- 報道発表資料
恩賜上野動物園情報 日本初!野生のニホンライチョウからの精液採取と人工繁殖に成功!
富山市ファミリーパークにおいて、野生のライチョウ由来の精液による人工授精により、絶滅危惧種であり国の特別天然記念物であるライチョウが孵化(ふか)しましたのでお知らせします。
野生のライチョウからの精液採取(採精)、及び富山市ファミリーパークで飼育しているメスへの人工授精は、恩賜上野動物園(園長 福田豊)、横浜市繁殖センター、富山市ファミリーパークが共同で実施しました。野生オス個体からの採精、精液の低温輸送、飼育メスへの人工授精を一連で行い孵化に成功したのは、ライチョウでは初めてのことです。
環境省、(公社)日本動物園水族館協会、(公財)富山市ファミリーパーク公社、横浜市と同時発表しています。
1.孵化したライチョウ
孵化数
2羽
孵化日時
2024年6月28日(金曜日)
- 午前3時20分(1羽目)
- 午前10時14分(2羽目)
体重
- 15.4グラム(1羽目)
- 17.8グラム(2羽目)
性別
2羽とも不明
※現在、孵化した雛は富山市ファミリーパークで飼育されています。
野生のライチョウ(採精したオス)
(撮影日:2024年5月24日)
採精の様子
(撮影日:2024年5月26日)
2.経緯
当園は公益社団法人日本動物園水族館協会の加盟園館として、環境省が2021年3月に策定した「第2期ライチョウ生息域外保全実施計画」に基づき、飼育下集団における遺伝的多様性の維持のため、2021年度から人工採精や人工授精の技術開発に取り組んできました。
この度2024年5月24日から27日に、乗鞍岳において、野生のライチョウ6羽から精液を採取し、その精液を富山市ファミリーパークへ低温で輸送後、飼育しているメスに人工授精を行ったところ、6月28日に雛2羽が孵化しました。これまで飼育下のオスメスでの人工採精や人工授精による繁殖には成功していましたが、野生のオスから採取した精液を用いた飼育メスによる繁殖成功は国内初となります。今後もライチョウの域外保全に取り組んでいきます。
参考
ライチョウ(キジ目キジ科)
(環境省レッドリスト:絶滅危惧1B類(EN)、特別天然記念物)
※「1B類」の数字の正しい表記はローマ数字です。
学名
Lagopus muta japonica
英名
Rock Ptarmigan
分布
本州中部高山帯(頚城山塊(くびきさんかい)、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプス)
生態等
体長は成熟個体で全長37センチメートル、体重は400~450グラム。日本に生息するライチョウは、世界に分布するライチョウ(23亜種)の中で最南端に隔離分布する亜種で、日本列島が地続きであった最終氷期に大陸から移り棲み、その後温暖となるとともに高山帯に取り残された、氷河期の遺存種とされています。
羽色は季節によって変化し、夏羽では黒褐色に白斑が混じり、冬には尾羽を除いて純白になります。オスには目の上に赤いトサカがあり、春の繁殖期にもっともよく目立ちます。標高2,200~2,400メートル以上の高山帯で繁殖し、冬季には亜高山帯にも降りて生活します。一夫一婦制でオスはテリトリーをもち、メスに誇示行動をします。1回の産卵で4~7個の卵を産み、21〜22日ほどで孵化します。雛の全身は綿羽で覆われ、目も開いていて、孵化後数時間で立って歩き、エサを食べるようになります。