舛添前知事「知事の部屋」

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施政方針

平成27年12月1日更新

平成27年第四回都議会定例会知事所信表明

 平成27年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。

 昨日、11月30日、名誉都民である水木しげるさんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

 先月、パリで、テロ事件が発生いたしました。犠牲になられた方々とそのご家族に、心から哀悼の意を表します。友好都市であるパリの市民、及びフランス国民に連帯の意を表します。このようなテロ行為は、断じて許されるものではありません。同時に、東京においても、都民の生命・身体・財産を守るため、全力を挙げてテロへの備えを固めてまいります。

1 東京と日本のさらなる発展に向けて

 さて、10月に発足した第三次安倍改造内閣は、強い経済、子育て支援、社会保障という新たな「三本の矢」を打ち出しました。これは、経済成長と生活の質を両立させるという東京都の政策と、方向性を一にするものであります。安倍総理、菅官房長官と面会した際には、国と都がスクラムを組んで知恵を絞り、政策を前に進めていくことで意見が一致いたしました。現場を持つ首都東京が、率先して先進的な施策を展開してこそ、日本の明るい未来を切り拓くことができると確信しております。
 また、先月には「東京都総合戦略」を公表いたしました。地方創生を「都市対地方」の対立構造として捉えるのではなく、手を携えて一緒に日本を盛り上げていく。東京と地方の共存共栄なくして、日本全体の持続的な発展はあり得ません。総合戦略には、産業振興や観光振興、オリンピック・パラリンピックを契機とした地域の活性化など、地方と連携した施策を数多く盛り込んでおります。併せて、首都東京を国際都市として発展させることで日本経済の活性化に寄与し、少子高齢・人口減少の到来にも真正面から挑んでまいります。この戦略を基に、日本の持つ潜在力を大いに引き出していきたいと考えております。

(偏在是正なる不合理な措置の撤廃を求める)

 東京が、地方との結びつきを強め、日本全体の発展にも資する役割を果たしていく上で、それを阻害する動きに対しては物申さざるを得ません。国の偏在是正なる不合理な措置は、税の原則に反するばかりか、東京の膨大な財政需要を顧みず、その成長を妨げ、「都市対地方」という考えを徒に煽るものであります。地方法人特別税の撤廃は当然でありますが、さらに、法人住民税国税化の拡大などが実施されれば都の減収は年間5,800億円にも上る危険性があり、断固反対いたします。
 平成28年度の税制改正に向けて、まさに正念場であり、宮沢税制調査会長に面会し、東京都の立場を主張いたしました。先月には、特別区長会、市長会、町村会と、また、志を一にする全国の自治体と共に高市総務大臣に強く要請を行ってまいりました。さらに、東京都選出の国会議員の方々にも協力を要請しております。東京都税制調査会でも、不合理な偏在是正措置を、解消すべき喫緊の課題と捉えており、先般、総体としての地方税財源拡充の必要性を答申いただきました。都民の利益を守るために、都議会の皆様と力を合わせ、最後の最後まで全力を尽くす所存であります。

2 生活の質と経済成長の両立

 これからの日本が目指すべきは、持続的な経済成長とゆとりある暮らしが両立した社会であります。東京は、絶えず進化を遂げる中からゆとりを生み出し、誰もが快適な生活を送りながら能力を発揮できる都市となるよう、着実に施策を展開してまいります。

(生活の質を高める)

〈安全・安心が最重要の基盤〉

 まず、都民生活の最重要の基盤である安全・安心の確保であります。
 テロへの備えが、極めて大きな課題となっております。来年5月の伊勢志摩サミット、2019年のラグビーワールドカップ、そして、2020年のオリンピック・パラリンピックと、世界規模のイベントが続く中にあって、国をはじめ関係機関との十分な連携の下、首都東京の安全の確保に万全を期してまいります。
 サイバーテロのリスクも、日々、高まっております。都庁では、重要インフラを管理する公営企業局を含めた全庁横断の「サイバーセキュリティ委員会」を設置いたしました。緊急事態に迅速に対処する専門組織「東京都CSIRT」も、来年度設置いたします。警視庁でも、サイバーセキュリティに関する司令塔の機能を強化し、民間の知恵も取り入れた対策を進めてまいります。こうした機関が、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)や組織委員会とも連携し、安全性の向上を図ってまいります。
 首都直下地震などの災害に対し、その被害を最小限に抑えるには、一人ひとりの自助の力を高めることが重要であります。都内全ての家庭に配布している防災ブック「東京防災」につきましては、企業や都外にお住まいの方々からの要望が多数寄せられたことから、新たに有償での頒布を開始しており、すでに増刷も指示しております。多くの方々にご活用いただきたいと思います。また、今年から、11月19日を「備蓄の日」と定めました。日頃から食料や日用品を少し多めに購入することで無理なく備蓄を進める「日常備蓄」を普及させるイベントも、先月開催し、気運の醸成を図っております。九都県市首脳会議におきましても、家庭での備蓄の促進を提案し、そのための方策などを共同で検討することになりました。こうした広域的な連帯を強化することで、首都圏一帯の防災力向上にも貢献してまいります。
 インフラの維持管理につきましても、安全確保とコストの縮減を両立させてまいります。都が管理する全ての道路トンネルについて、最新技術を活用した詳細調査を実施し、今般、これを基に「トンネル予防保全計画」を策定いたしました。計画に沿った対策を着実に実施し、今後100年もの間、健全な状態に保つことを目指します。
 都内の交通事故による死者数は、昨年を上回りかねない状況であります。特に年末は、事故が多発する時期であり、一人ひとりが交通ルール、交通マナーの遵守を心掛けていただきたいと思います。高齢者の死亡事故や自転車事故といった課題につきましては、「第10次交通安全計画」の策定に向けても十分な議論を行い、効果的な対策に繋げてまいります。

〈福祉先進都市実現への施策展開〉

 続きまして、福祉先進都市を実現するための施策展開であります。
 高齢社会への対応では、住み慣れた地域で老後を過ごすことができるよう、地域包括ケアシステムの在り方についての検討を進めており、先般、中間のまとめを公表いたしました。ロボット介護機器の活用や多様な看取りの場の整備、認知症の方への支援など、今後の課題と、それに対して考えられる対応策を挙げております。引き続き、「医療と介護」「介護予防と生活支援」「高齢期の住まい方」という3つの視点から、年度末の最終報告に向けて、議論を深めてまいります。
 昨今、子供たちを取り巻く養育環境が複雑化しております。子供たちが、どのような環境で生まれ育ったとしても、健やかに自立できるようにしていくことは、社会全体の責務であります。10月末に児童福祉審議会の専門部会から出された家庭的養護の推進に関する緊急提言を受け、今後、児童相談所の体制強化、養育家庭の登録数の増加や養育力の向上などに取り組んでまいります。
 また、国家戦略特区の区域会議で、荒川区の都立汐入公園への保育所設置を提案し、先日、区域計画が認定されました。子育て支援施設などの整備に民間資金を呼び込む「官民連携福祉貢献インフラファンド」についても、ファンドマネジャーを決定しております。規制緩和や新たな手法も駆使して、福祉先進都市への取組を加速させてまいります。

〈優れた人物を輩出する教育の力〉

 今年のノーベル賞は、北里大学・大村智特別栄誉教授と東京大学宇宙線研究所・梶田隆章所長の二人の日本人が栄冠に輝きました。都民・国民に夢と希望、活力を与えてくれる、大変、明るいニュースであります。こうした優れた人物を輩出していくのが、教育の力であります。先月には、総合教育会議での議論を踏まえ、東京の教育のあるべき方向性を大綱として取りまとめました。
 都立高校改革では、科学技術、ものづくりという日本の強みを伸ばすため、6年間を通じた系統的な理数教育を推進する「理数アカデミー(仮称)」の設置や、理数イノベーション校の充実などに取り組んでまいります。グローバル人材の育成につきましても、新たな国際高校や小中高一貫教育校の設置などにより、外国語教育の一層の充実を図ってまいります。検討を進めてまいりました「英語村(仮称)」は、有識者会議の報告書がまとまり、具体化に向けて動き出しております。
 また、文部科学省は、平成30年度から小中学校において「道徳」を新たに教科化する予定でありますが、東京都はこれに先行して、来年度から進めてまいります。道徳教育推進の拠点となる学校を指定して取り組むことで、全国のモデルケースとしての役割も果たしてまいります。
 さらに、発達障害の子供たちが持てる力を最大限伸ばし、将来の自立と社会参加を実現できるよう、全国で初めてとなります、発達障害教育に特化した計画の策定を進めております。特別支援教室の全公立小学校への順次導入など体制を整備し、都立高校では社会性向上やキャリア教育といった取組も進めることで、きめ細かな支援を充実してまいります。

(常に活力に溢れ、活発な経済活動が展開される都市へ)

 グローバル化の進展の中、国際社会では、都市が先進的な取組を競い合う都市間競争が激化しております。先の定例会で、ロンドン市との友好都市関係の結成について同意をいただいて以降、ロンドン市、モスクワ市、パリ市と交流・協力に関する合意を交わし、都市づくりやスポーツといった分野で具体的な協力関係を構築いたしました。10月には、パリ・ロンドンを訪問して、ラグビーワールドカップの熱狂を肌で感じ、環境、観光、文化、ボランティアなどの取組について、視察や意見交換を行ってまいりました。世界の先進都市の知見も取り入れながら、東京が常に活力に溢れ、活発な経済活動が展開される都市であり続けるよう、成熟の中での成長戦略を進めてまいります。

〈成長の土台となる都市機能の向上〉

 活発な経済活動の土台は、機能的な都市インフラであります。東京の都市としての弱点の一つが国際空港機能であり、羽田空港の容量拡大は急務となっております。国は、飛行経路の見直しに関する二回目の住民説明会を、今月から都内各地で開催する予定であります。国が都民の声をしっかりと受け止め、容量拡大を円滑に実現できるよう、都は、引き続き積極的に協力してまいります。
 また、都市計画道路は、交通・物流機能の向上のみならず、災害時の救急救援活動や日々の生活を支える重要な都市基盤であります。年内には、今後10年間で優先的に整備すべき路線を示した新たな整備方針の案を公表いたします。三環状道路の整備状況を見据えて広域的な連携を強化しつつ、都内の骨格幹線道路を概ね完成させることで、渋滞の緩和や防災性の向上を目指してまいります。これに加え、本定例会には、都心の渋滞緩和に向けて、高速道路の新たな料金体系に関する同意の議案を提案しております。よろしくご審議のほどお願いいたします。
 都営住宅の建替えを契機に、地域特性に応じたまちづくりも推進してまいります。北青山では、低層のアパートを超高層化することで用地を生み出し、民間活力を活かした最先端の文化・流行の発信拠点の形成を目指します。多摩ニュータウンの諏訪団地では、福祉施設との合築も行いながら、老朽化した住宅を順次、連鎖的に建替えてまいります。最終的には、今後、整備が進みます南多摩尾根幹線道路の沿道に用地を創出し、商業・産業施設を誘導することで、賑わいを生み出していきたいと思います。都内各地のまちづくりを推進して、地域のさらなる活性化を図り、東京全体の活力に繋げてまいります。
 さらに、全国的に増加する空き家への対策にも取り組んでまいります。空き家増加の背景には、これまでの国の住宅政策や税制、少子高齢化といった社会構造の変化、ライフスタイルの多様化など様々な要因があり、政策分野を横断した総合的な対策が必要であります。例えば、高齢者福祉や子育て支援、芸術文化活動の拠点への転用などは、空き家を都市の貴重な資源へと生まれ変わらせる有効な手段であると思います。オール都庁で対策を検討し、効果的な施策を練り上げてまいります。

〈スマートエネルギー都市を目指して〉

 続いて、環境と経済成長を両立したスマートエネルギー都市の実現についてであります。東京都はこれまで、ディーゼル車規制や交通渋滞対策を進め、先進的なノウハウを有しております。さらには、水素社会実現のための取組も進めております。先般のパリ訪問では、アンヌ・イダルゴ・パリ市長と会談し、こうした環境分野での交流・協力を進めることで合意いたしました。
 そのパリでは、現在、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が開催されております。人類の将来に思いを巡らし、参加各国が団結して、高いレベルの合意に至ることを期待いたします。東京都は、この会議の成功を後押しする世界最大規模の都市間連携「コンパクト・オブ・メイヤーズ」に参加いたしました。参加都市に求められている温室効果ガスの削減目標につきましては、環境基本計画に関する審議会の中間のまとめを受け、2030年までに2000年比で30%削減という意欲的な目標を設定しております。この目標達成のための取組を着実に進め、東京の持続的な成長を確かなものとしてまいります。

〈観光という一大産業〉

 先般、旅行地としての東京を強く印象づける「東京ブランド」の確立に向け、ロゴ・キャッチコピー「&TOKYO」を発表いたしました。東京の魅力や価値を世界に伝えるツールとして、多くの方々や企業に活用いただきたいと思います。海外へのプロモーションやイベントも通じて広く発信し、世界中に東京ファンを増やしてまいります。
 東京が世界に誇る治安の確保にも全力を挙げ、安心して観光を楽しむことができる都市としての基盤を揺るぎないものといたします。
 舟運の活性化にも、一層力を入れてまいります。ロンドンでは、船が市民の足として定着し、多言語対応を含めたバリアフリー化も進んでおりました。東京都では、現在、羽田空港と都心・臨海部を結ぶ水上ルートについて、来年度実施予定の社会実験に向けた調査運航を行っております。調査で得られた意見を参考に、国などの関係機関とも連携しながら、多言語対応の推進や利便性の向上を図り、水辺空間の魅力を多くの方に感じてもらえる環境整備を進めてまいります。
 2019年ラグビーワールドカップと2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市として、今後、世界の注目は益々、東京に集まります。この絶好の機会を捉え、東京が日本の魅力・文化の展示場、ショーウィンドウとしての役割を果たしてまいります。都庁展望室では、全国の特産品販売を通年で行い、都内にある全国のアンテナショップとも連携するなど、日本各地の奥深い魅力を発信いたします。
 十分な宿泊施設をいかに確保するかも、大きな課題となっております。これに対し、大田区が旅館業法の特例を活用する意向を示し、先般、国家戦略特区の区域計画が認定されました。都としても、国や大田区との連携の下、モデルケースの構築などを進め、こうした取組を他の自治体にも広げていきたいと思います。また、日本旅館について、外国人が利用しやすい環境を整える取組を支援し、稼働率向上を図ってまいります。
 外国人旅行者の増加は著しく、国も訪日客数の目標を上方修正する検討を始めております。観光を一大産業へと飛躍させるには、新たな取組の機動的な展開が不可欠であります。東京都は、年度内に有識者会議を立ち上げ、来年度を目途に「観光産業振興アクションプログラム(仮称)」を策定いたします。プログラムは毎年度見直し、状況の変化にも臨機応変に対応しながら、施策を戦略的に展開してまいります。

〈都市の魅力を高める〉

 さらに、都市の魅力を高めていくことが必要であります。文化の輝きという点で、東京には、まだまだ取り組むべき課題が多いと感じております。劇場やホールの不足も指摘されており、民間と協力しながら知恵を働かせていかなければなりません。まずは、現状を的確に把握するために本格的な調査を実施し、有効な改善策に繋げてまいります。また、アール・ブリュット拠点の形成については、芸術文化評議会に設置した専門部会において、具体化のための検討を行ってまいります。
 オリンピック・パラリンピックの文化プログラムに先駆けて、今年度から開始しておりますリーディングプロジェクトでは、様々な分野の芸術家が一堂に集結する「東京キャラバン」の第一弾が、駒沢オリンピック公園で実施されました。年度末には、障害者アートプログラム「TURN」も実施いたします。今年度当初から、いち早く展開している伝統文化の体験プログラムと併せて、芸術文化の賑わいを生み出してまいります。

〈誰もが存分に活躍できる都市へ〉

 東京で暮らし働く人々が、意欲と能力に応じて存分に活躍できることが、都市の活力を生み出します。「恒産なくして恒心なし」、雇用対策では、今年度から、社内で非正規労働者を正社員化する企業の取組を強く後押しするため、国の補助に加えて都が助成金を支給する事業を開始いたしました。すでに、予定を大幅に上回る申込みとなっております。こうした動きをさらに広げるために、明後日には「非正規雇用対策シンポジウム」を開催いたします。正社員への転換に積極的に取り組む企業の事例や東京都の支援策を紹介し、一層の気運醸成を図ってまいります。
 働き方そのものを見直すことも必要であります。年明けには「女性活躍推進白書」を策定いたします。さらに、ワーク・ライフ・バランスを推進し、効率よく仕事をすることで生活にゆとりを生み出せるよう「働き方改革」に積極的に取り組んでまいります。
 ボランティア活動は、それぞれが持てる能力を生き生きと発揮できる場であり、これからの都市の発展に欠かせない要素であります。例えば、高齢者の豊かな経験・知識は、地域社会のかけがえのない資源とも言えます。東京都は、子供の見守りなど、社会に積極的に貢献しようとする高齢者の方々を応援していきたいと考えております。また、ロンドンで会談した、2012年大会組織委員会のパラリンピック統括ディレクター、クリス・ホームズ上院議員は、障害者のボランティア参加の素晴らしさを語っておられました。高齢者や障害者、あるいは都内在住の外国人の方などを含め、幅広い方々がボランティアに参加できるよう、必要な環境の整備についても検討してまいります。

〈中小企業支援〉

 今年の東京都ベンチャー技術大賞は、プロジェクションマッピングを進化させ、奥行きや立体感のある映像を実現した技術が受賞いたしました。高度な技術と豊かな発想力でイノベーションに挑むこうした中小企業が、その持てる力を十二分に活かしていくためには、販路を拡大し、ビジネスパートナーを増やしていかなければなりません。
 来年度には、全国の中小企業も対象に様々なビジネス情報を提供するポータルサイトを開設し、産業交流展の「全国ゾーン」も拡大するなど、東京と全国の企業が出会う機会を増やしてまいります。
 また、積極的な海外展開を目指す企業を支援するため、今月、タイに中小企業振興公社の拠点を開設し、経営相談や現地企業とのマッチングなどを行ってまいります。技術面でのサポートを行う都立産業技術研究センターの現地拠点とも連携して、成長をしっかりと支えたいと思います。

(2019年と2020年の大会を一体として成功に導く)

 ラグビーワールドカップ・イングランド大会での日本代表の活躍は、世界中に驚きと感動を与えました。2019年ラグビーワールドカップ、そして、翌年の2020年オリンピック・パラリンピック、この二つの大会を一体のものとして捉え、必ず成功に導いてまいります。

〈ラグビーワールドカップの成功が2020年に繋がる〉

 ロンドン出張では、ラグビーワールドカップの3位決定戦と決勝戦を観戦いたしました。交通対策や観客へのおもてなしなど、大いに参考となるものでありました。また、大会の成功には、競技の熱気や興奮、スポーツの素晴らしさを多くの方々に届ける工夫が必要だと実感いたしました。トラファルガー広場で見た、誰もが無料でパブリックビューイングやラグビー体験を楽しめるイベントスペース「ファンゾーン」を、2019年大会でも取り入れてまいります。3Dなどの技術的なイノベーションを駆使した新しい試みにも、挑戦していきたいと思います。
 ラグビーワールドカップは、全国12都市で開催される大会であり、その成功は日本全体を盛り上げます。このオールジャパンでの熱狂が、2020年の成功に繋がるものであります。都議会でも調査団を組まれ、先ほど川松議員からご報告がありましたように、イングランド大会を視察されました。お互いの経験を共有し、他の開催都市とも力を合わせて、アジア初開催となるワールドカップの成功に向けて取り組んでいきたいと思います。

〈レガシーと2020年までの取組〉

 そして、2020年オリンピック・パラリンピックの先に、いかに価値あるレガシーを遺すかが問われております。そのための2020年に向けた東京都の取組について、レガシー委員会での検討を経て、先月、素案を公表いたしました。
 都が新たに整備する競技施設については、外部専門家による諮問会議でのチェックの下、着実に整備を進めてまいります。大会後の選手村は、外国人や高齢者など多様な人々が交流し、快適に暮らせるモデル都市に生まれ変わります。次世代型燃料電池も導入し、生活の中に水素エネルギーを組み込んだ街を構築いたします。来年度早期の事業着手に向けて、民間のノウハウを活用し、具体的な計画の検討を進めてまいります。
 また、2020年大会は、子供たち一人ひとりの心と体に、人生の糧となるかけがえのないレガシーを形成する絶好の機会であります。来年度から、都内全校で進めるオリンピック・パラリンピック教育では、特に、障害者への理解とパラリンピック教育の充実、ボランティアマインドの醸成に重点的に取り組んでまいります。子供たちが多様性を尊重し、互いを認め合う心を育むことで、2020年大会が目指す理念の一つである「共生社会」を東京にしっかりと根付かせてまいります。
 今回公表した素案では、このほか、スポーツ、文化、環境などハード・ソフト両面にわたる取組の方向性を示しております。ここに掲げた取組でできるものは迅速に進め、2020年を待たずに、前年のラグビーワールドカップにも活かしていきたいと思います。今後、都議会の皆様との議論、都民の皆様の意見を踏まえながらさらに練り上げ、年内に取りまとめた上で、組織委員会が策定するオールジャパンの「アクション&レガシープラン」にも反映させてまいります。

〈パラリンピック開催都市として〉

 2012年以降のロンドンの発展に、パラリンピックは重要な役割を果たしました。ロンドンを訪問して、改めて実感いたしました。2020年大会も、「パラリンピックを開催して、東京と日本が変わった。人々の振る舞いも、障害者への理解も、まちづくりも、非常に素晴らしいものになった」、そう言えるレガシーを遺さなければなりません。
 まちづくりについては、道路・公園のバリアフリー化、無電柱化、鉄道駅へのホームドア設置などを総合的に進めてまいります。さらに、障害の有無にかかわらず全ての人々が参加しやすい大会となるよう、国や組織委員会とも連携してアクセシビリティ・ガイドラインを策定し、都が整備する全ての会場に適用いたします。大会を契機とした街並みの確かな変化が、大会後のさらなるユニバーサルデザインのまちづくりを促すよう、全力を挙げてまいります。
 また、日本選手の活躍は、2020年パラリンピック大会を大いに盛り上げることになります。そこで、体験を通じて、複数の競技の中から自分に合ったものを選び、トップアスリートへのステップアップに繋げる「パラリンピック選手発掘プログラム」を新たに立ち上げました。今年度は、車椅子バスケットボールやゴールボール、ボッチャなど15競技を対象に、プログラムを実施してまいります。多くの方々がこのチャンスを掴み、世界の舞台で輝けるよう後押しをしてまいります。

〈オールジャパンでの成功に向けて〉

 2020年大会は、オールジャパンでの団結なくして、成功するものではありません。先日には、東京都と競技会場のある自治体、組織委員会、国をメンバーとする「2020年東京大会に向けた関係自治体等連絡協議会」も立ち上がりました。共通の課題や取組について情報を共有し、連携して対応することで、準備を円滑に進めてまいります。
 事前キャンプなどの誘致については、アメリカオリンピック委員会と世田谷区、JOCが覚書を締結いたしました。引き続き、視察の受け入れ、海外でのPR活動、スポーツ施設の整備に対する補助などを実施し、誘致を希望する区市町村の取組を支援してまいります。
 リオデジャネイロ大会期間中は、映像を通じて現地の生の興奮が体感できるライブサイトを区部、多摩、そして東日本大震災の被災三県でも開催いたします。復興に取り組む被災地を元気づけ、全国的な気運醸成に繋げます。また、オリンピック・パラリンピック教育の一環として、東京と被災地の子供たちが一緒に参加する教育活動やイベントを行うなど、「復興五輪」への確かな道筋を付けてまいります。
 来年の夏には、私もリオに赴き、次回開催都市の長として、閉会式のハンドオーバーセレモニーや市内に設置するジャパンハウスで、東京と日本の魅力を力強く発信いたします。持ち帰ったオリンピック・パラリンピックフラッグを活用したイベントも展開し、日本中を巻き込みながら、東京大会の準備を本格化させてまいります。

3 主な議案

 続いて、本定例会に提案しております主な議案について申し述べます。
 「特定個人情報の保護に関する条例」は、マイナンバー利用開始に向けて、個人番号などの安全かつ適切な取扱いを確保するため、新設するものであります。次に、「職員の退職管理に関する条例」は、地方公務員法の改正を受けてのものであり、このほか、行政不服審査法の施行条例の制定も含め、適正な組織運営に努めてまいります。よろしくご審議のほどをお願いいたします。

4 明るい未来を切り拓くために

 さて、今年も残すところ、あと1か月となりました。2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が刻一刻と迫っていることを実感しております。
 時には困難にぶつかることもありますが、関係者全員としっかり手を携え、一つひとつ課題を乗り越えていきたいと考えております。国家的大事業を2年連続で開催する栄誉を受けた都市として、東京のみならず日本全体を盛り上げ、その先の明るい未来を切り拓くべく、都議会の皆様と共に全力を尽くしてまいります。

 最後に、新国立競技場の整備について申し上げます。
 新国立競技場は、2020年大会の開会式・閉会式、陸上競技などを行うメインスタジアムとして極めて重要であり、大会の準備や開催に支障がないよう整備されることが不可欠であります。
 私は、開催都市の知事として、整備に全面的に協力することを表明してまいりました。「新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議」では、アスリートファーストの視点に立つこと、大会後のレガシーを踏まえること、周辺のまちづくりと調和することなど、東京都の考えを積極的に述べ、これらを反映した整備計画が策定されております。現在、この計画に基づき国が責任を持って整備を進めており、今月中には設計、施工を行う事業者が決定される予定であります。
 完成の暁には、オリンピック・パラリンピックの感動の中心として、そして、都民のスポーツ振興の拠点として、末永く神宮の森に建ち続けることになります。加えて、世界最高のユニバーサルデザインや明治神宮外苑地区の環境の向上、地域の防災機能の強化など、大会を象徴するレガシーが、都民の様々な利益となり、世界的な競技場が都心に立地することの誇りをも生み出せるものと考えております。
 整備費用の財源負担につきましては、国からの要請を受け、都と国で実務的な検討・議論を積み重ねてまいりました。本日、遠藤東京オリンピック・パラリンピック大臣、馳文部科学大臣と会談し、現在及び将来の都民の受益を踏まえた財源案に合意したところであります。分担の対象と考えられます整備経費1,581億円の4分の1、金額にいたしまして395億円程度を東京都が負担する案となっております。加えて、周辺の道路や公園の整備などは、都として責任を持って対応してまいります。また、必要な法的措置については、国において講じることとなっております。都民の代表であります都議会において、この財源案を十分にご議論いただきたいと考えております。
 私は、引き続き、着実な整備に向けて全面的に協力し、史上最高のオリンピック・パラリンピック大会としての成功を確実なものとしていく所存であります。皆様のご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 なお、本定例会には、これまで申し上げたものも含め、条例案32件、契約案12件など、合わせて95件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

 以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
 ご清聴、誠にありがとうございました。