〜東京ビッグトーク〜石原知事と議論する会

平成20年5月1日更新

「オリンピックにかける夢〜オリンピックを東京に,2016年!」
平成19年度第2回「〜東京ビッグトーク〜石原知事と議論する会」


議事概要

テーマ

「オリンピックにかける夢〜オリンピックを東京に,2016年!」

日時

平成19年11月21日(水) 15時から16時30分まで

場所

ヒルトン東京 4階菊の間(新宿区西新宿6−6−2)

出席者(敬称略)

写真:石原知事と議論する会の様子石原慎太郎 東京都知事

◆コメンテーター
 有森裕子さん(オリンピック 女子マラソンメダリスト)
 山本博さん(オリンピック アーチェリーメダリスト)
 武田美保さん(オリンピック シンクロナイズドスイミングメダリスト)
 末續慎吾さん(オリンピック 4×100リレー入賞、世界陸上メダリスト)

◆コーディネーター
 中井 美穂さん(アナウンサー)

 公募都民等 600人

発言要旨

 以下は、出席者の発言内容を生活文化スポーツ局広報広聴部で要約し、取りまとめたものです。
 ※文中、敬称略

○中井(コーディネーター)
 2016年、東京オリンピック、そしてパラリンピックの開催意義と申しますと、スポーツを通じて人々に夢と希望を与え、都市を躍動させる、そして、新しい都市モデルを提案して地球環境を再生する、この2点を挙げております。そして、人を育て、緑を守り、都市を躍動させるオリンピックを目指して、人間の健康、地球の健康のためのオリンピック、人と地球の可能性を最大限に追求してまいりたいと思います。
 それでは、まず最初に、会を始めるに当たりまして石原知事から、人を育て、緑を守り、都市を躍動させるオリンピックにかける意気込みからお話を伺いたいと思います。
 では、知事、お願いいたします。

○石原知事
 40年前の東京オリンピックと違って、政府の姿勢もだいぶ違いますし、東京ひとりでバタバタしてもどうにもならないので、やっぱり都民、国民の皆さんに、大きな夢を見ようということで、とにかく意気を盛り上げてもらわないとなかなか難しい闘いになりそうです。
 こういう行事を支えていく、芯にある心意気みたいなものが必要です。もっとしたたかな、タフな日本人になってもらうために、オリンピックを生で体験するというのは大事なことだと思います。日本の方々がみんなこのオリンピックに注目して、自分の国でこういうすばらしいドラマがあるんだということを見ていただいて、それを記憶にとどめながら、次の世代にいい遺産を残していきたい。見えない遺産がたくさんあるんだから、それを、こういうトップアスリートたちにこれから協力していただいて、オリンピックという祭典を大きな遺産になるように形づくっていきたいと思っております。

○中井(コーディネーター)
 今日は高校生170名の方々が参加されています。9年後の2016年、彼らが立派な大人になったころに東京でオリンピックが開かれるかどうか、今日いろいろな話を聞いて刺激を受けていただきたいと思います。アスリートの皆様からもお話を伺わせていただきます。

○有森(コメンテーター)
 スポーツは、する人にも見る人にも、人間のすばらしい可能性や神秘的なものを与えてくれ、ものすごく影響力を持ているものだと思っています。そういう影響力を持っているということを、アスリート、スポーツ選手がもっと意識を持って、自分のやっていることに全力で臨んでほしいです。オリンピックを見て、そのオリンピックに直接関わることができた世代の人たちは、このオリンピックというものを一生忘れられないぐらいの感動と何かを得ることは確かです。2016年、この東京で行われるオリンピックで、そういう人たちが一人でも多く増えることを夢見ています。

○山本(コメンテーター)
 2016年東京でのオリンピック、アスリートとして、その場に立ちたいと思っています。
 スポーツの良さというのは、結果が確保されないことです。絶対はありません。保証がないことに一生懸命、無邪気になってがんばること、報われなくても諦めずに続けることを、子どもたちに、スポーツを通じて伝えたいと思っています。
 2016年のオリンピックに向けて皆さんそれぞれの中で何かできることがあったら、それをぜひ今日からすることが大切だと思います。

○武田(コメンテーター)
 スポーツでは泣きたくなくても勝手に涙が出るような感動があったり、筋肉はこういうふうに躍動するのかとか、スポーツを体験することで気づくことができます。
 2016年、東京にオリンピックが来たら、日本の選手たちは間違いなく、観客の皆さんの応援の力をいただくことができます。また、2009年までの招致活動の中で、皆さんと一緒に、少しずつの力がつなげていきたいと思っています。

○末續(コメンテーター)
 2016年の東京でのオリンピック、できれば選手としてと言いたいところですが、僕自身の年齢と体のこともありますから、必死に努力はしようと思いますけれど、関われるように努力はしたいと思っています。
 グラウンドでは、選手と観客の皆さん全員が主役になって初めて感動できのではないかと思います。オリンピック招致においても、皆さんが主役になれるよう願って、努力すればいいと思います。

○中井(コーディネーター)
 オリンピックの競技以外の部分についてもお聞きしたいと思います。

○末續(コメンテーター)
 国と国のつながりが、選手という人間同士のコミュニケーションから行われるのがオリンピックだと思います。

○武田(コメンテーター)
 選手村の生活で印象的なのが食堂です。宗教とか文化とかいろいろ違いがあり、食事のとり方もそれぞれ違います。スポーツの祭典の場なんですが、文化交流の場でもあります。

○山本(コメンテーター)
 新しく出会う選手たちとの会話ではものすごく感動がありました。

○有森(コメンテーター)
 私たちマラソン選手は試合が終わるまでは選手村に入りません。一番感動したのは、全世界の国旗が一列にザッと並んでいる、その瞬間、オリンピックって本当に世界の祭典なんだって思いました。マラソンの特典は、コースが外で、まさにその街の人たち全員に無料で応援してもらえることです。その国らしい声援と力を、まさにその国の、開催地の力を一身に浴びてオリンピックというものを終えられることです。

○中井(コーディネーター)
 ここで、あらかじめ公募されました都民の方のご意見を伺わせていただきたいと思います。では、津川さんのご意見をお願いします。

○津川(都民)
 今日は二つほどプロジェクトの提案をさせていただきたいと思います。
 一つ目は、「めざせ2016年東京オリンピック出場」というプロジェクトです。一般の人が、何年もかけて東京の2016年オリンピック出場を目指すドキュメンタリーです。
 二つ目は、国民全員であったり、もしくは都民とか、より多くの人が参加できるようなイベントの開催です。国民みんなが聖火ランナーとして、オリンピックが開催される日まで日本全国を走り続けるといった、みんなが参加できるイベントをすることで、国民みんなが一体感を持って取り組んでいけるのではと思います。

○石原都知事
 大変いいご提案で、私たちもいろいろ考えていますので、全国的なキャンペーンをどうやって具体的に展開していくか、とても大事なことなので、またいろいろお知恵を貸してください。
 それから、一つだけ言っておきますけど、「オリンピックを東京に」を、東京ではなく、「オリンピックを日本に」というキャッチフレーズに変えました。

○中井(コーディネーター)
 なるほど。「オリンピックを日本に」ということになります。小西さんからもご意見をいただきます。

○小西(都民)
 今の子どもたちに夢と感動を与えたいです。私は前回の東京オリンピックを経験しております。あのときに、もうお亡くなりになられましたけど、三波春夫さんの歌を覚えてるんです。そのぐらい子どものころの記憶って鮮明なんですよね。
 今のこのすさんだ世の中で、それはお金もかかるでしょうし、今そんなのんきなことよりも、ほかにやることがあるんじゃないのなんて言う人も、意見ももちろんあるかもしれません。でも、やっぱりオリンピックはオリンピックなのです。世界のお祭りなのです。見る阿呆より踊る阿呆になって、大人も子どもも大いに楽しんで、感動して、それでいいじゃないですか。後にはきっと素敵な幸福感と思い出が一生残ると思うんですよ。
 もちろん、いらしてくださる外国のお客様には、この機会に、東京に、いや、日本に対するイメージを、愛すべき都市、愛すべき国家として残るよう、配慮は忘れずに。

○中井(コーディネーター)
 それではもうお一方お話を伺わせていただきましょうか。大野さん、ご意見をちょうだいいたします。お願いします。

○大野(都民)
 子どものころに東京オリンピックを体験いたしまして、本当に一生忘れていないんだなと、今思い出しました。開会式のファンファーレの音からしっかり思い出すことができます。ぜひもう一度、東京でオリンピックを体験したいと思い、今日、二つ企画を提案させていただきます。まず一つは、東京オリンピックのポスターを世界中から公募して、東京をイメージする絵を描いていただき都民が選考するということです。もう一つは、だれもが参加できる、競技会みたいなものを、本競技の間に開催していただいたらどうでしょうか。例えばファミリー駅伝とか、綱引きとかリレーとか。家族や地域の仲間でユニットを組んで戦うことができたらいいと思います。個人が参加することで、世界中の人の視線を東京に、日本に集めて、思いを引き寄せることができれば、日本からさまざまなメッセージを届けられると思います。
 最後にお願いがあるんですが、開会式って何かサプライズがないとつまらないので、サプライズとして、都知事には聖火ランナーとしてかっこよく走って登場していただきたい。

○石原知事
 期せずして二人の方から同じ提言がありました。まず世界の視線を日本に集めるだけじゃなくて、日本じゅうの視線を集めるために、とにかくオリンピックを呼ぼうじゃないか、そういう、当初掲げたキャンペーンとして日本中のランニングを考えています。
 それから、入賞者じゃなくても、オリンピックに出たことがあるという立派なアスリートが各県にいますので、その人たちにオリンピックキャンペーンの大使になってもらいました。
 お二人から提言があったように、オリンピックを呼ぼうじゃないかというキャンペーンとして、日本一周のランニングをやれたらと思っています。大してお金もかからないでしょうし、それも一つのイベントだと考えています。ありがとうございました。

○中井(コーディネーター)
 ありがとうございました。あらかじめ公募されました都民お三人の方のご意見をちょうだいいたしました。
 さて、これからは、オリンピックを日本に、2016年に呼びたい、呼ぼうということなんですが、先日、世界陸上が大阪で行われまして、もちろん末續さんが選手として、地元大阪で大きな大会を経験されたわけですけど、やっぱり全然違いますか。世界陸上は何回も、ほかの国々で出ていらっしゃいますけど、自国の開催という点については実感がたぶん一番あるかと思います。

○末續(コメンテーター)
 そうですね。とにかくグラウンドの応援がすごいですね。海外の世界大会では、ちらほら日本の国旗だったり、日本人を応援する関係者が多かったんですが、今回は一般の方というか、興味を持った人が足を運んでくれて、土地柄もあってすごく派手でした。日本人の応援はとても愛情があるというか、家族が出ているみたいに、あっ、あの人知ってるよという感じで、とても距離はあるんですけれども、身近に感じました。

○中井(コーディネーター)
 自国開催ということになると、当然マスコミからの取材攻勢とか、競技以外にいろいろ大変だったんじゃないかなという気もしますけど。

○末續(コメンテーター)
 陸上でメダルというのはものすごく難しいんです。僕はずっとやっているんですけれども、僕の銅メダルだって、アジアレベルで100年に1回というレベルなんです。盛り上がりすぎてしまうと、どうしてもメダルという結果に行き着いてしまいます。選手も何とか観客に足を運んでもらいたいから「メダルとりたいですね」と言ってしまう反面、それで自分を締めつけてしまうことが今年もあったと思います。

○中井(コーディネーター)
 経験してみて、2016年、日本にオリンピックが来る、そのときに現役だとして、いろいろ今回で培ったことが生きてくるんじゃないかと思うんです。

○末續(コメンテーター)
 そうですね。やっぱり何事も、やる前に英雄になってはいけないということですね。走る前に、なぜかやったような感じになるということは、気をつけないと。

○中井(コーディネーター)
 ありがとうございました。
 皆様から、お集まりいただきました方々に、最後にこれをぜひ伝えておきたい、あるいは日本にオリンピックを呼ぶという意義、ご自身がその活動においてどういうことをなさっていきたいかということも含めまして、有森さんからお話を伺わせください。

○有森(コメンテーター)
 世界陸上やオリンピックの会場に行って思うんですが、その大会が成功したかどうかは、それを開こうとしているその国の人たちがどれだけ楽しんでいるかにかかっています。
 自分たちの最高の楽しみの場にするということが、オリンピックを東京でする、日本でする一番大事なことであると思います。その盛り上がりがあって、アスリートたちの最高のすばらしいパフォーマンスが生まれることは間違いないんです。
 選手の最高のパフォーマンスは選手だけがつくっているんじゃないんです。それを見ている皆さん全員が一緒になって作っているんです。見る側だけではないんです。一緒につくる側だということを、ぜひもう一度意識していただき、皆さん全員で盛り上げていくことを望んでいます。

○山本(コメンテーター)
 これから、オリンピック招致もそうですけれども、皆さんが元気を持って今後の人生を歩んでいただきたい。元気でなければオリンピックの応援もできないわけです。
 皆さんの体についています腕、これはおもりなんです。体にぶら下がっているだけです。それでは、どうしたらそういった腕のおもりを楽に支えられるようになるかというと、簡単なトレーニングを毎日続けていくことです。そうすれば、皆さんの体についてる腕が万能な道具となっていきます。自分自身の肉体が変わることによって、皆さんの頭の中の考え方が変わっていきます。そして、自分の体に対しての認識も変わっていきます。
 是非、健康をもっと増進され、東京オリンピックも含めて、あらゆる活動に積極的に取り組んでください。

○武田(コメンテーター)
 オリンピックは、自分が日本人であるということをすごく実感できる場だと思います。
 日本人として、日本にオリンピックが来てもらいたいと考えたときに、私たち日本人の良さって何だろうというところから考え始めます。オリンピックは、皆さん個人がクリエイティブな発想をお持ちになるきっかけづくりになると思います。
 私自身、選手のときは本当にもう精いっぱいで、あんまりそういうことを考えていませんでした。でも、引退してから、スポーツって何か素敵だなって感じられるようになりました。私も皆さんと一緒に、日本人として、何が日本人の持ち味で、何にとても誇りを持てるのかということを探していきたいです。

○末續(コメンテーター)
 海外の試合で、その国の人柄に触れたときに、その国のよさを感じることができます。そして、海外に行って思うのは、日本が大好きだということです。日本人の人柄や気性が大好きです。そんな日本人の人柄を、オリンピックの際にアピールできれば、海外の選手達は日本はとてもいい国だったと感じて帰ってくれると思います。
 日本人一人ひとりに東京でオリンピックをという熱い思いがあれば、実現できると思っています。僕もその場に立てればと思います。どんな形であれ、日本人のよさを世界に伝えられたらなと思っています。

○中井(コーディネーター)
 それでは、最後に石原知事から本日の所感をお願いしたいと思います。

○石原知事
 アスリートの方々あるいは都民の方々から非常にいい意見をいただきました。ありがとうございました。
 ロンドンまでは従来のオリンピックとあまり変わらないでしょうが、東京でオリンピックができることになりましたら、日本という社会の、技術も含めた成熟を明かすために、今までになかったタイプのオリンピックを考えています。末續さんがメダルとった後、ロボットが出てきて、末續選手より速いスピードを出したらまずいですが。半分冗談、半分まじめな話ですが、いろんな趣向を凝らして、日本の成熟を技術的に見せることができます。
 絶対どこの国でもできなかったオリンピックを東京でやる自信は十分にありますから、皆さん期待して、また、アイデアも出していただきたい。よろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。

○中井(コーディネーター)
 ありがとうございました。本日、お話を伺っていて、私たちはアスリートにはなれませんが、そうかといって見る側だけに回るというのは非常にもったいない。やっぱり参加する側、つくる側の意識を持って、これからオリンピックを日本に、2016年の活動を着実に、そして忠実に見ていきたい、そして参加していきたいという気持ちを強く持ちました。
 本日はお忙しい中、アスリートの方々においでいただきました。有森裕子さん、山本博さん、武田美保さん、末續慎吾さん、そして石原東京都知事でした。皆様どうもありがとうございました。