舛添前知事「知事の部屋」

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平成27年1月16日更新

庁議

 平成27(2015)年1月16日(金曜)、知事就任後初の本格編成となる平成27年度の予算、組織・定数の原案がまとまったことを受け、庁議に出席し、職員に向け訓示しました。

平成27年1月16日 庁議知事発言

 平成27年度の予算、組織・定数の原案がまとまりました。細かい中身につきましては、この後の会議で各局長からお話があります。この後、記者会見もありますので、私の方からは、最近の出来事なども含めまして、少し広い視点からお話をしたいと思います。

 基本的なことですけれども、政治とは「希少資源の権威的配分」というふうに言われています。その意味で、まさに希少資源、予算というのは政治そのものであります。
 しかし、昨年は、都政の停滞を避けるということが最優先という判断をいたしましたので、事務方がつくった原案を尊重し、緊急の予算だけを盛り込み、都議会に臨みました。ちょうど今頃は、都知事不在という極めて異常な状況でございました。それから1年間、毎日、都庁に精勤しまして、皆さんと議論を交わし、また100か所以上の現場を視察しました。その場での専門家の意見もお伺いしながら、様々な構想を練ってまいりました。
 この予算につきましては、私が一から手がけた初めての本格的な予算であります。先般出しました長期ビジョンと、この予算こそが、まさに私の政治方針だと言って過言ではないと思います。

 この予算を、一言で申し上げれば、「東京を世界一の都市へと飛躍させる予算」であります。治安、防災、福祉・医療、教育など都民生活を守り、向上させる仕事をしっかりとやっていくんだと。同時に、もうあと5年になりました、2020年オリンピック・パラリンピックを必ず成功させ、東京を、そして日本を元気にし、明るい未来を実現していきたいと、そういう決意の表明でもあります。来月から始まります、都議会の予算審議の中でしっかりと説明をしてまいりたいと思っております。

 私がいつも申し上げますように、お金は天から降ってくるわけではありません。都民の税金であります。スクラップ・アンド・ビルドの、この提案には予算を倍要求していいよと、古いもの捨ててくださいと。その部局には倍返しというか、それで結構ですよということで、新しいやり方を導入しました。無駄を徹底的に排除することで、財源を生み出し、新しい政策には予算を積極的につけていく。そういう積極果敢な予算を組みました。また、来年度は、職員定数を増やすことにしました。行政系の職員が増えるのは昭和49年度以来、41年ぶりということであります。
 仕事があるのに人手がなければ、都民は生活ができません。なんでもかんでもカットすればいいというものではない。そういうことをやれば、マスコミ受けするかもしれないけれども、結果が責任でありますので、政治は結果ですから。結果出すために必要な予算や人はつける。これが私の一貫した方針であります。都民の税金で仕事をする以上、行政の効率をさらに上げなければなりません。職員同士がこれまで以上に連携を強めて、お互いに相乗効果を発揮することで、力を何倍にも増幅して、直面する困難な課題に対処してもらいたいと思います。

 今回の予算査定の中では、東京という大都市で、安全で快適な生活を送るためにかかっているコストについて、いかに莫大なものであるかということを再認識させられました。
 例えば、予算原案でも、橋や水門の耐震化に百億円の単位で予算を計上しております。普通に生活をしていると、こういうことはわからないコストでありますけれども、こうしたことも、都民・国民にもっと知っていただく必要があります。今たまたま、直下型地震への備えということで、よくテレビなんかでも、首都高のコンクリートが落ちているとか、そういうところが映るので、最近やっと理解していただいていますけれど、こういう高度経済成長時代に造られましたインフラの維持・更新、これからも大量に出てまいります。幸いにも、来年度の都税収入は、景気の回復傾向を受けまして、堅調と見込まれておりますけれども、皆さんもご存じのとおり、東京都の税収は、常に景気の荒波に翻弄されてきております。
 バラマキではなくて、こうした更新需要も念頭に置きながら、強い財政基盤を構築することで、長期ビジョンに掲げました政策を確実に実行すること。これが私の役割であります。

 さて、総選挙がありました関係で、例年より遅れまして、やっと一昨日、政府の予算案が発表されました。その前日、私は官邸にまいりまして、安倍総理とお会いしまして、直接、長期ビジョンのご説明をいたしましたし、予算の規模もご説明し、東京はこういう政策をやるんだということをお話をいたしました。その中で、東京都の役割は、20年後、30年後、100年後の、そして日本の未来への展望を切り開く先頭に立つことである、我々が日本経済再生の牽引役を果たします、したがって、国と手を携えてやりましょうと、こういう決意を安倍総理に対して表明してまいったところであります。例えば、水素社会の実現を始め、社会の大きな変革にチャレンジしております。昨日、テレビのニュース、新聞でもありましたように、トヨタの「ミライ」という車、初めての一台が官邸に納品されたということで、総理もお乗りになっていましたけれども、この水素社会の実現、我々のほうが、国よりもさらに先に一歩行っていると思います。そういう中で、国と協力して、時には国に先駆けてやるんだ、我々が先陣を切ってやるんだということをやらないといけない。それだけの力を持っている地方自治体は、我が東京しかないと思っております。皆さん方にも、是非そういう意気込みで、部下たちを引っ張っていって欲しいと思っております。

 先日、残念なことに、パリで卑劣な銃撃テロがありました。言論に対して暴力で対抗することは、これは絶対に許されません。同時に、都政の最高責任者として、安全・安心という基本的な、しかし最も重要な行政の役割の重さを改めて感じた次第であります。総理との会談でも、2020年大会開催にあたりまして、サイバー攻撃も含めてのテロ対策、これで連携を強化していくことを確認いたしました。とてもじゃないけど、テロ対策は東京都だけの力では手に負えません。自衛隊を含め、国もしっかり関与してくださいと、こういうことをお願いしてまいりました。さらに、明日で阪神淡路大震災からちょうど20年。同じ年の3月20日だったと思います、地下鉄サリン事件もありました。東大の、私の優秀な教え子がオウム真理教に入ったというので、なぜこういう優秀な連中がそこに行くのか、それを解明しなければいけないということで、一冊の本を急きょ書いたことを覚えています。二度とああいうことはあってはいけないし、教育の現場で、東大の医学部に入って人の命を救う医者の卵が人殺しに加担したということでありますので、教育というのは非常に大切だと思っております。さらに最近ではテロだけではなく、テロや地震に加えて、昨年はデング熱やエボラ出血熱など感染症との戦いといった、新たな危機も生じております。
 ビジョンや予算でも、安全・安心に関する政策をしっかりと盛り込んでおりますけれども、皆さん方の司、司で、都民の安全・安心を確保するという視点で、備えを固めていくことを改めてお願い申し上げます。

 もう一つ、世界の潮流、政治経済で気になっていることがあります。パリの経済学者のトマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」という本、これは日本語にも訳されて、多くに読まれているというふうに思います。近いうちにシンポジウムを日本でやるので、時間があれば来てくださいと、私のところにもご案内がまいりました。この資本主義の根本的な矛盾という、彼の議論は必ずしも全てが日本に当てはまるとは思いませんけれども、こういうことが話題になるということは、世界的に見て、いわゆるかつて一世を風靡した、新自由主義的な政策への懐疑が出てきているような気もしております。
 そういう意味で、人々が自由に活発に活動をし、経済が良くならなければ新しい富が生まれません。新しい富が生まれなければ、少子高齢化の中で、福祉も医療もその水準を維持することすらできなくなってしまいます。我々先進国は低成長、そして成熟社会化が進んでいますけれども、BRICSのような新興・中進国は急速な工業化で深刻な環境問題を抱えておりますし、最近は急激な原油安ということで、資源国が苦境に陥れられております。さらに発展途上国、これは経済の自立の遅れも見られる中で、これからの国際政治経済、ますます我々も難しい舵取りを迫られてくると思います。先のパリのテロの背景にも、世界内での格差の拡大というのもあると思っております。
 私は昨年、知事に就任して最初の都議会での施政方針で、「政治は強い者のためではなくて、弱い者のためにある」と、そういう政治哲学を申し上げました。その思いは今も変わっておりません。今回の長期ビジョン、予算には、その思いを込めたつもりであります。国際金融センター構想をはじめまして、これまでの都政にはないような、経済をさらに活性化させる政策をどんどん取り入れていく一方で、福祉や雇用についても積極的な政策をとることにいたしました。特別養護老人ホームへの整備促進、待機児童の解消、介護職員や保育士のキャリアアップ、正規雇用への転換促進など、成果を着実に出していく決意であります。

 しかし、どんなに素晴らしいビジョンを描いても、予算が潤沢であったとしても、それを実行に移すのは、あくまで「人」であります。職員一人一人が、日々の行政の中でも、都民・国民の皆さんに、施策の周知を丁寧に行い、理解を求めていく努力を続けて欲しいと思っております。
 そして、政策の効果を上げるために最も大事なことは、「主権者である都民、そして国民の皆さまの協力を得る」ということであります。どうか都民・国民の皆さんの声に、真摯に、そして謙虚に耳を傾けていって欲しいと思います。やはり窓口での対応というのは非常に大きくございまして、私が厚生労働大臣の時も、社会保険庁はあれだけ批判された中で、「いや大臣、全然違いますよ。」というメールが来たりした。それは、「私が行った社会保険庁の窓口の人はこんなに親切で、もう本当に助かりました」という、そういう声がありました。私のところにも、やっぱり都の窓口でこんなに助かっていますというのと、この対応はなんなんだと言うのがありますので、これは先に窓口対応をしっかり改善させろということを申し上げましたけども。やはり我々はパブリック・サーバントということで、都民のため国民のために仕事をするということですから、主権者である都民の皆さん、国民の皆さんの声をしっかり聞くというところが大事でありまして、私が現場を一所懸命見て歩いているというのは、やっぱり現場こそ第一。そして情報が上に上がってくるということが必要であります。幸いこの一年間、皆さんの大変なご努力もあって、非常に風通しのいい職場に変わりつつあるし、そして情報第一、現場第一ということも徹底してきていると思いますので、それが都庁のガバナンスの強化につながると思っています。この流れをさらに進めていきたいと思いますので、皆さん方の今後ますますの努力をお願いいたしまして、予算がなんとか出来上がったということで、一言お話をさせていただきました。みんなで努力してやれば必ずいい成果が出ると確信しております。一緒に頑張ってやりたいと思います。

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