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報道発表資料  2017年10月25日  東京都労働委員会事務局

[別紙]

命令書の詳細

1 当事者の概要

  1. 被申立人会社(以下「会社」又は「Y1」という。)は、高等学校向けの英語や国語の教科書、副教材等を制作、販売する出版社であり、本件申立時の従業員数は約150名である。
  2. 申立人X1(以下「組合」という。)は、会社の従業員らが組織し、X2に加盟する労働組合であり、本件申立時の組合員数は68名である。
  3. 申立人X2(以下、組合と併せて「組合」ということもある。)は、出版及び出版関連産業で働く労働者が組織する産業別労働組合である。本件申立時の加盟組合数は91組合、組織労働者数は約5,000名である。

2 事件の概要

平成27年8月18日、会社とY2株式会社(以下「Y2」という。)とは、同年10月1日付けでY1の事業をY2の新設子会社に譲渡するとの事業譲渡契約を締結した。これに伴い、会社の従業員は、9月末日付けで全員解雇となり、新会社への採用希望者は、Y2の採用試験を受けることとされたため、組合は、8月31日、会社及びY2を被申立人として、組合との協議が調うまで、(ア)Y2は新設子会社への採用者を決定・発表しないことや、(イ)Y1は本件事業譲渡を実行して組合員を解雇しないこと等を求めて、本件不当労働行為救済申立てを行った。
9月4日、組合は、Y1の出版物の著者として会社と出版契約を結んでいる者に手紙を送付し、本件事業譲渡により、会社の従業員は全員解雇され、新会社での雇用は保障されていないため、これまでどおりの編集・出版・営業活動が維持できるかどうか不明であること等を伝え、会社から送付される出版契約の地位の移転に係る契約書の締結について、判断を一時保留するよう求めた。
9月8日、会社のB1営業部長は、各営業所の所長又は副所長に社内メール(以下「本件メール」という。)を送信し、組合による著者への働き掛けが会社の業務の妨害行為であると述べ、組合員である所長らが、組合幹部への非難の声を上げることや、全ての所長らが、組合の行為が正当化されるのか等について所員と話し合い、意見集約すること等を求めた。
9月10日、会社は、社内ブログに「【社長室】お知らせ(9月10日)」と題する記事(以下「本件社内ブログ」という。)を掲載し、Y2との会議の報告の中で、Y2は、組合の著者への働き掛けにより、新会社への出版契約の地位の移転に支障が出ることを懸念している、事業譲渡が破談となれば、経営危機に直面し、退職金も払えない等と述べ、本件事業譲渡への支持の声を寄せるよう呼び掛けた。
10月1日、会社の出版物に係る出版権の移転が進まないこと等から、本件事業譲渡は中止となった。
10月6日、本件事業譲渡の中止を受けて、会社の全社集会が行われ、質疑応答において、従業員から組合の活動等を批判する発言がなされたが、司会を務めたB4取締役は、特に発言を制止しなかった。
なお、下記4)の事実の存否については、当事者間に争いがある。
28年4月、組合は、本件事業譲渡の中止等の、本件申立て後の事情を踏まえて、本件の申立内容を変更した。11月29日、当委員会は、本件のうち、Y1を被申立人とする以下の1)ないし4)の争点に係る部分を分離して審査することとした。
本件分離事件は、1)B1営業部長が、27年9月8日、本件メールを送信したこと、2)会社が、9月10日、本件社内ブログを掲載したこと、3)10月6日に行われた全社集会における会社の司会進行が、それぞれ支配介入に当たるか否か、また、4)10月7日にシステム部のB2部長が組合員A1にメールを送信した事実、及び事業開発部編集課の課長待遇のB3が組合員A2に「Y1に残るなら、組合は辞めてください。」と述べた事実がそれぞれあったか否か、あったとすればそれが支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 会社は、自ら若しくはその管理職をして、組合の活動を非難し、従業員間で組合への批判的な意見の醸成を図ったり、組合内部の意思形成に介入したり、組合の組合員に対し、組合からの脱退を勧奨するなどして、組合の組織運営に支配介入してはならない。
  2. 文書の交付、掲示及び社内ブログへの掲載
    要旨:1)当社のB1営業部長が、27年9月8日、組合の活動内容を非難し、従業員間で組合への批判的な意見の醸成を図ったり、組合内部の意思形成に介入したりする社内メールを送信したこと、2)当社が、9月10日、社内ブログに「【社長室】お知らせ(9月10日)」と題する記事を掲載したこと、及び3)当社のB2部長が、10月7日、組合員に組合からの脱退を勧奨するメールを送信したことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  3. 前項の履行報告
  4. その余の申立ての棄却

4 判断の要旨

(1) 27年9月8日のB1営業部長の本件メールについて

  1. 本件メールには、組合員である所長又は副所長に対し、組合の著者への働き掛けについて、「ユニオンのメンバーとして、マネージャーとして、ユニオン幹部に対して非難の声を出して下さい。」等と述べる記載がある。これは、組合員である所長又は副所長が自ら組合執行部を非難することを求めたものであり、本来使用者が介入すべきではない組合内部の意思形成に介入して組合の方針の転換を図ったものといわざるを得ないから、使用者に許される意見表明の範囲を超えているというべきである。
    また、組合活動を非難した上で、組合員を含む従業員らに組合の行為の是非を話し合わせるよう求めたことは、所長又は副所長に対し、組合員である従業員に組合への疑問を抱かせたり、従業員間で組合への批判的な意見を醸成させる等の支配介入に当たる行為を指示したものというべきである。
    したがって、本件メールは、組合内部の意思形成に介入することにより組合に動揺をもたらすものであり、また、所長らに対し、従業員間で組合への批判的な意見を醸成させることなどを指示するものであるから、組合の組織運営に対する支配介入に当たるといわざるを得ない。
  2. 会社は、組合による著者への働き掛けが正当な組合活動の範囲を逸脱したものであるから、それを非難し、従業員の意思を確認することは許されると主張する。しかし、組合による著者への働き掛けが正当な組合活動の範囲を逸脱したものであるとまで断ずることはできず、組合への介入が正当化されるという会社の主張は、採用することができない。
  3. 以上のとおりであるから、B1営業部長が本件メールを送信したことは、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

(2) 27年9月10日の本件社内ブログについて

B1営業部長の本件メールの2日後に掲載された本件社内ブログは、著者への働き掛け等の組合活動を本件事業譲渡の障害と位置付けた上で、本件事業譲渡が破綻すれば退職金が支払われなくなる等と述べて従業員の不安をかき立て、本件事業譲渡への支持を呼び掛けることにより、本件メールと一体となって、従業員に対し、組合への不信感を抱かせ、組合活動に批判的な会社内の世論を醸成しようとしたものであるといわざるを得ない。したがって、会社が本件社内ブログを掲載したことは、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

(3) 27年10月6日の全社集会における会社の対応について

  1. 10月6日の全社集会に先立ち、社員有志が会社と組合の双方に対して同日付「申し入れ書」を提出し、全社集会においては、社員有志に名前を連ねた一部の従業員から組合を批判するような発言が出された。このことについて、組合は、全社集会でのやり取りは、会社の経営陣と社員有志との間で、事前に下打合せをされていたことが推認されると主張する。しかし、会社と社員有志とが通じており、全社集会における組合を批判する発言に会社が関与していたということを認めるに足りる具体的な疎明はない。
  2. 組合は、全社集会の司会を務めたB4取締役が、組合批判の発言を制止せず、組合に対し、組合批判発言への回答を促したり、自ら組合の姿勢を批判するような発言をするなどして、組合への批判を助長する対応をしたことが支配介入に当たると主張する。
    しかし、事前に組合に対する社員有志連名の「申し入れ書」が提出されていた状況で、会社が従業員の発言を制止するのは困難であり、また、本件事業譲渡の中止に関し、従業員の様々な意見がある中で、自由な発言を求めるとの会社の方針も無理からぬことである。また、組合が指摘するB4取締役の発言は、いずれも組合批判の発言を助長するものであったとまではいえない。
  3. 組合は、全社集会の会場は、殺気立った雰囲気で、組合員は、恐怖感を抱いたと主張する。しかし、全社集会の質疑応答においては、組合やその活動を強く批判する発言がなされているものの、組合員への威迫的な発言や、暴力が行使されるおそれ等があったとまでいうことはできない。
  4. 以上のとおりであるから、全社集会において、会社が、組合を批判する発言を禁止する等の対応はせず、従業員の発言はいずれも制止しないけれども、組合に対して弁明の機会を確保したことは、一部の従業員と組合との対立がある中でのやむを得ぬ対応であり、このような会社の対応が、組合に対する支配介入に当たるとまでいうことはできない。

(4) B2部長のメール及びB3の発言について

  1. 27年10月7日のB2部長のメール
    組合は、B2部長がA1に送信したメールを画面印刷したものを証拠として提出しており、この証拠を疑うに足りる事情は特に認められないことから、同部長がA1にこのメールを送信した事実があったものと認めることができる。
    職制の立場にあるB2部長が、入院中の部下であるA1に対し、10月6日の全社集会の内容を知らせつつ、本件事業譲渡中止後の会社に復職するか否かという今後の身の振り方について助言する内容のメールを送ったのであるから、このメール送信は、職制が部下に対して行った使用者としての行為であるというべきであり、また、全社集会の内容を通知し、会社への復帰等について助言する等の内容からして、全くの個人的行為とみることはできない。
    そして、このメールには、「『組合員』の立場で復帰となると、正直言って微妙です。」、「一度組合から距離を取って、外から眺めてみて頂けないでしょうか。」等の記載があり、これは、組合からの脱退を検討するよう促す内容であるといわざるを得ないから、B2部長がA1にこのメールを送信したことは、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。
  2. B3の発言
    組合は、課長待遇であるB3が組合員A2に対し、「Y1に残るなら、組合は辞めてください。」と述べたとしているが、会社が同発言の存在自体を明確に否定している一方、組合からは、同発言があったことを認めるに足りる具体的な疎明がないことからすれば、組合の主張するB3の発言があったと認めることはできない。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日 平成27年8月31日
  2. 公益委員会議の合議 平成29年9月19日
  3. 命令書交付日 平成29年10月25日

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