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2021年07月07日 生活文化局
都内の消費生活センターには、オーディションを契機としたモデル・タレント契約に関する相談が毎年多数寄せられており、その約7割は若者からの相談です。令和4年4月に成年年齢が引き下げられると、若者の被害はさらに拡大すると懸念されます。本件の問題点や考え方を整理し、今後の同種・類似紛争の解決にも役立てるため、都は、東京都消費者被害救済委員会(会長 村千鶴子 弁護士・東京経済大学現代法学部教授)に標記紛争の解決を付託していました。本日、同委員会から知事に、あっせん・調停不調により終了したと報告がありましたので、お知らせします。
2名(20歳代の男性、30歳代の女性)
各申立人は、SNSに表示されたA社のオーディション広告に応募した。A社からオーディションに参加してほしいと連絡があり、A社の事務所でオーディションを受けたところ、担当者から合格を告げられ、それぞれ約80万円、約60万円のクラスを勧められた。各申立人は、有料のレッスン契約が必要だと初めて知り、「今日決められない。」、「高額なので難しい。」と伝えたが、モデルになりたいなら今しかないなどと勧誘され、契約して頭金を支払ってしまった。オーディションを受けるだけのつもりが、高額な契約をしてしまったことを後悔した各申立人は、クーリング・オフを申し出たが、A社は、契約書に入学金、受講料等は返金しない旨の条項があると主張し、クーリング・オフに応じなかったため、紛争となった。
委員会は、本件契約は、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)で規定するアポイントメントセールス【注】に該当するため、クーリング・オフが可能と判断し、あっせん案を提示しましたが、各相手方が応じなかったため、調停案を提示しました。
しかし、各相手方は、解決案には申立人側の主張のみが反映されているとして、同意しなかったため、委員会はあっせん・調停不調として処理を終了しました。
【注】勧誘目的を明らかにせずに、電話、SNSのメッセージ機能等により、消費者を営業所等に呼び出す手法
本件は、A社と各申立人との契約に係る紛争として付託されましたが、審議中、A社から、A社はすでに本件対象事業を含むエンターテイメント事業をB社に譲渡しており、本件紛争処理についてはB社が対処する旨の申し入れがありました。
ただし、各申立人にA社から上記事業譲渡等をした旨の連絡はなされておらず、また、債権譲渡等の法的手続を行っているかの確認ができなかったため、契約者であるA社と事業運営者であるB社の双方を紛争の相手方として処理しました。
東京都消費者被害救済委員会は、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関です。
SNSの広告に応募した各申立人に対し、A社は、オーディションの結果次第では有料のレッスンを受けるための役務契約を締結する必要があることを説明しないまま、事務所への来訪を要請していた。役務契約の締結目的を隠匿して勧誘していることから、本件はアポイントメントセールスとして訪問販売に該当し、クーリング・オフが可能である。
各申立人は、役務契約と同時にタレント活動に関するエージェント契約を締結していた。また、A社に求められ、インターネットビジネスにかかる個人事業主である旨の書面にサインしていたが、タレントとして活動した実績も、インターネットビジネスで生計を立てている実態もなかった。さらに、A社とは知識や情報収集力、交渉力に大きな格差があることを踏まえると、各申立人は消費者であると評価でき、消費者関連法令の適用を受ける。
役務契約書の「会費の不返還」等の規定は、消費者契約である役務契約が解除されても代金を一切返金しない旨の不返還特約に当たり、消費者契約法の適用が考えられる。
1)特定商取引法の特定継続的役務提供にモデル・タレント・俳優育成契約を加え、2)当該契約以外に事業者性を基礎づける事情がない場合に、事業者が顧客を事業者とみなして特定商取引法等の適用を免れる方策を禁止し、3)社会生活上の経験不足につけ込んだ勧誘について、消費者契約法の要件を緩和し取消権を付与することを検討するなど、若年者被害の拡大に備えた効果的な防止施策が必要である。
本件の詳細は、報告書(PDF:1,077KB)をご覧ください。
詳しくは「東京くらしWEB」をご覧ください。
問い合わせ先 東京都消費生活総合センター活動推進課 電話 03-3235-4155 |
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