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報道発表資料  2019年03月04日  労働委員会事務局

[別紙]

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人組合は、正規労働者、非正規労働者を問わず一人から加入できる、いわゆる合同労組であり、本件申立時の組合員数は約300名である。
  2. 被申立人Y1は、東京都千代田区に本部及び駿河台校舎を置くほか、東京都杉並区に和泉校舎、東京都中野区に中野校舎及び神奈川県川崎市多摩区に生田校舎を置く学校法人である。法学部は、駿河台校舎及び和泉校舎に設けられており、本件結審時における法学部の教員数は、約240名であった。

2 事件の概要

  1. 平成24年4月1日、X2は、被申立人Y1との間で、大学法学部の教養科目であるフランス語の講師として、1年間の非常勤講師契約を締結した。その後も三度の契約更新を繰り返し、27年4月から、4年目の教鞭を執っていた。
    26年5月15日、X2は、自身が担当する「中級フランス語AI」の履修者2名に対して、予習ができない理由を書面で提出すること、併せて保護者の署名押印及び連絡先を記載することを求める書面を交付し、さらに、同書面を学内ポータルシステムに独断で掲載し、履修者全員が閲覧可能な状態にした。
    また、27年6月15日、X2は、大学教務事務室宛てに、大学職員であるZを名指しして、批判する書面を提出した。そして、同書面の調査を開始した法学部執行部の教授に対して、6月30日から7月4日までの間に、他の法学部教授や大学職員を中傷する内容のメールを複数回にわたり送信した。このようなX2の対応を受け、法学部執行部は、同人の次年度の非常勤講師契約は更新しない方針とすることを決定した。
  2. 8月29日、X2は、申立人組合に加入し、11月23日、組合は、Y1に対し、同人の組合加入を通知し、事務折衝を申し入れた。
    その後、組合と法学部執行部とは、12月18日及び28年2月16日、X2の非常勤講師契約の更新に関する事務折衝(以下、2回の事務折衝を併せて「本件事務折衝」という。)を行ったが、法学部執行部の提案により、団体交渉へ移行することとなった。
  3. 28年5月19日、7月15日及び8月25日、X2の非常勤講師契約の更新に関する団体交渉(以下「本件団体交渉」という。)が開催された。組合は、4月17日付けの団体交渉要求書において、法学部執行部のY2教授及びY3教授の出席を求めたが、Y1はこれに応じず、本件団体交渉には全てY4理事が出席した。
  4. 組合は、9月19日付け及び11月11日付けで団体交渉を申し入れたが、Y1は、組合が要求の趣旨や争点を明らかにせず、漫然と従前の要求を繰り返す限り応じない旨を回答した。
  5. 本件は、1)本件団体交渉におけるY1の対応が、不誠実な団体交渉に当たるか否か(争点1)、2)Y1は、組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れを拒否したといえるか。拒否したといえる場合、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か(争点2)が争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 文書の交付
    要旨:Y1が、平成28年5月19日、7月15日及び8月25日に行ったX2の非常勤講師契約の更新等を議題とする団体交渉において、具体的な説明を行わなかったこと、並びに組合の同年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れに応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  2. 履行報告

4 判断の要旨

(1)本件団体交渉におけるY1の対応について(争点1)

団体交渉に先立って、Y1として法学部執行部の教授が出席する本件事務折衝が行われた。第2回事務折衝では、組合が、一連の行為についてX2が謝罪文を提出することで平成28年度の雇用を認めるよう求めたのに対して、Y1は、謝罪文の内容は信頼回復には不十分であり、今後信頼回復の措置が執られるのであれば、28年度の雇用は無理であるが、29年度の雇用を検討する余地はある旨を説明した。また、組合が事務折衝の継続を求めたのに対して、Y1は、団体交渉による交渉を求めた。本件においては、このような経緯があることを十分に考慮する必要がある。Y1には、上記経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応が求められていたものというべきである。
Y1は、第1回及び第2回の団体交渉では、X2の雇止め理由について、法学部の判断を支持するという結論を述べるだけで、「教育機関として妥当と判断した」、「一連の総合的な判断を支持した」等の抽象的な説明を繰り返し、法学部が、本件事務折衝の経過を踏まえた上で、X2との信頼関係を回復できず、同人を雇止めにすると判断するに至った具体的な根拠等について、何ら回答していない。また、Y1は、第3回の団体交渉において、X2の雇止めの理由と謝罪文の評価について回答したものの、雇止め決定プロセスや29年度のX2の雇用に係る組合の質問には明確な回答をしておらず、信頼関係の回復についての議論になることもなかった。
本件事務折衝において、Y1が、今後信頼回復の措置が執られるのであれば、29年度の雇用を検討する余地がある旨説明していたことからすれば、X2の29年度の雇用に向けた適時の交渉が必要であった。それにもかかわらず、本件団体交渉におけるY1の上記対応は、組合と法学部が事務折衝を重ねて詰めてきた議論を後戻りさせるものといえ、事務折衝の経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応であったとは到底いうことができない。Y1は、法学部の教授を出席させるか、又は、法学部から十分な説明を受けた理事を出席させ、事務折衝の経緯を踏まえた上での交渉に努めるべきであったといえる。
したがって、本件団体交渉におけるY1の対応は、不誠実な団体交渉であったといわざるを得ない。

(2)Y1は、組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れを拒否したか、拒否したといえる場合に正当な理由があったか否かについて(争点2)

Y1は、28年10月3日付け及び11月28日付けの回答書において、1)第2回及び第3回団体交渉において、法学部教授会決定に至るまでのプロセスを十分説明しており、これ以上団体交渉を重ねても、Y1の回答に変化はないこと、2)Y1としては、組合が今後の要求の趣旨や争点を明らかにせず、漫然と従前の要求を繰り返す限り、当面団体交渉に応じるつもりはないことを回答している。これは、要求事項について交渉の余地はなく、団体交渉が行き詰まっていることを理由に、組合が従前の要求事項を繰り返す限り、団体交渉に応じる必要がないとの意思を示したものと解釈するほかなく、団体交渉を拒否したものといえる。
そして、前記⑴で判断したとおり、本件団体交渉において、Y1は誠実交渉義務を尽くしておらず、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとは認められないから、Y1が組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

5 命令交付の経過

  1. 申立年月日
    平成28年12月19日
  2. 公益委員会議の合議
    平成30年12月18日
  3. 命令書交付日
    平成31年3月4日

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