石原知事と議論する会

平成15年7月22日更新

東京から景気回復と雇用促進を〜活力ある東京をめざして〜
平成15年度第1回「石原知事と議論する会」議事概要


テーマ  東京から景気回復と雇用促進を〜活力ある東京をめざして〜

日時  平成15年6月23日(月)午後3時から4時30分まで

場所  東商ホール
 (千代田区丸の内3−2−2東京商工会議所ビル4階)

趣旨  長引く先の見えない不況の下、企業倒産は沈静化する兆しを見せない一方、失業率は過去最悪の水準となるなど我国の経済情勢は大変厳しい状況にあります。
 都は、産業力の基盤を強化するため都市再生事業を推進するとともに、中小企業に生きた資金を供給するCLO・CBOによる債券の発行や「新しい銀行の創設」など、東京発の新しい金融施策を打ち出しています。
 東京の産業の活性化と雇用促進について知事と都民が語り合いました。

参加者

写真:知事と議論する会会場の様子(公募都民) 
 580名(うち発言者5名)

(コメンテーター)
 山口 信夫 さん(東京商工会議所会頭)
 伊草 勝 さん(日本労働組合総連合会東京都連合会会長)

(コーディネ-ター)
 白石 真澄 さん(東洋大学助教授)

(都側出席者)
 石原 慎太郎 都知事
 産業労働局長

発言要旨
 以下は、出席者の発言内容を生活文化局広報広聴部で要約し、取りまとめたものです。

○白石さん(コーディネーター)

 「東京から景気回復と雇用促進を〜活力ある東京をめざして〜」をテーマに石原知事と議論する会をはじめます。

○石原知事

 国会で雇用促進、雇用促進と言うが、その一助になるカジノ問題について、議論にもならないというのはおかしな話だ。他にも、ハローワークの実態を調べてみたら、役に立っていない。ジェトロ(日本貿易振興会)も外国の企業に対する窓口になっているはずが、実質的にはなっていない。こういったものをいかにうまく使うかというのを私たちは考えたらいい。東京は独自の窓口を創るが、そこで具体的に何をするかということについて、皆さんからの注文やアイデアをいただきたい。

 例えば、東京は水路が多い。東京・横浜で500隻あると聞いている、バージ(艀)に甲板を張れば立派なスペースになる。それを、水門のある一種の閉鎖水域に浮かべたら新しい仕事もできると思うが、いざやろうと思うと、国がだめだと言って相変わらず阻まれていく。そのうちに私はけんかづくで許可を取らずにやってしまおうと思っているが。国の意向を待っていても雇用なんか増えない。

 フリーターは、若い人の価値観が変わってきたもので、人間の人生に対するものの考え方だから、大人がとやかく言うことではない。仕事に対する感性、情念が変わってきたことの証左であり、そういう大きな流れというのを私たちは正確に捉えながら考えないと、雇用に限らず、ほかの問題も本当の解決にはならない。

○白石さん(コーディネーター)

 知事から、既存の資源を利活用できない、規制が多すぎる。国は何をやっているんだという発言があったが。

○山口さん(コメンテーター)

 デフレで皆さん苦労している。政府は、デフレの現状はよく理解しているものの、構造改革の一点張りである。商工会議所は、構造改革より前にデフレを解消し、少しでも景気をよくして、税収を増やさなければ構造改革は成功しないということを主張している。小泉総理には、現状の景気をよくするよう、もっと具体的な政策を打ってもらいたい。

 日本における企業の99.7%は中小企業で、東京でいえば、都心だけではなくて、地域が活性化しないと日本は明るくならない。そういう意味での対策がもっと必要。

 東商は新しい考え方で、商店街の空洞化、製造業の空洞化などに対応していくことで、中小企業を活性化し日本の経済の支えになっていかなければならない。

 日本経済がよくなるためには、地域と中小企業の活性化が絶対に必要で、そこに重点を置いた施策を打っていくとともに、政府に対してもお願いする。

 だが、原則は、自助自立の精神で、中小企業の皆さんも、自らその道を求めていくこと。金融面、技術開発、勤勉さを取り戻すことなど、自らが自らの力で解決する。そして、政府にお願いすることはお願いしていくという気概を持ってやっていっていただきたい。知事にもお願いし、全面的に協力をいただきたい。

○白石さん(コーディネーター)

 連合などで受け付けている雇用相談件数が増えるなど、労働者を巡る環境は非常に厳しくなっているが。

○伊草さん(コメンテーター)

 労働事情は大変厳しいものがある。失業率は5%を超え、失業者数も毎月350万人を超え、倒産件数も増えている。働く者にとっては大変厳しい時代だ。

 連合東京では、3年前からハローワークで就職を求める人に、アンケート調査を実施している。最初は、ほとんどの人が労働組合のない職場で仕事を離れて職を探しに来たという人だったが、直近では、3割程度の人は労働組合がある会社で、リストラの名のもとに解雇されたという実態がある。この結果を東京都や連合本部から政府に対して伝え、何とか対策を練ってほしいという活動を続けている。

 また、今年の2月の相談月間に特に1週間、不法残業(サービス残業)についての相談を受けたが、1週間で170件あった。驚いたのは、100時間ぐらい残業をしているがこれを会社に請求したら、どうも自分の身が危ない。何とか手当てをもらえる方法はないかというような相談が多かった。そして、特徴的なのは、お父さんの体を気遣う子どもや配偶者からの電話がかなりあったことだ。私たちは、東京都や国に対して一生懸命これらの改善について提言している。

 労働組合は、困った人たちのために頑張っていきたいし、知事の選挙公約である東京で20万人の雇用を創出するというのは、私たち連合東京とほぼ一致しているので十分相談をしながらやっていきたい。

○白石さん(コーディネーター)

 東京で20万人の雇用創出という発言だが、都ではどのような手立てを。

○有手産業労働局長

 東京の失業で一番問題になっているのは、5つのミスマッチだ。1つは、求人と求職のミスマッチで求人のニーズがある業種・職種と求職者の希望が一致しない。2つ目は能力と経験のミスマッチで求人企業が必要としている職務能力、資格、経験を求職者が満たしていない。3つ目は勤務条件のミスマッチで賃金や労働時間が求人企業の採用条件に合わない。4つ目は年齢のミスマッチで年齢制限があって就職したくてもなかなかできない。5つ目は意欲のミスマッチで仕事に対して企業から見ると意欲に欠けるとか、人柄が社風に合わない。この5つのミスマッチを何とか解決しなくてはいけないという根本問題がある。

 東京都は、求職・求人の基本的な条件を整備したり、単純に企業に就職することだけではなく、起業・創業する人たちを支援するなどの検討を始めたところだ。20万人まではまだ積み上がってはいないが、皆さんの意見なども参考に、関係者と詰めていきたい。

○白石さん(コーディネーター)

 都民発言に入りたい。統計資料を見ても、中小企業の景況観というのは非常に悪くなっているが。

○青沼さん(都民)

 知事が、今度新しく金融機関を創ろうという発想は非常にいいことだ。日本経済は、奈落の淵に落ちようとしているところまできており、金融の構造改革だけではだめだ。

 大企業については、りそな銀行への公的資金の投入や優遇策がみられるが、中小企業に対しては、そういう具体策がほとんどなされていないのではないか。

 中小企業に対しては、もう少し資金援助を基本的に考え、設備投資、研究開発投資、短期資金の援助を、金融機関に大いに求めるべきだと思う。

 中小企業は、いわゆる1960年後半からの高度成長を支えた一番の功労者であり、経営者は、商品の開発と技術の向上について、真剣に考えているのだから。

○白石さん(コーディネーター)

 次の都民意見も関連の意見であるので、一緒に議論を進めたい。アメリカでは新しい事業を興していく開業率、廃業率ともに10%を超えているが、日本の開業率はずっと低下傾向にあり、4%を切っている。若い人や能力のある人が新しいビジネスを興しにくい環境にある。

○石崎さん(都民)

 私は、コンピュータシステムが使用不能になるということを防ぐソフトウエアの開発、販売を世界に向けて行っている会社を経営している。また、ジェトロを利用し、アメリカのシカゴでも起業をしている。

 アメリカは開業率が高いというよりも、就職がもっと難しいし、クビになるのも早い。人の流動化が激しいというのが一番の理由ではないか。

 私の周りの起業家たちは、大企業との取引に四苦八苦している。購入側にメリットを持たせ、大企業と中小企業の取引量を増やすことに視点を置いた3つの提言をしたい。

 一つは基金の設定で、中小企業、ベンチャー企業向けの助成金はあるものの、一番難しいのは、物を流通させ、売ることだ。基金というのは、いわゆる認定企業(創造法などの認定企業)の製品の使用中に問題があった場合、かつ、その認定企業に万が一倒産等があった場合に使用される基金である。

 二つ目は入札ポイント制で、自治体などの入札時に、認定企業の製品にはポイントがつけられており、当然、入札金額も加味されなければならないが、ポイントも決定要因の一つとして挙げてほしい。

 三つ目は優遇税制で、認定企業との取引先のほうに優遇税制が適用されること。

○白石さん(コーディネーター) 

 新規ビジネスを興して経済を活性化していくには、何が必要か。

○山口さん(コメンテーター)

 アメリカと日本ではずいぶん事情が違う。アメリカは比較的解雇が楽にできるが、日本は非常に難しい。また、アメリカでは労働移動が頻繁に行われ、能力のない人はどんどん整理されていく。

 優遇税制は日本でもこれから増えてくると思うが、基金の設定、入札ポイント制の2つは、今の日本の実情には合っていないのではないか。

 新しい事業を興すときは、自ら計画を金融機関に説明し、融資を受けることからスタートすることが必要。アメリカの場合は、友人等から出資を募る形で起業するので、出資者に対する優遇税制がある。日本でも拡充し、新しい事業を興していくような仕組みをつくっていかなければならない。

 最近は、不況による労働移動が行われている。雇用保険の問題等を含め、職業の再訓練をしてまた次に送り込んでいくという仕組みを創らなければならない。商工会議所も雇用斡旋ができるようになったので、中小企業の皆さんの就労斡旋に向けて全力を挙げていきたい。

 最初の都民発言の方の資金の問題では、最近の金融機関は、金融庁のマニュアルにより数字だけで判断をする。経営者の能力、技術力の評価、会社全体のモラル、会社の風土を判断し、その事業を育てていこうという姿勢はない。

 そこで、政府系金融機関、特に知事が考えているような銀行ができれば、新しい事業に対して融資をしてもらえる。民間の銀行もそれに追随してくることで、新しい事業が興きてくるのではないか。新しい事業を興して行かなければ日本は縮小傾向になる。

○白石さん(コーディネーター)

 山口さんから都の銀行に期待する発言があったが。

○石原知事

 銀行は、アイデアが発表されたばかりで、これから肉をいかにつけていくかの問題だ。少なくとも、これから創ろうとしている銀行には不良債権は一文もない。

 金融庁の基準の下で、競争力ある優れた製品を供給している会社がむざむざ潰されている。担保や保証人がなくても市場から直接資金調達ができるようにCLO(ローン担保証券)、CBO(社債担保証券)という債券を発行し、この3年間で総額3,000億円、個々の会社が小さいので、対象は7,000社ぐらいに資金供給を行ってきた。CBOは、日銀が非常に評価しているが、それでも追いつかないので今度の銀行ということになった。

 信組とか信金という人たちのノウハウを今度の銀行は受け継いで、お互いに知恵を出し合い、情報を交換し合って運営していきたい。

 国は、構造改革がまず先というけれども、なぜ並行して景気浮揚ができないのか。

 新しい日本の社会資本を造成していくために、日本の持っているアメリカ国債の使い方を考えたらいい。売ろうと思ったら、たいへんなことになるかもしれないが、担保にして金をつくり事業を興したらいい。

○白石さん(コーディネーター)

 雇用・就業促進について発言を。

○関口さん(都民)

 2006年をピークに、全国の人口が減少に転じ、高齢化率も20%を超える。今後、日本で景気が劇的によくなり、経済が大幅に成長するということはないだろう。

 2007年から2009年に団塊の世代が一斉に退職すると、元気な高齢者が増える。人生80年時代の今、彼らはまだまだ若い存在で、引き続き社会で活躍したいと思っているはずだ。これまでの社会での経験を生かし、NPOやコミュニティビジネスといった場所に活動の場を求めるだろう。

 都は、技術力のある中小企業に加え、新しいビジネスの立ち上げも支援してはどうか。具体的には、高齢者が増えている一方で、若い人が育児のために働きに行けないという状況が起きている。若い人たちの育児を助けるために、高齢者が子どもを預かって面倒をみてはどうか。

○石原知事 

 東京は、それをやりかけている。

○関口さん(都民)

 郊外に住む高齢者は、車を持っていても、運転するのが難しくなってくる。そういった高齢者の代わりに運転を行う、運転代行サービスのようなものもある。

○白石さん(コーディネーター)

 次は、職業訓練について発言を。

○猪倉さん(都民)

 現在、雇用上の問題になっているミスマッチ解消のために、職業訓練を拡充して、経営革新や新規事業のニーズに応える層を厚くして対処する。都内に16ヵ所の職業専門校があり訓練事業を行っているが、大量の若年層のミスマッチが発生している。フリーターやアルバイトという就業形態もあるが、これまでスキルと能力を得る機会がなかったので、価値観が変わったということもある。

 労働力の質的アップのため、都立学校等を駆使して、期間限定して、例えば特区を適用してでも行政で対処できないかと提案したい。

○白石さん(コーディネーター)

 公営カジノで景気回復について発言を。

○浅野さん(都民)

 私は、先月、せがれの大学の卒業式に行ったついでに、カジノで遊んできた。非常に楽しいところで、日本のパチンコ屋とは全く違う雰囲気だった。3日間遊んできたが、幾ら使ったかというと、10ドルだ。

 今、日本の中で一番お金を持っているのは、年齢のいった方で、タンスの中にたくさん貯金を持っている。タンスの中にしまっておいたのでは景気がよくなるわけがない。名古屋は非常に景気がいいというが、お年寄りがお金を出し、孫に車を買ってあげるとか、あるいは住宅を一緒に住むようにして、お金を使って景気をよくしている。

 ギャンブルは必ずしも悪いということでなくて、各人が自分の範囲で責任を持って遊べばいい。カジノはホテルと一緒になっていて24時間営業しているので、雇用の場も確保できるのではないかと思う。

○白石さん(コーディネーター)

 ミスマッチをどういうふうに解消すれば仕事を得ることができるか。

○伊草さん(コメンテーター)

 その前に、新しい銀行を創ることを支援するという都民発言があったが、私もそのとおりだと思う。日本の企業の99.7%は中小企業で、この方たちが経営を継続しなければ雇用対策なんて言っていられない。あらゆる段階で中小企業の支援をしていかなければならない。

 今でも、東京都やその他の団体で、中小企業への金融支援はたくさんやっているが、中小企業経営者からいつも言われるのは、手続きが複雑なので、簡単に貸してくれとい言う人が非常に多いことだ。

 ミスマッチの件は、有効求人倍率は少しずつよくなっているもののなかなか難しい。

 知事が、約1,000人の職員を警視庁へ送って治安をよくすると発言をした。これだけでも景気対策にすごい影響があると思う。ミスマッチした高齢者やリストラされた人たちを一時的にでも、学校の周辺をパトロールしてもらう、繁華街へ出て角々に立ってもらうような雇用を優先すれば、まちもかなり安心できるし、就業も少しずつ増えてくる。

 カジノ構想は雇用促進につながるし、競輪を再開しようという話も、賛否両論あると思うが、雇用が欲しいという今、とりあえず働かせてもらいたいという人にとっては、大変大きな魅力になるのではないか。

○白石さん(コーディネーター)

 千客万来の都市づくり、観光というのも非常に波及効果が大きい産業ですが。

○石原知事

 それは当然のことで、この頃、小泉総理も、「千客万来の東京ではなくて千客万来の日本にする」と言っている。ようやく観光が産業としての意識を持たれてきたが、日本は本当に遅れている。そのバックグランドとして治安の安定というのは非常に必要なことで、今度、警察出身の副知事をつくりますが、皆さん、いろいろアイデアを貸してください。

○白石さん(コーディネーター)

 ミスマッチを解消するための教育訓練が大事だという発言があった。フリーターなど多様な働き方が増えてきているが、個人の働き方を尊重しつつ、雇用の安定化を図るため、何をすべきとお考えか。

○山口さん(コメンテーター)

 職業訓練や教育をして、職業に就かせるという努力はやはり必要だ。今は景気が悪いから人が余っているのであって、かつてのバブルほどよくなくても、景気がよくなれば、人が足りなくなる。それを前提にいろいろなことを考えておくほうが間違いない。

 わたしの会社の経験では、60歳定年で、特に技術者・営業マンを辞め、よその会社に行くというのは誠に惜しい。体に技術や営業のノウハウが張りついている人たちが、引き続き働けるような会社環境をつくらなければならない。技術・技能を大事にしていくということを考えておくことが必要。

 東京に外国人が来られるように、飛行場、道路、カジノもそうですが、いろいろな条件を整え、日本で事業を興せるようにしていくことが、これからの日本の将来にとって非常に大事だ。

 その、前提となるのは、若い人が勉強して、技術開発力をどんどん高めていくこと。勤勉さを忘れないこと。東京再生を1つの軸にして、日本が再生すること、もっと強い日本、外国に負けないぞという気概を持つような日本にしてほしい。

 付け加えると、公務員倫理規定が今の状態ではよくない。交際費課税も緩めてほしい。そうすると、市街地、中心が活性化する。財政に余り負担をかけないで活性化する非常に大事なことではないか。今のような状態では、公務員と民間との情報交換ができない。政府とか、公務員とか、政治家は提案できないから、民間の皆さんと一緒にわれわれが提案していくべきことではないかと思っている。

○白石さん(コーディネーター)

 インフラ整備の問題など、東京都が具体的にやっていけるようなアイデアは。

○有手産業労働局長

 元気な中小企業を育てるため、東京都は知的財産活用本部で、特許などの知的財産の関係を支援している。中小企業や失業者が困っているのに、国はどうして真剣になって取り組まないのか。東京都は、一つ一つ新しいことにチャレンジして、それを成功体験として広めることにより変わってきている。

 今、中小企業がお金を借りるといったら大変なことだが、CLO、CBOに一回応募すると、銀行は「金を貸すよ、貸すよ。」と追いかけて来る。こういう、新しい芽をどんどん伸ばしていくということが一つ。

 失業の関係でぜひ皆さんに伝えたいのは、日本の失業を解決困難にしているのは、雇用保険で、これは厚生労働省の専管領域で、財務省といえども口を出せない。職業教育、失業保険の給付から、いろいろなことをやっているが実際は手いっぱいになっているにもかかわらず、手放そうとしない。

 都は中小企業を支えるための人材供給のため、自治体にも職業紹介権をよこせということを運動し、ようやく今回の法律で改正された。区役所、市役所、東京都、商工会議所などでやるのだが、この財源の手当がない。雇用保険財政は2兆円、3兆円とあるが福利厚生施設などに使われているので、メスを入れていく。

 東京都は、東京からワンストップで、困った人が1ヵ所に来ればすぐ就職斡旋できるようなことに応えたいし、起業・創業でこれから元気に世界に打って出ようという方は、知的財産活用本部等を中心に支援したい。

 融資などの支援制度は中小企業振興公社にほとんどそろっているが、非常に使いにくい点があり、反省している。もっと使いやすい制度を作り、皆さま方とともに、いい芽を正しく育てて、日本を支えるような企業に育ってもらいたい、そういうことを考えている。

 フリーターについては、職業教育からやり直さないとだめだ。教育庁で、デュアルシステムといって、高校のときから中小企業で働いてもらい、それを単位にし、自分の職業観を確かめながら、職業を選んでいくことを始める。産業労働局も、こういったことが日本に広がるように積極的に支援したい。

 やはり長期的なビジョンに立つこと。国に任せていてはだめだ。できるところから、一つ一つ着実なものをやっていく。これが今一番大事なことだ。

○白石さん(コーディネーター)

 今日の総括コメントを。

○石原知事

 山口さんの外国人の入国をもう少し幅広いものにする発言に同感だ。とにかくもう少し外国人が正式に日本で就労できるようになれば、雇用の問題に必ずプラスになるし、治安のためにもいいのではないかと思う。

 いずれにしろ、東京都は国に比べれば現場感覚がまだあるので、あえて悪い役割を買って出ていく。そのためにひとつ皆さんのお知恵を貸していただきたい。改めてお願いします。

○山口さん(コメンテーター)

 第一は、安全と治安は、国として、政府として、一番大事なことで、知事からも政府に要求していただきたい。

 第二は、雇用の問題。雇用を守ることに対しては全力を挙げなければならない。ただ、大企業と中小企業は違う。強い中小企業にするために、一時的には雇用を我慢してもらい、強くして、大きくしてから、また再雇用するというのが筋ではないかと思う。

 第三は、金融の問題。中小企業にとって金融は命だ。いろいろな制度がたくさんあるが、とにかく政府にお願いして万全を期し、何とかしたいと思っている。

○伊草さん(コメンテーター)

 日本は少子化が進んでいる。何とか子どもを増やさないと国もなくなってしまう。子育てのため、知事公約で認証保育所の増設などがあるが、そのほかに都営住宅に優先的に入れる、あるいは安く入れる、こういうことも考えていただけないか。

 先ほどの発言にもあったが、日本の預貯金は約1,400兆円あり、そのうちの約80%が60歳以上の皆さんが持っている。孫ができれば、孫に対しては幾らでも使うというのが皆さんの意見の大多数だと思いますので、ぜひよろしくお願いしたい。

○石原知事

 最後に一つ。少子化の問題の解決策は東京なりにあると思う。供給過剰のデフレというのは、みんなお金を使いたくても買うものがない。

 今、本当に足りないものは住宅だ。戸数は足りても、スペースが小さいなど。住宅にインセンティブを付けたらいいと言うと、国は反対してやらせない。少子化の問題から切り込んで、親子3代で住む家庭や住宅にはインセンティブを付けるようなことを、東京からやりたい。引退し知恵を持て余している方々の知恵を若い夫婦に伝えていくためには、やはり私は親子3代、できれば4代一緒に住むことが人間の幸せだと思うし、文化の継承にもなると思う。それを東京なりの住宅政策に反映させるため、皆さん、お力を貸してください。よろしくお願いします。ありがとうございました。