〜東京ビッグトーク〜石原知事と議論する会

平成20年5月1日更新

「地球温暖化阻止!起こそう“緑のムーブメント”」
平成19年度第1回「〜東京ビッグトーク〜石原知事と議論する会」


議事概要

テーマ

「地球温暖化阻止!起こそう“緑のムーブメント”」

日時

平成19年9月6日(木) 16時30分から18時分まで

場所

都庁大会議場(新宿区西新宿2−8−1 都庁第一本庁舎5階)

出席者(敬称略)

写真:石原知事と議論する会の様子石原慎太郎 東京都知事

◆コメンテーター
 C.W.ニコルさん(作家・(財)C.W.ニコル・アファンの森財団理事長)
 三上武彦さん(首都大学東京教授)
 見城美枝子さん(青森大学教授)
◆コーディネーター
 星野知子さん(女優・エッセイスト)

 公募都民等 323人

発言要旨

 以下は、出席者の発言内容を生活文化スポーツ局広報広聴部で要約し、取りまとめたものです。
 ※文中、敬称略

○星野(コーディネーター)
 今回のテーマは「地球温暖化阻止!起こそう“緑のムーブメント”」です。地球温暖化というのは今世紀最大の環境問題と言われています。東京都は「緑の東京10年プロジェクト」を策定いたしまして、街路樹の倍増や校庭の芝生化などにより、東京の緑の再生に取り組むことにしています。最近、テレビのニュースとか新聞でも直々そういう緑化みたいなことは皆さんも目にされていると思います。
 7月には、東京湾に88ヘクタールの公園を整備するために、「海の森」募金を設けまして、都民、企業、行政が一体となった運動を開始しています。東京が緑いっぱいになるというのは、私たち都民にとっても本当にうれしいことなんですが、さて、これから10年でどんなことができるのだろうか、どういうことを都は考えてやっていくのか。そして、私たちは何をすることができるのか、参加できるのかということを今日は考えていきたいと思います。
 まずは、石原知事から、この「緑の東京10年プロジェクト」にかける意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

○石原知事
 東京はできるだけのことをしようと思い、ニューヨークでの環境に関する会議に出席しましたが、全然参考にならなかった。ニューヨーク市は一生懸命がんばるのは結構だけれども、肝心のワシントンの政府は何も動かない。ジョイント・コミュニティで、アメリカの政府とか、ブラジルとか、特に中国なんかはもっとしっかり表明したらいいじゃないかと言うんだけれども、なぜか共同声明をうたわないんですね、うやむやにされてしまって。
 大都市はかなりの危機感を持って現状を認識しているけれど、国はさっぱりだなということが共同の認識でして、ほとんど満足せずに帰ってきたのですが、そういう中で、東京は東京なりのものをやろうと思っています。
 いつも言っていることですが、ゲオルグというオランダの詩人の言葉です。それは、「たとえ地球が明日滅びるとも、君は今日、リンゴの木を植える」。これは人間の志の問題でして、私たちはやはりその志を持たないと、やがては限界があるのかもしれない。私たちの子孫のために、この地球を一日でも一年でも長くもたせることはできないと思います。皆さんのお力をいただいて、せめて東京だけでもリンゴの木を植えていきたいと思っております。

○星野(コーディネーター)
 ありがとうございました。続いて、長野県の黒姫で森の再生活動をされていますニコルさんですが、大都市東京の緑の再生についてはどういうふうに思われていますでしょうか。

○ニコル(コメンテーター)
 東京の原宿は、すばらしいケヤキの木があるから、暑い夏でも涼しい。木が水を吸い上げている。暑い日になるほど葉っぱから水を蒸発させているんです。水が蒸発すると涼しくなるんです。上から見ると、木の樹幹の面積よりも葉っぱの面積は、その6倍か9倍ぐらいですから、それだけのクーラーが天然に働いています。
 木が育つために、ときどき切らなければならない。木をただ植えておくだけじゃだめです。木の手当てをする専門家をどんどん東京でつくってほしいです。
 木には、もう一つ効果があります。マイナスイオンです。マイナスイオンというのは目に見えないからわからないけれども、マイナスイオンがたくさんあるところは居心地がいいです。われわれの森の中で特に元気な木々があると、マイナスイオンは大体6,000です。多分、外へいったら800ぐらいですね。マイナスイオンは体の中の錆びを溶かしてくれ、いろいろなことで居心地がいいんです。
 東京で緑を増やすということは、おしゃれでもなく、格好いいことでもなく、サバイバルです。生きるために増やさないとだめです。

○星野(コーディネーター)
 緑を増やすことはサバイバルという、ちょっとドキッとするような言葉もありましたが、後ほどまたゆっくりお伺いしたいと思います。
 続きましては、都市気候についてご研究されています三上さんですが、ヒートアイランド現象に対する緑の効果というのはどれぐらいあるか、ちょっとご説明していただきましょう。お願いします。

○三上(コメンテーター)
 東京の気温上昇率は100年で3℃でずば抜けてが高いです。
 新宿御苑、明治神宮、代々公園は、まさに緑の涼しい島でして、クールアイランドと呼んでいます。こういう緑が表面の温度を冷やしています。表参道ですが、街路樹があるだけで、温度が下がるんです。新宿御苑は森になっていて、温度が一番低くなっています。こういう大規模な緑地というのは冷たい空気をつくり出しています。
 新宿御苑とか皇居のような緑地を東京都内にどんどんつくりましょうといっても、なかなか実現は難しい。ということで、小学校の校庭の緑化・芝生化ということがあります。表面温度を下げるだけではなく、緑の芝生で子どもたちが裸足で遊ぶことができます。
 クールシティづくりに向けた東京の緑化大作戦は三つほどあります。まず、公園緑地を保全して拡大していくこと。そして、校庭芝生化。最後に、街路樹による日影効果です。ありとあらゆるところをとにかく緑化していくということが、クールシティづくりに向けて重要ではないかと思っています。

○星野(コーディネーター)
 続きまして、今度は見城さんですが、大学で環境学を講義されているとともに、ジャーナリストとしても幅広い活動をされています。今ご説明がありましたけれども、実際に熱画像と数字で見ると、本当に緑の力というのは大きいんだということがわかります。見城さん、東京の生活者としてどんなことをお感じになられましたでしょうか。

○見城(コメンテーター)
 今、私は東京の真ん中に住んでいますが、木々がまだあるんです。東京のいいところは、坂があること、そして、緑がたくさんあって風が通るということです。
 歴史を調べますと、海や入江がきて、それから川が流れて、ちゃんと風流な川の文化もあったわけです。船宿があって、船入などという技法で本当に風情があったものが、どんどん都市化の中で変わりました。明治のときから今に至るまでに、グリーンベルト構想というのはありながら、ポツポツ穴があくようにグリーンベルトもアメーバーのように都市化が広がっていく。それを誰かがどこかでつくり直すべきだ、つくり直してほしい。そう思っていたときに、海に緑の島ができると聞きました。私はやっと平成で、本来、田園都市化構想で始まったこの東京が、グリーンベルトができ海とつながって、本来の目指している都市になるのではないか、こういう期待をしています。

○星野(コーディネーター)
 ありがとうございました。本当に昔は江戸・東京も大変すばらしいまちだったわけです。都市づくりをこれからどうするか、緑を増やすことをどうするかということですが、先ほど三上さんのお話にもありましたように、街路樹、それから校庭の芝生化、あと緑のカーテンというのも最近よく話題になっております。あと屋上の緑化、これも試みされているところもたくさんあると思います。
 それで、知事に伺いたいのですが、これから具体的にどう進めていかれるのか、またその上での障害はあるのでしょうか。

○石原知事
 すでに東京はでき上がってしまった街ですから、これをはるかに住み心地のいいまちに改良するというのはなかなか難しい問題があるんです。この国は都市計画が全くなかった。今でもないんですよ。
 川がもう少し生活環境の中で利用されるといいと思います。川というのは、一種の風洞でして、土手を回っても全体の風洞も深さは浅いのですが、それでも風の通い道なんです。
 風情としても、行事としても、あるいは行楽の地としても、川の周りというのはほとんど活用されていない。高速道路から隅田川を見るとわかりますけれども、あるのはブルーテントばかり。国の管轄している1級河川なども、役人のセンスのなさで結局3枚張りにしてしまったものだから、例えば小さな舟で川遊びすることもできないし、登るところもどこにもない。
 日本で最初の日本商工会議所の会頭である澁沢栄一さんは、昔つくった運河や荒川、隅田川を活用して、東京を東洋のベニスにしたいと言われたけれども、結果として全然似て非なるものになってしまった。汐留の再開発というのは全く考えもせずにやってしまったものだから、海からの風があそこで完全にシャットアウトされて、皇居の前というのはちっとも涼しくないんです。
 これをこれからどう変えていくかということで、学校の校庭の緑化や含めて、街路樹も、今47万本あるんですけれども、これをとにかく倍にしようということで募金運動を始めています。
 巨木が一番多い県はどこだと思いますか。東京なんです。三多摩の森も含めて、島も立派な木がありますが、とにかく面積のわりに巨木が一番多いのは絶対数で東京なんです。

○星野(コーディネーター)
 昨日、ニュースで拝見いたしましたけれども、緑を増やすということ以前に、いつの間にか東京の緑が減ってしまっていることに私たちは気づかないでいます。大変でしょうけれども、知事にビシッと止めていただくということもお願いしたいと思います。
 そして、緑を増やすということですが、ニコルさん、先ほどおっしゃっていましたけれども、街路樹でも何でも木を植えるということは大事だけれども、切らなければいけない、手入れしなければいけない。それには、やはり大変手もかかりますし、お金もかかるし、人もかかる。これは行政だけではできない、どうしたらいいかということで、私たちが何か参加できることもきっとありますよね。

○ニコル(コメンテーター)
 森が育つには、雨がちゃんと浸透できる状態にしなければならない。人が歩く道や車いすが通る道は、コンクリートじゃなくて、間引いた木のチップにしたほうがいい。それからもう一つ、大体、近代土地の面積の30%から40%は人間よりも車のためですね。特に動いていない車のために土地が使われているんです。それだったら、緑の駐車場にしたほうがいい。特に広い面積の駐車場を、雨が浸透できるように、木を植えることです。
 それから、川の話ですが、大昔、ロンドンのテムズ川が臭くて死んでいました。今、テムズ川はどんどん生き返って、去年行ったら、中心からちょっと上がったところで、魚が泳いでいるのを見ました。川沿いも、コンクリートを外して、ヤナギとか、そういうものに変えているんですよ。
 やはりわれわれが自分の環境を生きるために変えましょうよ。年寄りや子どもにとって居心地のいい環境にできます。

○星野(コーディネーター)
 今の子どもとか若い人は、木というのが、もちろん日影にしてくれるとか、マイナスイオンを出すとかといっても、それが生きていて、育って、手がかかるとういうことを知らずに大きくなってしまっているような気がします。
 見城さん、そういうのは実感されていますよね。その中で緑化を進めていく、生き物を植えていく、手入れをするということは大変なところもたくさんあると思うのですが、いかがでしょうか。

○見城(コメンテーター)
 木登りをしなくなったということがありますね。柿の木は折れやすいけれども、そうじゃない木はあるとか、そういうことを子どものころに覚えたか覚えないかというのは結構大きいです。
 白神山地のブナの森に入ったときに、レンジャーの方が聴診器を取り出して「聞いてごらん」と言われました。水が本当に吸い上げられていく音が聴診器から聞こえてくるんです。雨が降ると、木は全部水を受けていたら根も腐るでしょう。うまくできているのは、ちゃんと幹が雨を流すようにできているんです。葉っぱも、要らない水は向こうへいってというふうにちゃんと流していくし、そういう木が自分が生きていくために、なるほど賢いというようなものを実感するんです。
 自分の家の庭で木登りというのは難しいですから、私が知事にお願いしたいのは、「海の森」は木登りもできるところをお願いしたいし、それから、そういったところで木のおもしろさ、森の楽しさを教えてくれる、そういうレンジャーがいて欲しい。
 「水土里ネット」という農業用水などを各地方で整備していく委員会に出ていたのですが、「みどり」という字が「水」と「土」と「里」なんです。これがなぜか東京にはないのはおかしいなと思っていました。やはり「海の森」ができたときに、子どもたちが「水」と「土」と「里」実感して次の大人になってくれるかなと思って期待しています。

○星野(コーディネーター)
 そうですね。「海の森」というのも、一つの東京のこれからの緑化についての象徴として、子どもたちが触れ合ったり、実際に緑を実感してもらうための大事なものに成長していってほしいとは思います。今、東京を見ますと、ほとんどコンクリートで覆われていています。
 その中で、今、ニコルさんも駐車場も木を植えるべきだというふうにおっしゃっていましたが、ニコルさん、実際に例えばコンクリートだったところを剥いで木を植えたり何かするというのは簡単にできるものなんでしょうか。いかがでしょうか。

○ニコル(コメンテーター)
 今、日本はものすごく進んでいます。硬い表面でも水が浸透できるようになるようなものはいくらでもありますよ。

○星野(コーディネーター)
 地下も、地下鉄とか穴だらけだし、緑にとっては入りづらいのではないかとか、地下水は大丈夫なんだろうか、健康に育ってくれるのだろうかという心配もあるのですけれども。

○ニコル(コメンテーター)
 バンクーバーは130年ぐらい前から街路樹をいろいろ植えて、場所によってものすごく大きくなって、水道管を崩したりします。今は地面の中が見えるような機械があるんです。問題のある木を探すレーダーです。木は全部だめじゃなくて、問題のある木を切って若い木をまた植え直すとか、そういう工夫をしなくてはいけないんです。

○星野(コーディネーター)
 三上さん、これからそういうふうに緑を増やしていく上では、東京は大変なこともたくさんあるでしょうけれども、見通しとしてはどうでしょうか。

○三上(コメンテーター)
 東京は100年の間に上昇した3℃のうちの2℃がヒートアイランド、1℃が地球温暖化なんです。地球温暖化を食い止めると同時に、ヒートアイランドを緩和するためのキーワードは「水」と「緑」と「風」です。川といいますか、水もやはり重要で、それから、そこを風が流れるという、いわゆる「風の道」みたいなものがあります。そういったものを総合的に取り入れていくというようなことをやらないと、東京もそのうち40℃を超すようなことも起こり得るので、緑も含めて、いろいろな手だてをしていかなければいけない。そのためには、もちろん一般の人たちがやることも重要ですけれども、やはり行政ができることというのはかなりありますから、東京都も知事にがんばっていただきたいと思っています。

○石原知事
 三上さんにお聞きしますけれども、ペーブメント(舗装)はヒートアイランドの元凶なんですが、吸水性のあるペーブメントというのは、やはり既存のものに比べて単価はどれぐらい高くなるんですか。

○三上(コメンテーター)
 専門的なことはわかりませんけれども、いわゆる保水性舗装とか、透水性舗装というのは、東京都も今試験的にやっていますけれども、かなり高いと思います。今は試験ですからいいですが、もしこれを東京都の道路全部にやったら、ちょっと想像がつきませんけれども、莫大なお金がかかると思うんです。

○石原知事
 例えば、坪当たり単価はどれぐらい違ってくるんでしょうね。

○三上(コメンテーター)
 かなりですね。確かに、保水性舗装は水を保つということで効果的ではあるんですよ。ただ、実際に全面舗装をそれでやるということになると、何十倍か何百倍かかるかわかりません。

○見城(コメンテーター)
 私は、例えば歩道はそれでぜひやっていただきたい。

○三上(コメンテーター)
 そうですね。

○見城(コメンテーター)
 それと、国土交通省の方に実は伺ったんです。そうしたら、使ってくれれば安くなると言っていました。なかなか使ってくれないから単価は高いままなので、大量にそれが流通すれば本当に安くなるということを関係者がおっしゃっていました。

○三上(コメンテーター)
 多分、今は本当に一部ですからね。

○見城(コメンテーター)
 ええ。本当に流通が増えなければ、高くなってしまう。

○三上(コメンテーター)
 あと、今言われたように、やはり歩道はいいと思いますね。

○見城(コメンテーター)
 歩道はとにかくしていただきたいのですが。

○三上(コメンテーター
 ただ、車道の交通をストップして、全部透水性舗装にやれるかというと、なかなか難しいと思います。

○石原知事
 歩道に限ってするのは、新しい試みとしてできると思いますね。
 それぞれの国が持っている国土の地勢学的な条件というものを考える必要がある。日本は、イギリスよりも国土ははるかに大きい。ところが、イギリスの可住面積というのは日本の8倍、ドイツは15倍、フランスは22〜23倍です。その狭小な日本の可住面積の中にそれぞれの都市が分散して割拠しているわけです。都市が都市として成立する条件というのは、地勢学的に非常にハンディキャップがあるということを忘れてはいけない。この地勢学的条件を私たちは忘れずに念頭に置いて、東京は東京として何とかまちづくりをしていきたいと思っています。

○星野
 ここで、あらかじめ公募された都民の方たちからの御意見も伺いたいと思います。それでは、お1人ずつお願いいたします。

○大草(都民)
 いろいろお話が出ておりますが、街路樹を増やすということ。私は東八道路の近くに住んでおりまして大気汚染調査もやっておりますが、緑が多いところはやはり基準以下になっております。次に公園を増設すること。これは、公園だけでなく、周りの温度も下げることになります。それから、コンクリートブロック塀が最近は多いのですが、それを生け垣にすることも一つではないかと思います。また、水田や畑の保全をすることです。耕作地の田圃とか畑がどんどんなくなっております。農作業を有償ボランティアで行い、将来的には農業で食べていけるようなものにすることも必要ではないかと考えました。

○篠田(都民)
 今年の夏に都立の野鳥公園でボランティアをしまして、木のありがたさを自分でも実感しました。私は、東京都が行う緑化事業の一環として、ヤナギとかツバキといったCO2を吸ってくれる江戸に由緒ある木を植えるとよいのではと思っていました。ヤナギなどは怪談話にも出てきて見た目にも涼しいし、情緒もあります。ただ、ニコルさんのお話を聞いていて、格好いいから植えるんじゃないと。生きるために植えるんだという切実なお話を聞いて、そうも言っていられないと思い直したのですけれども、かつて緑の多かった八百八町の風情を出すために、世界に誇れる緑化事業にするためにも、植える木というのは考えたほうがいいのではないかと思います。

○矢崎(都民)
 私は先天性の障害者ですが、散歩が大好きで、電動車椅子で毎日散歩しております。路地の多い下北沢では、車が入ってこなく、ゆっくり散歩できるんです。路地の両側にあるお家の花々で季節がわかり、お手入れされている方とお話ししたりして、ネットワークが広がったりもします。
 大きな道路に街路樹を植えるのもいいんですけど、そういう小さな道の緑というのも守っていただきたい。木陰の道をブラブラ歩いて、疲れたら緑の芝生でゴロンと昼寝できるような、そんな道が東京じゅうに広がったらいいなと思っています。下北沢は、今、小田急線が地下化工事をしていまして、その跡地が緑の散歩道になったらいいなと思っています。特に羽根木公園と駒場公園という広域避難地を結ぶルートを車が入れない緑道にして、緊急時は緊急車両のみ走れるようになりますと、安心・安全のためのまちづくりにも役立ちます。ぜひ東京都を緑と安全のまちにしていただきたいと思います。

○大澤(都民)
 私のような大学生や小・中・高校生といった10代、20代の若い人たちが参加できる緑のムーブメントについて考えまして、一つご提案したいと思います。
 学校の中で授業の一環としてボランティア活動などのような形で緑を増やす活動に参加できたらとてもいいなと思っています。今年度から都立高校でもボランティア活動を行う「奉仕」という授業が必修化されたというふうに聞きましたので、そのような活動を是非導入していただきたいと思います。授業で得たものというのはとても大きな影響力があります。何も知らなければ、その先に進めないのですけれども、一つきっかけが与えられれば、その後に自分の力で進むこともできます。ぜひ授業を使っての若者も巻き込んだ活動というものを考えていただければいいと思います。

○星野(コーディネーター)
 ありがとうございました。確かに、緑のムーブメントというのは、まず行政がちゃんとやっていただかなければいけないし、財源もかなり必要です。そして、企業の協力も要るのでけれども、そこにやはり都民の心といいますか、ボランティアも一緒になったことで初めて生き生きとしたものができるのではないかと思います。
 もう少しだけ時間があるのですが、皆さん、今のお話を伺っていかがでしたでしょうか。

○見城(コメンテーター)
 桜を守る桜守というのがありますね。緑を守る緑守じゃないけれども、何かそういう人が必要だなと思いました。知識があって、桜守りに匹敵する緑を守る人、そういう人が必要だということ。メンテナンスは絶対必要ですね。メンテナンスには必ず参加制ということを今日申し上げようと思っていたんです。ぜひそこに若い人が入ってくれればと思います。それから、桜守などを見ると、若い人ばかりじゃなく、団塊の世代もいとおしむ心というのはある年齢がくると芽生えるものです。だから、私は若い人と一緒に、ある年齢になった人たちが、自分の人生の来し方みたいなものを考えながらも、木一本に対して思いを込めてメンナンスに参加していくという、その参加制というところをキーワードに、ボランティアができればすばらしいと思っています。

○ニコル(コメンテーター)
 100年前に、ベーデン・パウエルという軍人が英国の若者を見て心配し、ボーイスカウトという組織をつくったんです。ボーイスカウトからきた人は、ロープの結び方とか、ナイフの持ち方とか、いろいろなこと知っています。提案ですが、フォレスト・スカウトをやったらどうかと。新しい組織、ボーイスカウトの知識も借りて。木、森、空気、科学、言葉、体づくりはやはり8歳ぐらいからやらないとだめです。子どもたちに外で、木、森、いろいろなものを教える組織もあっていいんじゃないかと思うんです。

○星野(コーディネーター)
 そうですね。フォレスト・スカウトというのが実現するといいです。木を育てたりするためには、まずその木を育てられる子どもが育ってくれないと困りますものね。

○石原知事
 先ほど緑を増やすことのムーブメントの参加の問題について話されたけれども、いくつかの小学校で校庭の緑化をしています。これはなかなか難しくて、芝の知識というのは専門家に聞かないとわからないところがありまして、例えば土をまくのも、山砂をまくと必ず雑草が生えるのですけれども、海の砂をまくと雑草の種が入っていないから芝はよく育つ。こんなことは専門家に聞かないとわからないんです。私が行った杉並の小学校でとてもうれしかったことがあります。子どもたちが、それぞれ自分の1〓のボトルを途中で切りまして、土を入れて、そこに本当にわずかな芝を育てて、伸びてくるとちょっと挟みで切って取りまして、それで校庭がある部分傷んだりすると、そこへ持っていってそれを張ってくれているんです。これは子どもの情操教育に非常によくて、やはりボランティアというよりも、それ以上に自分で自分の人生の舞台を造形しているという喜びを味わって、すばらしいことだと思います。
 それから、これはニコルさんに聞きたいんですけど、先ほど木を植えるには木を選べと言われたけれども、ヤナギを植えて幽霊が出てくれると本当に観光のためにもいいのですが、落葉樹でもいいんですか。冬、葉が落ちてしまう木でも効果というのは冬の間でもあるんですか。葉っぱがなければだめなの。

○ニコル(コメンテーター)
 冬の間はそんなに暑くないですからね。木の根がちゃんと育っているのは地面を保護してくれるんです。それから、われわれの森ですけれども、不思議に冬は森の中のほうが暖かいということがわかったんです。さっき三上先生と話していたのですけれども、気候を安定させるんですよね。

○石原知事
 ついでに申しますと、明治神宮の森というのは、明治天皇がなくなった後、全国の人たちが募金して自分で苗を持ってきてつくった森です。やはり年数が経つとあれだけのこんもりしたすばらしい森になるんです。今は技術も進みましたから、ごみの島につくっている人工島の森は、恐らく明治神宮の森よりもっともっと早く育ってかなりの効果を上げると思います。ひとつ皆さん、どんどん募金をし、苗を植えてください。

○三上(コメンテーター)
 ぜひ街路樹をどんどん整備していただきたいと思います。夏、歩道を歩いていて、街路樹があるかないかで全然違うんです。日射と下からの放射がありますから、街路樹で日影をつくる。葉っぱからの蒸散作用で両方効果があります。

○星野(コーディネーター)
 これから東京の生態系に合ったどんな木がこれから街路樹に増えていくのかというのは、私たち都民にとっても、とても楽しみなところです。
 そろそろお時間になってきたのですけれども、知事に最後に一言お願いしたいのですが、今日は3人のコメンテーターの方、そして皆さんのご意見も伺ったのですが、いかがでしたでしょうか。

○石原知事
 大変参考になりましたけれども、緑だけではなくて、複合的な努力をしませんと、私たちの地球というのは本当にもたないと思うんです。CO2の削減についても、政府も東京都もいろいろ自治体に言っていますが、これは節電してくれということなんです。私たちがいろいろ手を尽くせば、かなり大きな効果が上がってきます。まさにちりも積もれば山となるですね。木も増やしましょう、芝生も増やしましょう。同時に、要らないスイッチは切って電気も節電してください。そうしないと、お互いに生きている間は大丈夫かもしれないけれども、孫の孫になってくるとこの国とこの地球は危ない。そういう自覚をみんなで持つことです。みんなでがんばりましょう。ありがとうございました。

○星野(コーディネーター)
 ありがとうございました。本当にこの“緑のムーブメント”に期待していきたいと思います。今日来ていただいた皆さんは多分とても関心がある方ですし、これから自分たちで何かできることをやってくださる方たちだと思っています。ぜひ緑の東京を目指して、考えて行動していただきたいと思います。皆さん、ありがとうございました。