平成24年9月19日
知事本局

発言内容

 9月14日、石原知事は、自由民主党総裁選挙の候補者に向け、公開質問状を出しましたが、このたび各候補者から回答を頂きましたので以下のとおり公開します。


尖閣諸島に関する公開質問状

自由民主党 総裁選挙候補者 殿

 四方を海に囲まれる我が国にとって、広大な排他的経済水域及び大陸棚の権益確保は死活的な意味を持ちます。伊豆諸島や小笠原諸島を擁する都は、沖ノ鳥島や南鳥島といった国境離島の利活用を図るなど、我が国のおよそ4割を占める排他的経済水域や大陸棚の保全に資する取組みを推し進めてきました。
 ひるがえって、国境離島のひとつ、尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も我が国の領土であることが明々白々であるにも関わらず、シナの覇権主義によって、その実効支配が脅かされています。国は、これまでの安易な事なかれ主義とは訣別し、尖閣諸島に具体的な手立てを講じ、国家としての強い意思を世界に示していくことが必要です。
 また、尖閣諸島は、固有種が生息するなど豊かな自然を有し、その水域には多くのエネルギー・鉱物資源の埋蔵が指摘され、東京を含めた我が国の海に豊かさをもたらす黒潮の源流域に近接するなどの特長を有しています。様々な可能性を秘めたこの島々を無為のまま荒廃させることは、我が国の国民生活や経済産業に重大な影響を及ぼします。
 こうした現状を憂い、都は、弱腰な態度に終始し不作為を決め込む国に代わり、この島々を購入し活用することを決断しました。この行動に対して、10万件を超える数多の都民・国民から、約15億円もの拠金が都に寄せられました。
 今般、民主党政権において島々が国有化されましたが、国有化にあたり、零細漁民のための船溜まりや無線中継基地、できれば有人の気象観測施設を設置することを強く求めました。しかし、民主党政権は、何を慮ってか、一切、これに耳を傾けようとしません。
いうまでもなく、国家の大眼目は、国民の生命・財産を守ることであり、領土の保全はその最たるものです。尖閣諸島を国有化しても、その保全策を講じないのであれば、到底、この責を果たしているとは言えません。
 先に述べたとおり、都は、10万件、15億円にものぼる都民・国民の志を預かっています。都民・国民の志に応える政権であれば、いつでもこれを託すつもりです。
 都民・国民の志を受けとめ、尖閣諸島に関する所見をつまびらかにしていただくよう、次の公開質問への回答を平成24年9月18日までにお示し願います。なお、回答は公開とさせていただきます。

平成24年9月14日
東京都知事
石原慎太郎

質問

1 尖閣諸島の現状認識について

  尖閣諸島の保全に対する、基本的認識を伺います。

2 尖閣諸島の実効支配について

  尖閣諸島において、ヤギの被害から貴重な動植物を守るなど自然環境の保全を図るとともに、零細漁民のための船溜まりや無線中継基地、できれば有人の気象観測施設などを設置するべきです。これは、地元石垣市からの強い要請でもあります。尖閣諸島における我が国の実効支配の強化のための具体的手立て及び手順について、所見を伺います。


【公開質問状への回答】

候補者名 「質問1」への回答 「質問2」への回答  
安倍晋三  尖閣諸島は我が国固有の領土であることは明白です。すでに自由民主党大平内閣当時の1979年、政府が11日間にわたって尖閣諸島の上陸調査を行い、様々な角度から調査活動を実施しています。
 日本の領土は断固たる決意で守ることは当然のことです。
 尖閣諸島の自然環境の保全を重視するとともに、当面、零細漁民のための船留まりの設置など、また実効支配を明確にするため公務員が常駐する施設設置なども検討します。 回答(37KB)
石破茂  尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、国際法的にも歴史的にも明白な事実であり、また我が国が現在に至るまで平穏かつ安定的な領有を続けてきたことも事実である。
 しかるに、昨今、我が国の総合的な抑止力の低下に伴い、中国や台湾はその不当な領有権の主張を譲ることなく、違法な調査や上陸などを繰り返すに至っており、我が国としても、もはや従前どおりの領有の方法では、国際的に我が国の領有の正当性を担保しえない状況になりつつあると認識している。
 ゆえにご指摘の通り、自然環境保護、持続可能な資源利用、漁業振興などの目的のための調査を粛々と進め、施設を設置し、尖閣諸島を我が国の責任において有効に活用しなければならないと考える。
 具体的には、まず地元漁業者からの要望の多い無線中継基地、船溜まりなどを設置し、安定的で安全な漁業活動を支援することが考えられる。その際、可能な限り有人化すべく、水・電気・ガスなどのインフラ整備を急ぐべきである。
 同時に、ヤギの被害状況を早急に調査し、センカクモグラなど固有の生態系を保護する適切な体制を整備する。
 中・長期的には、持続可能かつ適切な資源利用のための調査とそれを踏まえた資源開発、我が国公船も含めた船舶等の補給基地等の建設も視野に入れるべきである。
回答(53KB)
町村信孝  明治18年、日本政府が現地調査を行い、同28年現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行い、正式に日本の領土に編入したことは、国際法上認められていること。
 その後、明治29年、尖閣で事業展開していた古賀辰四郎氏に、30年間の無償貸与を行い、昭和7年、その子息に有償で払い下げられた。昭和15年、かつお節製造等の事業は中止されて、無人島になっているが、この経過は日本の有効支配を示すものと承知している。
 第2次大戦の敗戦後、昭和26年に締結されたサンフランシスコ講和条約において、米国の施政下に置くことが明記されたが、昭和47年の日米両国間の沖縄返還協定に伴い、返還された地域に尖閣諸島が含まれていることは明らかである。
 国家とは、主権・領土・政治的独立の統合体である。日本固有の領土を守るのは、国家として第一の責務と考える。
 尖閣諸島の地元・石垣市の強い要請(船溜まり・無線中継基地・有人気象観測施設等の建設)は良く理解できるところである。
 しかし、これら、点としての整備のみならず、面として、民主党政権によって失われてしまった感のある日米同盟の強化・信頼回復をはじめ、自衛隊・海上保安庁等の人員、装備、配置の法的・予算的強化を進めるべきである。
 尖閣諸島の国有化が表明されたことは、その第一歩と考える。
回答(75KB)
石原伸晃  尖閣諸島が国際法上も、歴史上も、わが国固有の領土であることは疑いのない事実です。日本政府として毅然とした対応方針の下、このことを内外に明確に示し、特に国際社会に向けてはっきりと主張することが必要です。
 民主党政権による、稚拙で、拙速な外交の結果、日中両国間の緊張が高まっていることは、両国にとっても、国際社会にとっても、決して望ましいことではありません。あらゆるパイプを通じて、両国間の意思疎通の円滑化を図り、一刻も早く、事態を鎮静化すべく努力する必要があります。
 国有化した以上、現状を単に維持することが正しいとは思いません。固有種である尖閣モグラなど野生動物、植物をヤギの被害等から守るために実態を調査し、自然環境の保全を図ること。さらには周辺海域の漁業資源や天然資源を調査すること。さらには、地元石垣の皆様が安全に操業するための、船溜まりや、無線基地、気象観測施設なども必要と考えます。
 ただし、それらのうち、どれを、どのような時期に、どのような方法で実施するかについては高度な政治判断が必要な事柄であり、まさに政治のトップが判断すべき事項です。
回答(80KB)
林芳正  尖閣諸島が我が国固有の領土であることは明白であり、国際法に則り我が国が現在に至るまで安定的な領有を続けてきている。本来であれば、今回の国有化の決定に当たって、実効支配を強化する方策も同時に実施すべきであったと考えている。(※)  海上保安庁の大型船艇を恒常的に展開するため、人員、装備を整え、大胆な予算措置を講ずべきであり、また日本人漁業者のための無線中継基地、有人の気象観測施設など、地元石垣市の要望を真摯に受け止め、検討していきたいと考えている。(※) 回答(30KB)

(※)9月20日付けで再回答を頂いたため、21日に回答内容を変更しました。
(注)立候補届出順に掲載。敬称略。

一覧表(PDF形式:146KB)

※なお、平成24年9月26日、自由民主党総裁選挙が行われ、安倍晋三氏が新総裁に決まりました。