や人の愛想やエチケットやいろんな面があるから一概には言えない。

○高畠さん(都民)

 人は人からどう見られているか考えたときにすてきになる。東京は、人からどう見られているかを考えて、美しさのあるまちづくりをしてほしい。

○天野さん(都民)

 ツーリストインフォメーションの場所と、何を教えてくれるのかが分かりにくい。

 都市の美観として、カオスとしておもしろいところもあるが、昔の日本の家並みが残る下町などがおもしろいところもあるので、場所によっては看板とか少し規制をしても良いと思う。

○島瀬さん(都民)

 日本の電車は乗り入れが多く複雑で、どこに連れていかれるかわからない。また、外国の方への案内に困る。外国人向けの切符がほとんどない。外国人向けの切符をもう少し細かく、例えば都内や山手線内にどこでも乗れる切符や、神奈川・千葉・東京をつないでディズニーランドや八景島シーパラダイスにも行ける切符を作るなど、わかりやすい等級別にして、買いやすくするようにしたらよいのではないか。

 ナビゲーションの必要性。東京は、非常に迷いやすい。外国人の方々に情報端末を貸し出して、それにナビゲーションシステムを加える。いろんな言語に対応して例えば自分の現在位置や観光ショッピング情報、電車の時刻表等を提供できれば、ガイドに頼らないで、自分の足で「私だけの東京」を発見することができるのではないか。経済波及効果も高い。

○石原知事

 とても良いアイディア。日本人も地下鉄は迷う。今度、都営大江戸線が開通して、山手線の内側は世界一の鉄道の普及した地域になる。ただ、どこに地下鉄があるのかよくわからないので、新しい立体的なロゴを募集して作った。

○加納さん(コメンテーター)

 今のは非常に良いアイディア。(情報端末の貸し出しを)有料で行って返したらお金を返す、予め外国に発信しておけば、すごくいい。都で会社を作り、メーカー等とジョイントして儲ければいい。

○関川さん(都民)

 東京の乗り物は非常にわかりづらい。日本人でも分かりにくい。駅の自動販売機、まず自分がどこにいるのか、どこに行きたいのかを探してお金を入れるのでは、駅員の省力化になるだけで自動とはいえない。どこからとどこへをいれたら、料金が表示され、お金を入れると切符がでてくるのが本来の自動化。

 日本の情報を外国人の方に知ってもらうのにインターネットというのも有効だが、パリの「カルトミュゼ」(80フランでカードを購入すると主要な美術館にフリーパスで入れるもの)のように、有償で必ず駅や空港で手に入るということであれば、海外の情報誌に掲載される。ウェルカム東京やマップなどの無料のものはいつもあるのか、どこにあるのかわからないが、あることはある。だがむしろ有償でも、東京であれば当然見るであろうものをカバーされた有償のパスのようなものができないか。

○田村さん(都民)

 東京の観光を考える上で一番欠けているのはマーケティング戦略。特にアジアの中産階級をどのように東京に呼ぶか。次に高齢者を海外に行かせないで東京に来ていただくにはどのような商品を作るか。小中学生に日本の歴史を作ってきた東京を旅行や観光で教育として伝えるのは義務ではないか。

 東京の400年の歴史が商品化されていない。できれば、江戸・東京の時代を再現するための仕組みを作るべき。歴史を語る都市として東京を知ってもらう。

○鶴本さん(都民)

 観光で海外旅行の話をするときに行き先を国名ではなく都市名で言うケースがよくある。観光都市を観光ブランドとして構築していくことがとても大切。「日本に行く」ではなく「東京に行く」と言ってもらえるようなブランドの構築。

 観光マーケティングを実践する組織の充実化が必要。東京都観光局というのがあってもよいのではないか。都の組織では観光は下の階層(課レベル)。これからの観光が及ぼす経済効果を考えると高い階層に持ってきても良いのではないか。

○石原知事

 今度、組織替えして、産業局の中に移します。やはり大事な産業の一つですから。

○鶴本さん(都民)

 観光局の職員は、行政よりもマーケティングの要員がふさわしい。観光ブランドマーケティングからも必要。

 海外から誘致するためには、海外に東京都の観光局のオフィスが必要と思う。

○石原知事

 マーケティングなんかは、役人には難しい。

○加納さん(コメンテーター)

 例えば、ヘッドの人だけお役人を置いて後は、委託なり嘱託というような形でやるとかがいいんじゃないか。戦闘部隊として実行力がなければ意味がないから。

○石原知事

 とりあえず行政の中の大事な部門、アイテムとして確認し直したわけで、これからどういうふうにアウトソーシングするか、そういう形でやります。

○手嶋さん(都民)

 「歴史的なものは文化財として保存」というのがあるが、必ずしも観光資源は文化財ではない。文化財といった狭い見方ではなくもっと広い総合的な見方で絵になる風景や地域の中で歴史的な位置づけのあるものを残すことが大切。そういう位置づけを東京遺産という形で残せないか。

 東京都の持っている建築物が取り壊されつつある。歴史的な意味合いのある建物も今後取り壊しの憂き目にあっている。文化的価値というのではなく、もっと観光資源として使っていくことができないか。

○石原知事

 東京の中にも、東京人が知らない名所がある。

○村井さん(都民)

 世界に向けてアピールすることが大切。ある程度の財源を充てたら観光による雇用創出や経済効果というもので戻ってくるのではないか。先日、ホテル税というのが発表され、13億円見込んでいるということだが、その13億円の使い道を是非聴きたい。

○石原知事

 ホテル税というのはまだ決めたわけではなくて、都の税制調査会がアイディアとして出してきた。私も問題があると思っている。実現するかしないかこれから決めます。

 東京にしかないものがある。例えば電化製品のマニアが集まる秋葉原を整備し、マニアだけでなくいい買い物ができる特化された街にする。

 外国の人だけでなく日本の人を呼ぶのも大事。お寺や神社を残すのも大事だが新しい観光資源も作っていかないと。

○鶴本さん(都民)

 ターゲットになる国のマスコミを利用する。ワールドカップでやってくる世界中のマスコミに、観光資源を取材してもらえるような環境をつくるのも大切。

○石原知事

 何百万人という、人が来るときはセールスのチャンス。情報を整理しないと。本当に大事なこと。

○加納さん(コメンテーター)

 東京のイメージが乏しい。観光としての道がない。

○労働経済局長

 観光には、治安と安全、基盤整備、産業の問題、観光資源、コンベンション、海外へのPR、文化振興、教育などの人の問題、東京にある自然ををどのようにPRするか、というようにいろいろある。そういう問題に一体となって取り組んでいかないといけない。できるところからすぐにやりたい。

○石原知事

 東京の中のデッドスポットを教えてほしい。東京の「デッドスポット100選」みたいなものをやるとみんなきてくれる。

○深田さん(コメンテーター)

 屋久杉みたいなただの木でも古くて立派なものがあればそれも資源になる。テーマパークは大切。

○加納さん(コメンテーター)

 東京のどこで安くておいしいものが食べられるのか「東京食マップ」を作る。東京の食観光も大事。

○安樂室長

 貴重な意見を、本当にありがとうございました。大いに参考にして、これからの東京都の観光行政をがんばっていきたいと思います。