舛添前知事「知事の部屋」

ごあいさつプロフィール施政方針記者会見活動の紹介知事と語ろう知事の海外出張交際費

施政方針

平成26年2月26日更新

平成26年第一回都議会定例会知事施政方針表明

 平成26年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 天皇皇后両陛下におかれましては、昨年10月の台風第26号の被害に対し、12月19日、お見舞い金を賜りました。また、全島を挙げて復興に取り組んでいる大島町へ、明後日、行幸啓されます。都民を代表して、両陛下に心からの感謝を申し上げます。

1 はじめに

 このたび、都民の皆様のご支持をいただき、東京都知事の重責を担うことになりました。改めて身が引き締まる思いであります。本日、ここに、一千三百万都民を代表される都議会の皆様にご挨拶できますことを、大変光栄に存じます。
 選挙を通じて、福祉・医療の充実や防災力の強化、2020年オリンピック・パラリンピックの成功などを都民の皆様に訴えてまいりました。都内をくまなく回り、様々なお話を伺う大変貴重な機会を得ることができました。これからも現場を重視して、こうした地域の声を都政に反映させてまいりたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

(努力と汗が正当に報われる社会に)

 街頭演説の最中に、年配の女性が私のところに近づいて、こう話しかけてくださいました。「ありがとう。あなたが、ねんきん特別便を送ってくれたおかげで年金を取り戻すことができました。」という感謝の言葉でありました。その時、私は、「政治の道を志して本当に良かった」と心底、思いました。寒い中、わざわざ足を運んで、声をかけてくださったのであります。
 一生懸命働いて、年金の掛金を支払ってきた。そして、やっと年金を受け取る年齢になって、掛金を払った記録が消えていたのです。単に年金を受け取れなかったということだけに国民の皆さんは怒ったのでしょうか。それだけではないと思います。自分の歩んできた人生を、これまでの努力と汗を否定された、裏切られた気持ちになったのだと思います。
 額に汗して積み重ねた努力が正当に報われる。そう信じることができる社会であるからこそ、人は将来に夢と希望を持つことができます。その信頼を担保し、人々に明るいビジョンを提示するのが、政治の役割であります。知事として、改めてこれを肝に銘じ、全力でその重責を全うしてまいります。

(政府と力を合わせる)

 ここ東京は、日本の首都であります。日本の中心を守り、盛り立てていくため、政府と力を合わせていきます。国政で培ってきた経験や人脈もフルに活かしてまいります。
 私は、国をただ悪し様に批判するような姿勢はとりません。一見勇ましい批判が、時に喝采を浴びたとしても、それが都民生活の向上に繋がらなければ全く意味がありません。政治は決して個人の趣味で行うものではありません。必要なものはリアリズムと実行力であります。そして、その結果の責任をとる。これが政治の基本であり、地方分権の前提でもあると考えております。
 国家的大事業であるオリンピック・パラリンピックの開催準備はもとより、都民・国民のため、政府と一緒になって知恵を絞り、しっかりと力を合わせる。もし政府が動かなければ、東京が先陣を切って遠慮なく改革を進め、国を突き動かし、日本全体に改革を波及させていきます。

(地方自治体のリーダーとして)

 東京都は、これまで以上に、地方自治体のリーダーとしての自覚、同時に地方の一員であるという意識を持つことが必要であります。
 高度に発達した現代の社会において、それぞれの都道府県という殻の中に閉じこもったままでは、解決できる問題も限られてきます。防災の問題しかり、環境の問題しかり、エネルギーの問題もまたしかりであります。そのため、首都圏の九都県市をはじめとする大都市や他の道府県との連携を重視してまいります。東京が持つ政策のノウハウは進んで提供し、自らも汗をかくことで、共通する問題の解決に貢献していきます。逆に、相手側の良い取組は積極的に取り入れて、互いに切磋琢磨していく関係を築いていきたいと思います。
 東京がお世話になってきました福島県や新潟県など電源立地県への感謝の気持ちも忘れず、東北の被災地の復興も強力に後押ししてまいります。

2 世界一の都市・東京を目指す

 今回の議会は、知事に就任して初めての都議会であります。まずは、私が目指す東京の姿を中心に、申し述べさせていただきます。
 首都東京は、日本の成長と発展の起点たるべき存在であり、日本のみならず世界の大都市のモデルになると確信しております。しかし、民間の研究機関が発表している世界の都市ランキングによりますと、東京は、1位のロンドン、2位のニューヨーク、3位のパリに次ぐ世界第4位の都市という地位に甘んじております。6年後のオリンピック・パラリンピックという目標を掲げ、東京を世界一の都市に引き上げたい。
 そのために、この任期中、まずは「3つの世界一」に向けて、重点的に取り組んでまいります。

(世界一安全・安心な都市)

 第一に、東京を「世界一安全・安心な都市」にするために取り組みます。
 知事の最大の使命は、都民の生命と財産を守ることであります。首都直下地震など、震災への備えを万全にしていかなければなりません。都内の主要道路は、災害時の救援活動や、その後の復旧・復興に欠かせない大動脈となります。これを塞がないよう、その沿道にある建物の耐震化や無電柱化を推進します。火災による被害を少なくするためにも、地元区と共に、木造住宅密集地域の改善を強力に進め、延焼をくい止める道路も整備していきます。また、消防力の強化に加え、町会・自治会など地域の防災力を高めてまいります。さらに、食料や飲料水の家庭での備蓄を促すなど、自助・共助の力も最大限引き出してまいります。
 厚生労働大臣の時に、新型インフルエンザという未知の脅威と対峙しました。その時の経験からしても、正確な情報の提供こそが危機管理の要諦であります。自分の置かれた状況が把握できないほど、人を恐怖に陥れるものはありません。一方、状況が理解できれば、日本人は驚くほど我慢強く、手に手を取って行動を始めます。東日本大震災でも、人々は皆で力を合わせ、整然と行動しました。新型インフルエンザの時も、みんなが手洗い・うがいを徹底し、さらに、迅速かつ的確な学級閉鎖を行い、児童・生徒間の濃厚接触を避けたことにより、感染の拡大を防ぐことができました。日本人は、本当に素晴らしいと思います。情報は組織の上位のリーダーから伝えられるほど、信頼性が高くなります。いざ災害の時には、私自身が陣頭指揮を執って、迅速に対応することを約束いたします。
 さらに、日本の首都・東京には、あらゆる危機が潜んでいるといっても過言ではありません。危機が現実になった時の被害も、甚大であります。警視庁、東京消防庁、政府、区市町村、民間などがスクラムを組んで、テロ対策の体制整備を進めるなど、首都の危機管理を世界最高水準に引き上げてまいります。

(世界一の福祉先進都市)

 第二に、東京を「世界一の福祉先進都市」にいたします。
 私は、認知症を患った母親の介護を経験して、この苦労、家族ですらバラバラにしかねない苦しみを、もはや何人にも味わわせてはならない、その強い思いが政治の道を歩む原点でありました。「政治は強い者のためでなく弱い者のためにある」、これが私の政治哲学であります。
 オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年をピークに東京の人口は減少に転じます。その先にある2025年には、都民の4人に1人が65歳以上の高齢者になります。そして、私のような戦後生まれの団塊世代は75歳以上の高齢者になるのであります。この現実を前に、ともすれば、高齢社会は負担がのしかかる暗い社会と考えがちです。だからこそ、政治は現実を見据えて準備し、自助・共助・公助、この3つの力を組み合わせて、そこに夢と希望を吹き込まなければなりません。
 東京に生まれて本当に良かった、東京で生活し、子供を育て、仕事を続けられて本当に良かった、そして最期に自分の人生を振り返った時に、本当に充実した幸せな人生だったと、誰もが心から感じていただけるような東京を創っていきたいと思います。健康長寿が人類普遍の願いであるならば、私たち日本人はそれに最も近いところにあります。誰もが生き生きと働き活躍できる場を広げ、オリンピック・パラリンピック開催を契機として、スポーツを都民に一層身近なものにしていくことで、生涯健康社会を目指してまいります。
 社会の活力を高めるためには、女性の活躍が不可欠であります。これまで、ややもすると、女性は子育てや介護に忙殺され、折角の能力を思う存分発揮することができませんでした。本来、男性も積極的に関わっていかなければならない問題であります。ワーク・ライフ・バランスを推進し、男性も女性も働きながら育児や介護のできる環境づくりを進めます。
 さらに、この4年間の任期中に、保育サービスを増やして、現在、 8000人いる都内の待機児童をゼロにいたします。介護につきましても、地域包括ケアの考え方に基づいて、在宅での医療や介護の体制、地域での見守りなどを充実させて、あたかも地域全体が介護施設であるかのように、サービスを行き渡らせます。同時に、都有地の活用など色々な知恵を出し、特別養護老人ホームの定員も大幅に増やします。介護を受ける方々にとっても、その家族にとっても、様々なメニュー・選択肢があった方が良いと思います。介護は、家族で抱え込むのではなく、介護のプロや地域の力など周囲の助けを借りる。そこから、家族に精神的・身体的な余裕が生まれて、より一層の愛情を注ぐことができる。そういう環境を創っていきたいと思っております。

(史上最高・世界一のオリンピック・パラリンピック)

 第三に、「史上最高・世界一のオリンピック・パラリンピック」の実現に向けて取り組みます。
 日本の近現代史を振り返れば、我が国は二度、外圧によって大きな変革を迫られました。まず一度目は19世紀のペリー提督の黒船来航、二度目は1945年の太平洋戦争の敗戦です。しかし、21世紀は、外からではなく、日本の中心、首都東京から変革のうねりを巻き起こしていきたいと思います。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、そのための絶好の機会であります。先ほど申し上げた都市のランキングでも、1位はニューヨークではなくロンドンであります。ロンドンはまさに、オリンピック・パラリンピック開催を起爆剤として、世界一の都市に登りつめたのであります。そして、今度は東京の番です。
 ソチオリンピックの閉会式にも出席して、昨日、帰ってまいりました。吉野利明議長と私は、トーマス・バッハ会長、ジョン・コーツ副会長をはじめIOC幹部の方々と会談し、今後の協力をお願いするとともに、東京が確実に、安全な大会を開催することを約束いたしました。また、多くのIOC委員の方々と直接お話しする機会も得て、基本的な信頼関係を築くことができたと思っております。現地では、選手や観客に対するおもてなしと厳しいセキュリティチェックをはじめとした完璧な大会警備とを、どう両立しているのか、さらにロシア語以外の言語では意思疎通ができないという問題も、肌で感じてまいりました。東京大会を成功に導くため、今回の経験を、是非役立てていきたいと思います。大会開催までのあと6年半、組織委員会、JOCなどのスポーツ界、政府、経済界などオールジャパンの体制で取り組んでまいります。
 東京都は、開催都市としての責務を果たすべく、競技会場や道路インフラの整備、安全な大会運営の確保など、着実に準備を進めていきます。高齢者や障害者をはじめ、誰もが安心して街に出掛けられるよう、バリアフリーのまちづくりを進め、鉄道駅のホームドアも整備していきます。さらに、外国人にとっての「言葉のバリア」も取り除くなど、ハード・ソフト両面から東京の街のバリアフリー化を徹底します。再生可能エネルギーの導入も推進し、環境技術をはじめ日本が持つ最高の技術力や、素晴らしい「おもてなし」、四季折々の自然が育んだ日本文化を世界に発信してまいります。
 2020年大会を史上最高のものとするため、都民・国民の力を一つに結集したいと思います。都議会の皆様方のお力添えをよろしくお願い申し上げます。

(日本経済の機関車として)

 そして、東京オリンピック・パラリンピックの開催準備を起爆剤にして経済に力を与え、富を新しく創り出して、福祉・医療や防災・治安対策の財源にしていく。さらには、その果実が全国に、東北の被災地に行き渡って、日本全体を元気にする。日本経済を再び成長の軌道に乗せる。それこそが首都東京の使命であります。
 東京には素晴らしい技術を持った企業や、優れた人材が集積しています。こうした潜在力を最大限引き出さなければなりません。環状道路や多摩地域の南北を結ぶ道路など、必要なインフラを整備しながら、高度経済成長期に整備された首都高速など、老朽化したものについては、適切な措置をとっていく必要があります。世界との玄関口である羽田空港の機能も強化していかなければなりません。東京の中小企業を応援する産業政策を積極的に展開し、さらに国家戦略特区によって、東京を世界で一番ビジネスのしやすい都市にしていきます。そして、東京が機関車として日本経済を力強く牽引していくのであります。
 先般、理化学研究所の小保方晴子さんを中心とするチームが、より簡便な方法で万能細胞を作製することに成功しました。「STAP細胞」という画期的な研究成果であります。こうした若い、素晴らしい才能を伸ばしていかなければなりません。教育の改革を進めることで、世界をリードするグローバル人材を東京から育ててまいります。

(新たなビジョンの策定)

 さらに、私が都民の皆様に特に強く訴えてきた少子高齢化対策、総合的な交通政策、再生可能エネルギーの拡大を含めた環境政策、芸術文化の振興、多摩・島しょ地域の振興、まずは、この5つの課題について、政策の具体化に向けた検討を始めるように指示をいたしました。そして、都議会の皆様とも議論を重ね、年内に新しいビジョンを策定いたします。目指すべき東京の将来像を明らかにし、達成すべき政策目標と、そこに至る具体的な工程表を示してまいります。

3 多摩・島しょ地域の振興と大島の復興

(多摩地域の振興)

 続いて、多摩・島しょ地域の振興について申し上げます。
 今回の選挙で、いかに東京が広いかを改めて実感いたしました。23区より広く、豊かな自然に恵まれた多摩の発展は、東京を世界一の都市へと押し上げるために必要不可欠であります。
 そのために、就任後直ちに秋山副知事を多摩・島しょ地域の担当に任命いたしました。早速、今回の大雪で孤立した集落について副知事に対応を指示いたしました。
 今後、副知事と共に、自らも多摩地域を回りたいと思います。医療や介護、子育ての現場、中小企業、都市農業、多摩には多くの大学もあります。ニュータウンの再生や交通体系をどうしていくかという大事な問題もあります。地を這うアリの目をもってつぶさに現場を見つめ、そこに暮らす都民の皆様方の声を直接受け止めて、地域が抱える問題にきめ細やかに対応してまいります。同時に、空を飛ぶ鳥の目で、東京全体を、さらには日本全体を俯瞰する視点を持ちながら、多摩の発展に力を尽くしてまいります。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを、世界の人々が多摩地域を訪れる機会ともしてまいりたいと考えております。人々を、緑あふれる環境と最高のおもてなしでお迎えする。たとえば、各国選手団の事前キャンプを誘致し、その国と多摩の人々との新しい交流が生まれれば、大変素晴らしいと思います。都として市町村の取組を力強く支援し、多摩の魅力を世界にアピールしてまいります。

(大島の復興と島しょ地域の振興)

 次に、昨年10月の台風26号により、甚大な被害を被った大島の復旧・復興に向けた取組について申し上げます。
 先月、大島の被災現場を自分の目と足で確認いたしました。被災された方々に心からのお見舞いを申し上げ、いまだ災害の傷跡が生々しい大島の姿に、迅速な復興への決意を強くいたしました。本定例会に提案しております平成25年度補正予算案と平成26年度予算案には、インフラの復旧や産業の活性化など、大島の復興を全面的に支援するための予算、合わせて149億円を計上いたしました。特に、島の観光を支援するため、「椿まつり」のこの時期、観光キャンペーンの展開や旅行者の運賃割引に、切れ目無く取り組んでまいります。

 大島に限らず、太平洋の火山帯に位置する東京の島しょ地域は、時に厳しい自然と直接向き合う事態が起こります。かつては、大噴火により約半世紀にわたって島を離れながら、帰還を果たした青ヶ島のような例もあります。島に住む方々は、そうした自然の厳しさに直面しながら、独特の文化を育んできたのであります。自然と一体となった島しょ地域を守るため、全力を挙げて防災対策に取り組んでまいります。東京の島の、時には厳しく、しかし美しい自然を自身の目で確かめながら、振興策を練り上げていきたいと思います。

 「多摩・島しょが元気にならなければ東京の発展はない」。この決意で、市町村とも力を合わせて、取り組んでまいります。

4 平成26年度予算案

 次に、平成26年度予算案について申し上げます。
 この予算案は、約50日間にわたって知事が不在という状況の中で、職務代理者が都議会のご意見も伺った上で整理した、暫定案を基調に編成いたしました。都政停滞の影響は、現代社会の複雑に絡み合ったメカニズムの中で、瞬く間に各所に波及し、都民生活に重大なしわ寄せを与えます。都政を預かる者として、そのような無責任なことはできません。
 もとより限られた時間の中でありましたが、職員と忌憚のない議論を交わし、保育所の整備費補助の拡充、救急医療の充実強化、新たな家庭用防災マニュアルの作成、2020年に向けて自転車レーンの整備を加速させることや、再生可能エネルギーをさらに普及させるための新しいファンドの創設など、都民の皆様にお約束した事柄で、すぐに始められるもの、その端緒を開くことができるものについては、予算案に盛り込みました。今回、新たに蒔いた種を、これから大きく育て上げたいと思っております。
 予算規模は13兆3千億円。東京都が持つ力の大きさ、同時に責任の重大さを改めて実感いたしました。起債依存度の低さ、基金の残高など、国と比べても、東京都財政は健全性を維持しております。しかし、法人関係の税収に多くを頼る財政構造であり、不況時には税収の減少が財政を直撃し、過去に幾多の危機に陥りました。都財政の健全性を維持することが都民福祉を向上させるための大前提である。これを肝に銘じてまいりたいと思います。

 なお、本定例会には、4月からの消費税率の引き上げに伴い、水道料金、下水道料金、卸売市場の使用料などを改定する条例案を提案しております。効率的な経営と都民サービスの向上に一層努めてまいりますので、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

5 おわりに

(都議会との緊密な意思疎通)

 これまで、政策を中心に、私が目指します東京の姿について申し上げてまいりました。しかし、言うまでもなく、政治は「結果責任」であります。いかに素晴らしい理想や言葉を並べても、実現できなければ何の意味もありません。
 都政を前に進め、都民生活の向上に繋がる政策を実現し、東京を世界一にしていくためには、共に都民の代表である知事と議会が、緊密に意思の疎通を図ることが絶対に欠かせません。このことを骨身に刻んで、皆様と真摯で建設的な議論を積み重ねながら、都政の舵取りを行っていきたいと思います。都議会の皆様のご協力を、何卒よろしくお願い申し上げます。

(東京を元気にし、日本全体の活力に繋げるために)

 ソチで開かれた2014年冬季オリンピック大会では、フィギュアスケートの羽生結弦選手の金メダル獲得をはじめ、銀メダル4個、銅メダル3個、合計8個のメダルという素晴らしい活躍を見せてくれました。これは、海外で行われた冬季オリンピックでは最高の成績でした。もうすぐ開かれるパラリンピックでも、日本の選手が大活躍することを期待しております。国際大会で日本人が頑張る姿を見ると、私たちは感動し、勇気づけられる。見ている我々も元気になります。
 政治も同じです。良い政策を展開することで、人々は元気になり、働く意欲も湧いて、成果が出てもっと頑張る。それが国全体の活力に繋がるのであります。希望のないところに未来はありません。だからこそ、世界一の都市・東京を目指すのであります。

 今回の選挙では、行政を司る者に求められるものは何かということが大きく問われました。マックス・ウェーバーは、「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわじわと穴をくりぬいていく粘り強い作業である」と言いましたが、まさに至言だと思います。厚生労働大臣として、年金記録問題、薬害C型肝炎など困難な問題にも取り組んでまいりました。その経験から申し上げても政治や行政の現場は、派手なパフォーマンスや劇場型の政治手法で動くものではありません。
 私は、都民の大きな負託に応えるため、様々な意見に耳を傾け、声なき声にも、しっかりと耳を澄ましてまいります。東京都職員16万5千人の力を引き出し束ね、たとえ困難な道であっても、地に足をつけて前へと歩みます。そして、その評価は歴史の審判に委ねる覚悟であります。その覚悟と勇気を持つ者だけが、都民・国民に明るい未来と本当の幸せをもたらすことができると、確信しております。
 東京が変われば、日本は必ず変わることができます。その志を持って、全身全霊、力を尽くしてまいります。皆様のご協力を重ねてお願いするものであります。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案32件、条例案89件など、合わせて131件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどをお願いいたします。

 以上をもちまして、私の施政方針表明を終わります。ご清聴ありがとうございました。