知事の部屋

 
猪瀬都知事「知事の部屋」
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海外出張

平成25年6月12日更新

アメリカ・ニューヨーク出張の概要・成果

 姉妹都市であるニューヨーク市を訪問し、今後の都政の施策展開に資するため、成熟した大都市共通の課題や施策について、ブルームバーグ市長と意見交換を行うとともに、行政視察を行いました。
 ジャパンソサエティからの招待を受け、講演を行うことなどにより、世界に向け、東京の魅力を強くアピールしました。

1 出張概要

○期間 平成25年4月14日(日曜)〜4月19日(金曜)

○出張人数 12名

○総経費 26,420千円

2 出張先での主な行動と成果

4月14日(日曜)

 猪瀬知事は、14日夕方、成田空港を出発し、現地時間で同日の午後に、ニューヨークに到着しました。
 夜は、在ニューヨーク日本国総領事公邸で、廣木ニューヨーク総領事大使から現地事情全般について、JETROニューヨーク事務所桜井所長から現地経済事情についてのブリーフィングを受け、意見交換をしました。

4月15日(月曜)

 メトロポリンタン・トランスポーテーション・オーソリティ本社(MTA)を訪問し、MTA傘下のニューヨーク・シティ・トランジット(NYCT)の社長から、MTA及びNYCTの概要、ブリーカーストリート駅とブロードウェイラフィアット駅の改良工事、地下鉄及びバスの24時間運行の状況について、説明を受けました。

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プレゼンテーションの様子
<プレゼンテーション概要>

【MTA及びNYCTの概要】
 NYCTは、ニューヨーク市内の地下鉄及び路線バスを運営しており、MTA全体の事業規模の約3分の2を占めています。
 ニューヨーク市内の地下鉄は、最初の路線が1904年に開業しましたが、その後、3つの事業者により建設され、運営もそれぞれが独立して行っていました。現在は、経営が統合され、NYCTにより一元的に運営されています。

《MTAとNYCAの事業規模比較》

  MTA 内NYCT
1日あたり乗客数 850万人 740万人
従業員数 65,600人 45,500人
鉄道車両数 8,800両 6,400両
駅数 634駅 468駅
バス車両数 6,300台 4,600台
2011年度予算 133億ドル 86億ドル
※プレゼンテーション資料より抜粋

【駅改良工事】
 ブリーカーストリート駅とブロードウェイラフィアット駅は、隣接しているにもかかわらず、元々別の事業者により運営されていたことから、連絡通路がありませんでした。経営統合後改良工事を実施し、両駅を結合したことで、乗客の乗り換え利便性は大きく向上しました。

【24時間運行】
 ニューヨークの地下鉄は、すべての路線において24時間運行を実施しており、深夜12時から5時までの間は概ね約20分おきに運行しています。バスについても路線によっては24時間運行を実施しており、深夜には概ね1時間に1本、運行しています。
 説明終了後、主に東京の地下鉄の24時間運行の可能性について意見交換を行いました。
 知事からは、東京の地下鉄は複線であり、深夜の3時間から4時間程度、運行を止めてメンテナンスをしていることを説明し、24時間運行の可能性について意見を求めました。
 NYCTから、「ニューヨークの地下鉄では、複々線区間においては急行線か各駅停車の線のどちらかを運休し、複線区間については、単線で運行することにより、深夜時間帯に電車が走らない部分のメンテナンスを実施している。しかし、それだけでは本来必要なメンテナンス時間の確保が難しいため、一部の路線については、年4回、午後10時から翌朝の5時まで5日間にわたり全面的に運休してメンテナンスを実施している」など、24時間運行の運営面の課題について説明がありました。
 またバスの深夜運行本数については、地下鉄の終点やフェリーのターミナルからの路線は、30分に1本運行しているとの説明がありました。

<視察>

 MTA本社でのプレゼンテーション終了後、開業100周年を迎えたグランドセントラル駅を視察した後に、地下鉄の6号線に乗車し、複々線の状況を視察しました。
 さらに、改良工事を実施したブリーカーストリート駅とブロードウェイラフィアット駅を視察し、両駅を隔てていた壁を撤去した部分や新設された連絡通路など、乗り換え利便性の向上の具体例について説明を受けました。

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新設された連絡通路の視察 視察後の取材

 ニューヨーク市の地下鉄及びバスの運営の現状やお客様サービスの向上に向けた取組み等を、今後の東京の地下鉄及びバスの運営や地下鉄の一元化に向けた取組みに活かしていきます。

 15日午後、ニューヨークのケーブルテレビ局であるNY1(ニューヨークワン)のニュースショー「Road To City Hall」に、収録により出演しました。
 番組内では、東京が2020オリンピック・パラリンピックを招致する意気込みをアピールしました。

 15日夜、日米交流団体であるジャパンソサエティが主催し、コロンビア大学が共催した講演会において、「世界の中の東京」と題する講演を行いました。この講演会は、ジャパンソサエティの講堂で行われました。
 この日、ボストンマラソンにおいて爆破事件が発生したことを報道により知った猪瀬知事は、講演の中でお悔やみの言葉を述べました。

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猪瀬知事の講演の様子 スライドを説明する猪瀬知事

 猪瀬知事は、「水道」、「東京マラソン」、「アジアヘッドクォーター特区」等について説明を行い、東京の持つ多様な魅了をアピールしました。
 この講演会において、東京の交通利便性の向上に向けて、ニューヨークにおける、地下鉄やバスの運行状況の確認も受け、 都営バスの24時間運行の取組を開始すると発表しました。
 講演に引き続き質疑応答が行われ、ニューヨークに在住するアメリカと日本の学生、会社員、大学教授などからの、東京に関する様々な質問に知事が答えました。
 引続き行われたレセプションでは、聴衆の方々と直接言葉を交わし、東京の魅力等を伝えました。

<主な講演内容>

○東京の水道水
 蛇口から直接水道の水を飲める国は世界に11カ国。5段階の処理により東京の水は全て綺麗な水で直接飲むことができる。漏水率は3%で世界一である。東京は、このシステムを東南アジア諸国に輸出しようとしている。

○東京マラソン
 東京マラソンは、3万6千人が参加する。沿道では、170万人が応援し、これを支えているボランティアは1万人。スタート時点で預かる3万6千人のウェアはボランティアにより、ホテルのクロークサービスのようにゴール地点で一つの間違いもなくランナーに渡される。これが日本の組織運営能力で、オリンピックの開催能力に反映されてくる。

○アジアヘッドクォーター特区
 都内に、アジアヘッドクォーター特区として、外国の金融資本を含めた様々な有能な会社及びその会社の人達に来て頂くための用意をしたい。日本の法人への実効税率は、40.7%(2012年3月)。今の特区で26.9%位にできるということが確認されている。更に20.2%まで、今回のアベノミクスの中で提案する。

○地下鉄、バスの24時間化
 ニューヨークの地下鉄24時間運行は、複々線なので実現できている。日本の場合は複線なので、24時間は難しい。東京では、今年中に渋谷・六本木間で都営バスの24時間運行を開始する。ニューヨークは1940年に複数の地下鉄の会社を一元化しているが、東京でも地下鉄の一元化を実現したい。

○2020オリンピック・パラリンピック招致
 東京オリンピック・パラリンピック招致委員会の調査による支持率は77パーセント。スポーツをする国民の情熱がなければ、オリンピックは招致できない。

○終わりに
 東京改革はスピードが大事。決断が常に必要。東京がモデルを作って、改革を進めていく。そうすれば、日本も変わっていくという信念でやっている。

4月16日(火曜)

 16日午前、東京にとって最初の姉妹都市(1960年提携)であるニューヨーク市のマイケル・ルーベンス・ブルームバーグ市長を訪問し、会談を行いました。今後、東京とニューヨークがこれまで以上に友好関係を強化していくことを確認しました。
 日本からニューヨークとワシントンに桜を寄贈して100年が経過し、101年目である本年の記念として、福島県にある日本三大桜である三春滝桜の種子を寄贈することとし、目録をお贈りしました。
 また、昨年のハリケーン「サンディ」の被害にお見舞いを申し上げるとともに、東京には高潮対策等様々な実績があるので、その経験を提供する用意があることをお伝えするとともに、意見交換をしました。
 市長は、地球温暖化対策の会議であるC40の議長でもあるので、来年6月頃に東京で技術的な問題についてのワークショップを開くことを提案し、環境やエネルギー問題について意見交換しました。
 最後に、知事から2020東京オリンピック・パラリンピック招致に向け、協力をお願いするとともに、2020東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムが入ったTシャツに市長と知事がお互いにサインをしました。

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ブルームバーグ市長と猪瀬知事 Tシャツにサインをする市長

 16日昼、世界貿易センタービル跡地にできた9.11メモリアルを訪問し、2001年9月11日の同時多発テロにおいて、お亡くなりになられた方々の冥福を祈り、献花を行いました。

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献花

 16日午後、ニューズコーポレーションにおいて、ニューズ社のCEOであるルパート・マードック氏とウォールストリートジャーナルCEOであるロバート・トムソン氏と面会し、東京の魅力や2020オリンピック・パラリンピック招致について意見交換を行いました。

 その後、ニューヨークタイムズの取材を受け東京の魅力や2020オリンピック・パラリンピック招致について話をしました。

4月17日(水曜)

 17日は、まずアストリア・リパワリング・プロジェクトを視察しました。
 アストリア・リパワリング・プロジェクトとは、ニューヨーク市クイーンズ区アストリア地区にあるアストリア・ガスタービン発電所内の老朽化した発電機を、最新式のガスタービン・コンバインド・ユニットに更新するもので、電力供給における信頼性の確保と供給力の向上を実現するとともに、発電効率を上げることで 二酸化炭素の削減やコスト低減に資することを目的としています。

 午前中は、本プロジェクトの実施事業者であるNRGエナジー社から、事業概要などに関するプレゼンテーションを受け、午後は、プロジェクトの実施予定地を視察し、実際の現場を見ながらプロジェクトの詳細について説明を受けました。

<プレゼンテーション>

 NRGエナジー社は全米で計4,700万キロワットの発電施設を保有しており、ニューヨーク市内に保有する2つの発電施設は老朽化が進んでいるとのことです。本プロジェクトで更新の対象となる発電施設は、このうちの一つであり、1970年代に稼動したもので運転開始から40年が経過しています。同社では発電施設の信頼性確保や効率性向上の観点から、発電機を改善する取組を進めており、本プロジェクトもその一環で行うものです。これにより、ニューヨーク市のCO2排出量削減目標にも貢献していくとの説明がありました。
 なお、本プロジェクトを後押しした事情として、米国における天然ガス価格の低下もあげられるとのことです。米国では、天然ガス価格が日本の数分の一程度まで低下しており、このことが、最新式のガスタービン・コンバインド・ユニットへの更新の追い風になったとの説明がありました。
 プレゼンテーションでは、本プロジェクトの資金調達にも話題が及びました。ニューヨークには、市内で消費する電力の約8割は市内発電所から供給しなければならないという需要地近接のルールを決めているため、コスト高であっても、市内に発電所を作る必要があります。このとき、資金調達の面では、発電した電気を信用力のある事業者に提供するという契約に頼らなければならないとのことです。ニューヨーク州にはニューヨーク・パワー・オーソリティ(New York Power Authority)という公的な電気事業者があり、ここが電力の購入者として長期契約を締結するという方式があります。本プロジェクトでも、同様の長期契約が締結できれば、資金調達が円滑に進むとの説明がありました。
 話題はその後、ニューヨーク州における電力制度改革にも及びました。本プロジェクトの更新対象となる発電施設は、もともとはコン・エジソン社が保有していましたが、ニューヨーク州における電力制度改革の一環で、大手電力事業者は、保有する発電施設を独立系発電事業者に売却することが求められました。本発電施設は、その際にNRGエナジー社が購入したものです。売却は入札によって行われ、発電所の売却が電力制度改革の中で強制的なものであったことから、売買交渉は比較的スムーズに行われたとのことです。
 電力制度改革のメリットを聞くと、これまで電気料金が規制下にあって固定だったものが、現在は競争を通じて自由に設定できるようになったことをあげていました。また、従来の規制下では、電力会社は好きなだけ資本投下をして、その分を費用に計上して利益を上げていましたが、改革後は、できるだけ投下資本を引き締める努力をするようになり、その結果、発電所の建設コストが半減できた点もあげていました。ただし、消費者に電気料金低減の恩恵が行き渡っているとはいえず、その理由として、NRGエナジー社のような発電事業者のコントロール外にある送配電費用が電気料金に上乗せされており、発電事業者によるコスト削減の果実が消費者に十分還元できない現状があるとのことです。

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デービッド・クレーンNRGエナジー社取締役社長と猪瀬知事 質問をする猪瀬知事
<プロジェクト実施予定地の視察>

 プロジェクトの実施予定地は、発電施設やプラントが設置された600エーカー(約240ヘクタール)にも及ぶ広大な工業用地の中にあります。プロジェクトの工事はまだ行われておらず、実施予定地には、更新の対象となる老朽化した発電機がありました。
 更新対象の発電機は、一つ一つの発電容量が2万キロワット程度と小さく、それが30基ほど設置されています。1970年当時に、一気に設置したとのことです。
 本プロジェクトは2期に分けて行われます。第1期では、現在30基ほどある発電機の一部を撤去し、そこに新たなガスタービン・コンバインド・ユニットを設置します。続く第2期では、残りの古い発電機を撤去し、そこに同じくガスタービン・コンバインド・ユニットを設置します。
 現在ある発電機の燃料となる天然ガスは、パイプラインを通じて供給されます。なお、天然ガスの途絶を想定し、バックアップ燃料として石油も使用しており、その貯蔵のためのタンクには200万ガロンの石油が入っているとのことです。発電機の更新後も引続き、これらパイプラインや貯蔵タンクを利用することになっています。

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更新対象の老朽化した発電機 発電機がいくつも並んでいる
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担当者から説明を受ける猪瀬知事

 今回の一連の視察を通じ、日本より一足早く進んでいるニューヨークの電力制度改革の現状を知ることができました。特に、電力制度改革の一環として、独占的な電力会社が保有していた発電所を購入した独立系発電事業者が、競争環境の下でビジネスを行い、さらには買い取った発電所をリプレースしようとしている状況について、直に事業者から説明を聞き、現地を確認することができました。リプレースの設備・工事面のみならず、資金調達の方法など、大変興味深い話を聞くことができました。これを一つの根拠や材料として、今後の電力制度改革につなげていきます。
 17日夜、日本クラブにおいて、東京都知事及びニューヨーク総領事共催のレセプションを開催しました。当レセプションでは、元三段跳び世界王者のウィリー・バンクス氏が挨拶をしました。同氏は、東北の被災地において子供達を勇気付ける活動を行っており、スポーツの持つ力が人々を勇気付けることを強調し、東京におけるオリンピック・パラリンピック開催への支援を表明しました。
 さらに、日本において語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)経験者も多数参加しました。JETプログラム経験者の会ニューヨーク支部代表が挨拶を行い、東京に訪れた際にその素晴らしさを実感したことに触れ、東京がオリンピック・パラリンピック開催することを心から期待すると述べました。
 このレセプションは、ニューヨークに在住する日米の多くの方の参加を得て、東京の魅力や2020東京オリンピック・パラリンピック招致を訴えるとともに、有意義な情報交換の場となりました。

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ウィリー・バンクス氏と握手する知事 レセプションの模様

4月18日(木曜)〜4月19日(金曜)

 4月18日正午過ぎにニューヨークを出発し、19日午後に成田空港に到着しました。