舛添前知事「知事の部屋」

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施政方針

平成27年9月18日更新

平成27年第三回都議会定例会知事所信表明

 平成27年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 はじめに、7月26日に発生した航空機の墜落事故について申し上げます。調布飛行場から離陸した飛行機がこのような事故を起こしたことは誠に遺憾であります。被害に遭われて亡くなられた方のご冥福を心からお祈りするとともに、そのご家族や怪我をされた方、また家屋の被害を受けられた方に心からお見舞いを申し上げます。現在、国土交通省及び警察が事故の原因を調査しております。調査結果を踏まえ、地元市のご理解とご協力を得ながら、再びこのような事故が起こらないよう、調布飛行場の安全対策を強化してまいります。

 ただいま、立石晴康議員は、栄えある永年在職議員表彰をお受けになりました。都政の発展に尽くされた30年間のご功績に対し、深く敬意を表しますとともに、心からお喜び申し上げます。

 このたび名誉都民の候補者として、中根喜三郎さん、福原義春さん、八千草薫さんの三名の方々を選定させていただきました。
 中根喜三郎さんは、素材の選定から漆塗りまで全ての工程を手掛ける江戸和竿師として匠の業一筋に精魂を傾け、また、江戸和竿協同組合の理事長として、江戸以来の伝統技術の継承に尽力してこられました。
 福原義春さんは、経済界での活躍はもとより、芸術文化に造詣が深く、企業による芸術文化支援活動の発展に力を注ぎ、東京都写真美術館館長や東京芸術文化評議会会長としても、その振興に尽力してこられました。
 八千草薫さんは、数々の名作に出演している日本を代表する実力派女優であり、弛まぬ努力に裏打ちされた演技力は、幅広い世代を魅了し、長きにわたり活躍を続ける姿が、人々に希望と活力を与えておられます。
 お三方は多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いをいたします。

1 21世紀の新たなベクトルを示す

 さて、日本は、1964年東京オリンピックを成功させ、高度経済成長を成し遂げて豊かな社会を築き上げました。しかし、豊かさの裏側では、モータリゼーションの発達による交通渋滞や公害の発生、長時間労働など、成長の負の側面が生まれていたことも、事実であります。そして、バブル崩壊以降は、20年にわたるデフレ経済の停滞の中で、少子高齢化・人口減少、グローバル化など社会構造の変化が進み、また、東日本大震災も発生しました。5年後には、再びオリンピック・パラリンピックを迎えます。前回を成長の中での大会とするならば、今回は成熟の中での大会であります。この大会をきっかけに、東京と日本はさらなる高みの成熟を目指さなければなりません。
 成長一辺倒の時代から、デフレ経済の停滞を経て、今後、日本が目指すべきは、持続的な成長とゆとりある暮らしを両立した社会であります。そこでは、東京は、常に活力に満ち、絶えず進化を遂げる中からゆとりを生み出していきます。仕事の効率性が高まり、ワーク・ライフ・バランスが実現して、人々は富と時間を使って、仕事にも、家庭にも、趣味にも充実した生活を送っております。
 こうした社会を築くためには、成熟社会にふさわしい新たな政策が必要となります。高度経済成長以来の政策を見つめ直し、負の遺産を克服していかなければなりません。少子高齢化やグローバル化といった時代の流れを捉えて、安全・安心などの課題にも的確に対処することが必要であります。そして、高い付加価値を生み出す成長戦略を展開していくことが求められます。東京は、先進的な施策で、21世紀の新たなベクトルを指し示してまいります。

2 ゆとりある成熟都市に向けて

(成長の負の側面を克服する)

 まず、経済成長が引き起こした環境問題、交通渋滞、長時間労働など、負の側面を一つひとつ取り払い、プラスに変えることが、東京をさらなる高みの成熟に導きます。

〈環境問題への対応〉

 環境問題への対応は、水素の活用が一つの鍵になると考えております。燃料電池バスにつきましては、先日、都営バスでの営業運行に向けた課題を洗い出すため、実証実験を行いました。私も試乗しましたが、音の静かさに加えまして、ギアチェンジがないために揺れが少なく、子供や高齢者に優しい、成熟社会にふさわしいものだと確信いたしました。2020年大会の輸送手段としても、大いに活用していきたいと考えております。
 水素社会の実現には、インフラ整備や安全性への理解促進など様々な課題がありますが、とりわけ、国による規制緩和は必要不可欠であります。例えば、水素ステーションの設置に当たり、道路から8メートル離さなければならないという規制が、土地の値段が高い東京では大きなネックとなっております。国に対して、さらなる規制緩和を求めるなど、着実に取組を前へと進めてまいります。
 また、今年の夏は、東京の猛暑日の連続記録が更新されるなど、大変、暑い日が続きました。2020年大会に向けて暑さ対策を進めることは、東京を過ごしやすい都市に変えることにも繋がります。国や組織委員会との連絡会議では、競技会場での対策や救急医療体制の整備など、それぞれの取組を確認いたしました。今後、庁内横断の推進会議を設置し、道路に遮熱性舗装や保水性舗装を施すなど対策を加速してまいります。
 さらには、街路樹や公園を整備して緑を増やし、省エネルギーやCO2削減も進めるなど、人類共通の課題である環境問題に対して、総合的な施策を展開してまいります。

〈ディモータリゼーション〉

 車中心のモータリゼーション社会からの転換も進めてまいります。中央環状品川線の開通は、道路事情を大幅に改善いたしました。今後も、外環道の整備や高速道路の料金体系の見直しを進め、都内に用事のない通過交通を周辺に振り向けるなど、世界で初めての渋滞のない大都市を目指してまいります。同時に、自転車走行空間の整備やシェアサイクルの促進などの自転車政策で、東京を健康的で環境に優しい都市にしていきたいと思います。
 さらに、道路をより楽しく、賑わいのある空間へと変えてまいります。丸の内と日本橋室町の仲通りでは、車両の進入を規制した歩行者空間の設定により、ゆっくりと街歩きが楽しめるようになりました。丸の内行幸通りでは、今月、日本文化を発信する観光イベント「JAPAN NIGHT 2015」が開催されます。これは、特区の規制緩和で実現したものであります。今回は、地元企業などからなる地域団体が主体となって、事業収益を道路の管理や街の魅力向上に活用するパブリックエリアマネジメントの社会実験も兼ねております。道路活用の新たな仕組みを、今後、他の地域にも拡大し、一層の賑わいを創出してまいります。

〈水の都・東京の実現〉

 戦後の開発によりまして、東京の川は埋め立てられ、暗渠となり、あるいは高速道路に覆われることになりましたが、かつて江戸は「水の都」でありました。暑い夏には納涼のために屋形船を隅田川に浮かべ、また、玉川上水の木製の配水管は市中を潤しておりました。
 東京を再び「水の都」として甦らせたいと思います。今年の夏、葛西海浜公園では、50年ぶりに海開きが行われました。下水道技術の進歩による東京湾の水質改善と、地元の方々の海を甦らせたいという思いが結びついた成果であります。自然が身近にある大都会というのが、東京の大きな魅力となっております。また、江戸城の名残を今に伝える内濠・外濠では、大雨の際に流れ込む下水の量を大幅に減らすことで水質を改善し、歴史を感じる水辺空間としてまいります。舟運、船ですね、舟運の活性化に向けても、地元区や学識経験者、舟運事業者と共に航路の検討・検証を進め、「水の都・東京」を世界にアピールしていきたいと思います。

〈ワーク・ライフ・バランスの実現〉

 仕事の生産性を高め、長時間労働などの働き方を見直せば、子育てや趣味を楽しむ時間が生まれ、人生は豊かになります。ゆとりある成熟社会を目指すには、ワーク・ライフ・バランスの実現が欠かせません。
 先日、女性の活躍推進と働き方の見直しをテーマに、「女性が輝くまち・東京シンポジウム」を開催いたしました。第一線で女性の活躍を推進する方々と、プライベートを充実させることの重要性、家事・育児サービスの活用、出産・育児を社会で支える意識改革などを議論いたしました。この成果は、今年度策定いたします「女性活躍推進白書」にも反映してまいります。今年からは、慣例に囚われず自らの発想と行動力で女性活躍の機会を切り拓いた方の表彰も始めます。優れた取組やロールモデルの発信が、社会を変える大きな推進力になることを期待しております。
 「女性が輝く社会は、同時に男性も輝く社会」であります。男性も女性も、皆が活躍できる都市に東京を変えていきたいと思います。

(時代の流れに的確に対処し、質の高い都民生活の基礎を築く)

 次に、少子高齢化やグローバル化という時代の流れに的確に対処しなければなりません。安全・安心も確保して、都民生活の質を向上していくことが、ゆとりある成熟に繋がってまいります。

〈少子高齢化対策〉

 待機児童につきましては、今年4月1日現在、7814人となり、3年ぶりに減少に転じましたが、依然、保育サービスは不足しております。先日、改正国家戦略特区法が施行され、かねてより提案いたしておりました公園への保育所設置が実現可能となりました。荒川区、世田谷区などでは、具体的な動きも出始めております。東京都として、地元ニーズを踏まえながら、公園の活用を進めてまいります。事業所内保育所の設置を促進するためのシンボル的な取組であります都庁内保育所についても、運営事業者が決定いたしました。待機児童ゼロに向けて全力で取り組んでまいります。
 急速に進行する高齢化への対応も進めてまいります。高齢者が住み慣れた地域で生活できる地域包括ケアシステムを構築するため、現在、検討会議を設置し、新たな施策形成に繋がる議論を行っていただいております。来月を目途に中間のまとめを、年度内には最終的な取りまとめを行う予定であります。また、地域で認知症の人とその家族を支援するには、医療と介護の連携が不可欠であります。今回新たに、認知症疾患医療センターを29か所指定し、今月から都内41か所で運営しております。NPOなど様々な民間団体や人材が集まる東京の特性を活かして、大都市ならではの地域包括ケアシステムの構築を進めてまいります。

〈安全・安心の確保〉

 続きまして、安全・安心の確保であります。
 先週の台風18号による大雨は、北関東から東北にかけて大きな被害をもたらし、警視庁、東京消防庁及び稲城市消防本部の部隊や、都内病院の医療救護班が救助・救援活動に当たりました。また、東京都内でも、一部で床上浸水・床下浸水などが発生しました。都は昨年、豪雨対策基本方針を改定し、区部では時間75ミリ、多摩では時間65ミリの集中豪雨などに対応することとしております。今後ともこの方針に基づき、豪雨対策や土砂災害対策に着実に取り組んでまいります。
 首都直下地震をはじめ、災害に対して被害を最小限に抑えるためには、自助・共助の力を高めることが肝要であります。そこで、防災ブック「東京防災」を作成し、今月から各家庭に順次お届けしております。東京の地域特性や都市構造、ライフスタイルを考慮して事前の備えや発災時の対処法を掲載するなど、すぐにでも活用できる内容でありまして、都内の各消防署では、「東京防災」を使ったセミナーも毎週開催しております。また、都内の全学校で、「東京防災」と連係した「防災ノート」を活用し、「学校でも家庭でも学ぶ」防災教育を推進してまいります。なお、この「東京防災」がまだ届かないんだというお問い合わせがたくさんまいっておりますが、順次、各家庭にお届けしております。大変、おかげさまで好評で、老若男女、皆さん、これは是非、早くくださいということなんで、全力を挙げて、各家庭に急いで配布したいと思っております。今月1日に立川市と合同で実施しました総合防災訓練の際には、この「東京防災」を安倍総理に直接お渡しいたしました。今後も、政府や地元自治体などと連携しながら、木密地域の不燃化や建築物の耐震化といったハード面も含めた取組を進め、災害対応力を高めてまいります。
 テロ対策も強化いたします。来年は、三重県で伊勢志摩サミットが予定されておりますが、過去には開催地から遠く離れた首都でテロが発生した事例もあります。サイバー攻撃への対策も含め、東京の守りに万全を期してまいります。都庁舎のセキュリティも、先般、試行した手荷物検査の実施状況や専門家の意見を踏まえ、都民の利便性にも配慮しながら、本格的な対策を実施してまいります。ご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

〈都市外交の展開〉

 経済的にも、文化的にも、国際化が進展するグローバル時代への対応は、東京の今後を大きく左右いたします。同じ課題を抱える海外都市との協力・交流を通じて、東京をさらに高めていきたいと思います。
 東京は、都市の課題を解決する過程で磨いてきた先進技術、ノウハウを数多く有しております。集中豪雨に備える地下調節池や道路の陥没発生防止対策など、これまで蓄積してまいりました技術を整理し、先般、「Tokyo Tech Book」としてまとめました。都市外交を展開する中で、課題解決の事例を海外諸都市に紹介して活用してもらい、国際社会に貢献していきたいと考えております。見開きで日本語と英語、両方書いておりまして、これまでも海外のお客様に差し上げましたところ、大変、これまた好評をいただいております。
 さらに、ロンドン市との友好都市関係の結成について申し上げます。
 昨年のボリス・ジョンソン市長との面会以来、協議を進めてまいりましたが、今般、基本的な合意に達しましたために、本定例会に議案を提案しております。ロンドン市は、2012年オリンピック・パラリンピック大会を契機に、世界のトップに上り詰めた都市であります。この友好都市関係は、両都市に大きな恩恵をもたらしてくれると確信しております。都議会の皆さんのご同意がいただければ、予定されておりますボリス・ジョンソン市長の来日に合わせて、都庁で正式調印をしたいと考えております。ご審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

〈東京の未来を切り拓く教育政策〉

 時代の課題に向き合い、明るい未来を切り拓く主役は今の子供たちであります。まず、世界を舞台に活躍できる人材を育成していかなければなりません。「英語村(仮称)」の設置や小学校からの英語教育の充実など、国際色豊かな教育環境を整えてグローバル人材の育成を推進することが、これからの教育における一つの柱だと考えております。
 オリンピック・パラリンピックは、子供たちの人生にとって、かけがえのない糧となる、絶好の機会であります。先月発表された、オリンピック・パラリンピック教育に関する有識者会議の中間のまとめを踏まえ、来年度からは都内全校で取組を開始いたします。全ての子供が大会に関わり、体験、行動することを通じて、自己肯定感や積極性、国際感覚を養ってまいります。
 人生においては、自分で考え、自ら乗り越えなければならない問題に、何度も直面いたします。特定の分野に偏らずオールラウンドに物事を理解できる力が必要であり、その前提となる基礎学力や思考力・判断力を伸ばしていかなければなりません。習熟度別授業を推進し、放課後の補習を充実させるなど、一層の学力の向上を図ってまいります。
 学習の遅れは、不登校・中途退学という教育の大きな問題の引き金の一つとなっております。都立高校では、不登校・中途退学の経験がある生徒のためのチャレンジスクールが大きな成果を上げております。今後、小中学校におきましても、こうした子供を支援する仕組みを区市町村と連携して検討するなど、対策を進めてまいります。不登校・中途退学は、非正規雇用を余儀なくされるといった問題にも繋がりかねません。この流れを断ち切るためにも、子供一人ひとりに応じた、きめ細かな教育を展開してまいります。
 また、近年はSNSを長時間利用する子供が増加し、学習への影響や陰湿ないじめの温床となる看過できない状況も現れております。適正な利用のルールづくりなど、対策の検討を進めてまいります。
 こうした東京の教育のあるべき方向性を、現在、教育委員会との議論を通じて練り上げておりまして、年内には、教育の根本方針となる大綱を策定してまいります。

(東京発展のための成長戦略)

 高い付加価値を持つ産業を振興し、新たな富を生み出すことで、ゆとりと活力のある明るい未来を確実なものとしてまいります。

〈観光を一大産業として位置づける〉

 近年、日本を訪れる外国人旅行者が急増しており、これは、東京の魅力を世界に発信する絶好のチャンスでもあります。
 昨年に引き続き、来月、テイスト・オブ・トーキョー「東京味わいフェスタ2015」を開催いたします。今回は、丸の内に加え有楽町・日比谷にもエリアを拡大し、東北地方をはじめ全国の特産品も紹介・販売するなど、特色あるイベントが展開されます。江戸前寿司と世界の寿司、そして、TOKYO Xとイベリコ豚の特別料理も披露いたします。また、ハラール食のコーナーを新たに設け、国際都市としての姿を発信してまいります。これまで難しかったメロンの水耕栽培を実現した、これは町田市の技術ですが、工業と農業の融合による新しい技術なども紹介いたします。東京の多彩な魅力を、是非、多くの方々に堪能していただきたいと思います。
 都内には、まだまだ私たちが気づいていない魅力もたくさん隠されています。例えば、将門塚などの旧跡や神社仏閣、都内の各地の祭りといった、伝統、歴史の奥深さは、何度も東京を訪れている外国人旅行者をも惹きつける、格好の材料だと思います。地域に眠る観光資源を呼び覚まし、多くのリピーターの獲得に繋げてまいります。
 また、先日、国際会議に参加した外国人を対象に、青梅市の酒蔵見学や利き酒体験、美術鑑賞を盛り込んだツアーを実施し、大変、好評を得ました。こうした企画を進めMICE誘致などに組み込むことで、自然と共生する多摩・島しょ地域の大きな魅力をアピールしたいと思います。
 裾野が広い観光分野の振興を図り、「稼ぐ力」を高めて、観光を東京の一大産業に育ててまいります。

 東京の玄関口・羽田空港の機能強化は、極めて重要であります。都心上空を飛行する案については、国が先般、説明会を都内各地で開催したところであります。都は、引き続き、騒音の影響を軽減する方策の検討や徹底した安全管理を求めると同時に、地元の理解が深まり、機能強化に関する協議が円滑に進むよう、積極的に協力してまいります。

〈成熟の中での都市の発展〉

 先日の国家戦略特区の区域会議では、都市計画法の特例を使った都市再生について、新たに3地区が認定されました。八重洲地区では、東京駅と国際空港、地方都市とを結ぶ日本最大級の地下バスターミナルや、周辺市街地を結ぶ歩行者ネットワークの整備などが計画されております。虎ノ門ヒルズに近い愛宕地区でも、外国人のニーズに対応した住居やサービスアパートメントを整備するプロジェクトが予定されております。
 ビジネス拠点やMICE拠点の形成、外国人が暮らしやすい生活環境の整備などにより、時代のニーズに応じた活気溢れる街並みが次々と生まれつつあります。2020年の先にも東京の街が常にリノベーションされ、社会の成熟に見合った姿に進化していくよう、都市再生の動きをさらに促進してまいります。

〈東京だからこそできる成長戦略〉

 金融やロボット、ライフサイエンスは、知恵を駆使して高い付加価値を生み出す産業であり、これからの成熟社会を代表する分野であります。
 国や金融業界など関係者と共に「東京国際金融センター推進会議」を継続的に開催し、これまでの成果と今後の展開を確認しながら、取組を進めております。6月には、企業の統治指針、コーポレートガバナンス・コードの適用が開始されました。これにより、企業経営の透明性が高まり、海外からの積極的な投資を呼び込むことが期待されております。こうした動きの中で、東京都も、大手町から兜町にかけての地域を金融センターの中核に位置づける構想や、高度金融専門人材の育成を打ち出しました。今後も、関係者が知恵と情報を持ち寄ることで、複合的な効果を生み出してまいります。
 中小企業の販路開拓や成長分野への挑戦も支援しており、11月には、「産業交流展2015」を開催いたします。高度技術の結集でありますロボット産業は、医療や介護など大いに活用が期待される分野であり、今回、企業や研究機関の技術力をPRする「次世代ロボットゾーン」を開設いたします。また、全国の中小企業の製品・技術に関するエリアも設け、取引機会の拡大や技術力の向上にも貢献してまいります。
 都内には、バイオ、ヘルスケア、医療・介護などの企業も集積し、有望な技術や製品などを開発しております。ベンチャー企業等のライフサイエンス分野での成長を後押しするため、展示会への出展や商談会への参加、インキュベーション施設などへの入居を支援いたします。ものづくり企業と医療機器メーカー、医療機関との連携を促進する医工連携HUB機構も立ち上げており、中小企業の参入をきめ細かくサポートしてまいります。

3 オリンピック・パラリンピックの準備を進める

 続いて、東京オリンピック・パラリンピックについて申し上げます。
 言うまでもなく、この大会は国家的大事業であり、開催に向けて大きな困難を伴うのは当然であります。日本中が一丸となって団結し、課題を一つひとつ乗り越えたその先に、史上最高の大会が待っているものと確信しております。国や組織委員会との連携をさらに深め、2020年に向けて日本全体が盛り上がっていくよう、全力を挙げてまいります。都が整備する施設につきましても、責任体制の明確化と情報公開の徹底を図り、後利用も考慮に入れた整備計画を推進することで、都民・国民の貴重な財産をしっかりと未来に引き継いでまいります。

(パラリンピック気運を盛り上げる)

 パラリンピックの成否は、ゆとりある成熟社会の形成に向けた一つの試金石であると考えております。障害のある人々がスポーツに取り組むきっかけとなるよう、障害者スポーツを振興し、気運の盛り上げに一層力を入れてまいります。7月以降、区市町村と連携して、競技体験ブースやパラリンピアンとの交流などを都内各地で実施しております。また、明後日には、参加体験型スポーツイベント「チャレスポ!TOKYO」を東京国際フォーラムで開催いたします。例年より規模を大幅に拡大して実施しており、車椅子バスケットボールやブラインドサッカーなどパラリンピック公式種目も体験できます。私も、一緒に参加をいたします。是非、多くの方々に足を運んでいただき、障害者スポーツの魅力に触れていただきたいと思います。
 パラリンピック開催都市として、心のバリアフリーを推進し、情報面でも、点字や音声、多言語での対応など、環境整備を進めてまいります。現在、「福祉のまちづくり推進協議会」では取組の強化策が検討されており、来月にも意見書が取りまとめられます。こうした意見を取り入れながら、基本方針や対策事例を盛り込んだガイドラインを作成し、普及啓発など、区市町村や民間と連携して取り組んでまいります。

(オリンピック・パラリンピック開催都市としての準備)

 2020年を見据え、東京の街をさらに快適で暮らしやすいものに変えてまいります。臨海部と東京の中心部とを結ぶ新たな公共交通システム・BRTにつきましては、先日、運行事業者を選定いたしました。年度内には、水素社会の実現を象徴する燃料電池バスや、停留施設との間に隙間なく停車する技術の導入などを盛り込んだ事業計画を策定いたします。2019年度の運行開始に向けて着実に取り組んでまいります。
 また、大会を通じて、東京をボランティア文化が根付いた街にしていきたいと思います。先般、国や自治体、組織委員会、教育機関、民間団体などの関係団体に呼びかけ、「ボランティア活動推進協議会」を立ち上げました。情報発信の充実やシンポジウム開催により、気運醸成、裾野の拡大に取り組んでまいります。多くの方にボランティアに参加してもらい、大会の成功を一生の思い出にしていただきたいと思います。

 ラグビーワールドカップにつきましては、東京での開催に向けて、都議会の皆様から強力な後押しをいただいております。今後も、ラグビーワールドカップ組織委員会と緊密に連携して、都民・国民のための素晴らしい大会を目指して、開催都市としての役割を果たせるよう全力を尽くしてまいります。

4 夢と希望に満ちた東京を目指して

(都市も地方も共に栄える日本を)

 さて、地方創生の議論の中では、「東京ひとり勝ち」という声もありますが、都市と地方が共に栄えることなくして真の地方創生はあり得ません。7月の全国知事会議では、「戦後日本の政策全体が見直しを問われている中での地方創生である」という視点を示し、都市も地方も皆で伸びていく方向を訴えて、多くの知事から賛同をいただきました。
 都市と地方との連携が重要であります。先般、再生可能エネルギーファンドを活用して、新潟県三条市の木質バイオマス発電事業に投資を行うことが決定しました。また、日本全体での旅行者誘致も進めております。来月、東京と東北を結ぶ観光ルートを新たに設定し、海外メディアの方々に体験してもらう取組を開始いたします。日本各地の魅力に触れ、それを世界に発信してくれれば、東京も地方も共に活性化いたします。
 こうした具体的な成果を上げていくことが、日本全国を盛り上げることに繋がります。現在、策定に取り組んでおります「東京都版総合戦略」には、地方と連携して取り組む施策を数多く盛り込み、共に栄えていくという東京都の姿勢を明確に打ち出してまいります。
 また、国家戦略特区の枠組みを活用して、現在、都市農業特区の提案を行っておりますが、これが国を動かし、内閣府、農林水産省、国土交通省による税制改正要望に繋がったところであります。先日の区域会議でも、国家戦略特区担当の石破大臣から、道筋をつけたいとの発言がありました。こうした規制緩和の取組も含め、全国の自治体と共に歩んでいきたいと思います。

(地方の役割に見合った財源を措置すべき)

 社会の成熟に応じて、地方行政の役割は益々、大きくなっており、その礎となる地方税財源をいかに拡充するかという本質的な議論が必要となっております。しかし、国の対応は、この議論を棚上げにしたまま、地方の財源不足を、都市部から吸い上げた財源で補うという小手先のものであり、これでは結果として、地方全体が益々、疲弊することになってしまいます。法人事業税の暫定措置や法人住民税の国税化といった不合理な措置は、即刻撤廃すべきであります。現在、国で検討されている「企業版ふるさと納税」や法人課税の分割基準の見直しも、同様の問題を抱えておりまして、これ以上の不合理を繰り返さないように求めます。
 地方行政の役割に見合った財源を国が措置することが、第一であります。そして、都市も、地方も、共存共栄することで、日本全体の発展を目指す。こうした東京都の考え方を整理し、先般、公表いたしました。都議会の皆様と共に、都内区市町村や、志を一にする自治体と一致団結して、総体としての地方税財源の拡充という、本筋に沿った主張を展開してまいります。

(東京を、皆が胸を張れる都市に)

 2040年代の東京の姿を描くため、現在、「東京のグランドデザイン検討委員会」に各界の新進気鋭の有識者を招いており、非常に刺激的な議論が交わされております。また、都市づくりの分野では、都市計画審議会に調査特別委員会を設置し専門家の意見を伺うなど、「都市づくりのグランドデザイン(仮称)」の策定に向けて具体的に動き始めております。「東京都長期ビジョン」に掲げた政策を着実に前へと進めながら、その先の明るい東京の姿をしっかりと描いていきたいと思います。
 グローバルな都市間競争、少子高齢化と人口減少、地方創生と日本の歩むべき方向性など、私たちを取り巻く状況は、益々、複雑化、多様化しております。こうした中、政治の役割は、将来への夢と希望を提示することであります。都議会の皆様と手を携え、東京を、生活していて楽しく、快適だと皆が胸を張れるゆとりある成熟都市へと高め、世界一の都市を目指してまいります。皆様の一層のご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 なお、本定例会には、マイナンバーの利用等に関する条例をはじめ、これまで申し上げたものも含め、条例案18件、契約案8件など、合わせて30件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどをお願いいたします。

 以上をもちまして、所信表明を終わります。
 ご清聴、誠にありがとうございました。