ワシントンD.C.・ニューヨーク市出張の概要・成果
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令和7年7月、小池知事が、アメリカ合衆国・ワシントンD.C.及びニューヨーク市を訪問しました。
1 出張概要
期間
令和7年7月20日(日曜日)~7月27日(日曜日) ※日程表はこちら
出張人数
6名
総経費
7,289千円 ※出張者及び経費の内訳はこちら(PDF:66KB)
2 主な出張成果
ワシントンD.C.
- 第40回世界獣医師会大会に次回開催都市代表として出席。獣医療・動物福祉・公衆衛生の向上に日々尽力する関係者の方々の姿勢に敬意を表するとともに、「ワン・ヘルス」の理念に基づき、人と動物が共生する社会の実現に向けた取組を進める考えを表明。また、来年の東京大会に向けて、日本獣医師会等と連携していく意向を示した。
- ハドソン研究所及びジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院において講演を行い、国際社会における大都市の役割や東京の取組を発信。講演では、新たに提唱した「Multi-city-lateralism(多都市間主義)」のもと、世界の都市が技術・ノウハウ・制度を共有しながら、自然災害など共通する喫緊の地球規模課題の解決に連携して取り組むことの重要性を訴えた。
- 全米商工会議所主催のビジネスラウンドテーブルに出席。東京都が進める国際ビジネス拠点の形成やスタートアップ育成に関する取組等を紹介するとともに、東京の魅力を一層高めるための視点や課題について意見交換を行った。
ニューヨーク
- アジアソサエティにおいて、行政関係者や学識経験者等とのラウンドテーブルに出席し、大都市のレジリエンスを中心に、両都市が直面する共通課題等について実践的な意見交換を行った。
- 国連本部において、グテーレス事務総長と面会し、気候変動対策や国連の活動に関して意見を交わしたほか、「国連経済社会理事会ハイレベルセグメント」に登壇。各国政府や国連機関、市民社会の代表者等を前に、グローバル化が国際目標達成に与える影響と都市の役割について発信した。
- 本年姉妹都市提携65周年を迎えたニューヨーク市のアダムス市長と面会し、都市のレジリエンスやスタートアップの分野等について意見交換を実施。また、マンハッタン沿岸部の防災再開発「The Big Uプロジェクト」や、デジタル技術を活用したサービスなど、同市の先進的な都市施策を視察した。
3 出張先での主な行動
7月20日(日曜日)
戦略国際問題研究所上級顧問との懇談
- 戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問エドワード・ルトワック氏と懇談し、東京及び日本を取り巻く国際情勢について意見を交わした。
- グローバル化の進展により、国際社会における都市の役割が大きく変化し、その重要性が一層高まる中、権威主義と自由主義の境界に位置する日本の首都として、また世界有数の大都市として、国際的な視座に立った都市外交の推進や安定的な都市運営を行う上で、有益な知見を得た。
世界獣医師会大会に出席
- 次回2026年東京大会の開催都市の首長として、ワシントンD.C.で開催された第40回世界獣医師会大会に出席し、ジョン・デ・ヨン世界獣医師会会長やサンドラ・フェイ米国獣医師会会長等の関係者と懇談を行った。
- 世界各国から集まった獣医師や関係者を前に挨拶を行い、獣医療の発展、動物福祉、公衆衛生の向上に日々尽力されていることに敬意を表するとともに、東京都も「ワン・ヘルス」の理念を踏まえ、人と動物が調和して共生する社会の実現に向けて取組を進めていく考えを述べた。来年の東京大会に向けては、日本獣医師会など関係機関と連携し、準備を進めていく意向を表明した。
7月21日(月曜日)
国際通貨基金専務理事との面会
- クリスタリナ・ゲオルギエバ国際通貨基金(IMF)専務理事と面会し、世界経済の動向や都市の経済成長に果たす役割について意見を交わした。
- また、都市の強靭化に向けたレジリエンスボンドの活用をはじめ、国際金融都市としての東京の魅力や可能性、海外からの投資・人材の呼び込みに向けた取組のほか、スタートアップ支援やSusHiTech Tokyo、女性の活躍、チルドレンファーストなど、東京が目指す持続可能で包摂的な都市づくりに関する施策を紹介した。
ハドソン研究所での講演
- 米国ワシントンD.C.を拠点とする非営利シンクタンクであるハドソン研究所において、「東京が国際社会で果たす役割」をテーマに講演を行った。
- 講演では、都市の役割が国際社会において大きく変化していることに触れ、都市は目の前の「人」に着目し、互いに助け合うための議論と実践を進めることが可能と主張した。また、気候変動がもたらす自然災害が頻発する中、都市間でレジリエンスを高めるネットワークの構築が重要であり、東京が先頭に立って地球規模課題の解決に取り組んでいく姿勢を強調。東京は世界有数の大都市として、新たに提唱した「Multi-city-lateralism(多都市間主義)」のもと、他都市との情報交換や技術的ノウハウの共有を進め、頻発する災害への対応力を高めていくことで、市民の命と暮らしを守っていくという意思を示した。
- また、日米パートナーシップの重要性にも触れ、価値観を共有する米国との連携強化が、国際秩序の安定と地域安全保障の確保に不可欠であると強調。日本は自由主義の最前線に位置し、東京はその中核として、経済力・技術力・文化力を備えた都市として国際的な信頼を獲得しており、こうした都市の力を活かし、日米パートナーシップへの貢献と世界の都市との連携を進めていく姿勢を示した。
- 講演に引き続き、ハドゾン研究所のケネス・ワインシュタイン日本部長とファイヤーサイドチャット形式(炉辺談話)の対談を行った。
- 対談では、内向き思考が強まる日本に対し、国際的役割の再認識と、従来の延長線上ではない「ゲームチェンジ」が必要だと訴え、新たな発想で世界に働きかける重要性を示した。また、都市の基盤は「人」であり、政策の推進には都民の共感が不可欠であるとの認識を示し、クールビズや子育て支援策など、共感を得た施策が成果を上げた事例として紹介した。さらに、アジアのイノベーション・金融ハブを目指す取組として、高度人材の受け入れやグローバルスタンダードな環境整備にも注力していることなどを紹介。スタートアップ支援では、Tokyo Innovation BaseやSusHi Tech Tokyoを通じて、世界的な交流とエコシステムの形成を進めていることなど、都市政策と国際競争力強化に向けた東京の戦略について幅広く発信した。
米国労働長官との面会
- 米国連邦政府において労働政策全般を所管する労働省にて、ロリ・チャベス・デレマー労働長官と面会。雇用・就業分野における取組について意見交換を行うとともに、SusHi Tech Tokyoや気候変動への対応など、東京都の施策を紹介した。
全米商工会議所 ビジネスリーダーとのラウンドテーブル出席
- 全米最大の経済団体である全米商工会議所にて、米国のビジネスリーダーとのラウンドテーブルに出席。
- そのなかで、同商工会議所傘下の米日経済協議会(米国企業による対日ビジネス促進と日米経済関係の強化を目的とする組織)に加盟する企業幹部に対し、東京都が進める国際ビジネス拠点の形成やスタートアップ支援の取組を紹介。また、国際投資先としての東京の魅力や施策を説明するとともに、東京の競争力をさらに高めるための視点や課題について意見交換を行った。
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS)での講演
- ワシントンD.C.に本拠を置く、国際関係学の分野で世界トップクラスの名門校であるジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院において、「グローバル都市・東京が進めている政策革新とその国際的な意義」をテーマに講演を行った。
- 講演では、学生や市民らを前に、都市がグローバル課題の解決主体となる時代に入ったとの認識を示し、東京が「2050東京戦略」を通じて、世界を見据え、先手を打つ形で政策を展開している姿勢を強調し、女性の活躍推進や男性の育児参加、教育費負担の軽減、グローバル人材育成など、「人」が輝く社会の実現に向けた取組を紹介した。また、都市間連携の新たな枠組みとして「Multi-city-lateralism(多都市間主義)」に触れ、都市が現場の知見と技術を共有し、互いに支え合うネットワークの構築が重要であると訴え、都が創設した国際ネットワーク「G-NETS」を通じて、都市のレジリエンス強化と未来志向の協力を推進していく方針を明らかにした。
ワシントンD.C.市長との面会
- ワシントンD.C.市庁舎にて、ミューリエル・バウザー市長と面会し、都市の未来に向けた幅広い意見交換を行った。
- 面会のなかで、今年東京で開催される世界陸上やデフリンピックについて紹介し、米国のアスリートや観戦客の訪日を歓迎する旨を伝達。さらに、スタートアップ支援や都市課題解決を目的としたSusHi Tech TokyoやG-NETSなど、東京の国際的な取組を紹介し、来年開催予定の首長級会議への参加を呼びかけた。また、来年の米国建国250周年を記念し、東京都から東京ゆかりの桜「ジンダイアケボノ」の苗木を寄贈したことに触れ、日米の友好を象徴する桜の意義を分かち合った。
米国連邦上院議員(元駐日大使)との面会
- 2017年から2019年にかけて駐日米国大使を務め、現在は米国連邦上院議員として活躍するウィリアム・ハガティ議員と、米国議会議事堂にて面会。
- 面会では、国際情勢や経済安全保障、企業誘致を含む都市の国際競争力強化に関して意見を交わし、日米両国の連携の重要性を再確認した。また、東京都が進めるスタートアップ支援やイノベーション促進の取組等について紹介。米国の都市・州との連携の可能性についても議論を行った。
7月22日(火曜日)
気候変動に関する国連事務総長の特別講演会への出席
- ニューヨークの国連本部にて行われた、アントニオ・グテーレス国連事務総長の特別講演(テーマ:「機会の時:クリーンエネルギー時代を加速させる」)に招待を受けて出席。
- 東京都でも再生可能エネルギーの普及やグリーンインフラの整備を引き続き進めるとともに、世界有数の大都市として、国際社会との連携を深めながら、持続可能な未来へ向け気候変動対策に取り組んでいく必要性を改めて認識した。
- 講演前後には、グテーレス事務総長や各国連機関のトップ、各国政府の代表者等と挨拶や懇談を行った。
在ニューヨーク日系企業幹部等との意見交換
- 在ニューヨーク日本国総領事館の主催により、世界経済・国際金融の中心地であるニューヨークに拠点を置く日系企業の代表者等との会合に出席。米国政府の関税政策の影響等により、世界経済情勢が不安定さを増す中、同地のビジネス環境や企業活動への影響等について率直な意見交換を行った。
7月23日(水曜日)
アジアソサエティ ラウンドテーブル出席
- ニューヨークに本部を置き、アジアと世界の相互理解を促進することを目的に幅広い分野で活動を行うアジアソサエティにおいて、行政関係者や学識経験者とのラウンドテーブルに出席した。
- 「大都市のレジリエンス」などをテーマに、両都市が共通して直面する課題の解決に向けて、実践的な意見交換を行った。知事からは、気候変動に伴う自然災害への対応として、東京都のレジリエンス強化に向けた取組を紹介した。
Oishii Farm メガファームの視察
- 植物工場スタートアップ「Oishii Farm Corporation」(本社:米国ニュージャージー州)のメガファームを訪問し、同社の事業概要や技術的な取組について説明を受けた。
- ファーム内では、ハチによる受粉技術を活用したイチゴの通年栽培や、ロボット・AIによる自動収穫、生育環境の精密な管理など、最先端技術を駆使した設備を視察。完全無農薬栽培を可能にする植物工場の仕組みも確認するなど、同社の先端技術の実用性と農業分野における革新性を実感した。
- 同社は、東京都羽村市に植物工場研究施設を設置し、量産化や持続可能性の向上に向けた技術開発を進める計画があり、今回の視察を通じて、今後、東京の農業課題への対応やイノベーションによる新たな都市農業について検討していくうえでも、具体的な知見を得る機会となった。
7月24日(木曜日)
ウォール街・リノベーション住宅の視察
- ニューヨーク・ウォール街を訪問し、1930年代に建設された元銀行本社ビルをリノベーションした「One Wall Street」を視察。
- 金融業界の移転を背景に、ニューヨーク市のゾーニング政策のもと、ウォール街は民間活用によって商業と住宅が融合する複合用途地域へと転換されつつあり、歴史的建造物である同ビルが、快適で設備の整った住空間として再生されている様子を確認。歴史と革新が調和する街並みの中で新たな都市の魅力が創出されていることを実感するとともに、東京における持続可能な都市づくりを進める上で、参考となる知見を得る機会となった。
The Big U プロジェクトの視察
- ニューヨーク市担当部局からの説明を受け、防災・再開発プロジェクト「The Big U」を視察。マンハッタン沿岸部の10マイル(約16キロメートル)にわたり、高台公園や防潮堤などを組み合わせた水害対策インフラが整備されている現場を確認した。防災機能と公共空間の質を両立させる本プロジェクトは、都市の安全性と魅力を高める先進的な取組であり、東京におけるレジリエンス強化や持続可能な都市づくりを進める上で参考となった。
国連事務総長との面会
- 国連本部にてアントニオ・グテーレス国連事務総長と面会し、気候変動対策等について意見交換を行った。
- 面会の中で、持続可能な開発目標(SDGs)の達成には、地域レベルでの取組が重要との認識を共有。東京都の施策が世界の模範であるとの高い評価を受けた。また、都市は市民に最も近い存在として、災害対応や環境政策を即応的に担う役割の重要性についても意見が一致した。
- 国連の現状や内部改革に話が及ぶ中で、外交・安全保障が国の役割であることを前提に、東京として国連機能の受け入れに前向きな姿勢を伝えた。これに対し、事務総長からは、これまでの職務経験や度重なる東京訪問を踏まえ、東京の安全性、IT環境、人材の質がいずれも最高水準であるとの評価が示された。
- いただいた東京への評価に対し、日本文化の象徴である漫画やアニメ、東京都主催のスタートアップ・カンファレンス「SusHi Tech Tokyo」についても紹介した。
国連経済社会理事会(ECOSOC)ハイレベルセグメントでの登壇
- 国連本部で開催された国連経済社会理事会ハイレベルセグメントのパネルディスカッションに登壇。
- パネリストとして、グローバル化により国際社会の距離は縮まり、迅速で広範な協力が可能となった一方、パンデミックや紛争、経済摩擦などにより不確実性が拡大し、持続可能な開発目標の達成には課題があると指摘。東京は今年3月、「2050東京戦略」を策定し、2050年代のビジョンと2035年に向けた296の政策目標を掲げ、子育てや女性活躍、都市強靭化を柱とし、健康、福祉、ジェンダー、気候変動など国際的課題にも対応する包括的な戦略を示したことを紹介。国際目標(SDGs)の達成は、課題の現場に近い都市の具体的な取組が積み重なることによっても可能であると述べた。
- また、都市の知恵や経験の共有は新たなイノベーションを生み、国家間協調を補完する枠組みとして「Multi-city-lateralism」が重要であると強調。都市は国際協力を現場から支え、持続可能な未来の実現に貢献することができると主張した。
7月25日(金曜日)
ニューヨーク市長との面会
- 本年、姉妹都市提携65周年を迎えたニューヨーク市のアダムス市長と面会。両都市が1960年の提携以来、長年にわたり友好関係を築いてきたことに触れ、今年3月には65周年を記念して東京都から桜「ジンダイアケボノ」の種子を寄贈したことに言及。
- また、東京都の先進的な施策として、レジリエンス強化に向けた地下調節地の整備や耐震化について紹介。そのほか、スタートアップ育成等、複数分野にわたる意見交換を行ったうえで、大都市が抱える共通課題の解決に向けて、今後も両都市間で連携を進めていく方針で一致した。
NYC311の視察
- ニューヨーク市が非緊急の行政サービスを提供するワンストップコンタクトセンター「NYC311」を視察し、同センターの事業概要や運営体制、市民から寄せられる多様な要望への対応状況、課題などについて説明を受けた。
- オフィス内の見学では、電話・ウェブ・モバイルアプリ・SNSなど複数チャネルを活用した市民対応の現場や、24時間365日・多言語対応の体制を直接確認。今後、東京都における行政サービスのデジタル化を一層推進するうえで、有益な示唆を得る機会となった。
Newlabの視察
- ブルックリン地区の海軍工廠跡地にある造船所をリノベーションして開設されたスタートアップ支援拠点「Newlab」を訪問。
- 施設の設備や機能に加え、地域コミュニティの形成等について説明を受けるとともに、ニューヨークで活動するエコシステム関係者との意見交換を通じ、現地のスタートアップ環境や支援体制、都市としてのエコシステム展開の実態について確認。今後の産業振興やイノベーション政策を検討する上で参考となる知見を得ることができた。