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報道発表資料  2021年11月09日  公益財団法人東京都医学総合研究所, 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP), 福祉保健局

精神疾患の新たなリスク要因(砂糖の過剰摂取)と表現型(脳毛細血管障害)を発見

公益財団法人東京都医学総合研究所 睡眠プロジェクトの平井志伸主任研究員、岡戸晴生シニア研究員、三輪秀樹協力研究員(国立精神・神経医療研究センター 室長)らの研究グループは、思春期における砂糖の過剰摂取が精神疾患(本研究では統合失調症(注1)と双極性障害(注2)を指す)発症の新たな環境リスク要因となりうることを、新たなモデルマウスを作製することで実証しました。また、作製したモデルマウスを用いた詳細な検証により、精神疾患には脳の毛細血管障害及び、血中から脳内へのグルコースの取り込み障害が生じている可能性を見出し、前者に関しては実際の患者さんの死後脳においてもその存在の確認に成功しました。
統合失調症や双極性障害は、若年発症の難治性慢性疾患で発症メカニズムが不明のため、予防法、治療法が確立していません。様々な遺伝的要因のほか、環境要因も想定されていますが、脳機能を障害する確固たる原因は未だ同定されておらず、予防、治療法の確立が強く望まれています。

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発見の概要

本研究グループは、精神疾患が好発する思春期における栄養環境に着目し、次の4点を明らかにしました。(図1))

  1. 思春期に砂糖を過剰摂取すると、背景に精神疾患に対する遺伝的な脆弱性を抱えていた場合に、様々な精神疾患様の症状を呈することを、新たにモデルマウスを作製することで明らかにしました。
  2. 上記のモデルマウスを詳細に解析する中で、脳の毛細血管障害という精神疾患の新たな表現型を見出しました。
  3. さらに、上記の脳の毛細血管障害のヒトでの一般性を検証し、統合失調症、双極性障害の患者さんの死後脳にモデルマウスと同様の血管障害を同定しました。
  4. 作製した精神疾患モデルマウスでは、血中から脳内へのグルコースの取り込みが低下していることを見出しました。

これらの成果は、精神疾患発症の背景に血管の障害による栄養素の取り込み低下といった代謝障害が潜在的に存在する可能性を示唆しており、今後、既存の神経伝達物質の受容体やトランスポータに対する創薬だけでなく、代謝制御といった新たな観点からの予防、治療法の開発が見込まれます。
本研究成果は、2021年11月11日(木曜日)午前4時00分(日本標準時)に米国科学誌『Science Advances』にオンライン掲載されます。

論文名

” High-sucrose diets contribute to brain angiopathy with impaired glucose uptake and psychosis-related higher brain dysfunctions in mice”

発表雑誌

Science Advances

※別紙 ポイント及び研究の背景、内容等(PDF:636KB)(参考図(図1)等はこちらをご覧ください。)

問い合わせ先
(研究に関すること)
睡眠プロジェクト
電話 03-5316-3100
(東京都医学総合研究所に関すること)
事務局研究推進課
電話 03-5316-3109

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