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報道発表資料  2018年01月25日  東京都労働委員会事務局

H事件命令書交付について

1 当事者

  • 申立人
    X1(組合)
  • 被申立人
    Y(株式会社)

2 事件の概要

Aは、被申立人会社が提示した、定年退職(平成27年9月10日)後の再雇用労働条件に納得できなかったため、同月2日、申立人組合に加入した。
9月7日及び9日、組合と会社との間で、上記条件等を議題とする団体交渉が行われ、組合は、再雇用賃金が減額された根拠の説明や条件の再考等を求めたが、会社は、明確な回答をしなかった。
9月10日、Aは、会社の提示した条件に同意し、「再雇用嘱託労働契約書」を会社に提出したが、同日、組合が、会社に対し、「Aの今後の労働条件については、上記契約書の内容も含め、現在労使間で交渉中であり、正式な労働条件については労使間での合意をもって決定する。」との文書をファクスで送付したところ、同月11日、会社は、出社してきたAに対し、契約は不成立であると述べて、就労を拒否した。
その後、団体交渉が3回行われたが、会社は、Aを再雇用しなかった。
団体交渉において、会社は、組合の交渉担当者に対し、「じゃそろそろ引退じゃないですか。」と述べたり、組合が当事者である他の不当労働行為事件に言及したり、組合の名称問題に介入する発言を行うなどした。
11月4日、会社は、Aに対し、「定年後の継続雇用を希望していなかった。」との離職理由を記載した離職票を交付した。
本件は、1)会社が、Aを定年退職後再雇用しなかったこと等が不利益取扱いに当たるか否か、2)会社の一連の団体交渉における対応が不誠実な団体交渉に当たるか否か、外1件が争われた事案である。

3 命令の概要(一部救済)<主文要旨>

  1. 会社は、Aを、平成27年9月10日に定年となった後、再雇用したものとして取り扱い、定年の翌日以降再雇用されたならば支払われるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。
  2. 会社は、組合が、Aの定年退職後再雇用の賃金を含む労働条件に関する団体交渉を申し入れたときは、これに誠実に応じなければならない。
  3. 文書交付及び掲示並びに履行報告
  4. その余の申立ての棄却

4 判断のポイント

  1. 会社は、Aの再雇用労働条件について、一切譲歩しない姿勢で団体交渉に臨んでおり、それにもかかわらず、自らの提案の根拠や妥当性について、組合の理解を得るよう説明する努力を行っていないのであるから、会社には、組合と実質的な交渉を行う意思がなかったものとみざるを得ない。さらに、会社は、組合を挑発するなどしており、使用者として、組合を納得させるべく、説明を尽くして、真摯に対応したものと認めることはできず、会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるといわざるを得ない。
  2. 組合が、Aの、正社員当時と比べて大幅に低下した再雇用労働条件の根拠の提示を求めて継続協議を要求するのは、当然の対応であるにもかかわらず、会社が、再雇用契約の開始日を迎えても、暫定的に契約を締結した上で継続協議することすら拒否したのは、組合と実質的な交渉を行うことを嫌い、組合が、会社の提案を無条件で受け入れなかったために、契約自体を締結しないという不利益な取扱いをしたものといわざるを得ない。そうすると、会社がAを再雇用しなかったのは、同人が組合を通して労働条件の向上を図ろうとしたためであるというほかはなく、それは、労働組合の正当な行為をしたこと故の不利益取扱いに当たるというべきである。
  3. 離職票の離職理由を「定年後の継続雇用を希望していなかった。」とし、また、同票の交付を2か月近く遅らせることで、経済上の不利益をAに与えようとする認識が会社にあったと認めるに足りる具体的事実は見当たらないから、会社の上記の行為は、不当労働行為に当たるとまではいうことができない。

※別紙 命令書の詳細

問い合わせ先
労働委員会事務局審査調整課
電話 03-5320-6990

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