知事の部屋

 
猪瀬都知事「知事の部屋」
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活動の紹介

平成25年9月18日更新

平成25年第三回都議会定例会知事所信表明

 平成25年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

1 2020年オリンピック・パラリンピック東京招致

  まず、アジアで初めての2度目のオリンピック、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致成功に当たって、都議会の皆様、都民・国民の皆様、政府、国会、全国の自治体、スポーツ界、経済界の皆様、東京を応援していただき、世界中の皆様に、心から感謝申し上げます。勝利の瞬間、吉野利明議長と固い握手を交わし、現地で応援していただいた都議会の皆様と喜びを分かち合いました。今この場で、共に戦った都議会の皆様に直接、勝利の報告ができますことを、大変嬉しく思っております。誠にありがとうございました。
 そして、切磋琢磨することで、開催計画の質を高め、磨き合った好敵手、共に同じ目標を目指した友人であるイスタンブール、マドリードの皆様に、心から敬意を表するものであります。

(国民皆で勝ち取った宝物)

 決戦の場・ブエノスアイレスでは、招致委員会の竹田理事長、水野副理事長をはじめ「チーム日本」が本当に一つにまとまって、最高の状態で本番を迎えました。
 安倍総理の、自身のアーチェリーの経験を基にした熱のこもったプレゼンテーションは、オリンピックムーブメントに貢献したいという我々の願いが本物であることを、IOCの委員に強烈に印象づけました。さらに、福島第一原子力発電所の汚染水漏れ問題に、政府として本気で取り組む覚悟を示されたのです。気仙沼出身のパラリンピアンの佐藤真海さん、オリンピアンの太田雄貴さんのプレゼンテーションは、スポーツの力を信じ、開催を熱望する日本人の思いを純粋、素直に表したものでした。ユース五輪のトライアスロン金メダリストの佐藤優香さんと共に、フェアプレーと未来への可能性を想像させる3人のアスリートの姿は、委員の心を掴んだに違いありません。ローザンヌのテクニカルブリーフィングから引き続いて登壇した滝川クリステルさんは、流暢なフランス語で伝統とモダンが融合した東京ならではの魅力と「お・も・て・な・し」を訴えました。「不確実な時代に確実な大会運営」、これを可能にするのが社会の力であり、都市の力です。私は、開催都市の知事として、アスリートファースト、それを担保する財政、輸送インフラといった東京の都市力、東京の安全と安心、これから100年も200年も続くオリンピックムーブメントの、オリンピック・パラリンピックのために残る、大会のレガシーをアピールしました。そして、三笠宮家の彬子女王殿下、高円宮妃殿下によるブエノスアイレスご訪問は、私どもに大きな勇気を与えてくださいました。妃殿下がIOC総会で被災地支援への感謝、復興への思いを語られたことは、人々に強い感銘を与えました。
 そして、何よりも大きな力になったのは、この間、招致活動を支えてきた都民・国民の熱い声援、「オリンピック・パラリンピックを開催したい」という強い思いでありました。この勝利は、国民皆で勝ち取った宝物、東京だけではない、日本全体のオリンピック・パラリンピックなのです。

(舞台は第二幕へ)

 IOCのジャック・ロゲ会長から「TOKYO」という名前が告げられた瞬間、あの体の内側から沸き起こるような身震い、感動を忘れることはできません。しかし今、時が経つにつれて、日増しに喜びよりも開催都市の知事としての責任感が大きくなってきているのです。
 日本は「オリンピック・パラリンピック」という、輝かしい旗を手にしました。これを高く掲げながら、被災地の復興をさらに加速させ、ハードのみならず、「心の復興」をも成し遂げることで、全国に自信と希望を行き渡らせてまいります。スポーツをする人をもっと増やし、「平和でよりよい世界の実現」、オリンピックムーブメントの拡大に貢献してまいります。パラリンピックの開催都市にふさわしく、ユニバーサルデザインのまちづくりを進め、障害者スポーツを盛り上げ、270万人の観客が熱狂したロンドン大会を上回るパラリンピックを目指します。開催までの7年間、そして7年後の大会開催時には、多くの外国人が日本を訪れます。芸術文化の振興を図りながら、アジア随一の観光都市を目指して、ホスピタリティに益々磨きをかけていきたいと思います。
 招致から開催準備へ、舞台は第二幕に移ります。まずは、全庁横断的な大会実施準備会議を立ち上げました。また、政府や、JOCをはじめスポーツ界、経済界など、緊密な連携を図りながらオールジャパンの体制を整えるべく、大会の運営主体となる組織委員会の立ち上げ準備を始めていきます。都議会の皆様、都民・国民の皆様、より一層のご支援をよろしくお願い申し上げます。

 さらにもう一つ、東京に注目が集まる出来事がありました。先週14日、イスタンブールで開かれた国際水協会・IWAの理事会で、2018年「国際水協会世界会議」の開催都市が、東京に決定しました。6000名に上る関係者が2年に一度、一堂に会する、上下水道の分野では世界最大規模の会議であり、オリンピック・パラリンピック招致成功に続く快挙であります。蛇口から直接、飲める安全でおいしい水や、高度な下水処理による安全で快適な水環境など、東京の持つ都市力を世界にアピールし、上下水道の国際貢献ビジネスも推し進めます。

2 新たな長期ビジョンの策定

 招致活動の中で、私が意識していたのは、東京は世界の中のフロントランナーである、ということです。我々が克服してきたゴミや公害、大気汚染といった問題に、今、世界の多くの都市が苦しんでいます。先般、東京都は環境の分野において、「C40・シーメンス大都市気候リーダーシップ賞」を受賞しました。都市型キャップアンドトレード制度が、持続的な都市の成長を可能にする優れた取組として、評価されたものであります。私たちは、2020年大会のビジョンとして、「ディスカバー・トゥモロー」を掲げました。世界の中で「明日」に最も近い東京の挑戦こそが、日本全体に安心を創り、そこから希望、そして成長へという道筋を描くことができるのです。それは、人類全体の利益にも繋がっていきます。
 これまで、「2020年の東京」を羅針盤に、防災対策、エネルギー政策など、先進的・具体的な取組を進めてまいりました。さらにその先には、少子高齢化、人口減少社会の到来といった、我々の社会や生活の存立そのものを危うくしかねない根本的な問題が横たわっています。
 「2020年の東京」をさらに進化させながら、この根本的な問題にも本腰を入れて取り組むため、東京の10年後の姿を示す「新たな長期ビジョン(仮称)」を、12月を目途に策定いたします。東京オリンピック・パラリンピックを推進力として、将来への礎を築き、東京を「安心・希望・成長」を実感できる「世界一の都市」、「一人ひとりが輝く都市」にしたいと思います。従来の枠を超えた新しい発想を引き出すため、庁内横断のプロジェクトチームでも検討を進め、その成果を長期ビジョンに反映させてまいります。

3 世界一の都市を目指す施策展開

 新たな長期ビジョンの策定と来年度の予算編成は、これから本格化します。今回の所信表明では、知事として考える都政の方向性の一端を申し述べ、都議会の皆様と議論を重ねることで、今後、具体的な政策に結実させていきたいと思います。

(安全・安心こそ都市の礎)

 まず、都民の安全・安心を守る、これが何よりも大切なことです。安心を実感することなくして、将来への希望を持つことも、成長のための自由な発想を生み出すことも適いません。安全・安心こそ都市の礎であると思います。これを全力で守ってまいります。

〈東京が誇る安全・安心をさらに高める〉
 先般、渋谷地区の治安状況を視察する機会を持ちました。実際に、渋谷のセンター街を歩き、地域を守る防犯ボランティアの方々ともお会いしました。自分の時間を割いて公のために尽くす皆さんの姿に、本当に頭が下がる思いでありました。また、渋谷駅前の交番では、現場の警察官を激励しました。地域、警察、それらを支える行政、この3つの力が合わさることで、東京の安全・安心は守られるのです。良好な治安は、2020年大会を東京に引き寄せる大きな力にもなりました。
 来月で「安全・安心まちづくり条例」が施行されて、ちょうど10年になります。この間、防犯ボランティア組織は、都内で150団体から4000団体へと26倍に増え、都内の犯罪認知件数は4割減少しました。条例は、大きな効果を上げてきていると思います。
 一方で、息子などを名乗って高齢者などからお金を騙し取る「母さん助けて詐欺」をはじめ、益々複雑化してきた身近な犯罪に対する都民の不安感は、今なお、解消されておりません。警視庁では犯罪の撲滅に向けて取り締まりを強化するとともに、ツイッターを使って、犯罪の発生やその手口を発信しています。こうしたリアルでスピード感ある情報発信は、皆の力で犯罪を防ごうという都民の意識にも繋がってくると思います。また、消費生活行政を担う生活文化局では、悪質商法による被害を防ぐため、その巧妙な手口をツイッターで都民に発信するとともに、「悪質事業者通報サイト」を設け、立入調査や業務停止命令などの取り締まりも積極的に行っております。
 東京都は、こうした取組を強化しながら、防犯ボランティアのリーダー育成や町会・商店街による防犯カメラの設置を支援するなど、「安全・安心まちづくり」の取組を、さらに進めていきます。社会の総力を結集することで、地域の安全を守ってまいります。

〈震災発生時の迅速な対応〉
 続いて、震災対策について申し上げます。大規模災害の発生時には、72時間以内の初動対応の成否が、多くの命を救えるかどうかの鍵となります。災害発生直後に、全国から集まる自衛隊、警察、消防などの救援部隊が一刻も早く効果的な救出活動を開始できるよう、受け入れの手順などを具体的に定めた「首都直下地震等対処要領(仮称)」の策定を進めています。11月に行う総合防災訓練で検証し、新たに分かった問題を対処要領に反映させます。年度内の完成を目指して、より実践的なものにブラッシュアップしてまいります。
 災害発生時に電力が途絶した場合に備え、救援部隊や避難された方々のために非常用の電力を確保しなければなりません。既に足立区の舎人公園では4800キロワットの非常用発電設備の整備が具体的に進んでおりますが、さらに都立の防災公園などへの自立電源の設置を検討するため、庁内にプロジェクトチームを立ち上げました。より効果的な応急活動・救護活動が展開できないか詳細な調査を行ってまいります。

〈水を治める〉
 この夏は、豪雨災害が全国各地で発生し、都内でもゲリラ豪雨に見舞われて浸水被害が発生しました。東京都は、これまで環状七号線の地下に巨大な調節池を整備し、現在も渋谷区と港区を流れる渋谷川・古川の水害を防ぐための地下調節池や、石神井川と白子川を結ぶ調節池の整備を進めています。今年度から、河川ごとに治水対策のレベルを引き上げ、区部では時間75ミリ、多摩で時間65ミリの降雨に対応できるよう取り組んでおります。併せて、下水道についても、地盤が低く浸水しやすい地区で、既存の幹線の下に新しい幹線を整備するなど重点的に対策を講じ、浸水対策のレベルアップを図っていきます。都民生活を守るため、都市型水害への対策を強力に推し進めてまいります。

 都心部での集中豪雨とは対照的に、今年の夏、利根川上流の水源地に雨が少なく、首都圏は渇水に見舞われ、10%の取水制限を余儀なくされました。前の政権が地方政府の意見を聴くことなく一方的に本体工事を中止した八ッ場ダムが、首都圏において、治水上も、利水上も不可欠であることは明らかです。今般、国から、八ッ場ダムについて、平成27年度完成予定から平成31年度完成予定へと、工期を4年間延伸することに対して意見照会がありました。これ以上、時間を空費するわけにはまいりません。本定例会には、速やかに本体工事に着手し一日も早く完成させること、事業費が増額しないよう徹底したコスト縮減に取り組むことを前提に、工期延長に同意する議案を提案しております。よろしくご審議のほどお願いいたします。

 来月には、三郷浄水場の高度浄水施設が完成し、供給を開始いたします。平成元年から四半世紀にわたって、利根川水系の浄水場に高度浄水処理を段階的に導入してまいりましたが、このたび100%高度浄水処理された水となります。さらにレベルアップした東京の水道水を都民、そして、東京を訪れる全ての皆様にお届けしたいと思っております。

(明日への希望をさらに大きなものにする)

 私たちには、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催という、確とした目標があります。この目標に向かって前へ進み、これまで申し上げてきた安全と安心をしっかりと固めながら、明日への希望をさらに大きなものにしていきたいと思います。

〈構造的な福祉〉
 私たちの先に横たわる少子高齢化、人口減少社会という根本的な問題に取り組んでいくため、先般、副知事をトップとする「構造的福祉」プロジェクトチームを立ち上げました。
 私は、あえて「構造的福祉」と命名しました。人間の生活が縦割りでない以上、福祉の問題も、それ単体ではなく「構造」として捉えていかなければ、有効な対策を打つことはできないからであります。若者の雇用やボランティアなどの社会参加、女性や高齢者の就労、住宅の問題といった、背後や横から影響を与えている事柄にも目を向けてまいります。将来を見据えた中長期の視点で検討を進めながらも、待ったなしの問題や、すぐに手をつけることができるものは、来年度予算に反映します。
 東京都では、現在、「スマート保育」や高齢者の「ケア付きすまい」といった東京モデルを展開しています。今年度から新たに始めた「東京スマート保育」も、既に豊島区と杉並区で開設されました。これからもさらに増えていきます。こうした区市町村や民間事業者への支援を中心とした施策展開に加えて、この「構造的福祉」プロジェクトでは、都有地などの資産も活用していくなど、東京都自らもより積極的に関わっていく少子高齢対策を検討してまいります。

 人々が世代を超えて交流することも、大事なことだと思います。私は、一定のプライバシーを確保しながら、共同生活を通じて住人同士が触れ合う「シェアハウス」という新しい住まい方が、多様な世代が支え合う架け橋にならないかと考えております。高齢者が持つ人生の知恵は若者の「生きる力」を高め、若者がもたらす最新の情報や活発なエネルギーは高齢者の生き甲斐にも繋がると思います。もちろん、他にも様々な交流の形があり得ると思います。NPOや民間の先行的な知見を活用しながら、来年度のモデル事業の実施を視野に、施策を練り上げてまいります。

〈子供の健やかな成長が希望を生み出す〉
 東京都が検討している都立の小中高一貫教育校は、子供の成長の舞台である学校に、新たな選択肢を示すものです。従来の6・3・3の教育課程ではなく、4・4・4のまとまりで、理数教育に力を入れたカリキュラムにしていきたいと考えています。子供の才能を伸ばすため、先取りした内容を学べる実質的な飛び級を実現するほか、海外留学や専門的な学習を行う時間を充実させるなど、12年の一貫教育の利点を存分に活かしていきます。今後、具体的なカリキュラムの構築など必要な準備を進め、平成29年4月の開校を目指してまいります。
 学校や保育所での安全・安心も高めていきます。いじめ問題などに対応する、心理の専門家であるスクールカウンセラーを、今年度から都内の公立小・中・高等学校2100校全てに配置しました。また、時に重大な事態を引き起こす給食による食物アレルギーへの対応マニュアルを作成しました。都内の保育所、幼稚園、小・中・高等学校で、緊急時の対応や日頃からの研修に活用していきます。「迷ったら、とにかく注射型の補助治療薬を打つ」ことを明確にするなど、現場の教員や保育士が迷わず対処できる実践的な内容にしています。
 子供たちの健やかな成長は、皆の願いです。未来の希望を担う子供たちのため「現場第一」をモットーに、知事として、教育委員会とより一層、意思疎通を図り協力しながら、教育の問題に臨んでまいります。

(首都政府として日本の成長を牽引)

 日本は、1990年代以降の20年間、GDPが500兆円のまま変わらない、むしろ最近は500兆円を下回る「停滞の季節」でありました。安心と希望を確固たるものにしていくためには、日本は停滞から抜け出し成長へと、時代の転換を果たさなければなりません。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、そのための重要な国家戦略ともなります。東京は、首都政府として日本の成長を牽引してまいります。

〈国家戦略特区の提案〉
 東京都は、海外企業のアジア拠点を呼び込むことで、東京と日本の次なる成長を目指すアジアヘッドクォーター特区の取組を進めています。先般、誘致第一号として、ベルギーの太陽光発電関連企業の研究開発拠点が進出することに決まりました。東京都が提供する無料コンサルティング支援により、日本企業と合弁会社を立ち上げたものです。これからも、外国企業の誘致を積極的に推進し、東京の国際競争力の強化を図っていきたいと思います。
 一方、安倍政権は、ロンドンやニューヨークに匹敵する国際ビジネス環境を整備するため、国家戦略特区の取組を進めています。先週、東京都として、法人税の引き下げをはじめ、教育や医療の規制緩和により外国人が生活しやすい環境を整えるなど、これまで特区で進めてきた取組をさらにバージョンアップした国家戦略特区のプロジェクトを提案しました。ロンドン・ニューヨークと比肩しうる都市は、東京をおいて他にありません。安倍政権が投げた国家戦略特区というボールを、2020年大会の開催都市である東京都として、しっかりと受け止めたいと思います。提案が採用されるよう、皆様のご協力をお願いいたします。

〈時間市場の開発〉
 成長のためには、新しい発想で、新たな需要を生み出していかなければなりません。夜や早朝という未開拓の「時間帯」をフロンティアとして開発することで、人々が生活の楽しさを実感できれば、人生に新たな可能性、新たな物語を加える「物語としての消費」が生まれてきます。
 現在、庁内横断で編成した「時間市場開発」プロジェクトチームで検討を進めております。夏の期間の都立美術館・動物園などの開館時間延長に続き、芸術の秋、スポーツの秋にふさわしい取組を進めたいと思います。12月には、渋谷・六本木間の都営バスの終夜運行も始めます。まずは、東京都自らが取組を積み重ね、ニーズや効果を検証しながら、国や民間にも波及させていきます。民間を刺激して、そこから新たな市場、需要が生まれる、多様なライフスタイルが生まれる、東京の魅力がさらに増す、この流れを目指してまいります。

〈東京の成長を支えるインフラの整備〉
 三環状道路は、日本の心臓である東京をさらに力強く鼓動させるために不可欠な路線です。なかでも整備が遅れていた外環道については、昨年9月の東名ジャンクション、今年6月の大泉ジャンクションに続き、先月、中央ジャンクションの工事に着手しました。これで、関越道・中央道・東名高速という放射状の大動脈に、外環道という縦串を通すための結節点が揃うことになります。外環道の関越・東名間について、2020年早期の確実な完成を、引き続き政府に強く求めてまいります。
 また、三環状道路の一つである中央環状品川線については、来年度の開通に向けて、東京都と首都高速道路会社とで整備を進めております。環状2号線については、今年度末に、新橋・虎ノ門間の供用を開始いたします。これを、さらにオリンピック・パラリンピックの競技会場や選手村となる臨海部に繋げる整備事業も、2015年度の開通を目指して、急ピッチで進めてまいります。
 環状道路の整備により交通の流れを変えることは、高度経済成長期に整備された首都高速の維持更新がしやすい環境を整えるためにも、重要であると思います。さらに、選手村から競技会場への円滑な移動、これを可能にする道路インフラは、アスリートに最高の競技環境を提供する上で欠かせないものであります。東京都はこれからも、首都の道路ネットワークの整備を強力に推進してまいります。
 増大する首都圏の航空需要にも対応しなければなりません。羽田空港のさらなる空港容量の拡大・国際線の増枠を要求してまいります。同時に、実現すれば、首都圏の空港機能の一翼を担い、多摩地域の振興にも大きな効果をもたらす横田基地の軍民共用化に、引き続き取り組んでいきます。2020年大会開催を契機に、日米協議の促進を政府に強く求めてまいります。

〈テクノロジーは日本の強み〉
 来月30日から、東京ビッグサイトで産業交流展を開催いたします。より広い地域から、より多くの企業の関係者を呼び込むため、今年度は、国の中小企業基盤整備機構の「中小企業総合展」と同時開催いたします。さらに、会場内では九都県市が連携し、受注企業と発注企業が一堂に会する大規模マッチング商談会も開催するなど、中小企業の販路拡大を後押ししてまいります。
 中小企業が厳しい競争を勝ち抜いていくためには、その持てる技術を、さらに磨いていかなければなりません。テクノロジーは日本の強みであります。近年、樹脂や金属粉末をレーザーなどで固めて立体的な試作品などを作る「3Dプリンター」が注目を浴びています。都内でも、こうした装置を活用して新製品の開発にチャレンジする中小企業が増えてきています。都立産業技術研究センターでは、都内の企業が開発し、昨年の産業交流展でベンチャー技術大賞を受賞した最新鋭の「3Dプリンター」を3台導入しています。こうした高性能の装置を活用しながら、中小企業の技術の強化を後押しし、「メイド・イン・ジャパン」のさらなる飛躍に繋げていきたいと思います。
 この他、中小企業の資金繰りについても、制度融資に、経営や販売のアドバイスなど、金融機関が持つ独自の工夫やノウハウを活用した経営支援策を組み込んだメニューを新たに始めるなど、様々な支援策を用意しております。経済に明るい兆しが見えてきたとはいえ、アベノミクスの矢が中小企業にまで届き、その効果を実感できなければ、力強い日本の成長には結びつきません。そのために、東京都は、これからも販路拡大、技術支援、金融支援など様々な政策を構え、東京の中小企業を盛り立ててまいります。

 「安心・希望・成長」を実現するためには、法人事業税の暫定措置を当初の約束どおり撤廃させなければなりません。国に対して、強くこの主張をしてまいります。改めて都議会の皆様の一層のお力添えをお願いいたします。

4 名誉都民の選定

 次に、名誉都民の選定について申し上げます。
 このたび名誉都民の候補者として、岡野俊一郎さん、三浦雄一郎さん、森英恵さんの三名の方々を選定させていただきました。
 岡野俊一郎さんは、サッカー日本代表の選手として活躍し、指導者としてメキシコ五輪での銅メダル獲得に貢献するとともに、IOC委員をはじめ要職を歴任され、日本スポーツ界の発展に尽力してこられました。
 三浦雄一郎さんは、プロスキーヤーとして世界七大陸最高峰からの滑降を達成し、今年5月にはエベレスト最高齢登頂者記録を更新するなど、常に挑戦する前向きな姿勢で、人々に大きな勇気を与えてこられました。
 森英恵さんは、衣装デザイナーとして海外コレクションの発表で称賛されるなど、日本の伝統文化の要素を取り入れた作品を世界に示すとともに、手作りの大切さを若手に教え、その育成に尽力してこられました。
 お三方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。

5 日本全体に「安心・希望・成長」のマインドを拡げる

 さて、今月28日、味の素スタジアムで行われる国民体育大会の総合開会式を皮切りに、「スポーツ祭東京2013」が本格的に始まります。全ての区市町村で競技会が開催されますので、都民の皆様、是非、競技会に足を運んでいただきたいと思います。2020年東京オリンピック・パラリンピックに出場するアスリートも生まれるでしょう。全国から集まる選手たちに熱い声援を送り、スポーツ祭東京を大いに盛り上げ、2020年大会の招致成功を都民・国民でお祝いする最高の機会にもしたいと思います。
 招致活動を通じて、日本人のホスピタリティの素晴らしさを訴えてまいりました。それが日本の強み、人口の1割が集まる首都東京の強みであるからです。テクノロジー、イノベーション、そしてホスピタリティ、自分たちが持つ強みを意識化して、政策に結実することが東京を元気にする鍵です。フランスの哲学者であるアランは「悲観主義の根底は意志を信じないことである。楽観主義は全く意志的である」と言いましたが、自らの強みを武器に挑戦する意志なくして未来は拓けません。希望とはまさに、意志の情熱で「つくる」ものなのです。
 2020年、東京に、日本に、オリンピック・パラリンピックがやってきます。都議会の皆様と力を合わせ、日本の心臓である東京を元気にする政策を生み出し、日本全体に「安心・希望・成長」のマインドを拡げてまいります。そして、復興を遂げた被災地に聖火ランナーが走る姿を、困難に立ち向かった人々の勇気と自信を、全世界に届けたいと思います。最終プレゼンテーションで映し出されたバスケットボールをする少年の姿は、大きな感動を呼びました。あの少年のように、スポーツの力で、世界中の子供たちに、夢と希望の絆を繋いでまいります。皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案8件、契約案9件など、合わせて20件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。