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2016年11月22日
労働委員会事務局
〔別紙〕
申立人支部組合員Zが勤務時間を水増しして不正に残業代等の支給を受けているのではないかと疑念を持った同組合員A1ら十数名は、平成23年10月、被申立人会社の社長宅を事前に約束や予告をせずに訪問し、Zの不正行為の調査と対処を求めた(以下、社長宅訪問を「社長宅要請」という。)。この社長宅要請により、会社と組合との関係が悪化した。
そして、会社は、社長宅要請を行ったA1の給与減額を行い、A2の定年後再雇用の給与を組合が保管する「覚書」と異なる内容で決定し、A2を雇止めするなどした。
また、24年11月、組合が本社前でパート社員への残業代未払等に抗議し、ビラ配りや抗議行動を行うと、それを見た取引先から会社に業務履行の懸念と業務委託見直しの可能性に言及する連絡があったため、会社は、職場確保に向けて全従業員の協力等を求める旨の「緊急メッセージ」を掲示するなどした。
本件は、組合と会社との間で、以下の10点が不当労働行為に該当するか否か等について争われた事件である。
本件申立てを棄却する。
Y1及びY2が掲示した緊急メッセージには、組合の活動について一切触れられておらず、また、それを見た従業員が組合を批判した等の事実もなく、緊急メッセージの掲示が組合活動に具体的な影響を及ぼすものであったとはいえない。そして、両社は組合とともに、労使関係が緊張化した事態の収拾を図るとともに、労使双方の合意により緊急メッセージを撤回したことなども考慮すると、緊急メッセージの掲示が支配介入に当たるとはいえない。
A1は、主任職に降格していたものの課長職の給与が支給されるという、職責と給与の不一致状態であったことが認められ、また、Y2は、社長宅要請の参加者から社長宅要請が従業員有志の活動である旨の回答を得たうえで、A1の給与減額を告げていることなどから、その時点では、同社が社長宅要請を組合活動と認識していたとは認められない。さらに、A1が組合の中心人物として会社から特に敵視される存在であったともいえないことなどから、会社が反組合的意図をもってA1の給与を減額したとは認められず、A1の給与減額が不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。
A2の定年後再雇用の給与の決定は、Y1が保管する労使の覚書に従って決定したものであり、また、労使合意していた内容を同社が隠蔽したり、同人を意図的に不利益に取り扱おうとしたとも認められず、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。
Y2がA3に特別職能給を支給しなかったのは、同人が健康上の理由にて大型車両に乗務して配送業務に従事することができず、他の業務に配置転換されていたことから、Y2が理解していた支給要件に基づき同人を取り扱ったものであり、反組合的意図をもって、組合との協定書を事後的に曲解したり、急遽、特別職能給支給の運用を変更したとみることはできず、組合に対する支配介入に当たるとはいえない。
Y2が、A6の骨折後に直ちに労災申請を行わなかったことには相応の理由が認められ、また、同社が労基署に提出した面談記録は、会社とA6らとの面談内容をまとめた客観的な記録であり、これらを提出することにより、何らかの事実を隠蔽して労基署の判断を誤らせたり、労災認定を妨害しようとしたとみることはできず、これらが不利益取扱い又は支配介入であるとはいえない。
Y2は、A7が組合員であることを公然化する前の事情に基づき、同人の公然化前に業務変更を決定して実行していたものであり、また、公然化後の同社の対応にも不自然な点は認められず、公然化を契機として同人を殊更に不利益に扱ったとはいえない。また、A7に対する会社備品の返却等の指示は、配置転換により変更された同人の業務における必要性に応じたものであり、他の従業員との不合理な差異が認められる事実も認められず、これらが不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。
A2の雇止めは、同人が、雇用契約が満了するまでにY1と主治医との面談を実現させることができず、同人が労務提供可能な健康状態であることを同社が確認できなかったことが理由であり、また、その後に実現した主治医面談等を経て同人は再び雇用されていることなどから、同社が主治医面談が実現しなかったことを口実に同人を排除したとはいえず、同人の雇止めは不利益取扱い又は支配介入に当たらない。
上記⑴、⑶、⑸、⑺及び⑼におけるY1の行為、並びに上記⑴、⑵、⑷、⑸、⑹、⑺及び⑻におけるY2の行為は不当労働行為に当たらないのであるから、雇用主以外の2社ないし1社の労組法上の使用者性を判断するまでもなく、上記⑴ないし⑼における雇用主以外の2社ないし1社が雇用主と一体となって不当労働行為を行ったということはできない。
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