〜東京ビッグトーク〜石原知事と議論する会

平成21年4月6日更新

「こうして2016年東京オリンピック・パラリンピックを勝ち取る!!」
平成20年度第2回「〜東京ビッグトーク〜石原知事と議論する会」


議事概要

テーマ

「こうして2016年東京オリンピック・パラリンピックを勝ち取る!!」

日時

平成21年2月17日(火) 16時から17時30分まで

場所

パークタワーホール(東京都新宿区西新宿3−7−1)

出席者(敬称略)

写真:石原知事と議論する会の様子 石原慎太郎 東京都知事
 玉木正之 スポーツライター
 成田真由美 パラリンピック競泳金メダリスト
 みのもんた 東京オリンピック・パラリンピック招致大使
 森末慎二 オリンピック体操金メダリスト
 魚住りえ タレント・フリーアナウンサー(進行役)

 公募都民等 427人

発言要旨

 以下は、出席者の発言内容を生活文化スポーツ局広報広聴部で要約し、取りまとめたものです。
 ※文中、敬称略

○魚住(進行役)
 会のテーマは、「こうして2016年東京オリンピック・パラリンピック招致を勝ち取る!!」です。東京は、昨年6月、IOC(国際オリンピック委員会)の総合評価で、7都市中第1位で立候補都市に選ばれました。今月12日には、IOCに立候補ファイルを提出いたしまして、10月2日の開催都市決定に向けて、今後、招致レースは正念場を迎えてまいります。
 東京が目指す大会の理念は、「平和に貢献する、世界を結ぶオリンピック・パラリンピック」です。平和の祭典オリンピック・パラリンピックを、世界で唯一戦後60年一貫して平和を貫いてきた日本で開催することで、平和の尊さを世界に訴えることです。
 そして、大会のコンセプトですが、「世界最高の環境、ヒーローたちの檜舞台」です。世界の都市の中でも最も先駆的な取組をしている東京から地球環境の大切さを世界に発信し、コンパクトな計画のもと、すべての選手が自己最高記録を出し得る世界最高の檜舞台を実現してまいります。
 それでは、これから、みのもんたさんと一緒に進行してまいりたいと思います。みのさんは、東京でのオリンピック・パラリンピック開催の夢を広く伝える招致大使として大変ご活躍されていらっしゃいますが、まず、意気込みはいかがでしょうか。

○みの
 僕は、日本ではパラリンピックの記事がほとんどないと訴え続けてきました。そうしたら、最近では、パラリンピックに対する取材の勢いがどんどん増してきたました。招致大使になって名刺を都知事からいただいたときに、「東京オリンピック・パラリンピック」という一つの言葉になっていた。これは世界で初めてじゃないですか。すごいことだと思う。
 招致大使をお引き受けして、自分が持っている生放送の中でオリンピックとパラリンピックが一つのネーミングになったということ特に言い続けています。

○魚住(進行役)
 石原都知事、この東京オリンピック・パラリンピック招致に対する思いをお聞かせください。

○石原知事
 この頃、日本はあまり夢がないじゃない、楽しいことがね。みんなで大きな夢を見てほしい。
 トップアスリートが人間技とは思えないようなことをやってみせるオリンピックやパラリンピックを見ると勇気が出てきます。
 東洋の魔女(女子バレーボール)を育てた大松監督の優勝の瞬間や円谷選手(男子マラソン)がメインスタジアムで日章旗を上げる姿など、前の東京オリンピックの数々のドラマが今でも目に焼き付いていて、目を閉じるとよみがえってきます。本当に人生に勇気を与えてくれました。
 口では言えない、形では描けない、しかし、重く大きな遺産というか、贈り物を若い世代のために残しておきたいと思いました。
 今、招致活動はいいところまで来ていますが、大事なのはこれからの外交です。開催都市は、10月2日にコペンハーゲンで決まります。招致を日本に勝ち取るには、皆さんが声をそろえて、やろうと言うことがなによりも大切です。
 日本人の心温まるホスピタリティについて、日本に来た外国人で悪口を言う人はいません。神奈川、埼玉、千葉との協力で、以前よりも東京の空気はきれいになりました。また、普通の水道の栓から美味しい水が飲める国は他にありません。
 外国のお客さんに満足してもらえるオリンピックが十分にできます。その前に皆さん、いろいろと有形、無形のお知恵を貸してください。競技だけではなく、やって来た人にこんなものを見せるとか、ああいうものを見せるとかね。
 とにかく、4月にIOCの審査員が来て色々と調べていくでしょうけど、その時に皆さん、街で出会ったら、「こんにちは」くらい言ってやってください(笑)。よろしくお願いします。

○魚住(進行役)
 森末さんは、ロサンゼルスオリンピックで金メダルを獲得され、世界中に感動を与えられました。そして現在は、岡山県の招致ふるさと特使として招致の活動をなさっていますね。

○森末
 そうですね。岡山県でオリンピックの招致活動をさせていただいております。
 この間、2016年東京オリンピック・パラリンピック招致応援党として、北島康介選手と一緒に、新宿、渋谷、上野で、応援協力のお願いの演説をさせていただきました。
 そこで、少しショックだったのは、新宿ではオリンピックに日本が立候補していることをほとんどの方が知っていましたが、渋谷の若い子たちは半分以上知りませんでした。若い人にも、是非とも応援していただきたいと思っています。
 僕自身も、64年の東京オリンピックで遠藤選手などの演技を見て、ぜひとも体操をやりたい、鉄棒をやりたい、そしてオリンピックに出たいという夢を持って真剣に体操を始め、84年のロサンゼルス・オリンピックに出場することができました。
 2016年に子どもたちが間近でオリンピックを見て感動し、スポーツを好きになり、次のオリンピックに出場しようと夢を持ってもらいたいです。
 マラソンのアベベ選手は、東京、ローマで2つの金メダルを取りましたが、その4年後くらいに交通事故に遭って走れなくなったんです。そして、その何年か後に、パラリンピックで、アーチェリーに出場しています。パラリンピックがあったことで、アベベ選手は、再び自分の体を動かして、みんなの前の舞台で再び闘うことができました。
 今回、オリンピックとパラリンピックが一つの言葉になっていることが、当たり前のようですが、すごく新しいことだと思っています。
 是非とも、2016年に東京に招致したいと思います。皆さんも応援をよろしくお願いします。

○魚住(進行役)
 パラリンピックというと、成田真由美さんは15個の金メダルを獲得されていらっしゃいます。また、成田さんは、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会でアスリート委員会副委員長としてもご活躍されています。

○成田
 初めて参加した96年のアトランタ大会の後、ある新聞社の取材で、「パラリンピックって何ですか」、「パラリンピックという言葉も、もってあと6カ月だね」と記者の方に言われ、とても残念だったことが今も忘れられません。このことがあって以来、私は、「パラリンピック」という言葉を一回でも多く活字にしてもらえたらと、できるだけ取材を受けようと思いました。
 アトランタ大会では、パラリンピック選手とオリンピック選手の水着に違いがあり、パラの選手はスクール水着のような紺一色のものを支給されて、それがとても悔しくて、「オリンピック選手とは違うんだ」と痛感しました。
 オリンピック選手と同じユニフォームを支給していただいたのは、98年の長野大会からです。
 今では、日本もずいぶん変わってきたと思いますが、まだまだパラリンピックの選手が置かれている環境は、オリンピック選手とは大きな違いがあります。
 2016年に東京で8キロ圏内におさまるコンパクトなパラリンピックが実現されれば、障害を持つ選手にとって体の負担がすごく軽くなります。同時に、障害を持つ人たちが本当に住みやすい東京になり、そして、日本のあちらこちらがバリアフリーになるのではないかと思っています。
 車椅子で生活をしていると、一歩外に出るととても不便な点がたくさんあります。だから、パラリンピックの実現により、もっと住みやすい社会になれば、障害を持っている人たちも当たり前のように外に出て行くことができるようになります。
 そして、多くの子どもたちにパラリンピックを実際に見てもらいたいと思っています。私は歩けるころは全く泳げなくて、水泳が大嫌いで、水が怖かったんです。そんな私が水泳を始めたきっかけは、障害を持っている人から水泳の大会が仙台であるから出てみない、と誘われたからです。仙台に行けばたくさん美味しいもが食べられると、軽いノリで水泳を始めました(笑)。
 嫌いだったことが、ちょっとしたきっかけで、大好きになる可能性があります。すべての子どもたちとは言いませんが、子どもたちにパラリンピックをライブで観てもらえると、伝えられるものがあるのではないかと、私はそう期待をしています。
 どの大会も、本当に多くのボランティアの方がパラリンピックを支えていて、ボランティアさんがいなければ成功しなかったと思うんです。ですから、子どもたちも、どんな形であってもボランティアとして参加すれば、一緒にパラリンピックを成功させることができるんじゃないかと私は思っています。
 また、個人的なことですが、過去4回の大会では、父親の体調が悪く、両親は一度もパラリンピックの応援に来たことがありません。2012年まで現役で頑張り、2016年は私は関係者としてみんなを陰で支え、両親も含めて多くの人たちにパラリンピックをライブで見せてあげたいですね。
 日本でのオリンピック・パラリンピックを実現するためにも、まずは多くの方にオリンピック・パラリンピックが持つ真の素晴らしさを知っていただきたいと思います。4月にIOCの視察委員の方々が来るようですが、私はパラリンピック開催によって国民が心身ともに得られることをどんどんPRしていきたいと思っています。応援をよろしくお願いします。ありがとうございます。

○魚住(進行役)
 玉木さん、2016年招致の行方を分析していただきたいのですが。

○みの
 そう、玉木さんには正直に聞きたいね。今日は知事がいるかもしれないけど、2016年はどうなんだろう。
 僕なんかが一番話してほしいのは、オバマさんが大統領になって、オバマさんが上院議員として活躍していた場所がシカゴでしょ。

○玉木
 シカゴですね。イリノイ州です。
 ただ、先ほど知事が、これからが大変だという言い方をされて、本当にそのとおりだと思います。
 私自身、東京への招致については、北京の次の次にもう一度アジアに来るのかと考えると可能性はないんじゃないかと、最初は少し心がしらけていました。ところが、この世界不況ですよ。この世界不況は、東京に対するものすごい追い風だと私は分析しています。
 それから、オバマ大統領が出てきたら怖いという声が多く出ていますが、イギリスのメイジャー首相が熱心に招致活動をしていたロンドンは、現在資金に困っていまして、選手村やメインスタジアムの縮小が始まっています。また、ロシアのプーチン大統領が必死に招致したソチ(冬季五輪)のすぐ側では、紛争が起こっています。
 こういうことがあるので、決して国のトップが言ったからといって安心できるものではないという考えがIOC委員の中にもあります。
 それから、私も思い出話をさせてください。
 1964年の東京オリンピックを見たから、私は今、スポーツライターをしているようなものです。あのときのショックは大変なものでした。開会式が始まったとき、我々の親、大正生まれの世代は全員泣いていました。私は、泣いている理由が全くわからなかったのですが、その後、2週間にわたって、学校のテレビで毎日、フェンシング、ボート、重量挙などそれまでに出会ったことのないスポーツに出会って、その印象がものすごく強く残りました。
 また、NHKのアナウンサーの「もしも世界平和というものがあるとするなら、それはこういうことを言うのではないでしょうか」という閉会式での言葉が頭から離れなかったんです。
 先ほど知事が最近、夢を持つ者がいないとおっしゃられましたが、そういう心のありようが忘れられていると思います。
 そんな中で、今回、2016年にもしも本当に東京でオリンピック・パラリンピックが開かれることができたら、どれだけすばらしいことが起こるかと期待しています。
 今、お金はもっと他に使ったほうがいい、反対だと言う人もおられるかもしれませんが、私は、今しらけている方を説得する自信があります。
 ですから、2016年の東京オリンピック・パラリンピックをどんなふうにみんなでしたら、日本が豊かで、幸せで、楽しい国になるのか、そういう方向を考えていったほうがいいと思っています。そういう意識で運動をすれば、他の都市に勝てるんじゃないかと思います。

○みの
 最大のライバルはやっぱりシカゴですか。

○玉木
 やっぱりシカゴだと思いますよ。マドリッドは、スペインの住宅バブルの崩壊でちょっとつらいですし、おまけにロンドンの後にまたヨーロッパはあり得ないです。
 リオデジャネイロは、2014年にワールドカップを開催しますから、その2年後に使うエネルギーがあるのかと、投票する人は少し信じられないのではないかなと思います。
 シカゴですから、都知事に外交力を発揮していただきたい。日本はこれからアメリカの国債を買うんでしょ。(笑)

○石原知事
 それは、僕はいろいろ問題があると思う。ヒラリー・クリントンが来日した理由も、日本にまた国債を買わせようとしてらしいけどね。アメリカの国債をこれ以上買う必要があるのかしらね。

○玉木
 でも、買ってあげたらシカゴは下りるんじゃないですか。(笑)

○石原知事
 そんな甘い相手じゃないです。

○みの
 ちょっと心配だよね。ゆうちょ銀行なんていうすごいものができてたくさんお金があるから、アメリカの国債を買いましょうかという話が出るかもしれないよ。

○魚住(進行役)
 買ってくださいと言われてしまうんですかね。

○みの
 国民のあずかり知らないところでそういう動きが起きたんじゃ、怖いですよね。
 でも、これからの社会経済を考えると、オリンピック開催のために多くの開発が必要なシカゴのような都市は無理だと思うね。

○森末
 そうだと思いますね。シカゴは、古い街で、昔のレンガ造りの街ですから、あれを壊したりすると、景観からしてもまた問題がありますからね。そうやって考えると、東京は前のオリンピックのときに使ったものをまた使うことができます。

○みの
 東京でつくらなきゃいけないものって、何ですか。

○石原知事
 メインスタジアムです。

○みの
 メインスタジアム以外はほとんど使えるわけでしょ。

○石原知事
 ほとんど使えます。

○みの
 各会場へのアクセスも便利だし。

○石原知事
 民主党なんかも、神宮の国立競技場を使ったらどうかと言うけど、それは無理です。トラックの数が10レーンなければいけないし、10万人入らなければいけないんですよ。その建物をつくろうと思うと、あの地域では物理的にできない。東京都は貯金を積み立ててつくろうと思っています。
 東京都は、人を減らし、給料もカットして財政再建してきました。国は野放図に国債を発行して、どうしようもなくなったから、今度は法律を変えて、東京の企業が払っている法人事業税の分割基準を勝手に変えて、今年と来年度で3,000億円ずつ東京都から持っていく。本当にひどいよ。儲かっている子どもの財布からお金を取り上げて、それで、スタジアムはつくれと。政府が財務保証はするといっても、財政で迷惑をかけることは絶対にありません。

○みの
 僕はそれがすごいと思うんです。シカゴは、道路から全部やり直さなきゃいけない。だから、オバマさんがどんなにがんばっても、今のアメリカの財政だと苦しいよね。
 だけど、東京の場合は、皆さんもご存じだと思いますが、東京湾を中心に千葉、埼玉、東京、神奈川が一つのエリアになっていて、つくらなければいけないものは何かといったらメインスタジアムだけです。

○玉木
 意外と知られていないんですけど、シドニーオリンピックやアテネオリンピックは、運営費だけを見ると黒字でした。シドニーで、運営の総予算が2,500億円から3,000億円ぐらいで、その中で270から280億円の黒字を出した。アテネも200億円ぐらいの黒字を出している。北京はまだ発表されていないと思いますが、北京はやったことも大きかったので、総予算額が約4,000億円。今度、東京は3,000億円ぐらいですけど、そういうものにかかる赤字はあまり心配することはないと思います。だから国も保証したのかなと思うんですけどね。
 それに、今度は、施設は一つだけメインスタジアムをつくる。1964年に造った施設が、この50年間でどれだけ利用されたかと考えると、これはすばらしいインフラストラクチャーだと思うんです。だから、今度のメインスタジアムは、やっぱりそれくらいのものをつくっていただきたいし、その費用は、決して、お金がないからマイナスだとか、そういう問題じゃないと私は思ってますね。

○みの
 今度の東京オリンピック・パラリンピックというのは、CO2の排出については、東京はものすごく少なくて抑えられるんじゃないですか。玉木さん。

○玉木
 そうですね。環境というものがスポーツのテーマになることはすばらしいことだと思うんですよ。
 オリンピックで行われるスポーツ競技が非常に面白いのは、人工の施設の中で自然そのものの体を動かすことによって自然を知ることです。これは、現代人がスポーツをやる原点みたいなものです。
 東京でやったオリンピックとパラリンピックが、これから未来に開催する都市のお手本になるような、そういうものができる可能性が非常に高いと思います。

○みの
 京都議定書にアメリカは反対してたけど、やっと賛成する。
 今度の東京オリンピック・パラリンピック開催でどのくらいCO2を排出するか計測すると、えっと思うくらい少なくて済むらしいです。
 乗り物全てにトヨタやホンダの技術を使えば、CO2の排出が限りなくゼロに近いオリンピックが実現するんじゃないでしょうか。
 東京というエリアは世界に冠たる大都市であるにもかかわらず、世界で一番CO2の排出量が少ない街になるかもしれないという計算が出ています。これはすごいと思うね。
 それで、メインスタジアムを一つつくればいいんでしょ。運営経費が3,000億円。

○玉木
 これに対して、IOC(国際オリンピック委員会)から、放送権料やその他様々な援助やチケットの販売収入があり、そこから選手の移動費などの経費を引いて、約3,000億円になります。

○みの
 3,000億円なんて大した金額じゃないじゃないですか。日本の国家予算は80兆円と言うけど、特別会計の二百何十兆円を入れたらすごい額じゃない。その中の3,000億円ですよ。だって、都知事はすごい銀行を持ってるでしょ。(笑)

○石原知事
 あれはやっと立ち直りましたからね。(笑)
 オリンピックなんかやってお金を使うよりも、教育とか福祉に使えと反対する人がいますが、オリンピックは、少なく見積もっても3兆円の経済効果があります。
 3月に3回目の東京マラソンをやりますが、今回は、参加者数を5,000人増やして3万5,000人に走ってもらいます。それを発表したら、1カ月のうちに26万人から応募があり、もっと参加者枠を増やすよう問い合わせがありました。これは本当にうれしい悲鳴でした。残念ながら、都の公園も含めてランナーや関係者を収容する場所に限りがあり、4万人まで増やすことができませんでした。
 運営についてですが、去年は、東京から持ち出したお金は2億から3億円で、残りは全部スポンサー企業やボランティアの方との協力で行いました。1日7時間道路を遮断するだけで、260億円の経済効果がありました。スポーツイベントには大きな経済効果があります。
 2016年開催の候補に残った4都市の中で、東京だけは都市としてICAP(国際炭素行動パートナーシップ)に入る資格を持ち、この3月に申請し加入する予定です。また、温室効果ガス総量削減義務と排出量取引制度の導入など、地球温暖化対策の抜本的強化をめざす条例をつくりました。環境面でも、東京は他都市に比べて優位な資格を持つことになります。

○森末
 治安や環境に加え、東京にはすばらしいIT技術があります。現在、マラソンなどの競技では、ICチップでスタートやゴールのタイミングを計測します。
 日本人は、コンピュータとかを使って、技術的にすごいものをやろうとしているんですけれど、オリンピックでは、体の限界まで走ったり、飛んだり、投げたりという一番原始的なことをやろうとしている。僕自身、そのギャップが面白く感じます。最先端の技術のもと人間が自らの体を使って活躍する、これがまさに日本ができる新しいオリンピック、パラリンピックだと思います。
 ロサンゼルスオリンピックで初めて運営が国主体から民間主体になり、選手村のそこらじゅうにコカコーラの自動販売機があり、全部ただで飲めました。その前までは、常に赤字で、国自体がやりたくないと言っていたものが、ロサンゼルス以降、派手なオリンピックになってきました。今、日本がやろうとしていることは、数段楽しくて、数段面白い、そして、感動できるオリンピックになると思ってます。

○みの
 ロサンゼルスオリンピックの時に飛行機から会場を空撮しました。一番ショックだったのは、プールの底にコカコーラのびんが描いてあったことです。そうか、オリンピック自体がとても変わったんだと驚きました。
 今、いろんな企業が参画するじゃない。昔は宣伝のために参画したらしい。ところが、今は、オリンピック・パラリンピックに、企業がいかに参画するかが企業のステータスになってきていて、企業の意識も大幅に変わってきている。2016年の東京オリンピック・パラリンピックは、後世に残る大会になるかもしれない。
 そのときは、これだけ音頭をとったんだから、石原さんが知事をやっていなかったらどうしようもない。

○石原知事
 生きてるかどうかわかんないよね。(笑)
 日本だからできる新しいオリンピック・パラリンピックということで、一人の科学者の方が提案してくれました。「石原さん、競技と競技の間は暇だろうから、ロボットを使ってやったらいい。」と。新記録が出たときに、エキシビションでロボットが三段跳びでも棒高跳びでも人間より高く飛んだら、それはちょっとまずいんじゃないかと思いお断りしたんですけどね(笑)。
 あとは、テリー伊藤さんが、人間と技術が一緒になるということで、どこかから鉄腕アトムが飛んできて、人間と一緒に聖火台に火を灯すのはどうだと言うから、それは悪くないとうっかり話したんですよ。そうしたら、日本のいくつかの企業が、うちがやりますと言ってきました(笑)。日本人はそういうところはなかなか情熱的です。

○みの
 成田さん、パラリンピックとオリンピックで活躍する選手が、同じ競技で、同じフィールドで競いたいという人もいるんですよね。同じ場所で、健常者とハンディキャップを持っている人間が競うという時代が、近いうちに来ると思います。

○成田
 オリンピックとパラリンピックの選手が一緒に泳げるかというと、水泳の場合はどうしても差が開いてしまうと思うんです。オリンピックの前にパラリンピックをやればいいと友達に言われたこともありますが、実際は難しいでしょうね。
 やはり一人一人の皆さんの身体障害者へのあるいは障害者スポーツへの知識が多くなれば、もっとパラリンピックという言葉が皆さんの中に浸透してくれるのではないかと思います。何かを造るということには全てお金がかかりますが、皆さんの意識を変えることにはお金は一円もかからないと思っています。皆さん一人一人の理解が、より住みやすい社会の大きな原動力になるのではないかと私は思っています。

○みの
 玉木さん、パラリンピックはオリンピックの3週間後に開催されますが、逆のケースも考えられるんですよね。

○玉木
 そうですね。

○みの
 しかも、競技によっては、オリンピックの中にパラリンピックを挟んでサンドイッチにしていくというアイデアを出す人も中にはいますよね。

○玉木
 大阪で開催された世界陸上などでも、必ず車椅子レースを入れなければいけないという規定がありました。これからはいろいろな方が一緒にできるスポーツが一般的になってくると思います。
 先ほど知事からロボットなどいろいろな話が出ましたけど、オリンピックには必ずアートエキシビションがあります。これは芸術祭とも芸術週間とも言われていますが、IOC憲章によって、芸術をやらなきゃいけないと決まっているんです。なぜかというと、古代のオリンピアのときから、美しいオリンポスに住む神々の肉体を目指すスポーツと、神々をたたえる芸術・芸能が一緒になったのものが文化だったからです。だから、前の東京オリンピックのときも、オリンピック記念歌舞伎とかオリンピック記念能とかを若干やった記録があります。今回はもっと大きく、アート面でもいろいろなことができるんじゃないでしょうか。やってほしいなと思います。
 一番モデルになるのは、シドニーでがんばった高橋尚子選手がマラソンで金メダルを取った時に映像に映っていたシェル型のオペラハウス、あそこでは毎日オペラや演劇、展示会、そして、アニメフェスティバルもやっていて、もののけ姫や鉄腕アトムもやっていたんです。ところが、世間ではそれもオリンピックだということが意外に知られていないんです。ですから、アートフェスティバルの充実ということもぜひともお願いしたいですね。

○石原知事
 今年の10月に招致都市が決まる直前にまたミシュランが来て、東京のレストランの星付けをやるんですけど、恐らく、今回は星をもらうレストランがもっと増えるでしょう。これは東京のいい宣伝になると思います。
 とにかく、東京は、どこに行って、何を食べてもおいしいですよ。

○魚住(進行役)
 知事、ここで、あらかじめ応募された都民の方からのご意見を伺いたいと思います。
 最初に、時数賢司様、お願いいたします。

○時数
 私は、1972年生まれで、45年前に開催された東京オリンピックを知らない世代です。今のお話をお聞きすると、前のオリンピックは経済発展だけではなく、日本人としての誇りとか自信といったものを残してくれたと思っています。
 今、世界経済がすごく不安定で、少子化問題、税金や年金などいろいろな問題があって、これで本当に若い世代が、子どもたちが、未来に向かって希望を持って歩んでいけるのかと不安に思うことがあります。オリンピックは、そういうことを超越して、夢や希望、感動、チャレンジする精神を与えてくれるものだと思っております。
 東京での開催は、日本にとっても非常にいいチャンスになるのではないかと思っています。それは、日本がこれから観光立国として、世界の方々が日本のよさを感じていただけるいい場になるのではないかと思っています。そして、国際交流が今よりもっと深かまり、世界や日本の技術・知識が相乗的に新たな産業や事業を生み出すのではないかと思っています。
 2016年の東京オリンピック・パラリンピックが、そうした未来の希望を、50年後の子どもたちに心の財産として残してあげられればいいのではないかと思っています。

○魚住(進行役)
 時数さん、ありがとうございます。
 確かに、次の世代に一つのメッセージとして伝える上で、オリンピックは非常に大きな役割がありますよね。

○みの
 やっぱりそういうものは必要だよね。だって、遺伝子が残っていくんだもの。
 東京オリンピックを見た、北京を見た、その思いがずっとつながっていくわけですよ。森末さんの遺伝子、成田さんの遺伝子がずうっとつながっていくわけです。
 森末さん、お子さんは体操で後を継ぐんですか。

○森末
 い、い、いいえ。(笑)

○みの
 もったいのよね、森末さんの遺伝子がね。

○魚住(進行役)
 そうですね。体操はされないんですか。

○森末
 体操やってもお金にならなかったですからね。(笑)

○魚住(進行役)
 2世代でオリンピックに出場なさっているという選手の方もいらっしゃいますね。

○森末
 体操では塚原さんのところもそうですし、結構います。

○みの
 でも、オリンピックに出てお金が儲からないなんて、うそでしょ。金メダルを取ると何億って入るんでしょ。

○森末
 昔はだめだったんです。

○石原知事
 松平さんという男子バレーの監督が、あのときは全くお金にならない。今は、メダルを取ればコマーシャルに出て、隔世の感だと慨嘆していましたよ。

○森末
 僕のときはゼロでしたよ。まず、国からのものは何もないし、オリンピック自体、アマチュア選手とプロ選手が区別されていたので、アマチュア選手がオリンピックで利益を得てはいけないことになっていました。

○みの
 アマチュア規定に抵触するということですね。

○森末
 はい。だから、今みたいに、企業が自分のところの選手をコマーシャルに使うようなこと自体もだめでしたから、芸能界に入るために体操協会を辞めたくらいです。

○魚住(進行役)
 そうでしたよね。あの当時は、辞めましたとおっしゃっていたから。

○森末
 辞めないと入れないような時代でした。

○みの
 やっぱり、こういう話を皆さんに聞いてほしいね、成田さん。

○成田
 パラリンピックで金メダルを取っても報奨金は一切ありませんでしたが、去年の北京で、金100万円、銀70万円、銅50万円という報奨金が出るようになりました。ただ、過去にさかのぼってはいただけません。(笑)
 それは大きな変化だと思いますが、そういう報奨金をもらうよりも、もっと、障害を持つ人たちがスポーツをしやすいような施設の整備にお金を費やして欲しいと思います。せっかく障害者が使えるスポーツセンターがあっても、そこに行くまでのアクセスが悪かったりします。また選手の境遇も、日本でも少しずつ変わってきていますが、まだまだ「パラ貧乏」という言葉があるように、世界選出権への参加には、自分たちでジャージをそろえ、自費で行くというのが現状です。そういう中で選手たちは、泳いだり、走ったり、競技を続けているということも、ぜひ一人でも多くの方に知ってもらいたいと思います。

○森末
 パラリンピックに限らず、オリンピックの僕のときもただで行ってないですからね。お金を払って行っているような時代で、先ほど言ったように、一切報奨金も何もない。

○みの
 厚生労働省、文部科学省、そういう分け方じゃなくて、東京オリンピック・パラリンピックでどんと一つの予算でやらないとだめだと思いますよ。

○森末
 はっきり言って、ロサンゼルスのときまで、政治家の方たちはオリンピック自体にあまり興味がなく、オリンピックに出たから何?、という感じでした。

○みの
 森末さん、日本もスポーツ省をつくったらいいじゃないですか。

○森末
 マラソンの宮原さんとか荻原君などが何かをやりたいということで、今、一生懸命活動されていますけれど。

○みの
 サッカーくじもいいけど、スポーツ省をつくればいい。

○玉木
 スポーツ省がいいのか、文部科学省の中でスポーツ局と芸術・芸能局にするのがいいのか。ただ、スポーツ省の問題になったりすると、面白いのは、体育とスポーツの線引きがわからなくなることです。だから、体育は文部科学省でいいはずです。高校野球は体育なのか、スポーツなのか、そういう認識を2016年の東京オリンピック・パラリンピックをきっかけにぜひとも広めてほしいです。今でも、お金が動いたりすることに対して、原点に戻ってアマチュアでやれというような声が聞こえるんですよ。
 ところが、アマチュアというのは、そもそも貴族などが肉体労働者を参加させないためにつくった差別思想です。毎日肉体を使っている人が肉体を使ってスポーツに参加するのは、プロだというところから始まったんです。クーベルタンは男爵で貴族ですから、お金に苦労しない人たちが差別で始めたんです。日本でも、まだアマチュアがいいと言う人は、そこを知らずに言ってしまうんですね。
 日本の場合は、明治時代にスポーツが入ってきて、帝国大学に伝わったわけで、言ってみれば、超エリートが受け入れたわけです。その超エリートたちがスポーツではなく体育として広めていったわけです。
 「体育の日」は英語で言うとsport and health dayです。「体育の日」だというので、みんなで反復横跳びなんかやって何が楽しいのか、僕は全然わからないんだけど。(笑)
 スポーツと体育がごちゃ混ぜになったところからの間違いがすごくありますね。オリンピック・パラリンピックをきっかけに、そこをぜひとも根本から変えてほしいと思います。

○森末
 お年寄りの方に、何かスポーツをされていますかと尋ねると、現在はウォーキングはスポーツとみなされているのに、していませんと答えますね。「スポーツ」というと、ある程度厳しいものをしなければいけないと考えてしまいます。体育とスポーツの差がすごくあるような気がします。

○みの
 なるほどね。
 よく言ってるよね、苦しいと思ったときに松岡修造を思い出してくださいと(笑)。元気が出ますと。そういうものなの?

○森末
 元気が出るのか能天気なのか、どっちか。(笑)

○魚住(進行役)
 松岡さんはすごく前向きなイメージがありますよね。いつも元気をもらってます。

○玉木
 みのさん、1964年の東京オリンピックで私が覚えているのは、陸上競技の800メートル女子のアン・バッカーという選手です。この方が金メダルを取ったんです。400メートルで2位でした。カスパードという選手に負けて、800メートルで1位になったら、ゴールインした後、止まらずまっすぐ走って行き、そのまま恋人に抱きついてキスしたんです。それを学校のテレビでみんなで見てたんですよ(笑)。そうしたら、先生が静かーに、昔のテレビの観音開きのふたを閉めたのね。(笑)
 でも、そのときに、「巨人の星」とかとは違う世界があるんだと、私なんかはつくづく気づきましたね。後からですが、ひょっとしてこれがスポーツなんだと思いました。

○魚住(進行役)
 どこまでモチベーションが保てるかわからないですものね。

○玉木
 そうです。だから、スポーツということを考え始めると、いろいろなことに広がります。政治、経済、宗教、人間の歴史、このスポーツというものを日本でわっと盛り上げるお祭りが来るとなったら、我々の意識がだいぶ変わると思うんですよね。

○みの
 そうですねぇ。そういう意味では、すごく大事な、これからのオリンピック・パラリンピック史上に残る大会にしないとね。

○魚住(進行役)
 そうですね。

○みの
 これだけオリンピック・パラリンピック開催の条件が備わっているのに、この機会を利用しない手はないと思いますよ。
 だから、東京がこうやってがんばるよ、千葉もよし、埼玉もよし、神奈川もよしとくるわけじゃないですか。日本という国が、よっしゃとなってどっかーんと動かないとね。

○玉木
 東京だけではなく、北海道から沖縄まで日本中に合宿に来ます。北京オリンピックのときも合宿に40カ国が来ました。

○魚住(進行役)
 続きまして、女性からご意見をちょうだいしたいと思います。
 金野たか子様、お願いいたします。

○金野
 私は1966年生まれで、東京オリンピックは後で映像で見ました。子どもの頃、父と毎朝マラソンをしたり、夏休みには、ラジオ体操に参加していました。それが当たり前でした。でも、今は、朝、ラジオ体操に行っても子どもはいなくて、お年寄りしかいないんです。体育祭や運動会では、みんなで一緒に参加して、みんなでゴールしようということで、一等になるとか、負けてくやしいとかいう気持ちがないんです。中学2年の娘に東京オリンピックについて聞いても、「東京オリンピックって何?、面倒くさい、なんでやるの」、そういう言葉しか返ってこないんです。感動とか、これが出来上がるから見に行こうとか、そうした気持ちがないんですね。
 東京オリンピック・パラリンピックが開催されれば、スポーツとは何か、体育とは何か、走って一等になることの楽しみ、障害をもった人が頑張っている姿を知ることができると思います。そして、今の子どもたちにわくわくした感動や大きな目標を持ち、日本をより良くしていってもらいたいと思っています。

○みの
 日本人の気持ちが一つになるときがあってもいいよね。

○魚住(進行役)
 そうですね。

○みの
 だって、森末さん、日本の選手が活躍するじゃない。そして、日の丸、君が代の中継の映像を見ていても、理屈なしにじーんときますよね。

○森末
 最近は、北島選手が日の丸をぐっと押さえたりする光景がありますが、僕らが選手の時代は、日本は島国で国境を越えたら違う国という感覚がなく、日の丸、君が代への意識は薄かったです。でも、現在は、君が代を聴いて、日の丸がメインポールに上がっているのを見たいし、聴きたいですね。

○成田
 私は、日本の代表選手として行くという意識をいつも持って臨んでいます。
 金メダルを取ったときに日の丸が上がっているとき、君が代を歌いながら、日本人として最高のことができたと感じます。
 選手たちにとってオリンピック・パラリンピックは最高の舞台ですが、その最高の舞台をつくりあげるのは選手だけでなく、大勢の人の関わり、それが財産として残るということを今回改めて知りました。今当たり前のように使っている新幹線や高速道路は前の東京オリンピックのおかげだったことから考えると、2016年の開催が実現すると、子どもたちに多くの財産を残してあげられるし、また現在社会が抱えている問題点を提起するいい機会になると思います。
 私の甥や姪が生まれたときから私はこの車椅子の姿で、当然、彼らは歩ける私を知らないわけですが、障害者という言葉を使うこともなく、私がどうしても無理というような急な坂道だったら普通に車椅子を押してくれます。実際、パラリンピックを見に来てくれて色々と感想を話してくれました。例えば、片足がない人が自分よりも速く泳いでいる姿を見たときに、「本当にすごいね」と。「私たちは手も足もあるのに、片足のない人よりも遅いよ」とか、あと、目が全く見えない人がものすごい勢いで速く泳ぐ姿とか、そういう姿を実際に見ると、「パラリンピックってこういうスポーツなんだね」と。自分にはあるけど、ない人のほうが速いとか、子どもなりに受けるショッキングなこと、それが多分、子どもたちにはいい刺激になるのではないかと思います。
 ですから、手がない、足がないなど、見た目にわかる障害ももちろんありますが、それを隠すことなくパラリンピックの選手は、それをスポーツとして臨んでいるので、私は、多くの人たちにできるだけ見てもらいたいと思います。

○魚住(進行役)
 さっきおっしゃっていただきましたけど、今のお子さんたちが、1番になってやろうとか、この会社に入るぞという意気込みがなくなってきているというのは、確かに残念なことではありますね。情熱といいますか。

○みの
 日本がどういうふうに教育方針を持っていくかという話はありますが、スポーツというものは、汗をかいて、肩で息をして、その後にくる心地いい疲労感、「あれっ?体が軽くなったな」という感覚は、だれもが共通して味わえるものだよね。だから、それを自分が体験して動かしてやるという面もあれば、見ることによって、応援することによって同じ空気が吸えるということもあってね。

○玉木
 その「だれもが味わえる」ということでスポーツが世界文化になったんですよね。だから、ベートーベンよりも、シェイクスピアよりも、マドンナよりも、マイケル・ジャクソンよりも、今、スポーツが世界に広がっているわけです。これはやはり同じ体というところで意識できるから。だからスポーツは国境を越えるというのは、本当に事実だと思います。
 ただ、先ほど、運動会で一緒にゴールしましょうとか、なぜそんなことになったのかと思いますけどね。運動会も、日本人がつくったすばらしい文化です。あそこでみんなでなぜお弁当をつくっていって食べるのかとか、全部意味があるんです。
 運動会というのは、やる場所もないときに、明治29年ごろに、運動会をやれと言われて、困って、みんなで一緒になってやり始めたんです。その一方で、自由民権運動の連中が、集会をしたら怒られるものだから運動会をやり始めたんです。その中でつくった新しい種目が「圧政棒倒し」とか「政権争奪騎馬戦」とか(笑)、そういう歴史が今残っているわけです。そういうことも少しずつ知ると、スポーツはものすごくおもしろいです。

○魚住(進行役)
 それでは、大学生の山田大輔さんからご意見を伺いたいと思います。

○山田
 私は、「スポーツイベントにおけるエコ対策」というテーマを研究しており、スポーツイベント参加者のエコ意識の現状と課題を明らかにすることにより、スポーツ愛好者に対してイベント参加時における具体的かつ有効なエコ意識の啓発などを提言したいと考えております。そして、スポーツ参加者、観戦者、主催者が一体となってエコ意識を持って行動すれば、環境にやさしいスポーツイベントを実現できると考えています。
 近年のオリンピック・パラリンピック招致においては、エコ対策が評価基準として設定され、「グリーン・オリンピック」というシドニーオリンピックのスローガンや北京オリンピックにおけるエコ対策など様々な事例があります。しかしながら、開催後、どのようにこのエコ対策が活用されているかよくわかりません。
 そこで質問ですが、今、注目されているスポーツと環境問題という面で、オリンピック開催中だけでなく、開催後にそのエコ対策が一般のスポーツ参加者に対してどのように生かされていくのかということをお聞きしたいと思います。

○石原知事
 エコロジーというものは、何もスポーツマンだけのためにあるわけではなくて、老若男女、その地域に生きている人のために、その地域の環境を整備するということは絶対必要だと思います。ただ、これは目に見えにくいものだからみんなわりと楽観的だけど、東京都は国に先んじていろいろなことをしてきましたし、首都圏の自治体はみんな協力してくれて、空気そのものがよくなったと思います。
 オリンピックを一つの目標にして環境の整備をしていますし、特に、今埋め立てている、皇居の大きさくらいある埋立地もそのまま森にします。その横に、緑に囲まれた大競技場もつくるわけですが、それはスポーツだけのために環境が重要なのではなくて、人間が生きていくために必要なことです。
 昨年、C40という、環境に対して危機感を抱く世界の大都市が東京で会議を開きました。集まった専門家たちは非常に悲観的で、現在の地球環境はポイント・オブ・ノーリターンを過ぎたと言っていました。それで済む問題ではないので、具体的な施策を13項目決めて、1年かけて、今年のソウルでの会議までにどこまでやったか報告をし合おうということになりました。
 私たちは、東京オリンピックを通じて子孫によい遺産を残したいと思っていますが、下手をすると、それまで地球はもちません。そこまで来ている。みんなは、まだ大丈夫だと思っているようですが、例えば、皆さんもこ存じでしょうが、北極海の氷はどんどん溶けて戻らない。NASAのハンセンという教授は、あと17年たったら完全に消えると言っています。これが消えると、溶けた氷が海にそそぎ、地球の自転の遠心力で赤道に水が集まります。私はこの間見てきましたが、ツバルという赤道直下の島は、もう半分以上沈んでいます。そういう事態がどんどん進んでいるわけです。これは本気になって取り組まないといけない。
 アメリカという超大国が引き金を引いたこの不況の中で、彼らが逆にいい意味で引き金を引いて、環境問題について考え直さないと世界がついていかないと思います。
 30年ぐらい前、ブラックホールを見つけたホーキングという学者の講演に行ったときに、ある人がこの宇宙に地球並みの文明を持った星がどれくらいありますかと言ったら、彼は200万と答えたのでみんなびっくりしました。では、なぜ宇宙人を見ることがないのかと質問すると、ホーキングは言下に、地球並みの文明を持った国は自然の循環が悪くなって、宇宙時間では瞬間的に消滅する、地球も長くないと言っていました。ある人がまた、宇宙時間で瞬間的というのは地球時間では何年くらいですかと質問したら、ホーキングは、100年だと言いました。あれから30年過ぎたので、70年しか残っていないことになります。
 何年か前にスイスのローヌ氷河を見に行きましたが、展望台からは氷河は見えませんでした。15キロぐらい上に行かないと氷河が残っていない。全部溶けて海に流れ、赤道周囲の島は埋没しつつあります。
 もう、来るところまで来たんですよ。環境問題はオリンピック・パラリンピックのためではなく、私たち人類のためです。今質問したような若い人たち、あるいは、皆さんのお子さん、お孫さんがこれから生きていくために、人間の存在の舞台であるこの地球を守るためにも、オリンピックに名乗りを上げた東京は、この機会に、東京はこれだけのことをしている、みんなでやろうじゃないかと呼びかけるきっかけにもしようと思って、がんばります。

○魚住(進行役)
 最後に、みのさん、本日の会に出席されていかがでしたか。

○みの
 ここにお集まりの皆さんは、知事の考えのもとに参集していると思います。2016年東京オリンピック・パラリンピックは、すごく大きなエポックな大会になることを祈っています。
 そのために僕ができるのは、テレビの中で言い続けることですので、ぜひ皆さんにも応援していただきたいと思います。

○魚住(進行役)
 本日は、森末さん、成田さん、玉木さん、そして都知事、どうもありがとうございました。
 そして、皆様とともにオリンピック・パラリンピックに対する熱い思いを共有するこができました。招致レースはこれからが正念場でございます。皆様のご協力のもと、招致レースに勝ち、2016年東京オリンピック・パラリンピックを実現したいと思います。
 本日は、お集まりいただきましてまことにありがとうございました。