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令和7年第一回都議会定例会 知事施政方針表明

更新日

令和7年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。

1 はじめに

新たな戦略の下、東京の底力を引き出す

時代はまさに激動しております。気候危機、人口減少・少子高齢化、進化を続けるAI。それに輪をかけるように、国際社会のダイナミックな動きがさらなる変化の波を巻き起こそうとしています。その波を飛躍の起爆剤にできるのか。それは私たちの戦略と行動にかかっています。
都は、これまで「『未来の東京』戦略」の下、新型コロナへの対応や待機児童の解消、強靭化など、総力を挙げて施策を推進してきました。成果は、着実に、確実に現れています。しかし、東京を取り巻く変化のスピードは極めて速く、加速度的であります。不確かな未来。だからこそ、明るい方向に向かって力強く前進するための都政の新たな羅針盤「2050東京戦略」を取りまとめました。これまでの実績という確かな土台の上に、AIも駆使して都民の皆様の幅広い声を反映し、まさに都民目線で政策を再構築いたしました。そこに掲げる296の目標は、戦略で描いた東京の未来への道しるべであります。我が国が長年先延ばしにしてきた課題、世界から取り残されている現状に真正面から向き合い、「今、変えていくのだ」という決意で、東京の底力を引き出してまいります。

令和7年度予算案と執行体制

こうした想いで練り上げた今回の一般会計の予算案は、9兆1580億円。知事就任当初から掲げる「ダイバーシティ」「スマート シティ」「セーフ シティ」の3つのシティをさらに進化させるとともに、DXなど新たな視点で業務を見直し、無駄をなくす取組を強化いたしました。事業評価も徹底し確保した財源は、過去最高の1303億円に上ります。就任から9年間の総額は約9400億円となり、メリハリのある予算を築き上げてまいりました。また、組織体制につきましては、新たな戦略を確実に推進し、都政の重要課題に迅速に対応するため、充実・強化を行います。
この予算と新体制の下、戦略で描いた、全ての「人」が輝き、一人ひとりが幸せを実感できる東京へと力強い一歩を踏み出してまいります。

2 人生をより豊かにする新しいライフスタイルを実現する

これより主要な政策について申し述べます。まずは、一人ひとりの人生を豊かにする新しいライフスタイルの実現についてです。

デジタルの力で「手取り時間」を増やす

コロナ禍を境に、生活様式は劇的に変わりました。紀元前B.C.を「Before Covid」とするなら、A.D.は「Age of Digital」、デジタルによる新たな時代の幕開けを迎えています。価値観が多様化する社会において、都民の幸せを左右する鍵の一つは「時間」です。一日24時間0分0秒。その中で、一人ひとりが人生を豊かにするために使える自分時間、「手取り時間」をいかに増やすか。デジタルは、手間を省き、効率性を高め、時間を創出することができます。そうした観点も踏まえまして、「シン・トセイ」をバージョンアップいたしました。組織横断で課題解決に挑み、QOS、サービスの質の向上を都民が実感できる新たなステージ「シン・トセイX」へと駒を進め、デジタルを前提にした新しいライフスタイルを実現していきます。
子育て世代に好評をいただいております「こどもDX」は取組を拡大しまして、意欲的な自治体と協力しながら、子供の出生に関する一部の手続きについても一気通貫で完結できるようにいたします。また、一昨日リリースした「東京アプリ」は、今後アップデートを重ねながら、いつでもどこでもアクセスできる「ポケットの中の都庁」のように進化させ、QOSを格段に高めていきます。行政サービスを劇的に効率化する生成AIの戦略的かつ積極的な導入も図るなど、煩雑な手続きや情報収集に費やしてきた都民の皆様の時間を大幅に節約していきたいと思います。
一方、情報の安全性確保は重要です。ハッキングやサイバー攻撃は、年々高度化・巧妙化しています。都民の重要な情報やインフラを守るため、様々な攻撃を想定した対応や訓練を重ねるほか、一元的に対処するセキュリティセンターを立ち上げてまいります。オール東京の対策強化に繋げ、デジタルを安心して活用できるようにしていきます。

働き方の見直しで人生を豊かにする時間を創出する

育児や介護、趣味やリスキリング。人生の豊かな時間を増やすには、働き方の見直しも必要です。コロナ禍を経て広がったテレワークを定着・発展させていくため、専門家の派遣や機器の導入などきめ細かな支援を行います。加えて、仕事の内容や目的に合わせ場所や時間を自由に選択できる働き方や、週休3日制をはじめ多様な勤務形態の導入を後押しいたします。希望する仕事に就き、望むキャリアを歩めるよう、新しいスキル習得に挑む人たちや、それを応援する企業の取組をサポートします。
カスハラ防止条例がいよいよ4月から運用を開始します。誰もが安心して働き、力を存分に発揮できるよう、社会に浸透させていかなければなりません。カスハラ対応マニュアルを策定する企業をはじめ、介護や医療、教育など様々な業界の対策を広くサポートし、条例の実効性をしっかりと確保してまいります。

3 「人」が輝き、彩り豊かな人生を歩める都市へ

続いて、都市の活力の源泉、「人」についての取組であります。未来を見据え、一人ひとりが輝き、彩り豊かな人生を歩めるようにしていきます。

女性の自己実現を全力で後押し

知事就任以来、「東京の最大のポテンシャルは女性である」との想いで、女性の自己実現を力強く応援してきました。これをさらに前へと進め、今回の予算でも、女性目線の発想で施策を充実しています。例えば、無痛分娩を望む人に対する費用の助成や必要な環境の整備を行います。また、反響の大きい卵子凍結に関する支援は枠を倍に拡大し、女性が自分の人生を豊かにするための選択肢を増やしてまいります。
働きたいという想いも全力で後押しいたします。配偶者手当の見直しや女性管理職を増やす取組を奨励するなど、働き控えを招くいわゆる「年収の壁」や、男女間賃金格差といった課題にも挑みます。また、例えば、「理系は男子」といった無意識の先入観を取り払うことで、STEM分野や起業・投資の世界にも女性活躍のフィールドを広げていきます。
そして、女性たちに「社会が変わったね」と実感いただくためには、「Women in Action」、略しまして「WA(わ)」を旗印に、行政だけでなく、企業とも一体となって社会全体の動きに繋げることが欠かせません。その強力な原動力となる条例の制定に向けて検討を着実に進めてまいります。

もっとチルドレンファーストな社会へ

安心して子供を産み育てられる東京の実現

昨年の我が国の出生数は70万人を下回る見込みと言われています。多くの家庭で共働きとなった世の中を前提に、望む人が安心して子供を産み育てられる社会のインフラを整えることが求められております。
学校始業前に校庭や体育館で安心して子供が過ごせる「朝の居場所」を充実させます。さらに、学童クラブについては、来年度、国の運営基準を上回る都独自の認証制度を開始いたします。質の向上を図ると同時に、児童館など既存施設を活用した居場所づくりを支援し、令和9年度末までに待機児童を解消します。また、不登校児童・生徒の増加と低年齢化も進んでいます。フリースクールとその利用者側双方へのサポートを拡充するとともに、新たに小学校一年生への重点的な支援や小学校の居心地向上にも取り組み、多様な学びの機会を創出していきます。
子育てに係る経済的負担に着目した取組も強化いたします。国に先駆けて進めてきた保育料の無償化は、9月から対象を第一子まで拡大いたします。加えて、住宅価格や家賃が高騰する中、都内で安心して子育てができる住まいの確保も大切です。官民連携でファンドを立ち上げ、空き家の活用など民間の創意工夫を引き出し、手頃な価格で住める「アフォーダブル住宅」の供給を図ります。
健やかな育ちを支えることは、子供たちが人生を力強く歩む礎であります。全ての子供たちが成長段階に応じて、自己肯定感や意欲を育む多彩な体験ができる機会を提供いたします。また、都内中高生が議論を重ねて提案したアイデアを政策として実現するなど、これまで以上に子供のリアルな声を反映した取組を展開していきます。一方、児童虐待をはじめ子供を取り巻く状況が厳しさを増しています。保護児童への個別的なケアや施設の新たな整備により一時保護需要の増加に対応するとともに、DXによる児童相談所と警察の緊密な情報共有を実現するなど、きめ細かな支援体制を構築いたします。

「新たな教育のスタイル」の確立

教育こそ明るい未来の要。そうした想いで、新たな教育施策大綱の案を公表いたしました。創造性や主体性、チャレンジ精神を育み、DXで学びを見える化する。こうした、次の時代に欠かせない学習の基盤をデジタルとリアルの最適な組み合わせで実現する「Learning Platform Transformation」、LPXを推し進めてまいります。例えば、「世界で最も革新的な大学」と称されますミネルバ大学と連携しまして、多様な価値観や考え方に触れながら課題解決に取り組む姿勢を育成するなど、従来の画一的な学びから、一人ひとりの興味・関心に応じた学びの形へと、都立高校の教育のスタイルをアップデートしていきます。

若者のチャレンジを全力で応援する

自らの可能性を大きく広げていくためには、若いうちから、世界を知り、グローバルな素養を磨くべきだと考えています。そこで、大学生や都庁の専門人材等への大胆な留学支援を新たに開始いたします。また、都立大学では、国際系新学部の令和10年度開設を目指し準備を進めることとしました。英語で学位が取得できるプログラムも全学的に導入し、国内外の優秀な学生を呼び込むことで、国際化を加速いたします。
さらに、都内の教員や都庁の技術系職員など、東京の持続可能性を支える意欲に溢れた若者を対象に奨学金返還を支援いたします。都の関連団体と連携して、大学の博士人材が豊富な知識と意欲を存分に発揮できるような仕組みづくりを行うなど、挑戦する若者を全力で応援いたします。

誰もがいつまでも活躍し続けることができるインクルーシブ社会へ

超高齢社会をアクティブに

来る本格的な超高齢社会を、活力に溢れるアクティブな「Choju社会」にしてまいります。地域や自治体などの様々な社会活動とマッチングを行うオンラインプラットフォーム「100年活躍ナビ」の運用を4月から開始いたします。シルバーパスは、利用者の負担額を軽減するとともに、制度改善に向けた実態把握のためICカード化に着手いたします。多くの方々にご活用いただき、社会参加を積極的に促していきたいと思います。
もちろん、地域で安心して暮らせる環境を整えることも重要であります。来月、都の実情に即した認知症施策推進計画を策定いたします。早期の気づきや、早期診断・早期対応に資する医療提供体制の強化、家族に寄り添った相談の実施など様々な施策を盛り込み、強力に推進してまいります。また、今後、増加が見込まれる一人暮らしの高齢者に対しまして、拠点を設けて地域全体で見守りを行う区市町村を支援いたします。介護基盤を充実するため、ケアプランのデータ連携による現場の業務負担軽減や訪問介護事業者の人材確保を後押しをするとともに、老朽化する介護施設の更新も促進していきます。

共生社会実現に向けた環境整備

障がいのある方などが個性と能力を活かして活躍するソーシャルファームを一層広げていきたいと思います。新たにサポートチームを立ち上げ、事業所ごとの課題に伴走しながら自律した経営を支援いたします。また、声と手話を双方向に変換するAIシステムの開発など、都民や大学からいただいた提案を具体化し共生社会の実現をさらに加速させます。重症心身障害児を支える療育施設の看護師などの人材確保も進め、障がい児とその家族が安心して生活ができる環境を実現いたします。

4 国際競争力を磨き上げ、明るい2050年への礎を築く

続いて、国際競争力を高める取組に関してであります。東京が持つ強みを伸ばし、明るい2050年への礎を築いてまいります。

イノベーションの種を次々と開花させる

新たな産業の波が押し寄せる今こそ、ゲームチェンジのチャンスであります。成長分野への参入や投資を強力に呼び込み、東京の至る所にあるイノベーションの種を次々と花開かせていきます。
そのために、4月から「スタートアップ戦略推進本部」を新設し、より専門性を高める形で体制を強化いたします。スタートアップの拠点として定着しているTokyo Innovation Base、TIBの活動を質・量ともに充実させ、成長途上のグロース期での支援強化やスタートアップを生み出す新たなモデルの構築等に挑んでまいります。さらに、5月に開催するアジア最大級のスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo」は、未来を展望し、具体の行動へ繋げる場として一層発展させていきたいと思います。前回の規模を上回る約500社のスタートアップが出展するほか、世界トップクラスの投資家や起業家をお招きをし、ビジネスチャンスを広げる多彩なプログラムを用意しています。未来を担う若者たちの運営チーム「ITAMAE」も、TIBでの日々の活動を活かし会場を盛り上げます。また、海外の企業や人材にビジネスや生活の場として東京が選ばれる環境を整備するため、会社設立に必要な行政手続の英語対応を拡充するとともに、インターナショナルスクールの都内への進出を促します。こうして多様なプレイヤーを結び付けてオープンイノベーションを加速させ、ユニコーンが次々と生まれるような、可能性に溢れた都市にしていきます。

東京の産業・経済をもっと元気に

東京の産業・経済を支える多くの中小企業の優れた技術力を次世代に受け継ぎ、新たな成長に繋げることが極めて重要であります。経営資源が限られる中小企業の発展的な統合を促進。後継者の意欲的な事業展開を、資金やノウハウなど様々な観点から支援いたします。
深刻な人手不足の解消にも取り組みます。成長産業をはじめ人材確保に課題を持つ業界との就職マッチングを強化するほか、業務効率化に繋がる製品・サービス等を提供するベンチャー企業を、都が出資するファンドを通じて後押しすることで、中小企業の問題解決に繋げます。
観光は産業の大きな柱の一つであります。昨年の訪日外国人旅行者は3600万人を突破いたしました。先般訪れたタイのバンコクは、観光資源として夜の時間を戦略的に活かし、経済活性化に繋げていました。都におきましても、都庁舎のプロジェクションマッピングをはじめ夜の魅力は着実に増しています。国際観光都市としての競争力を高めるには、一層の充実が不可欠であります。エリアごとの特色を活かしたナイトタイム観光を推進する取組や、夜間のイベント開催を支援するとともに、夜の時間も楽しめるまちとして発信も強化し、観光の力で東京をもっと元気にしていきます。

ソフトパワーこそ「東京ならではの魅力」の源泉だ

国内外の多くの人々を惹きつける東京の個性は、芸術文化や世界を魅了するコンテンツといったソフトパワーなくして語れません。
その一つが、江戸から続く歴史・文化であります。新設した有識者会議におきまして、世界遺産登録も見据えながら、その価値や奥深い魅力を明らかにいたします。江戸の存在を力強く伝えるロゴマークや江戸東京博物館のリニューアル1年前イベント等も活用して、「EDO」の認知度を高めてまいります。
芸術文化をもっと都民の身近な存在にいたします。障がいのある方や外国人も気軽に鑑賞できるようサポートを行い、誰もが楽しめるような環境を整えます。さらに、若手アーティストの創作活動の場として大変好評いただいている「START Box」など、意欲に溢れる人材の活躍を様々な形で一層後押ししてまいります。
そして、日本のキラーコンテンツである漫画やアニメ。本年10月を目途に、クリエイターたちが切磋琢磨しながら制作に没頭できる、「現代版トキワ荘」とも言うべき新たなアトリエラボを設置をし、国内外を魅了するコンテンツの力を一段と高めてまいります。

誰もがスポーツを楽しむ世界に誇れる都市にする

今年はいよいよ世界陸上・デフリンピックが開催されます。デジタル技術を活用して駅や公共施設でのユニバーサルコミュニケーションを促進するなど様々なレガシーを創出し、共生社会の実現と東京の一層の発展に繋げます。また、大会期間中の競技体験など、運動したくなる取組を展開いたします。両大会合わせまして10万人を会場に招待し、子供たちにとってかけがえのない2025年にしてまいります。
そして、世界有数の国際大会のレガシーを大いに活かし、スポーツを通じて都民の皆様が幸福を実感できるようにいたします。7年ぶりに改定する「東京都スポーツ推進総合計画」におきましては、スポーツを通じた幸福度の数値目標を初めて設けるとともに、「応援する」ことを参画方法の一つとして新たに位置づけました。新設する「スポーツ推進本部」が中心となりまして、計画に掲げた多彩な施策を強力に推し進め、誰もがスポーツを楽しむ、世界に誇れる都市を実現してまいります。

時代の先に目を向けたまちづくりで2050年の礎を築く

こうした人間の様々な営みを最大化する舞台装置となるのが都市であります。その役割を果たし続けるため、時代の先にまで目を向けたまちづくりが求められています。間もなく自動車道の役割を終えるKK線は、世界陸上やデフリンピックでの活用をはじめ、多くの方々の参加の機会を設けながら、ウォーカブルな空間を創出してまいります。神宮前五丁目地区では、子供をはじめ、誰もが集い・つながる、開かれた「智の創造拠点」に生まれ変わらせるべく、都有地を活用した整備に取り組んでまいります。こうした都内各地で進むまちづくりの機会を捉えて、「人」が主役の都市へと再構築していきます。
都内に多く残る空き家は、実は東京の隠れた活力の源でもあります。都内全域をカバーする空き家マップの整備や、民間のノウハウ等を活かした掘り起こしを進めます。さらに、創意工夫を凝らしてリノベーションのアイデアを競い合い、空き家の大きな可能性に光を当てることで、「つくっては壊す」から「長く大切に使う」発想へ転換してまいります。
一方で、テクノロジーを駆使して未来の東京のまちづくりを牽引する東京ベイeSGプロジェクトは、中央防波堤や臨海副都心を舞台に芽吹き始めた先行プロジェクト等の成果を踏まえ、DXやGX、文化・スポーツ・エンタメといった観点からアップデートし、取組を加速させます。
緑と水も今後の都市づくりのキーワードです。農地の貸借期間の長期化による新規就農の後押し、地下道などでの緑の創出、多摩産材の活用など、緑を「まもる」「育てる」「活かす」東京グリーンビズを一層推し進めます。貴重な歴史的財産である外濠につきましては、水質改善に向けた実施計画を明らかにしていくとともに、日本橋川周辺につきましても、「きれいに、つなぐ、集う、うみだす」をコンセプトにしたまちづくりの方向性を示すなど、緑と水のまちづくりを推進いたします。
少子高齢化や技術革新を睨めば、移動と物流の変革も急がなければなりません。来年度から都庁の体制も強化し自動運転の社会実装を一段と加速いたします。今週末より西新宿において、ドライバーの同乗が不要なレベル4の実現に向けたバスの通年運行を開始するほか、臨海部や都心部などにおきましても、民間事業者と連携して自動運転導入に必要な技術精度の向上を進めます。さらに、物流の視点では、都市部でのドローン活用に向けた取組に着手するとともに、今年度末には国際物流の要であります東京港の将来像を示した「Tokyo Container Vision 2050」を策定いたしまして、大井ふ頭の機能強化を推進していきます。

新たな都市づくりのあり方を描く

都市づくりは、まさに国家百年の計そのものであります。時代が激動する今、そのあり方を改めて描き直す必要性が高まっています。温故創新の観点から、江戸の歴史・文化と最先端の技術を融合させ次々とイノベーションを起こす。そして、都民が豊かさを実感できるような、多様なライフスタイルが叶う都市にしていく。時間的・空間的な幅広い視点で「都市づくりのグランドデザイン」の改定に着手してまいります。

5 誰もが「行きたい」「住みたい」と憧れる多摩・島しょを実現する

続いて、多摩・島しょ地域を、誰もが「行きたい」「住みたい」と憧れるような東京が誇るブランドへと磨き上げる取組について申し上げます。

多摩を「緑のTAMA手箱」にしていく

先月、2050年代の将来像を描いた「多摩のまちづくり戦略」の案を取りまとめました。都心部にはない豊かな緑とゆとりの空間。その中に、大学・研究機関や企業の集積、歴史と文化、さらにはアニメの聖地もあります。身近な地域で快適に暮らせる環境も大きな魅力です。それらの連携や交流を一層活発にして、30市町村、色とりどりの個性をもっと伸ばし、多摩地域を「緑のTAMA手箱」にしていきたいと思います。地域の可能性をグンと引き上げる多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面への延伸は、来年度、いよいよ事業に着手いたします。延伸により新設する7つの駅周辺はもとより、諏訪・永山、多摩センター、南大沢といったニュータウンなど、拠点となるまちづくりもしっかりと後押しをいたします。そして、2050年代の将来像に向けて掲げたハード・ソフト約500に及びます事業を、着実に実行・実現してまいります。

多くの人を惹きつける魅惑の宝島へ

雄大な自然に恵まれた島しょ地域は、唯一無二の存在であります。国内外から多くの人を惹きつけ、さらなる地域の活性化に繋げていきます。八丈島への海外直行便の発着や、島々へのアイランドホッピングといった富裕層に狙いを定めたモデルツアーの実施など、各島のブランド化に向けた観光地づくりに取り組みます。島内をスムーズに移動し楽しめるよう、施設や店舗、タクシー車両等のバリアフリー化も支援をしてまいります。
そして、海に囲まれた特有の環境でも、快適に安心して暮らせるようにすること、これは重要です。GovTech東京と連携し、島しょの町や村のDXを伴走型でサポートいたします。勢いを増す台風などによる停電や海底ケーブル断線等に備え、島しょ地域全ての町村に衛星アンテナを配備をいたしまして、通信基盤の強靭化を進めます。無電柱化は、掘削によらない新たな整備手法の確立に挑むなど、期間とコストの短縮を図ってまいります。

多摩・島しょへの移住・定住を後押し

多摩・島しょ地域の活力を引き出すために欠かせない、移住・定住の促進に向けた取組も充実いたしました。特に課題となるのは住まいの確保であります。大学や都職員がレイアウト等を考え、そのスケッチを基に実際の空き家を改修いたします。一連のビフォー・アフターの過程を動画で発信することで、空き家に眠る価値を印象づける工夫もいたします。さらに、移住・定住活動等に取り組む島しょ地域の個人や団体が八丈島で一堂に会する機会を設けまして、地域を一層盛り上げる気運も高めてまいります。

6 世界を先導する覚悟で「ゼロエミッション東京」の実現に挑む

次に、「2050年ゼロエミッション東京」の実現について申し上げます。

エネルギー確保と省エネ・脱炭素化の両立に真正面から挑む

我が国が厳しい国際競争を勝ち抜く上で最大の課題は、エネルギー資源が乏しいという現実であります。それをどう確保し、省エネ・脱炭素化といかに両立するのか。この国家的な課題の解決に、首都として真正面から挑みます。

エネルギーの確保

4月からスタートする太陽光発電設備の設置義務化を梃子にして、課題解決に向けた様々な取組を推し進めます。再エネ導入のゲームチェンジャーとなる可能性を秘めた次世代型ソーラーセルは、都有施設や民間企業への実装を集中的に支援し、需要を創出することで、国内産資源も活用して量産化に繋げます。同時に、太陽光パネルの再資源化に取り組む事業者への設備投資を促し、効率的なリサイクルルートも確立していきます。島しょ部での浮体式洋上風力発電の導入を目指した取組に加えまして、農地の上部空間を活用し農業を営みながら行う太陽光発電や、廃材等を使ったバイオマス発電を促進することによって、「発電する未来都市」への歩みを加速いたします。
さらに、先端技術やスタートアップなど東京の豊富なポテンシャルを活かして地域内のゼロエミ化に挑む区市町村への強力な後押しも開始いたします。都独自の面的な省エネ・脱炭素化という新たなアプローチによりまして、ゼロエミッションへの歩みを進めてまいります。
脱炭素の切り札となるグリーン水素につきましては、長期的・安定的に活用できる環境を整えます。一昨日、水素を復興の柱の一つに掲げる福島県と、県内産グリーン水素の供給等に関する協定を締結いたしました。加えて今年は、都内で初めて大規模な製造を開始するほか、今後、中央防波堤埋立地でも製造施設の整備に着手いたしまして、供給量の増加に繋げてまいります。また、先月には都有地を活用したグリーン水素ステーションの運営事業者が決まりました。需要創出とステーション整備の一体的な支援も始めるなど、積極的に実装事例を生み出していきます。

ゼロエミッションモビリティの普及を強力に後押し

ZEVの普及も推し進めます。環境負荷軽減に資するメーカーの取組に応じて購入時のインセンティブとなる支援を充実することで、需要拡大を通じた魅力的な製品開発を促します。都営バスでは、国内初のバス営業所内水素ステーションが開所するのを機に、令和9年度までに燃料電池バスの導入を累計100台まで拡大をいたします。

燃費の良い持続可能な都市を構築

限られたエネルギー資源を有効活用するには、車と同じように家の燃費にも着目して環境性能の高い住宅を一層普及させることが欠かせません。断熱・省エネ性能の確保を義務付ける建築物環境報告書制度の実効性を高め、ゼロエミ住宅の普及に弾みをつけるため、義務化の対象外である中小ハウスメーカー等への支援を強化いたします。さらに、既存の賃貸住宅につきましては、2030年までに約100万戸を断熱改修することを目指し、省エネ診断から改修まで伴走しながら集中的にサポートを行います。併せまして、環境性能の高い住宅の魅力をPRし入居者のニーズも喚起することで、改修への機運を高めます。

新たな仕組みとGX投資でゼロエミの好循環を創出する

企業の省エネ・脱炭素化を促す新たな仕組みづくりに挑んでまいります。カーボンクレジットの認証を行う国際的な機関とMOUを締結し、来月から、都内中小企業が国内外のクレジットを簡単に取引できる、都独自のシステムの運用を開始いたします。このクレジットを活用して製品のブランディングを行う企業の後押しも行い、取引拡大に繋げてまいります。
最先端のエネルギー・環境技術への投資を呼び込み、開発を促すことが、ゼロエミッション東京への近道であります。この分野でスタートアップによるイノベーション創出を支援する官民一体のファンドを創設し、GXを促進させてまいります。省エネや再エネの需要を喚起し、温室効果ガスの削減に繋げ、その価値が投資や開発を呼び込み、さらなる省エネ・再エネを実現する。こうしたゼロエミの好循環を生み出してまいります。

東京が省エネ・脱炭素化で世界を先導する覚悟を示す

昨年1年間の世界の平均気温は、記録が残る1850年以降で最も高くなったと言われています。もはや一刻の猶予もありません。エネルギーの大消費地としての責任を果たすべく、都は、温室効果ガス排出量を2035年に2000年比で60%以上削減するという意欲的な目標を新たに掲げました。実現に向けたロードマップも今年度内に作成をいたしまして強力に推し進めます。また、都内中小企業が持つ優れた環境技術やビジネスモデルを、成長著しいグローバルサウス諸国に展開することで、企業の成長のみならず、世界の省エネ・脱炭素化に貢献するなど、人類共通の課題解決を都が先導してまいります。

7 強靭化を推し進め都民の安全・安心を守り抜く

最後に、首都防衛、安全・安心の取組について申し上げます。2050年の明るい未来は、都民の命と健康を守ることなくしてあり得ません。

弛まぬ点検と着実な予防保全の積み重ねが都民生活を守る

埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、直ちに都内下水道管の緊急点検を行い、異常がないことを確認をいたしました。万全を期すため、現在、範囲を広げて追加点検も実施中であります。もとより、都は掘削せず下水道管をリニューアルする技術を開発し、計画的に再構築を進めてきました。道路や橋梁などその他のインフラにつきましても、かねて予防保全型管理を導入し、戦略的に長寿命化を図っています。今後も新たな技術を取り入れながら適切に維持管理し、都民生活の安全を守ってまいります。

都市のさらなる強靭化で都民の命を守る

地震への備え

備えよ常に、いつ起こってもおかしくないのが首都直下地震であります。先月、「防災都市づくり推進計画基本方針」の改定案を公表いたしました。整備地域以外でも、改善が必要な地区を新たに「防災環境向上地区」に指定をいたしまして、地元自治体と連携してきめ細かく対策を進めるなど、「燃えない・燃え広がらない」まちづくりを一層加速いたします。災害時の円滑な救援救助活動に欠かせない無電柱化は、防災上優先度が高い路線を重点的に後押しをすると同時に、宅地開発に合わせた整備や、公道に加え木密地域の私道への支援など面的な取組を展開し、防災性向上を急ぎます。
能登半島地震で改めて課題となりました避難所の改革にも着手いたします。雑魚寝の解消やプライバシーの確保、不衛生なトイレ環境の改善など、求められる基準や具体的な運営方法をまとめた指針を今年度内に作成をいたしまして、避難所での不安を軽減し、少しでも快適に過ごせるようにしていきます。
昨年末時点で9万戸を超えた「東京とどまるマンション」。発災時に安心して在宅避難を継続できるよう、エレベーター閉じ込め防止対策やマンホールトイレの設置などを支援を拡充いたしまして、さらなる普及を図ってまいります。マンション等の住民と町会・自治会との合同防災訓練を通じた地域の繋がりづくりにさらに力を入れるほか、町会・自治会の防災倉庫の設置や、商店街の備蓄用品等の充実にも取り組み、地域の防災力を底上げいたします。

水害対策

昨年夏の一連の豪雨では、整備した調節池が延べ約115万立米の水を取り込み、被害を最小限に抑えることができました。深刻化する気候変動を睨み、新規調節池の事業化目標を250万立米へと引き上げ整備を推進いたします。また、地下街の浸水対策など都市型水害への備えも強化するほか、東部低地帯での大規模水害時における円滑な広域避難に必要な区の計画のモデルを、今年度内に作成いたします。

あらゆる危機に備える

甚大な被害が想定される富士山や島しょ火山の噴火にも備えを固めなければなりません。降り積もる火山灰への対応や島しょの避難体制など具体策を盛り込みまして、来年度早期に地域防災計画の火山編を修正いたします。また、ミサイル攻撃を現実的な脅威と捉え、その対処を強化するなど、国民保護計画を変更し、都民の命を守ってまいります。

都民の不安に応え、安心して暮らせるまちを創る

全国各地で発生する「闇バイト強盗」など凶悪な犯罪によって都民の体感治安が悪化しております。都は、「都民安全総合対策本部」を新設し防犯・治安対策を強化いたします。緊急対策として家庭への防犯カメラ等の導入を支援するほか、AIを活用してSNS上に溢れる闇バイトに関する投稿にも目を光らせ、犯罪の未然防止に繋げます。
利用者の命を守る鉄道駅のホームドア。先週開催いたしました官民一体の協議会におきまして、整備目標を2年前倒しをし、2028年までにJR及び私鉄駅の約6割に設置することを宣言いたしました。来年度予算に盛り込んだ支援策を梃子に、整備を加速いたします。
昨年発生した羽田空港での航空機火災や、車両が入れない狭隘地域にあります中高層マンションでの火災では、大都市ならではの消防活動の難しさを改めて実感をしております。あらゆる現場を想定し、消火用ドローンの研究開発など消防力のさらなる向上を図ります。
また、物価高騰が厳しさを増しております。これまでも運輸事業者を対象とした燃料費高騰対策やLPガスを利用する家庭等への支援など重層的な手立てを講じてまいりました。都民生活や事業活動の現状を踏まえまして、今回の最終補正予算や来年度予算でも、生活困窮者支援や中小企業の経営下支えなどきめ細かな対策を盛り込みまして、しっかりと取り組んでいきます。
命と健康を守る医療体制も揺らいではなりません。本来は国が診療報酬の改定などを通じて対応すべきものでありますが、都内の物価等を考慮しまして、緊急的かつ臨時的な対応として都内民間病院への支援を行うことといたしました。加えて、高齢者の病床確保や小児、産科などの受入体制の強化も図り、地域医療を力強く支えてまいります。

8 おわりに

さて、幕末から昭和初期の激動の時代に、東京の礎を築いた後藤新平や渋沢栄一。彼らは、50年後、100年後を見据えて世の中にイノベーションを起こし、社会を大きく変えました。今再び時代の節目を迎え、変革が強く、強く、求められていると痛感をいたします。
東京大改革、その原動力は都民の皆様の「東京をもっとこうしたい」という想いであります。今回策定した戦略のページをめくると目に飛び込む「22世紀の予言」。AIを活用して予測した100年後の未来であります。そこに並ぶ数々の言葉は、今はまだ難しいですが、実現すれば、暮らしをもっと快適で、便利で、豊かにしてくれるものばかりであります。分単位・秒単位で進化するテクノロジーが、今この時も、世界中で次々とイノベーションを起こしています。予言が現実となる日は、すぐ近くかもしれません。
時代は大転換を迎えています。東京はもっと良くなる。未来はもっと良くなる。「都民ファースト」「都民が第一」で練り上げた数々の政策を確実に実行し、都民の皆様の想いも力にして、東京を世界で一番の都市へと押し上げてまいります。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案38件、条例案94件など、合わせまして165件の議案を提案いたしております。どうぞよろしくご審議をお願いをいたします。

以上をもちまして、私の施政方針表明を終わります。

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