石原知事と議論する会

平成15年12月18日更新

「東京の治安再生に向けて」
平成15年度第2回「〜東京ビッグトーク〜石原知事と議論する会」議事概要


テーマ  「東京の治安再生に向けて」

日時  平成15年10月28日(火)14時から15時30分まで

場所  よみうりホール(読売会館7階)

参加者

石原知事と議論する会の様子(公募都民 930人(うち発言者6人))

(コメンテーター)
 斎藤 環 さん(精神科医)
 小田 啓二 さん(日本ガーディアン・エンジェルス理事長)

(コーディネーター)
 白石 真澄 さん(東洋大学助教授)

(都側出席者)
 石原 慎太郎 都知事
 竹花 豊 副知事

発言要旨

   以下は、出席者の発言内容を生活文化局広報広聴部で要約し、取りまとめたものです。

○白石さん(コーディネーター)
 「東京の治安再生に向けて」をテーマに会を始めます。
 昨今、犯罪の中でも、殺人や強盗といった凶悪な犯罪が増加しているが、検挙率はわずか20数パーセントと、私たち都民も生活の中に不安を感じている。また、少年が犯罪に巻き込まれるような状況も非常に多くなっている。東京都は「安全・安心まちづくり条例」の施行、大都市で警察官を増員しようという共同提案要求など様々な取り組みを行っている。今日は、東京都として何ができるのか、都民の皆さんは治安についてどのようなことを望んでいるのかを具体的に議論していきたい。

○石原知事
 治安の乱れも一種の災害で、災害に対する備えは、まず自助努力が必要。次いで、地域のコミュニティ、限られた向こう三軒両隣、そういう間近な共同体の中での努力。あとは、共助に続いて公助という、都なり国が乗り出してくる問題がある。
 最近、感じるのは携帯電話の意味合いだ。親は子どもに携帯電話を買って与えることで、いつでも自分が連絡をとれる、親の管理下にあると思っているようだが、とんでもない。親が、自分の子どもと携帯電話でつながっていると錯覚するということは一種の責任放棄で、親の責任を問い直さなければいけない。
 治安の悪化というのは世の乱れで、その要因は、警察の責任以上に、犯罪の加害者・被害者の親近者の責任もあるのではないかということを改めて痛感している。

○白石さん(コーディネーター)
 東京の治安の現状は。

○竹花副知事
 日本の治安、東京の治安は、ここ数年の間に非常に悪化している。平成14年中に全国で約285万件という犯罪が発生し、10年前と比べて100万件の増、東京では約30万件、1日に約830件の犯罪が発生する状況にある。犯罪状況を顕著にあらわしているのが、警視庁の留置場で、約3,000人の留置人がいる。これは10年前の3倍で、その4割が外国人という状況だ。
 治安の悪化を招いている主たる理由は、外国人の問題と少年犯罪の問題である。外国人による組織犯罪の増加に我々はもっと警戒心を高めるべきだ。外国人による組織犯罪は特に中国人によるものが多いが、今まで日本に起こったことがないような異質の犯罪文化の中で生じたものだ。犯罪から身を守るため、今までとは違うやり方が必要な時代になっている。

○白石さん(コーディネーター)
 増加する青少年犯罪などをどのようにお考えか。

○斎藤さん(コメンテーター)
 友人の精神科医に少年犯罪を防ぐためにはどうすべきかと聞くと「とにかく夫婦仲良くすればよい」と。今、メディア等だけから情報を得ていると、いわゆる「動機なき犯罪」、心の闇型というか、家庭的には何不自由ないが、一種の自分探しの形のようなタイプの犯罪が一部増加しつつある。しかしながら、圧倒的多数は家庭の問題を背景にしたケースだという現実がある。家族関係の変質、希薄化という背景がだんだんと迫ってきていると感じる。家族関係を希薄化させるツールとして、携帯電話と個室の問題がある。家庭の中で、同じ屋根の下にいるにもかかわらず食事の時間などがばらばらの状態で、それぞれの生活時間を生きている。希薄化が進む中で、一方ではひきこもりの問題があり、もう一方では虐待の問題が起こるという、二つの極がある。

○白石さん(コーディネーター)
 パトロール活動などで、東京の治安が変わってきていると肌で感じることは。

○小田さん(コメンテーター)
 日頃感じるのは、規範意識や秩序のラインが、個々の価値観によって変わってきていることだ。万引きやひったくりを例にとれば、「だって、みんなやってるじゃん」とか「金払えばいいんだろ」と言って終わってしまう。これはもちろん、親の教育、学校の教育、地域の教育が絡んでくることだが、今一番求められているのは、何をしたら良いのか、何をしたら悪いのかということを、大人たちが真剣になってプロ意識を持ってやっていくということだ。
 人間は誰しも、良心とか正義感を持っている。これからの鍵は、一人ひとりが持っている、大きくても小さくても、そういった良心とか正義感を引っぱりだすようなきっかけをたくさんつくり、一致団結したら、この東京、日本はもう一回安全な国に戻るのではないかと思う。若い人たちにも期待したい。

○白石さん(コーディネーター)
 都民発言に入りたい。はじめに「子どもを犯罪からどう守るか」というテーマで提案を。

○新谷さん(都民)
 東京で子どもを育てる親の立場から、まず、まちの治安維持対策として、防犯カメラ設置の必要性を感じる。昨年、イギリスを旅行し、ビルというビルの目線の高さにずらりと監視カメラが設置されていることに驚いた。イギリスのようにプライバシーに厳しい国でも、必要なこと、有効なことは何かで市民のコンセンサスが得られていることに、さすがに進んだ市民社会であると感じた。東京でも繁華街などには必要なのではないか。
 次に、日々の小さな事件をどう防ぐか。再発させないためにはどうするかという点で、警察や個人の力だけではなく、地域ぐるみの犯罪追い出し活動が大切ではないかと思う。私が住む世田谷区では、散歩を兼ねるわんわんパトロールや父親も巻き込んだPTAパトロールを実施している。声をかけ合い、駅前などをきれいにすることで犯罪も起こりにくくなると思う。
 最後に、子どもの危機管理意識を育てることも重要だ。犯罪に遭わないために、遭ったときに自分の命を守るための教室の開催、犯罪に遭わないため、犯罪を起こさないため、犯罪に巻き込まれないための教育が必要だ。

○阿部さん(都民)
 小学生、中学生の男の子の親として、親の意識再生プログラムというものを提案したい。公立小学校のPTA活動などを通じ、今一番足りないのは親の教育だと感じる。親としての自覚が足りない、親としての責任・義務が果たせない親が、非常に多い。子どもたちが関与する犯罪に関しては、加害者であっても、被害者であっても、家庭での教育によって大半が未然に防げるのではないかと思う。
 行政の施策になじまないことは十分承知の上だが、親の意識を変える、再生するための一種強制的な教育プログラムを組んでみてはどうか。親としてあたりまえのことができるように、子育ての免許制度と言うと強すぎると思うが、社会全体で子どもの育ちを応援する仕組みと同時に、語弊があるかもしれないが、子どもと同時に親をきちんと監視するシステムが必要なのではないか。
 並行して、地域のボランティアや教育ボランティアなど、一定の社会的貢献をすることを、親の教育の中に義務付けることも必要ではないかと思う。親がきちんと社会貢献する姿勢を子どもに見せることも大事だ。日本の将来を担う子どもたちが、頼りなく無責任な親の被害者にならないよう、当たり前のことをみんなできちんとやっていくことが必要であり、重要と思う。

○森田さん(都民)
 日頃から、テレビというものは、言うなれば国民簡易洗脳機という恐ろしい機械だと考えている。テレビの番組制作者は、より過激でみんなが驚くような画面を流し続けることで視聴率をアップさせることに必死なわけで、その辺を許していいものかどうか、いつも疑問に感じている。
 その結果、例えば渋谷というまちは、全国から、プチ家出をしたい少年少女を受け入れるまちにされてしまった。これはまさに「されてしまった」という表現がぴったりで、番組制作者のモラルの低下は、そのままそれを見ている国民のモラルの低下に直結していると思う。
 東京都内を番組制作に使う場合は、課税とまではいかなくとも、あるルールをクリアしなければ許さないぞということを課してもよいのではないか。そういう権限を知事はもう少し強く押し出していただきたい。何しろ、番組制作者によって東京がだめにされてしまったと考えているので、もう少し強く出てほしい。

○白石さん(コーディネーター)
 3人の方から非常に具体的かつユニークな提案があったが。

○石原知事
 ろくな番組をつくらないなら都内での撮影を許さないというわけにはなかなかいかないね。親の教育という発言は、確かに私もそう思う。子どものために親を再教育したいが、どういうカリキュラムを組むか具体的に教えてほしい。親にボランティアの活動をさせろといっても、誰もしないのでは。また、それを強制するわけにはいかない。
 本当に若い親の教育をどうするか、みんなで知恵を出してください。

○白石さん(コーディネーター)
 親の教育プログラムとして何か有効な手立ては。

○斎藤さん(コメンテーター)
 例えば、講演会などの啓蒙的なプログラムである程度効果を発揮できる層以外のところで問題が起きるので、そういった親たちにどう届かせるのかという手段は確かにもっと検討されるべきではないかと思う。先ほどの発言のように、テレビの影響力は本当にばかにならないものがあり、書籍に比べて何十倍も何百倍も大きい。メディアの規制は、若者の行動への影響力の検証を先に十分にしてからでないと、いろいろ問題をはらむと思うが、啓蒙の道具としては、まだまだ有意義なものがあると思う。
 特に、虐待の問題であるとか、ネグレクトであるとか、身体的な虐待もあるが、これは明らかに非行とか犯罪の温床になっている部分があるので、そういったことに限定してでも、テレビメディアの有効活用ということは十分に期待できるのではないか。

○白石さん(コーディネーター)
 女性は若くて美しいと商品化され、そうでないと排除されるような番組があったり、メディアが若い女性の性の商品化に拍車をかけているような気がするが。

○斎藤さん(コメンテーター)
 性の商品化については、確かにテレビメディアの影響は非常に大きいと思う。ただ「臭いにものに蓋」式の方法ではこれは解決しない。テレビや出版をどれだけ取り締まってもインターネットがある。メディアの影響に関して、今一番確実に言えることは、悪い映像を見せないのではなくて、悪い映像とか情報に接したときに、周りの大人がその意味づけをきちんとすることだ。これはよくないものだとか、こういう価値観は間違っているとか、周囲にいる大人がそれに対する文脈を与える。文脈の効果はすごく大きくて、これをどれだけ意識的にできるかという部分にかかわってくる。
 性の商品化の問題についても、お母さんやお父さんが、こういうものはくだらないものだという形で文脈を与えられれば、子どもはしっかり受けとめるはずだ。

○白石さん(コメンテーター)
 防犯カメラの効果と、配慮すべき点は。

○竹花副知事
 イギリスは、防犯カメラの設置が非常に進んでいる。これは、10年ほど前に長崎の事件と同じような事件が起こり、犯人が特定されたのは、やはり防犯カメラだったことが契機となり普及した。今回、長崎の事件で防犯カメラが犯人特定に役立ったということで、日本でも普及はますます速度を増すと思うし、都としてもそれを促したい。
 防犯カメラは、日本のまちが元来持っていた、ムラ社会の犯罪抑止機能を失ってきている中で、犯罪を防ぐ機能を取り戻す一つの手立てだと思う。必要なところに、プライバシーを侵さないようにできるだけ工夫された形で設置されていくことは、もう必須の事項である。都は、プライバシーの問題に十分配慮し、防犯カメラの映像管理についてしっかり基準を定め対処していきたい。

○白石さん(コーディネーター)
 海外でのまちの清掃が犯罪の抑止につながる傾向は。

○小田さん(コメンテーター)
 働く人たちがまちにたくさん出ているということ、例えば、アダプト・プログラムやBIDというプログラムがあった。アメリカの「割れ窓理論」は日本でも注目されているように、市民や都民の人たちがどうかかわっていくのか。特別な人たちがやっているということではいけない。
 少なくともこの会場の1,000人の皆さんが家庭に帰って、あいさつをしたり、地域の人たちと団らんすることはすぐできることではないかと思う。
 大人たちが、他人の子だからとか、自分には関係ないからという無関心を切り捨てて動くしかないのではないか。

※アダプト・プログラム
 まちを市民の子どもにみたてて、大切にする。掃除をしてきれいにすること。
※BID(Business Improvement Districts)
 ビジネス改善地区制度。環境整備や美化、警備などのサービスを提供することで、地区のイメージ向上や産業の活性化を図ることを目的とする。
※割れ窓理論(ブロークン・ウインドウズ)
 犯罪学者J.Q.Wilsonの理論。壊れた窓を放置しておくと、通行人が誰も気にしていないと考え、更に壊し、建物全体が崩壊しはじめる。小さな無秩序が大きな無秩序をもたらすという考え方

○白石さん(コーディネーター)
 他人の子も我が子も同じようにというのは、頭ではわかっていてもなかなか行動を起こせない親が増えている。何かいい手立ては。

○石原知事
 「子どもには大人から叱られる権利がある」という言葉がある。これは裏返せば、「大人には子どもを叱る責任がある」ということだ。
 やはり声をかけるということは、小田さんが言ったように大事なことで、町内であいさつをし合うまちというのは、泥棒が入りにくいと聞く。何かのときはちょっと声をかけたらいいと思う。どうしたのと声をかけることは大事で、これも一種の共助だ。
 みんな他力本願になり、何とかなるだろう、何とかなるだろうで、もたれ合いでここまで来てしまった。日本の国全体がそうで、慨嘆しても仕方ない。いいアイデアを出してください。

○白石さん(コーディネーター)
 次は「自分たちのまちを守るために」というテーマで提案を。

○志水さん(都民)
 安全と安心を保つ「保安都民」の制度を提案したい。「保安都民」というのは、自分の安全、安心だけではなく、他人の安全や安心をも保つ。こういう保安都民の制度を一人ひとりがつくり上げていく。私は、消防団員だが、「保安都民」は、例えば交通安全協会、消防団、PTAの校外部など既存の各種団体に必ず所属する。保安意識を高めるために、例えば、リボンに「保安都民」と書き込んで身につけ、外部にアピールする。行政は都民一人ひとりの保安活動を支援する。危険な目に遭った場合の保障、あるいは、任意で組織をつくりなさいと助言をするなど、あくまでも支援活動をする。
 小田さんの発言にもあったが、そろそろ一人ひとりが、自分の安全・安心と、次には他人の安全・安心をも意識しますよ、尊重しますよという動きに入るべきだと思う。

○石原知事
 「保安都民」というのは一つのおもしろい提案だ。具体的には。

○志水さん(都民)
 その前に、一人ひとりが保安意識を持つことがまず大事だ。つまり、自分も安全・安心、他人も安全・安心。その次に、例えばそういうリボンとかバッヂ、ネームプレートを常に付ける。仕事をしているときであろうがなかろうが、それを付けて歩く。そのことによって、あの人は、人の安全・安心も、自分の安全・安心も尊重する人だというアピールをする。
 その次は、他人の不幸を見たら手伝いをするとか。パトロールはなかなか大変だと思うが、日々の一人ひとりの活動が必ずや実を結ぶと思う。

○石原知事
 地域に1人ずつではなく、そういう問題意識を持っているとしたら、全員がそういうバッヂなりリボンを付けるわけですか。

○志水さん(都民)
 そうです。全員付けます。それは半強制で、この治安が回復するまでは、都民である以上は、そういうリボンなりバッヂを付けて歩く。そのくらいにしなければだめだ。

○白石さん(コーディネーター)
 保安都民という提案をどうお考えか。

○小田さん(コメンテーター)
 何かしたいという思いをどんどんぶつけられるべきですね。それがリボンであれ、バッヂであれ、地域社会に出かけていって、やっているぞというところを示してほしい。

○白石さん(コーディネーター)
 さまざまな形があると、志のある人が参加しやすい。

○石原知事
 消防団員の方から提案があったが、日本のように、地域の人たちがボランティアの組織化で消防団をつくっている国はめったにない。すばらしい日本人の特性だと思う。消防団にもう一歩、二歩出てもらい、治安もやってほしいくらいだ。
 サジェスティブで、いろいろな形を考える素因になった。

○斎藤さん(コメンテーター)
 難しいのは、保安活動などに対して、斜に構えるというか、ややばかにしたような視線で見る層が無視できない数存在するという現実がある。そういう人たちに、モラルとか規範的なものを持ってもらえるかどうか。あるいは、諦めて環境管理に徹するのかというのも大きな課題だ。
 今の若い世代にとって、全体に希望が持ちにくい社会となっている。大人がもう少し真っ当に振る舞っていかないと、若い世代はますます希望が持てない状況が続いていくのではないかと危惧している。

○白石さん(コーディネーター)
 次は、「犯罪多発地域をどう取り締まっていくか」という提案を。

○三村さん(都民)
 大繁華街では、麻薬や暴力、ギャンブル、売春といった違法なことが日常的に行われている。それらは、暴力団への資金源となって、彼らの行動をより活発にし、一般市民や私たちのような若い世代が、事件に巻き込まれている。
 そこで、取り締まりをより強化してほしい。行政も必死に努力していると思うが、検挙率25%と聞くと、やはり不安で、不十分と感じる。例えば暴力団や外国人の組織犯罪に対してメスを入れてほしい。以前、シンガポールへ旅行し驚いたことは、街並みの美しさと治安のよいことだった。理由を聞いてみると、30年前ぐらいに、国が徹底的に、組織にメスを入れ闘った結果、見事撲滅したという。現在、そういった組織は存在しないし、治安も維持されている。秩序のない社会や人間に対しては、厳罰に対処すべきだと思う。

○片岡さん(都民)
 東京都がとるべき治安対策は、軽犯罪の取り締まりを徹底的に行うことだ。軽犯罪は、社会的非難の度合いが低く、取り締まりが軽視されがちだ。これを取り締まらないと、犯罪者が刑罰を受けないことになってしまう。その結果、犯罪が徐々にエスカレートし、より凶悪な犯罪が行われるという傾向がある。
 「割れ窓理論」の実践都市ニューヨークでは、凶悪犯罪に悩まされていた当時のジュリアーニ市長が犯罪心理学者と話し合い、まち中の落書きを消すとともに軽犯罪の取り締まりに尽力した。無賃乗車の取り締まり、未成年者の喫煙、違法駐車等の徹底的な取り締まりを行った結果、犯罪の発生が激減した。
 既に都でも、新宿・渋谷・池袋地区治安対策代表者会議で、これらの犯罪対策に近いことについても検討されていると聞くが、これを、山手線圏内の繁華街だけでも徹底して行うことで、治安再生への第一歩につながると思う。

○白石さん(コーディネーター)
 不法滞在の外国人対策など今後の取り組みは。

○石原知事
 東京というのは、日本の良いところ、悪いところが一番鋭敏にあらわれるモニターだ。外国人犯罪などは特にそうで、入国して不法滞在している外国人のほとんどが東京にいる。いずれにしろ、多角的に防ぐ努力をしなければいけない。国もやっと動きだしたが、入国管理の徹底や防犯カメラを増設していく。
 一方で、法律の体系も弱っていて、少年法は、だいぶ前に改正案が出ているが、凍結されたままだ。そういったものをもう一回俎上に載せるなど、いろいろな方法がある。

○竹花副知事
 取り締まりの強化あるいは組織犯罪に対するものや軽犯罪に対する意見は、本当にそのとおりだと思う。都では、警視庁の警察官の増員を国に強く要請している一方で、警察力だけに頼らないで、軽犯罪に関しては、地域の人や関係者と一緒になって、いろいろな取り組みをしようとしている。
 不法滞在者問題については、都は法務省や東京入国管理局、警視庁とも協力し、外国人の組織犯罪を少なくしていく工夫もしている。
 警察の力は大きいので、もっと強化してもらうよう国に今後とも働きかけていきたい。

○石原知事
 不法入国、不法滞在の外国人は正規に働けないので犯罪の手伝いをせざるを得ない。これだけ猖獗(しょうけつ)してしまったのは、国家の責任だ。入国管理をもっと徹底して行えばよかったのに、やらなかった。これからの日本はきちんとした移民政策をとったらいい。労働力も足りなくなるし、人口の年齢構造も逆三角形になってきている。移民政策を行えば、相対的に不法入国、不法滞在が摘発され、治安の回復につながると思う。

○白石さん(コーディネーター)
 今日の総括コメントを。

○小田さん(コメンテーター)
 この会場の皆さんに、どんどん行動してもらいたい。そのためには、覚悟を決めて、行動する。見て見ぬ振りをしないことだ。まちや街頭、ストリートに敏感になり、いつもと違う点があることに気づいたら声をかけるとか、大それたことを別に考えなくても、子どもたちの登下校時に店の前や家の前に出てあいさつをしてみるとか、拾えるなと思ったらごみを拾うとか、落書きを消すとか、自転車を放置しないとか、自分からもルールを守ってがんばっていけば、恐らく変わってくるのではないか。その上で、防犯カメラなどの物も同時進行であるべきだと思う。ぜひとも都民が立ち上がって、真剣で本気な姿勢を、今日からでも示していただきたい。
 私たちもパトロール活動に加えて、安全教育や非行の予防教育を真剣にこれからもやっていきたい。

○斎藤さん(コメンテーター)
 いろいろな話が出たが、結局、社会に居場所がないことが犯罪に結びついてしまう。犯罪に魅了されてしまうという部分がある。そういうことを考えると、社会的弱者と言われている、若い世代の、例えば就労支援であるとか、もう一度社会参加が十分可能になるようにすることも必要だ。一旦ルートから外れてしまうと、ドロップアウトした地点からなかなか立ち直れなくて、ひきこもってしまったりとか、一方では犯罪のほうに行ってしまったりということがある。もう少し風通しがいい社会になっていくことで、居場所を見つけやすくする。同時に、犯罪の魅力に負けないような若い世代が育っていくといいなと感じた。

○竹花副知事
 今、犯罪という問題を大きな課題として日本は捉えている。この課題を解決しきる力をぜひとも東京から示していきたい。その萌芽が、各地域での様々なボランティアの取り組みにあらわれてきている。こうした萌芽がもっと大きくなっていけば、必ずやその課題は達成できる。
 治安の問題は多角的な取り組みが必要だが、どんな小さなことでもダボハゼのように食らいついて、必ず一つ一つやり遂げる。それが積み重なることで日本の治安は取り戻せると確信している。
 皆さん、どうぞ一緒にやりましょう。よろしくお願いします。

○石原知事
 国家の責にかかわることは、都知事として国と交渉し、入国管理等をやっていくが、大人同士のかかわりの中での犯罪の防止、治安の維持というのは、みんながその気になればできるが、若い人をどうやって守るか、どう育て直すかということはとても難しい。
 親の教育という発言もあったが、その根幹は人間の脳幹の問題で、コンラッド・ローレンツという動物行動学者の言葉を要約すると、脳幹を強くするためには、子どもに肉体的苦痛を味あわせる以外にない。子どものときに肉体的な苦痛を味わったことがない人間は、大人になって非常に不幸になる。これは、たたくとか殴るということではなく、暑いときは我慢させる、寒いときも我慢させる、ひもじいときもすぐにごはんをやらない。物事に耐える力をつけないとだめだということだ。親のちょっとした心遣いで子どもの耐性を高めていくことができる、私は、その努力を親にしてもらいたいと思う。
 最後に、コンピュータでインターネットをみてみると、どんなに悪い情報が氾濫しているかよくわかる。どうしてこれが犯罪につながらないのだろうかという情報が視覚的にも氾濫している。これは、文明がもたらした便宜で、これをどうやって取り締まるかは非常に難しいし、不可能に近い。
 こういった文明の中で何をするかというと、子どもの脳幹、耐性というものを親がどう培っていくか。きちんと培っていくと、子どもが変な情報にさらされても、耐性そのものが一つのストイシズム(禁欲主義)につながって倫理観を持つようになってくると、子どもはそこでこらえる。ところが、今はそれがこらえきれない。コンピュータに出ているものがなぜ悪いのかということになってしまう。そういう時代になったということを、私たちは一種の文明論としても認識しながら、これからの子どものことを考えていきましょう。これがまた10年、20年先の日本の治安を含めた国のあり方を左右する問題になってくると思います。
 今日はありがとうございました。