- 報道発表資料
東京都消費者被害救済委員会付託 「家庭教師及び関連する教材等の契約に係る紛争」の解決を付託しました
都内の消費生活センターには、家庭教師及び関連する教材等の契約のトラブルに関する相談が寄せられています。
本日、知事は、東京都消費者被害救済委員会(会長 沖野眞已・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に、標記紛争の解決を新たに付託しましたので、お知らせします。
付託案件の概要
申立人
40歳代 給与生活者(子ども 契約当時中学1年生)
契約内容
オンライン家庭教師による学習指導と教材等の購入
(契約金額 授業料1コマ約3,000円(指導回数分を月ごとに支払い)+教材費約53万円)
申立人の主張による紛争の概要
中学1年生の子どものために、インターネットでオンライン家庭教師を探していたところ、「1コマ約3,000円」という安価な広告が目に止まり、問合せフォームから体験授業の申込みをした。
後日、子どもとウェブ会議に参加し体験授業を受けた後、契約の話になり、そこで初めて月々の授業料に加えて2教科の教材費約53万円が必要になるとの説明を聞いた。高額だと伝えたところ、2教科分の教材費で4教科教えてあげる、家庭教師による授業のほかにメッセージアプリによる添削指導もする、中学3年間の料金だ等の説明を受けた。これらのサービスが全て受けられ、中学3年生までの費用であればさほど高くはないと考え、そのまま契約書面に電子署名した。そのとき、クーリング・オフや中途解約に関する説明はなかった。後日、クレジットカードで約53万円を一括払いした。概要書面と契約書面は別途郵送されてきた。
10か月ほど受けたが、授業に満足できず、これ以上続けることは難しいと思い、事業者に電話で解約を申し出たところ、教材費約53万円は返金しないと言われた。契約期間が1年以上残っていたので、事業者の回答に納得できず、消費生活センターに相談した。相談員から契約書面に記載不備があるとの助言を受け、クーリング・オフを発信したが拒否された。返金してほしい。
消費者被害に関する注意喚起
- 「授業料1コマ〇〇円」のような安さを強調した広告にひかれて事業者に問い合わせると、広告に記載のない教材等を勧められることがあります。このような場合は、詳しく説明を聞いた上で、慎重に考えましょう。
- 体験授業後に契約を勧められても、その場ですぐに契約せず、複数の事業者と比較検討するなどして、授業内容、教材の質、契約金額、解約条件等を十分に検討しましょう。
- 困ったときやトラブルになった場合は、早めに消費生活センターにご相談ください。(消費者ホットライン「188」局番なし)
付託理由
都内の消費生活センターには、家庭教師に関する相談が、2023年度62件、2024年度76件寄せられており、2025年度は21件(6月末時点のデータ)と増加傾向にあります。その中には、インターネット広告に表示された授業料の安さにひかれ事業者に問い合わせたところ、広告に記載のない高額な教材の購入が必要だと説明されトラブルになった、解約を申し出たところ解約料をめぐってトラブルになったなどの相談がみられます。
その背景として、インターネット広告で家庭教師を探す消費者が増えていることや、教材等も一緒に購入するケースでは、教材が高額である傾向がみられることなどが考えられます。
本件を解決することにより、解決に当たっての考え方を広く示し、同様の消費者被害の防止と救済を図るため、本件を付託しました。
主な問題点
- 1 家庭教師による授業等の役務提供は、契約期間が2月を超え、金額が5万円を超えている場合、特定商取引法が規定する特定継続的役務提供に該当する。その場合、家庭教師の授業に必要だと説明され購入した教材等は、家庭教師による授業等(役務提供)と一体的に取り扱われ、当該役務提供契約とともにクーリング・オフや中途解約ができる。
本件は、特定継続的役務提供に該当すると考えられ、契約書面受領後8日以内であればクーリング・オフができ、また、8日を経過した後であっても中途解約が可能である。- (1)本件では、契約書面を受領してから8日を経過しているが、特定商取引法が規定する記載事項に不備があり、クーリング・オフの起算日が到来していないと考えられることから、クーリング・オフが可能ではないか。
- (2)本件では、教材等の返金額に関してトラブルになっているが、その原因の1つに、勧誘に際し中途解約等に関する説明が不十分であったことがあげられる。事業者は、中途解約の精算方法等を契約の前に丁寧に説明すべきではないか。
- 2 事業者は、インターネット広告において授業料の安さを強調して体験授業に誘引し、体験授業後に初めて高額な教材費の話をしている。授業料のみで足りると考えていた消費者にとって不意打ち性が高く、このような勧誘方法やインターネット広告の表示は問題ではないか。
東京都消費者被害救済委員会における今後の処理
東京都消費者被害救済委員会とは
東京都消費生活条例に基づき設置された知事の附属機関で、弁護士や大学教授などの学識経験者、消費者団体の代表及び事業者団体の代表で構成されています。
都内の消費生活センター等の相談機関に寄せられた消費生活相談のうち、都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について、公正かつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行います。
委員会に付託すると
委員数名による部会を構成し同部会で審議を行います。両当事者から話を聴き、公正な解決策を検討し、両当事者にあっせん案として提示します。両当事者が受諾すれば解決となります。あっせん案の考え方は当該紛争だけでなく、他の類似紛争の解決にも役立つことから、東京都消費生活条例に基づき、広く都民の方々や関係者にお知らせしています。
委員
別紙(PDF:73KB)のとおり
紛争処理実績
こちらから
詳しくは東京くらしWEBをご覧ください。