知事の部屋

 
猪瀬都知事「知事の部屋」
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平成25年2月20日更新

平成25年第一回都議会定例会知事施政方針表明

 平成25年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 去る11月10日、名誉都民である森光子さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

1 都政運営に対する基本方針

(はじめに)

 東京都知事に就任してから、2か月余りが過ぎました。この間、東京と日本が直面している様々な問題について、予算の査定や各局からの報告の場で職員とも中身の濃い議論を重ねてまいりました。「日本の沈没を防ぐのは東京にしかできない」ということを改めて強く確信し、今、その重責に身が引き締まる思いであります。
 選挙を通じ、さらには就任後も様々な機会を通じて強く感じてきたのは、都民の皆様の思い、単に「現状を変えて欲しい」というだけでなく「改革のスピードを加速させて欲しい」という願いであります。
 私は、その期待に応えるべく、「事実に基づいて決断し、何としてもやり遂げる」という「意志の情熱」で改革を断行し、東京からこの国の将来を切り拓いていく覚悟であります。
 申し上げるまでもなく、都政は、執行機関である知事と議決機関である議会の二元代表制であります。私は、都議会の皆様の意見に真摯に耳を傾け、建設的な議論を交わしてまいります。そのことが、東京をさらに高いレベルへと引き上げることになると確信しております。

 本定例会は、私にとっては、知事として臨む初めての都議会であります。個別の政策展開を述べる前に、まずは、私の都政運営に対する基本方針について申し述べたいと思います。

(日本の近代)

 今の日本が置かれている状況、その中で東京が何を為すべきかを正しく認識するためには、まず、日本の近代からの歴史、その中で東京がいかに発展してきたのかということを理解する必要があります。
 150年前、明治維新を経て、我が国は近代国家への道を歩み始めました。ヨーロッパ植民地主義の弱肉強食の論理がアジアを席巻する中で、伊藤博文が憲法制定のためにヨーロッパに渡りました。そこで、ウィーン大学のシュタイン博士から助言を得て、当時の我が国の成熟度を勘案し、議会の権限を絞り、中央官僚による国家統制を軸にした大日本帝国憲法をつくりあげました。そして、議会制民主主義を段々と根付かせながら富国強兵を進め、日清戦争、日露戦争に勝利し、不平等条約を改正して、欧米列強と対等な近代国家をつくりあげたのです。
 近代国家へのキャッチアップという目標を一応達成した日本は、目標を見失いながらも、国民国家としての道を歩み始めました。大正デモクラシーの時代です。東京には地方から人が集まり、田んぼの中を通っていた山手線に私鉄が接続することで、ターミナルステーションができ、デパートができました。そして、沿線にたくさんの住宅が生まれ、人口を吸収して、私鉄が不動産業のビジネスモデルをつくりあげたのです。沿線の農地が住宅に変わったとき、サラリーマンという職業と、通勤というライフスタイルが生まれ、「大衆」というものが生まれました。東京は郊外へと膨張・発展を遂げて、人々は大正のモダニズムを謳歌したのです。
 しかし、我が国は国民国家に生まれ変わることはできませんでした。政党が官僚機構を制御するという、近代の政党政治を確立しようとした総理大臣・原敬が暗殺されたのです。さらに我が国は、ヨーロッパ諸国とは違って、第一次世界大戦という人類最初の総力戦、殲滅戦を実質的に経験することもありませんでした。この2つの「近代日本の挫折」が重なり合う中で、原敬の暗殺以降は短命内閣が続き、決められない無責任体制の政治は、軍部と官僚をコントロールできないまま、300万人もの国民が犠牲になった第二次世界大戦へと突入していきました。官僚主権を抜け出せないまま、日本は近代の終焉を迎えたのです。
 戦後は、ソニーやホンダという企業も生まれ、新しい創業者の時代となりました。高度経済成長、1964年の東京オリンピックを経験し、再びの「坂の上の雲」を目指してバブルまで走ってきました。しかし、バブル崩壊後の「失われた20年」の間、小泉政権の5年5か月を除いて、首相は平均1年で交代し、我が国は迷路に入りこんでいきました。「戦後日本の挫折」です。政治の混迷は、戦前の原内閣以降と酷似した現象であり、こうした状況では、政治が官僚をコントロールできようはずもありません。戦前は天皇主権、戦後は国民主権というのが教科書の歴史ですが、その実は、戦前も戦後も一貫して官僚主権であります。さらに東日本大震災という大災害にも見舞われたこの国は、大海原の中で羅針盤を失ったまま漂っているのです。

(私が知事として目指すもの)

 私は、こうした歴史の軸を心に構えて、「官僚主権に埋もれた力を見つけ出し、それを伸ばすことこそが日本を沈没から救う」という「思想」で首都の舵取りを担う決意をいたしました。
 東京は、日本の心臓であります。日本を支え、変えていくためには、東京自体が力強く鼓動して、新鮮な血液を全国へと送り出さなければなりません。私は、人間社会の現実に向き合い、エビデンスを提示しながら、作品を結論に導く「責任をとる文学」ということを信念に作家活動を続けてきました。その責任感で道路公団改革に取り組み、政府の地方分権改革推進委員、そして東京都の副知事としての仕事もしてまいりました。作家として培った力、発想力も駆使して、東京の生きた現場から霞ヶ関の壁を打ち破り、「東京モデル」とも呼ぶべき新しい政策を展開することで、日本全体に「改革のうねり」を巻き起こしてまいります。
 改革の先にある社会の姿は「一人ひとりが輝く社会」であります。時代遅れの規制や既得権益に封じられていたものを解き放つことで、新しい価値と富が創造され、それが社会の連帯を支え、さらに強固なものにしていく。そういう社会を築き上げていきます。人々や企業が自分の個性と才覚を最大限発揮できる環境を整え、強い人が弱い人を助け、余裕のある人が余裕のない人を助け、若者と高齢者が知恵と情報を伝え合う、そうした「絆」を張り巡らせることで、東京を世界一の都市へと押し上げてまいります。
 それを実現するため、先般、「2020年の東京へのアクションプログラム2013」を策定いたしました。これまでの都政の方向を継承しつつ、私が選挙で都民の皆様に約束したことについて、政策展開の方向性を示し、直ちに取組が可能なものを具体化しました。これにより改革をスピードアップするだけでなく、実行する過程で新たに生じた問題に対しても機敏に対応することで、改革をさらにブラッシュアップしてまいります。

2 平成25年度予算案等

 私が、知事として初めて手がけた平成25年度予算案は、スピード、先駆性、健全性、その3つを備えた「攻めの予算」として編成したものであります。国を動かし、民間活力を引き出しながら、新たな東京モデルを発信する先駆的な取組や、都民の安全・安心を守る取組に財源を重点投入することにしました。事業評価を通じて230億円の財源を捻出し、現場の持つ強みを活かして知恵を出し合いながら、費用対効果の高い施策を練り上げました。また、福祉と保健の分野には、初めて1兆円を超える予算をつけました。
 一方、政策展開を支える都税収入は、増加に転じたものの、依然としてリーマンショック直後の水準にとどまっており、今後に備えて、中長期的な視点から財政基盤の強化を図ることにいたしました。家計で言えば借金にあたる都債の発行を今年度より1割、450億円減らし、貯金にあたる基金残高は370億円増やします。これにより、基金残高については、手つかずのまま残している東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金4000億円を含めて、8700億円を確保いたしました。都は、これからも自己改革を弛みなく進め、積極的な政策展開とそれを支える財政基盤の強化を両立してまいります。
 なお、来年度予算と併せて、都民・国民の皆様から寄せられた志を、国による尖閣諸島活用の取組に繋げるため、基金を設置する費用などを盛り込んだ平成24年度の補正予算案を提案しております。よろしくご審議のほどお願いいたします。

3 東京を世界一の都市に押し上げる政策展開

 東京を世界一への都市として押し上げるための政策展開について申し上げます。

(災害への備えを確実に講じる)

 世界の人口の半数が都市に集中する「都市の世紀」にあって、災害に強い都市を築くことは、世界をリードする東京の使命です。

〈木造住宅密集地域の不燃化〉
 東京の急速な発展の中で生まれ、今日、防災上の最大の弱点となった木造住宅密集地域の不燃化は待ったなしであります。意欲ある地元区と連携して、不燃化特区の指定を現在の12地区から50地区に大幅に拡大してまいります。
 不燃化特区では、税制優遇や補助など様々な支援メニューを展開します。整備を進める上でネックとなっていた古い空き家の除却を後押しし、新しい住宅の設計費用も助成します。また、延焼を遮断する役割を持つ地域の道路の整備も進め、燃え広がらない街づくりを進めてまいります。

〈地域の防災力を高める〉
 大震災が起これば、行政による公助だけで対応することはできません。一人でも多くの方の命を救うべく、地域の自主的な防災の取組を後押ししてまいります。東京水道と東京消防が連携して、応急給水用の設備を初期消火にも活用できるようにします。応急時の給水に使用するスタンドパイプと仮設給水栓、消防用ノズルを地域に配布し、地元消防署と水道局が地域住民の方の訓練を実地で指導します。近隣の方には訓練の様子を見ていただくことも、防災意識の向上に繋がります。組織に横串を通し、現場でそれぞれが得意分野を活かして、地域の自助・共助の取組を拡げていきます。
 将来を見据えて、地域防災の担い手も育成してまいります。小中学生が参加し、地域での防災訓練や社会奉仕の活動をしている都内の消防少年団は、3000人の団員がいますが、今後、毎年1000人ずつ増やして、3か年で2倍の6000人にします。また、今年度から全ての都立高校で行うことにした一泊二日の宿泊防災訓練を続けます。来年度は、地域の町会・自治会などと連携して、避難所の運営も経験させるなど、より実践的な訓練を実施することで、子供たちの「共助」の意識を高めてまいります。

〈帰宅困難者対策〉
 大震災は、大都市における帰宅困難者の問題を浮き彫りにしました。帰宅困難者対策は「自助・共助・公助」の適切な組み合わせなくして、対応できない課題であります。昨年成立した「帰宅困難者対策条例」がこの4月から施行されます。民間の事業者にも、それぞれの従業員のために水と食料などを3日分備蓄するよう義務付けております。
 事業者の皆様、さらに備蓄の1割の上乗せをお願いいたします。
 この1割というのは、観光・ビジネス・ショッピングなど、災害発生時に街に出ている人たちのためのものです。互いに助け合う「共助」の都市をつくっていくきっかけにもなります。東京都も、民間の一時滞在施設を拡充するため、備蓄品の購入を支援する補助制度を創設いたします。

〈ヘリサインの整備〉
 災害発生時に地上が混乱する中で、ヘリコプターによる空からの救出・救援活動が極めて有効であるのは、気仙沼の公民館から幼児を含む446人の人々を救出した例からも明らかであります。しかし、一刻を争う事態の中で、救出に向かうヘリコプターが自らの飛行位置を確認し、どの建物に被災者が取り残されているのかが上空からすぐ分からなければ、十分な活動はできないんです。そこで、学校や病院などの屋上に目印となるヘリサイン、それを整備します。現在800か所しかありませんが、3か年で1600か所へと倍増させます。九都県市でもこの取組を促し、首都圏全体で展開することで、国も動かしていきます。

〈津波・高潮対策〉
 臨海部や区部東部ゼロメートル地帯での、津波・高潮対策も進めていきます。水門などの施設について耐震性・耐水性の総点検を実施し、昨年末に、整備が必要な箇所と目標年次を明示した計画を策定して、すぐ具体の取組を開始いたしました。2020年までに、水門とその外側にある堤防・防潮堤、下水道のポンプ所の対策を全て完了させ、東京を水害から守っていきます。

 こうした首都の防災力向上のためには財源が必要です。国は道理もなく奪った法人事業税を東京に返すべきであります。暫定措置の確実な撤廃に向け、都議会の皆様の一層のお力添えをお願いいたします。

(生活の安全・安心を高める)

〈高齢社会への備え〉
 日本では、世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進んでいます。
 高齢者の方が、人との繋がりを持ち、生き生きと暮らしながら、必要なときに必要な支援を受けられる、こうした仕組みを築かなければなりません。東京都では4年前に、「住宅」か「施設」かという行政の縦割りを突破して「ケア付きすまい」という新しいモデルを打ち立てました。このモデルを国に示して巻き込みながら、4年間で4千5百戸整備してまいりました。しかし、まだ不足しています。利用者の所得水準にも配慮した都市型軽費老人ホームについても、なかなか整備が進まない現状があります。そこで、地元区市町村と連携して、期間を限定した追加の支援策を実施し、ケア付きすまいは2年後に1万戸、老人ホームは4年後に2千4百人分を目指して、整備を加速いたします。このケア付きすまいを大幅に増やす都の政策は、民間資金の投資のインセンティブにもなると思います。実際になっています。行政だけでなく、みんなが力を発揮することで、高齢者の住まいを確保してまいります。
 認知症は、年齢を重ねる上での大きな不安です。しかし、早期に発見し治療を開始すれば進行を遅らせたり、病状を軽くしたりすることができます。このため、地域の力を活かした新たなシステムを構築します。地域の高齢者の見守り活動に加えて、区市町村に認知症コーディネーターを配置し、かかりつけの医師と連携して、認知症の疑いのある高齢者を訪問するなど病気の早期発見を進めます。また、医師・看護師・精神保健福祉士によるチームが、疑いのある方を直接訪問し、治療の開始に結びつけます。病気の疑いを家庭で判別するためのチェックシートも開発します。
 具体的な政策をきめ細かく展開することで、一人ひとりが輝きながら年を重ねていくことができる東京をつくってまいります。

〈子育ての不安を解消する〉
 子供を産み育てることの不安も払拭していかなければなりません。
 周産期医療については、副知事時代にNICU(新生児集中治療管理室)の診療報酬の改善、補助の拡充を国に実現させたことで、着実に整備が進んでおります。平成26年度末までに予定どおり320床を整備します。かつては、200床しかありませんでした。
 小児医療においても、重篤な小児患者の命を救う「こども救命センター」に退院支援コーディネーターを新たに設置します。空き病床を確保することで、緊急時に一人でも多くの命が救われるようにするとともに、入院した子供が一日も早く自宅に戻れるようサポートしてまいります。
 国による全国一律の基準という概念を突破して生まれた「認証保育所」は、年々整備が進み、今や2万2千人分の保育ニーズに応えるまでになりました。しかし、頑迷な国は未だ認証保育所を制度として認めておりません。国は、というのは厚生労働省ですが、制度として正式に位置づけて、財政支援を拡充するよう要求してまいります。さらに、都は全国に先駆け、保育ママと保育所の中間にある6人から19人の子供を預かる小規模保育についても、開設資金を全額補助するなどの支援策を開始いたします。6人から19人のところが隙間になっている。この制度の隙間を埋めるため、「東京スマート保育」と、こういうふうに保育所の名前を定めまして、愛称ですけれども、略称「スマ保」というふうにして、待機児童を確実に減らしていきます。覚えやすい方がいいんです。

〈都市生活の安全を確保する〉
 自転車を原因とする交通事故は社会問題になっており、放置自転車は、都市の景観にも悪い影響を及ぼしています。本定例会には、ルールを守った自転車利用を目指し、「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を提案しております。この条例によって、学校・家庭・企業での自転車の安全教育を推進いたします。公道を走る目的でブレーキのない自転車を販売することを禁止し、従業員の自転車通勤を認めている会社には駐輪場の確保を義務付けます。放置自転車対策では、既にこれをビジネスチャンスと捉える企業の先駆的な動きも現れており、こうした民間の力をさらに引き出しながら対策を進めます。

 麻薬や覚せい剤などと分子構造を少し変え、巧みに規制を逃れている「脱法ドラッグ対策」も進めます。今般、海外でしか確認されていないドラッグを分析し、国内に持ち込まれる前の段階でも都が独自に条例に基づく指定をすることで、販売を規制することにいたしました。海外でしか確認していないドラッグを条例で規制するのは、全国で初めてのことであります。東京が先陣を切ることで、国に早期の法指定を促しながら、危険な薬物の流通を阻止してまいります。

(都市の機能性を高める)

 日本が、世界との激しい国際競争に打ち勝つためには、首都の都市機能の強化を図っていかなければなりません。

〈地下鉄の一元化〉
 まず、地下鉄の一元化について申し上げます。首都の旺盛な活動を支える地下鉄は、高度経済成長期に整備を急いだ歴史的経緯もあり、本来、一つであるはずのものが、東京メトロと都営交通という二つの事業者によって、建設・運営されてまいりました。しかし、地下鉄のネットワークが成熟段階に入った今こそ、本来の姿に立ち返り、利用者利便の向上を図る必要があります。
 先般、国土交通大臣に面会し、いわゆる「メトロ法」について、東京都の株式売却を義務付けた規定の削除を要請するとともに、国が保有する株式の都への譲渡を求めました。その場で東京都、それから国土交通省の鉄道局と財務省の理財局、そして、東京メトロ、これらからなる協議を再開することに合意いたしました。東京都が株を所有することで、責任を持って、経営の一元化を実現していきたいと、こう思っています。
 経営一元化への一里塚であるサービスの一体化も進めていきます。来月には、同じホームを都営とメトロで隔てていた九段下の壁、これが取り払われます。これを僕は「バカの壁」だと言っていますが、それが取り払われる。そして、都営の岩本町駅とメトロの秋葉原駅の乗り継ぎについては、新たに割引の対象に加えます。都営とメトロのお互いの改札を自由に通ることで目的地に近い出口を利用できるようになる改札通過サービスも市ヶ谷駅や春日駅・後楽園駅で実施いたします。
 また、3月末には、都内の地下鉄全線でメールが使えるようになります。これは、単なるサービスの向上にとどまらず、チリの岩盤事故のように、災害などで地下に閉じこめられた際の有力な通信手段になります。さらに、ホームからの転落を防ぐホームドアも、6月には都営大江戸線全駅で設置を完了いたします。

〈羽田空港の機能強化〉
 日本と世界の結節点である空港は、我々の未来を運命づける重要な都市インフラであります。
 副知事時代から取り組んできた羽田空港の国際化の問題については、来年度中に、国際線の発着枠が9万回にまで拡大されます。この機会を捉え、昼間の時間帯に、羽田と、欧米やアジアの主要都市を結ぶ長距離便の運航を目指します。
しかし、発着枠が増えてもなお、首都圏の空港容量は、あと10年で満杯になります。日本の国際競争力強化のため、さらなる空港容量の拡大・国際線の増枠を国に強く要求してまいります。

〈都市の機能を最大限活かす道路ネットワーク〉
 都市機能を最大限活かすべく、道路ネットワークの整備も進めてまいります。
 これから3年間で、三環状道路の整備率は85%に達します。外環道の関越・東名高速の間については、2020年早期に確実に完成させるよう、国に要求してまいります。残された外環道の東名以南についても、羽田空港や京浜港を結び、首都圏の高速道路ネットワーク機能を最大限に発揮させるには、欠くことのできない路線です。今後、国や関係機関との協議会を立ち上げ、具体的な検討を進めていきます。
 都心部と臨海部を結ぶ環状2号線は、来年度、新橋・虎ノ門間が開通いたします。平成27年度の全線開通に向けて整備を進めてまいります。

〈都市インフラの老朽化対策〉
 一方で、開通から50年が経過した首都高速は老朽化が進んでおります。1号羽田線や都心環状線などは、造り直しが必要とされる区間すら抱えております。首都の屋台骨を支える基幹インフラであり、将来にわたって、その機能を維持していかなければなりません。
 国や高速道路会社に対しては、老朽化対策に向けた一層の取組を求めてまいります。三環状道路の整備を進めていくことで車の流れを変え、都心の交通量を減らし、首都高速の維持更新がしやすい環境を整えていきます。
 もう一つ重要なことは、三環状道路が整備されても、現在の料金体系のままでは、都心方面に向かった方が外側の環状道路を利用するよりも安上がりであり、都心の通過交通を減らす効果は十分に発揮されないことがあります。交通量が適切に分散され整備効果を最大限発揮させるような料金体系の構築を、国や高速道路会社に求めてまいります。
 都が有するインフラの老朽化対策も進めてまいります。都は全国に先駆け、橋梁などに予防保全型の管理手法を導入し、適切に維持管理することで、長寿命化を図りながら、計画的な更新を進めております。さらに、高度経済成長期以降に集中的に整備し、大量更新期を迎えることになる下水道管についても対策を強化いたします。古い下水道管を生かしながらリニューアルする独自の工法を使ってコストを抑え、来年度から更新のペースを2倍にスピードアップします。築地市場の老朽化に伴う豊洲への移転については、土壌汚染対策に万全を期すため、開場を1年遅らせ、平成27年度の開場に計画を変更いたします。

(東京のエネルギー戦略)

〈都が率先する電力システム改革〉
 次に、エネルギー政策について、申し上げます。
 東日本大震災によって、これまでの地域独占的な日本の電力システムの矛盾が露呈しました。東京都は、市場における新電力のシェアを3割にするという具体的な目標を掲げながら、独自の取組を進めてまいります。
 行政として全国で初めて電力の複数契約を始めました。一日を通じて常に使用するベースとなる部分は東京電力と契約し、昼間の需要に対応する変動部分については、新電力と契約することで、新電力の育成を図ってまいります。先月の都立中央図書館を皮切りに、今月からは東京武道館にも複数契約を導入しました。その結果、その施設は電気料金もそれぞれ1割安くなりました。東京電力のみに売却してきた奥多摩の都営水力発電所で生み出す電力については、売却先を初めて公募いたしました。新電力などから価格の提案を受け、来月には売却先を決定いたします。東京電力に安く売っていたんですけれども、新電力に購入のチャンスを与え、そして、東京都側の売買価格も高くなる。こういうことになります。また、災害時のリスク分散にも繋げるべく、昨年末から、これまで東京電力と契約してきた都庁舎、この都庁の建物、その電気の大体3分の1、3000キロワット分を、近隣にある、あのパークハイアットホテルの地下なんですが、地域冷暖房センターで発電した電力に切り替えました。これにより電気料金は年間800万円下がります。
 こうした一連のリアルな取組を呼び水にすることで、電力会社の独占体制に風穴をあけていきたいというふうに思っています。
 東京電力自体の改革も進めてまいります。現在、東電の改革本部と東京都側と両者で定期会合を持ちまして、改革の進捗をチェックしています。改革本部と定期会合を持つということは、どこかに報告しなければいけないんです、改革本部は。「東京都がいるぞ。うるさいよ」ということを常に、その改革本部と定期会合することで、改革本部がまさに東電の中で改革できるように、後押しする。あるいは、強く改革の中身をチェックする、ということになります。昨年は東電病院の売却方針や、高コストに繋がる子会社との随意契約の見直しを決めさせるなど、まず当たり前の合理化を行わせました。
 今後は、会社自体の構造的、戦略的な改革に踏み込む次のステージに入ります。電力システム改革に先鞭をつけるため、東電社内に競争原理を取り入れる社内カンパニー制の導入を確実に進めさせてまいります。
 さらに、首都圏には、稼働から40年以上経過した東京電力の老朽火力発電所が1000万キロワットあります。そこに35年以上のものを加えると、合わせて1660万キロワット、東京湾に老朽火力発電所があります。それらは、いつ壊れてもおかしくない状態です。東京都は、そういう老朽火力発電所のリプレースのために、既に環境アセスメントの短縮など国に具体的な提案を行ってきました。電力安定供給に支障が生じないよう、国と東京電力を動かし、リプレースを確実に、着実に進めさせていきたい、そう思っています。

〈環境・エネルギー都市の構築〉
 電力制度改革を進めると同時に、家庭や企業でも自ら電気を生み出し、賢く使っていく都市をつくる必要があります。そのための鍵は「見えないものを見えるようにする」ということであります。
 自分で、ちょうど東日本大震災の1年前に太陽光パネルを導入しているユーザーでありますが、実際に付けてみて、カラーモニターを覗くと3つの数字が出てきます。それは発電量、消費量、そして、その差。その差を見れば、今、電気を売っているのか、買っているのか、一目瞭然です。これが省エネ意欲に繋がるのです。
 自然エネルギーの普及を図るためにも、都は「見える化」というのを進めています。来年度、国内初となる「ソーラー屋根台帳(仮称)」、ソーラー屋根台帳という、東京都の屋根の発電できる可能性について、マップを作る。それを公表します。これにより自宅や会社が太陽光発電に適しているかどうか、目で見て分かる情報を提供いたします。さらに、建物の中にある電気設備や家電製品などを効率的に制御して、電力の使用状況を「見える」ようにすることで、省エネとピークカットを促す仕組みの導入も進めます。この仕組みの導入に併せて家庭用蓄電池や燃料電池の設置なども支援してまいります。

 以上述べたように、電力・エネルギーに関する取組は多岐にわたっており、これを一元的・総合的に進めていくために、環境局の中にエネルギーに関する専管組織を立ち上げ、取組を加速させてまいります。

(東京が持つ可能性を最大限伸ばす)

 東京が日本再生の起点となるためには、多彩な人材や企業といった、東京が本来持ちながら埋もれていた力を引き出していかなければなりません。

〈中小企業の海外展開〉
 中小企業の現場で鍛えた発想を海外の市場で通用させ、取引先を拡げていくことは、日本の産業の新たな展望を拓くことに繋がります。
 その場合、重要なのは、知的財産の保護であります。そこで、外国特許や意匠・商標の出願費用に加え、迅速な権利保護が可能となるよう、実用新案の出願にも新たな助成を始めます。
 EUで定める安全規格の「CEマーク」のように、世界各地域には製品に対する様々な基準や規格がありまして、いかに優れた製品であっても、こうしたものに適合させなければ、海外で取引することはできません。そこで、昨年10月、都立産業技術研究センター内に埼玉、千葉、神奈川、長野の4県の試験研究機関と共同で「広域首都圏輸出製品技術支援センター」を開設しました。海外の規制や規格に関するきめ細かな情報提供を行うほか、評価試験や設計のサポートを行ってまいります。
 さらに来年度から、海外規格に適合させるための製品改良や認証取得への助成も開始し、支援を強化いたします。

 なお、来月末の中小企業金融円滑化法の終了に対しては、都としても、制度融資の充実や特別相談の実施などにより、中小企業の経営をしっかりと支えてまいります。

〈上下水道の国際展開〉
 都庁自身が持つ卓越した技術を武器に国際展開を図ることで、日本の産業力強化に繋げる「東京モデル」は、具体的な成果を上げようとしています。
 漏水率わずか3%という東京水道の持つ技術力は世界一です。一昨年、漏水率が東京の10倍・30%もあるタイで、試験的に東京の技術を導入したところ、導入地区の漏水率が東京と同じ3%まで低下しました。これが大変評価され、このたび、東京水道がタイの首都・バンコクで漏水防止のパイロット事業を行うことになりました。併せて、タイ首都圏水道公社からの要請により、人材育成も強化してまいります。
 また、下水道の分野でも、先進的・具体的な技術で海外に進出しております。都が民間企業と共同で開発し特許を取得した河川へのゴミ流出を防ぐ装置は、既にドイツや韓国の企業とライセンス契約を締結しております。さらに、昨年末には震災時の液状化によるマンホールの浮上を抑制する工法でニュージーランドに進出いたしました。
 今後も、東京の企業だけでなくて、東京都自身が持っているお宝、そういう技術、優秀な技術を広め、日本経済の活性化を図りながら、海外が抱える問題の解決にも積極的に貢献してまいります。

〈雇用・就業支援〉
 仕事は、人々が持てる能力を発揮して輝くための重要な手段です。意欲ある若者が活躍の場を見出せるよう、実際の就労体験を通じた中小企業とのマッチングを進める「若年者緊急就職サポート事業」を展開してまいります。また、出産や育児などで離職した女性の再就職を支援するため保育サービス付きの職業訓練を実施します。働く意欲のある元気な高齢者を対象とした就職支援にも取り組むことで、東京の眠れる力を呼び起こし、産業の発展にも繋げてまいります。
 こうした施策の効果を最大限発揮するためには、職業訓練、職業紹介、実際の就職というふうな流れが一体となった雇用施策を展開することが不可欠であります。国のハローワークが持つ職業紹介機能の移管に向け、作戦を立て、戦略的に取り組んでまいります。

〈「言葉の力」再生プロジェクト〉
 私は、作家であり、日本の未来を切り拓く鍵は「言葉の力」であると確信しています。「言葉の力」を高めるためには、まず多くの本を読む必要があります。一冊の本を読むことは、2〜3時間かけて、他者の述べていることに耳を傾けることと同じです。相手の主張を的確に把握した上で、自分の意見を述べる訓練を積むことが「言葉の力」を養うことに繋がるのです。
 今年度の知的書評合戦「ビブリオバトル」は、参加人数・参加大学がその前の年と比べ3倍に増え、全国規模の大会へと成長いたしました。今年度から始めた高校生の大会も、来年度から大幅に規模を拡大いたします。都立高校は、全校が参加することにしたほか、私立高校や近隣県の学校にも参加を呼びかけ、「高校生書評合戦首都大会(仮称)」を実施します。また、子供の思考力・判断力・表現力を育むため、小中学校も含めて、現在130校指定している言語能力向上推進校を約200校に拡大いたします。

〈世界に羽ばたく若者を応援する〉
 若者たちの挑戦も後押ししてまいります。今年度から都立高校生を選抜して、次世代のリーダー候補として海外に留学することを支援する仕組みを構築しております。その第一陣の50人が、先月、オーストラリアへ旅立ちました。来年度からは、留学の枠を150人から200人に増やします。さらに、これとは別枠で、新たに私立高校生の留学支援も開始いたします。また、ものづくり技術を学ぶ都立の高等専門学校の学生が、今後、成長が見込まれ、市場としても期待できるアジア地域の日系企業でインターンシップを実施できるよう、準備を進めています。
 こうした取組を重ねることで、「自分の物語」を持ちながら、将来を切り拓いていく若者を、東京から育てます。

〈若者が集い語らう場をつくる〉
 若者たちが人間的に磨かれていくためには、インターネットやメールの関係ではない、「他者」との共同生活も有効であると思います。日本の漫画の黎明期に「トキワ荘」というアパートで、同じ夢を志す若者が集まり、切磋琢磨していました。世界に誇るべき日本の漫画という文化が花開く原動力は、こうした若者たちの青春の情熱であったと言えます。
 現代の若者たちの間では、台所やお風呂、トイレなどを共有し、共同生活を行う「シェアハウス」という新しい住まい方に関心が高まっています。都では、こうした動きを捉え、民間のアイデアを十分に活用したシェアハウスの社会実験に向け、検討を進めてまいります。
 この新しい試みを、若者同士にとどまらず、高齢者など他の世代との交流のきっかけにもしていきたいと、こう思っています。

〈小中高一貫教育校の検討〉
 子供たちは、一人ひとりが個性を持っており、教育の形は多様であることが望ましいと思います。都は、新たな「東京モデル」として、小中高一貫教育校の設置を目指し、検討を開始しました。
 小中高一貫教育では、12年というスパンを確保することができます。先取りして新しいことを学べる実質的な飛び級の仕組みをつくることができ、特に理数系のような分野では効果を発揮します。逆に、苦手分野のある生徒は、その部分をじっくり学ぶことができます。
 学校の新しい形を提案するための試行錯誤を通じて、よりよいモデルを構築していきたいと思っています。

〈スクールカウンセラーの設置〉
 一方で、いじめや不登校など、現在、教育現場が抱える問題には、すぐ対処してまいります。都は、来年度から、スクールカウンセラーの人数を700人から2倍の1400人に倍増し、都内公立小・中・高等学校2100校全てに配置します。子供の心理に専門的な知見を有するカウンセラーが、子供や保護者へのカウンセリング、教師への指導・助言を行いながら、子供たちの悩みに向き合い、いじめも予防・解決していきます。

(多摩・島しょ地域の振興)

 多摩・島しょ地域の振興にも力を尽くしてまいります。
 東京の島しょ地域は、これまでも、たびたび噴火に見舞われるなど厳しい自然と向き合う地域である一方で、地熱・風力・太陽光など自然エネルギーの可能性を有した地域でもあります。
 八丈島に、日本で初めて、エネルギー需要のほとんどを地熱だけで賄う画期的な仕組みを取り入れることにいたしました。地元や民間と連携して、クリーンエネルギーのモデルの島にすることで、新たな観光資源としてまいります。三宅島など他の島でも自然エネルギーの活用可能性や、採算など事業性の調査を実施します。地域の振興という都政の命題の中に、東京が進める電力制度改革をビルトインするという全く新しい発想で、政策を展開してまいります。
 また、大島、新島、神津島と空で結ばれている調布飛行場では、このたび地元との協議が整い、来年度から離島との航空路に計器飛行が導入されることになりました。これにより、就航率は9割にまで上がると見込んでおります。羽田との航空路の廃止が予定されている三宅島については、調布と結ぶ路線が平成26年度から新たに開設されます。就航率の向上は、島しょ地域に住む方々の切なる願いでありました。調布飛行場の地元の皆様に心から感謝申し上げます。
 多摩地域は、先端産業が集積し、都心へのアクセスの良さに加え、数多くの大学や研究機関も立地するなど、我が国の発展の一翼を担う重要な地域であります。こうした多摩の力を最大限発揮するのに不可欠な圏央道については、来年度、東名高速と結ばれます。実現すれば地域の航空利便性が大幅に増す横田基地の軍民共用化にも引き続き取り組んでまいります。
 多摩地域のスポーツの拠点となる武蔵野の森総合スポーツ施設については、味の素スタジアムの隣接地に、2016年度の完成を目指して、メインアリーナなどの工事に着手いたします。
 一方で、多摩地域は、高度成長期に整備された大規模な団地や都市インフラの老朽化などの課題も出てきております。こうした時代の変化に的確に対応していくため、来月には、今後の多摩振興の指針となる「新たな多摩のビジョン」を策定いたします。これに基づいて、魅力と活力に溢れた多摩の実現に取り組んでまいります。

4 日本人の心のデフレを取り払う

(スポーツ祭東京2013)

 今年は、9月に2020年のオリンピック・パラリンピックの開催都市が決まり、準備を重ねてきたスポーツ祭東京2013が開かれる「スポーツの年」であります。先般、その皮切りとして、スポーツ祭東京
 2013の冬季大会を東京と福島県の郡山で開催し、成功裡に幕を閉じました。
 スポーツ祭東京2013は、障害のある人とない人が相互に支え合う社会の実現を目指し、国民体育大会と全国障害者スポーツ大会を一つの祭典として開催いたします。この大会は、全ての区市町村で競技が行われます。普段は余り目にすることがない競技種目もあり、新しいスポーツとの出会いになるかもしれません。一人でも多くの方に観戦いただき、日本中から集まる選手たちに熱い声援を送っていただきたいと思います。

(2020年オリンピック・パラリンピック招致)

 「失われた10年」は、いつの間にか「20年」となり、今の子供たちは、閉塞感に覆われた日本しか知らなくなりました。彼らが、新しい「坂の上の雲」を目指して頑張るための具体的な夢を贈ることは、大人の責任であると思います。日本人が心のデフレを取り払い、この国に自信を取り戻す大きな力となるのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックです。
 聖火ランナーが走ることになる東北の被災地にとっては、復興への大きな目標になります。子供たちは、アスリートの鍛え抜かれた筋肉の美しさ、肉体の荘厳さを直接感じることができます。これは人生の記憶に残るかけがえのない財産になるでしょう。大会に参加する機会は、選手や観客としてだけではありません。次の日曜日に開催される東京マラソンと同じように、ボランティアとして運営に参加することもできます。そこでは人との新しい出会いが生まれるかもしれません。「おもてなし」の精神をはじめとする日本の魅力を、多くの外国の方に知っていただく、またとない機会にもなるでしょう。
 先月、1月7日の立候補ファイル提出直後、私自身が、ロンドンに赴いて、オリンピアンの澤穂希さん、パラリンピアンの鈴木孝幸さんらと記者会見に臨みました。多くの海外メディアを通じて、日本と東京の素晴らしさや、高い大会開催能力を全世界にアピールいたしました。帰国してすぐに、安倍総理に面会して、国を挙げて招致活動に取り組むことを確認し、開催都市が決定されるブエノスアイレスでのIOC総会には、総理自ら出席するよう強く要請しました。
 来月、3月初めに、IOC評価委員会が現地調査のために来日します。IOC委員の信頼を獲得するとともに、万全の運営体制、コンパクトな会場配置、治安の良さ、伝統とモダニズムが重なり合った都市の姿など、成熟し、かつ洗練された東京の魅力を実際に感じていただき、十分理解いただけるように全力を尽くします。
 是が非でも、招致を勝ち取り、神宮の杜に新しく生まれ変わる国立競技場に、オリンピックとパラリンピックの大会旗を掲げようではありませんか。今こそ、日本中の力を招致に結集していただくよう、よろしくお願い申し上げます。

5 今年を新たな時代の始まりの年にする

 これまで、個別の政策展開について申し述べてまいりましたが、しかし、どんなに良い政策であっても、その実現のために貴重な税金と都庁の戦力をいくら投入したとしても、都民の理解と協力を得ることができなければ、その政策は十分な効果を発揮することができないのであります。そのため、都民広報は、知事である私が直接指示する事項として、就任後すぐに、全局にツイッターでの情報発信を始めるように命じました。140字以内という限られた文字数の中でつぶやくことを通じて、職員一人ひとりが、「都民に伝えるべき肝は何か」ということを必死で考えるようにもなります。意識改革です。それは、職員自身の「言葉の力」を磨き、都民への説明能力を高めることに繋がります。これからは「言葉の力」を駆使した「情報の出前」をすることで、都民への説明責任を果たし、政策の費用対効果を高めてまいります。
 東京都は首都政府として、東京だけでなく、全国に対しても責任を有しております。首都公務員である都職員の満点は120点満点でありまして、100点分は東京、20点分は全国のため、そのために力を使わなければいけない。5年前に始め、日本人同士、地方同士の支え合いの全国モデルとなった夕張市への支援を、さらに続けていきます。東京都の職員が、東京と夕張と相対的に見つめて、複眼的にものを見る見方が養われれば、これも大きな意識改革に繋がります。東北の被災地支援の職員派遣も続けていきます。来年度も福島県への旅行を対象にした「被災地応援ツアー」を実施して、新たに岩手県陸前高田市と釜石市からの震災がれきの受け入れを始めるなど、これからも全国の先頭に立って東北を応援していきます。
 都民・国民が困っていることに真正面から向き合い、自分たちの領分を超えてでも、改革に挑戦する気概を持った職員を育て、都庁をさらに強くしていきます。そして、その都庁を、都民のため、東京のため、日本のためにフル活用してまいります。
 東京府と東京市が一つになり東京都が生まれてから、今年でちょうど70年目を迎えます。この節目の年を、新たな時代の始まりとして、今、私は決意しております。官僚主権と訣別し、戦後日本の挫折、さらには東日本大震災をも乗り越えるべく、首都の知事として渾身の力を奮ってまいります。都議会の皆様、都民の皆様のご協力をお願いするものであります。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案31件、条例案95件など、合わせて146件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、施政方針表明を終わります。