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令和元年(2019年)11月13日更新

報道発表資料

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人X1(以下「X1」という。)は、首都圏を中心として、産業、業種、雇用形態を問わず、労働者を組織する労働組合であり、本件申立時の組合員数は、約3,500名である。
    申立人X2(以下「X2」といい、X1と併せて「組合」という。)は、平成21年10月16日にX1の分会として結成され、27年11月20日に単位組合となった労働組合であり、本件申立時の組合員数は18名である。
    X2には、被申立人Y1(以下「会社」という。)の従業員である組合員らが結成した分会があり、本件申立時の分会員数は4名である。
  2. 被申立人会社は、申立外Y4の子会社として設立された、旅客自動車運送業を営む株式会社である。営業所は、練馬、狭山、大宮、秩父及び軽井沢にあり、本件申立時の従業員数は209名である。

2 事件の概要

会社の秩父営業所に勤務していた運転士であるX3ら4名は、平成29年9月上旬にX1、同月9日にX2に加盟した上、同月12日、X2の分会を結成し、会社に対し、分会結成を通知した。
本件は、9月14日、会社の管理部次長であるY2次長が、秩父営業所の運転士であるY3運転士に対し、X3に組合に加入したことについて話をしてほしい等と求め、同月16日、Y3運転士が、X3に対し、Y2次長から話をしてほしいと頼まれたと述べた上で、(組合に加入すると)「運転士従業員は将来がなくなっちゃうんだよ。」等と発言した一連の行為(以下「本件行為」という。)が、会社による支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文の要旨

  1. 会社は、組合員らに対し、脱退勧奨をするなどして、組合の運営に支配介入してはならない。
  2. 文書の交付及び掲示
    • 要旨
      本件行為が不当労働行為であると認定されたこと。今後、このような行為を繰り返さないように留意すること。
  3. 履行報告

4 判断の要旨

  1. 本件行為が組合活動の弱体化を企図したものに当たるか
    • ア 平成29年9月16日、Y3運転士は、X3に対し、「もういま、まぁ、まぁ、そういうに加入しちゃってはいるんけど、ま、早いうちに、まぁ、そうではなく、こうに、あのぉ、してくれればいい、ま、よしてくれればいいなぁっつんでさ。」、(組合に加入していると)「会社側としても、そういう運転士従業員は将来がなくなっちゃうんだよ。良いことは一つもない。」、「会社側は区別するよ。」等と発言している。
      これらの発言は、X3が組合に加入しているが、早いうちに脱退してほしいという意向を述べたものである。また、組合加入によって会社から不利益な取扱いを受けることを示唆するものであり、脱退勧奨発言であると認められる。
    • イ Y3運転士は、X3に対し、Y2次長から話をしてほしいと頼まれたと述べた上で、脱退勧奨発言を行っており、また、脱退勧奨発言をした後、「Y2次長は、そういう話をこんこんとしてたからさぁ。うん。あぁ、いいよ。じゃ、あのぉ、そういうのをちゃんと話しときますっつんで、ま、こうに、話したわけだからさぁ、うん。」と発言している。
      Y3運転士が個人的にX3へ脱退勧奨を行う動機や、Y2次長から脱退勧奨の指示があったとする虚偽の発言をする動機を推認させる事情は特段見受けられないことや、Y2次長は、Y3運転士の発言を知ってから、Y3運転士に対し、事情を確認したり、発言の訂正を求める等の措置を講じていないことから、Y2次長からY3運転士に対し、X3に脱退勧奨を行うよう指示があったものと認められる。
    • ウ Y2次長の発言はY3運転士を介してX3に伝わっているが、Y3運転士は、X3に対し、後記の職責を有するY2次長に頼まれたと明示した上で、脱退勧奨発言を行っていること、発言内容には会社の立場を示すものが含まれていることから、組合員として組合活動を続けることについて大きな威嚇的効果があり、組合活動が阻害されるおそれは大きいといえる。
    • エ したがって、本件行為は、会社から不利益な取扱いを受けることを示唆しての脱退勧奨に当たり、組合活動の弱体化を企図したものといえる。
  2. 本件行為が会社の行為に当たるか
    • ア 会社の管理部の部長は、人事考課等の決裁権限を有しており、次長は、部長から委任された事項につき権限を持ち、部長の欠員又は事故がある場合は、部長の代行権限を有することから、Y2次長は、部長を補佐する立場にあり、条件付きではあるものの、部長が有する人事権限等が帰属する地位にあったと認められる。また、管理部管理課は、指導乗務員の選任・解任に関する事項及び現業の運行管理業務の指導・監督に関する事項を分掌しており、Y2次長は、管理部管理課長として、各営業所に対し、乗務員教育やマネジメント等に関する要望を出す業務を行っていたことから、秩父営業所を含む各営業所の運行管理業務の指導・監督を行うべき立場にあったと認められる。
      また、9月20日、Y4営業所長は、X4分会長に対し、休憩時間中に同僚に組合新聞を配布していたことを注意したり、X5に対し、「(組合員)4人の転勤さすことはできないか、俺んとこきた人いるよ。何人か。」等の発言をしており、本件行為と近接した時期に、反組合的言動を行っている。加えて、9月19日、組合は、会社に対し、Y3運転士がY2次長の指示でX3に対し脱退勧奨を行ったとして、厳重抗議書を送付したが、会社は、厳重抗議書の受領後、厳重抗議書に記載されていた内容について、Y2次長に事情を確認する等の措置を何ら講じていないことから、本件行為は、会社の意向に沿うものであったことが推認される。
    • イ Y2次長は、X6の執行委員長であった経歴を有するが、X6は申立人組合とは別の労働組合であり、Y2次長がX6の元執行委員長として、脱退勧奨の指示を行ったとみることは困難である。
      また、Y2次長とY3運転士とは30数年来の知人であり、私的な食事の席であったとしても、話の内容は組合員の脱退勧奨を指示するものであり、会社の立場を示すものを含むものであるから、職位を離れた個人的行為であったとは認められない。
      さらに、Y2次長はX3と一度本社の研修で顔を合わせた程度で、話したことはなく、両者の関係は非常に希薄であるから、Y2次長が個人的にX3を心配するような関係であったとみることは困難である。
      よって、Y2次長の発言は、管理部次長という職位を離れての個人的行為であったとみることはできない。
    • ウ したがって、Y2次長が管理部次長兼管理部管理課長という立場で、Y3運転士に対し、会社の意向に沿う脱退勧奨の指示を行っており、Y3運転士が、同指示に基づき、X3に対し、脱退勧奨発言を行っていることから、本件行為は、会社の行為に当たると認められる。
  3. 以上のとおり、本件行為は、組合活動の弱体化を企図したものであり、会社の行為に当たるから、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

5 命令書交付の経過

  1. 申立年月日
    平成29年11月16日
  2. 公益委員会議の合議
    令和元年10月15日
  3. 命令書交付日
    令和元年11月13日

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