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令和2年(2020年)3月4日更新

報道発表資料

〔別紙〕

命令書詳細

1 当事者の概要

  1. 申立人全労連・全国一般労働組合東京地方本部(東京地本)は、昭和26年3月に結成された連合体の労働組合であり、主に東京にある、業種を問わず多様な雇用形態で働く労働者を組織する単位労働組合によって構成されている。
    申立人全労連・全国一般労働組合東京地方本部一般合同労働組合(一般合同労組)は、平成13年10月に結成された、業種を問わず多様な雇用形態で主に東京で働く労働者を組織する個人加盟の労働組合であり、東京地本に組織加盟している。
    申立人全労連・全国一般労働組合東京地方本部一般合同労働組合計器工事関連分会(分会)は、会社の計器工事作業者らが一般合同労組の分会として結成した労働組合であり、本件申立時に会社に公然化していた組合員は5名である。分会の組合員は、一般合同労組にも個人加盟している。
  2. 被申立人ワットラインサービス株式会社(会社)は、電気メーター(スマートメーター)の物流、工事、運送等を主な業とする株式会社であり、27年6月に現在の社名に商号変更した。会社には、業務部、物流部、運行部、計器工事部の4部がある。
    計器工事部の主な事業は、申立外東京電力パワーグリッド株式会社から受託する計器工事である。会社は、計器工事の請負契約を個人又は法人と締結しており、30年12月現在、個人請負の計器工事作業者は133名、法人請負は18社で、その計器工事に従事している計器工事作業者は59名である。

2 事件の概要

被申立人会社との間で個人で請負契約を締結して、家庭用電気メーターの取替工事等(計器工事)に従事する作業者(計器工事作業者)らは、申立人分会を結成した。
30年12月7日、分会は、上部団体である申立人東京地本及び同一般合同労組と連名で、会社に対し、分会の結成を通知するとともに、翌年度の工事件数の割当て等の要求に係る団体交渉を申し入れ、12日にも再度、同じ議題による団体交渉を申し入れた。しかし、会社は、12月11日付及び14日付けの回答書により、計器工事作業者は会社と労働契約を締結する従業員ではなく、組合らは会社が雇用する労働者の代表者には当たらないとして、団体交渉に応じない旨回答した。
12月26日及び31年1月3日、組合らは、会社が計器工事作業者に提示した31年度の請負契約書の内容は従来の契約の不利益変更であるとして、不利益変更等に係る団体交渉を申し入れたが、会社は、30年12月27日付及び31年1月7日付けの回答書により、30年12月11日付けの回答書と同様の理由で団体交渉に応じない旨回答した。
本件は、組合らの組合員である計器工事作業者が、労働組合法(労組法)上の労働者に当たるか否か、労組法上の労働者に当たる場合、組合らが1)30年12月7日及び12日に申し入れた団体交渉、2)12月26日及び31年1月3日に申し入れた団体交渉に会社が応じなかったことが、正当な理由のない団体交渉の拒否及び組合らの弱体化を企図した支配介入に当たるか否かが争われた事案である。

3 主文 <全部救済命令>

  1. 会社は、組合らが1)30年12月7日及び12日に申し入れた団体交渉、2)12月26日及び31年1月3日に申し入れた団体交渉に応じなければならない。
  2. 文書の交付及び掲示とその履行報告
    • 要旨
      会社が組合らの団体交渉申入れに応じなかったことは、不当労働行為であると認定されたこと、今後繰り返さないよう留意すること。

4 判断の要旨

  1. 却下について
    会社は、分会が独立した労働組合としての要件を満たしていないと主張するが、分会は、独自の規約、会計、執行体制等を備えた独立した労働組合であると認められる。なお、分会の組合員が同時に上部団体である一般合同労組に個人加盟していたとしても、そのことをもって、独立した労働組合であることが否定されるものではない。
    労組法第5条第2項の要件は、労働組合の規約に同法同条各号の規定を含むことであって、組合規約の運用については組合員の責任に委ねられている。そして、当委員会の資格審査の結果、組合は、労組法第5条第2項の要件を具備していることが認められる。
    したがって、却下を求める会社の主張は採用することができない。
  2. 計器工事作業者の労組法上の労働者性について
    • ア 事業組織への組入れ
      計器工事作業者は、会社の計器工事部の主要事業を担い、研修や賞罰制度、業務地域や業務日の割り振り等によって会社に管理されており、第三者に対しては、会社組織の一部として表示され、会社の計器工事に専属的に従事しているのであるから、会社の計器工事の遂行に不可欠な労働力として、会社組織に組み入れられているということができる。
    • イ 契約内容の一方的・定型的決定
      契約内容に変更を加える余地は、担当エリアなどごく一部に限られており、契約内容の主要な部分は、会社が一方的、定型的に決定しているということができる。
    • ウ 報酬の労務対価性
      稼働時間と請負金とは比例関係にあり、会社の管理の下に毎月一定額以上の請負金の支払が保証されており、仕事の完成に対する報酬とは異なる性質の手当等もあるなど、計器工事作業者に支払われる報酬は、労務提供に対する対価としての性格を有しているということができる。
    • エ 業務の依頼に応ずべき関係
      年間工事件数が92パーセントを下回ると生産性を低く評価されて翌年の工事件数の割当てが減ったり、報奨金の支給基準とされる評価点が低くなるなどの不利益が生じ、また、緊急夕礼等への参加を義務付けられ、不参加の場合には賞罰基準(罰則編)の反則点の対象となるのであるから、事実上、会社からの業務の依頼に応じざるを得ない立場にあり、個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるということができる。
    • オ 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束
      計器工事作業者は、研修受講や会社への報告等を義務付けられ、会社の定める作業手順に従って計器工事を行うよう徹底して指導されており、また、工事所と担当エリアという場所的拘束及び一般企業の正社員従業員と同じ1日8時間程度の時間的拘束を受けているのであるから、労務の提供に当たり、一定の時間的場所的拘束を受けているということができる。
    • カ 顕著な事業者性
      計器工事作業者は、業務に必要な器材等の一部負担や損失の負担等に事業者性をうかがわせる余地がないとはいえないものの、兼業の実績や他人労働力の利用の可能性、自己の才覚で利得する機会等がほとんどないのであるから、事業者性が顕著であるとはいえない。
      以上の事情を総合的に勘案すれば、計器工事作業者は労組法上の労働者に当たることは明らかである。
  3. 団体交渉拒否について
    会社は、労組法上の労働者に当たる計器工事作業者を組織する組合の団体交渉申入れに応ずべき立場にある。そして、計器工事作業者の報酬や労務提供のあり方に影響を及ぼす事項は、労働条件に関する事項として義務的団体交渉事項に当たるというべきであるところ、会社が団体交渉事項を拒否する正当な理由は認められない。したがって、組合らが申し入れた団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に該当するとともに、組合らの存在を否認し、その弱体化を企図した支配介入にも当たる。

5 命令書交付の経過

  1. 申立年月日
    平成30年12月17日
  2. 公益委員会議の合議
    令和2年2月4日
  3. 命令書交付日
    令和2年3月4日

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