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令和3年(2021年)2月17日更新
令和3年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。
まずは、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
緊急事態宣言の只中にあって、対策の徹底にご協力をいただいている都民・事業者の皆様、そして、感染症と日夜闘っていただいている、医療従事者をはじめとする皆様に、改めて深く感謝を申し上げます。皆様の多大なるご尽力により、新規陽性者数は減少傾向にある一方、未だ入院患者数は非常に高い水準で推移いたしておりまして、医療提供体制の逼迫は長期化しております。年代を問わず、後遺症に悩まされる例も多く報告されており、自らの、そして大切な人の命と健康を守るため、改めて「感染しない・させない」ことの重要性を、都民の皆様一人ひとりと共有したいと思います。
まだまだ、気を緩められる状況ではありません。ここが正念場であります。これまでの努力を水泡に帰さないためにも、引き続き、基本的な対策へのご協力、心からお願いを申し上げます。
ワクチン接種につきましては、本日、医療従事者に対する先行接種が開始となりました。都といたしましても、円滑な実施に向け、区市町村や医師会等と一丸となって準備を進めたところでありまして、都民・事業者の皆様に安心と希望を感じていただきながら、引き続き「見えざる敵」との闘いに共に邁進したいと思います。
感染症対策の中核となる東京iCDCにおきましては、新型コロナウイルス感染症に関連するデータを一元化・可視化する情報基盤を整備をいたし、より高度な分析を実施いたします。専門家ボードでは、エビデンスに基づく対策をさらに推進するための調査・研究を行い、未知のウイルスに打ち克つための効果的な取組へと繋げてまいります。
人の流れを抑制する上で、往来の多い東京・埼玉・千葉・神奈川、この1都3県が一体的な取組を行うことは、大きな効果を生み出します。現在、営業時間短縮の要請、世代の行動特性を踏まえた呼びかけ、出勤者数7割削減に向けたテレワークの集中実施など、幅広い対策を講じておりまして、引き続き緊密な連携の下、実効性ある施策を推進してまいります。
官民を挙げてテレワークの一層の浸透を目指す「東京ルール」につきましては、これまでに600社を超える企業の皆様に「実践宣言」を行っていただきました。半日・時間単位で柔軟に実践する「テレハーフ」も推奨しております。来年度は、ワンストップのオンライン相談窓口の設置や専門家の派遣など、よりきめ細かな支援を展開し、テレワーク実施率のさらなる向上へと繋げてまいります。
都民の命を守るためには、雇用の確保も重要な課題であります。コロナ禍で困難に直面している方々に寄り添い、大胆な雇用対策を推進してまいります。採用意欲の高い企業でのトライアル就労、ITや医療・介護等の分野における都独自の職業訓練などの取組を、かつて世界恐慌に立ち向かったアメリカのニューディール政策になぞらえまして、「東京版ニューディール」と位置づけ、2万人を超える雇用創出を目指して果敢に進めてまいります。
なお、現在、感染拡大を阻止する対策や、経済活動と都民生活を支えるセーフティネットの強化・充実などを盛り込んで、追加の補正予算案を編成しております。近々、本定例会に提案をいたしまして、ご審議をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
「誰もが希望と活力を持って安心して生活し、日本の成長のエンジンとして世界の中でも輝き続けるサステナブル、持続可能な首都・東京を創り上げる」。これは、5年前の知事就任後、初となる所信表明において述べた決意であります。迫りくる人口減少社会、熾烈な世界の都市間競争、深刻化する気候危機。こうした内外の厳しい情勢の中にありましても、なお持続的に発展する東京を築いていく。揺るぎなき「東京大改革」の信念を掲げながら、これまで、「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の実現をはじめ、多摩・島しょ地域の振興、全国との共存共栄、デジタルトランスフォーメーションの推進などに力を入れてまいりました。この間、一貫して重視してまいりましたのは、東京の大いなる活力源である「人」の輝きを最大限に引き出すという観点であります。人と人が繋がり、新たな価値を創造することで発展を続けてきた東京の持続可能性の鍵は、一人ひとりの「人」にある。こうした確信から、年齢も、性別も、国籍も、障がいの有無も関係なく、誰もが輝き多様性溢れる都市を築くための幅広い施策を講じてまいりました。
今、サステナブルな東京を図る上で、私たちの前に立ちはだかる2つの危機。それは、新型コロナウイルス感染症と気候危機であります。未知のウイルスへの感染拡大を食い止めるべく、人と人の接触を徹底的に抑制することが求められる中にありまして、人の繋がりが生み出してきた東京の持続可能性をいかに確保していくのか。そして、まさしく都市の持続可能性を脅かす気候危機を、どう乗り越えていくか。コロナと気候危機という2つの危機の克服は、真にサステナブルな都市を創り上げるために私たちに突き付けられている命題でありまして、今こそ、そのための戦略を再構築しなければなりません。
世界に後れを取るデジタル化など、「見えざる敵」が否応なく見せつけた我が国の課題を直視して、構造的な改革を推し進める。都民・企業・行政が一体となって、脱炭素化のための実効性ある行動を加速する。コロナ禍からただ元に戻るのではなく、持続可能な回復を実現する「サステナブル・リカバリー」によって、誰もがいつまでも、安心して幸せに暮らすことのできる都市へと進化していくことこそ、今の東京を生きる私たちが果たすべき、未来への責任なのであります。2021年、命と健康を守ることを最優先としながら、未来への行動を加速する「サステナブル・リカバリー元年」と位置づけまして、新たな「東京大改革2.0」の旗の下、都議会の皆様、都民の皆様と共に力強く歩みを進めてまいります。
その羅針盤として、先週、「『未来の東京』戦略」の案を公表いたしました。危機を乗り越え、「成長」と「成熟」が両立した明るい未来の東京を切り拓く。そのために、「感染症に打ち克つ戦略」を加えました20プラス1の戦略と、「Community」「Children」「Choju」、この「3つのC」の取組をはじめ、水素社会の実現、国際金融都市の推進など、122の意欲的なプロジェクトを盛り込んでおります。
150年を超える歴史の中、東京は幾度かの大きな危機を克服して、その姿を進化させながら、持続的な発展を遂げてまいりました。その礎は、先人たちの叡智であります。例えば、関東大震災後、100年先を見通して東京の成長の骨格を築いた後藤新平。そして、後藤から復興への協力を求められ、「物質の復興」のみならず「精神の復興」を図ることで、誰もが安心して暮らせる徳のある社会を目指した渋沢栄一。こうした鋭い先見性を発揮した先人に学び、温故「創」新の思想で、50年先、100年先を見据えながら新たな時代を創り上げるプロジェクトを、果敢に推進してまいります。
その一つの核となるのが、大いなるポテンシャルを有するベイエリアにおきまして、持続可能な都市の範となる都市モデルを実現する「東京ベイeSGプロジェクト」であります。環境と調和しながら最先端のテクノロジーを徹底的に活用するなど、有識者からの提言を踏まえた社会の構造改革を推し進めるその先に、「自然」と「便利」が融合する持続可能な都市を創り上げる。プロジェクト名に渋沢と後藤のイニシャルを盛り込み、「鳥の目」で未来を俯瞰する精神を受け継ぎながら、ベイエリアを舞台に具体の検討を進めてまいります。
都政は今、危機を乗り越える突破力と、目指すべき未来を築き上げる創造力を高めるべく、大胆に変わっていくことが求められております。先般、「シン・トセイ 都政の構造改革QOSアップグレード戦略」の案を公表いたしまして、そのための道筋を明らかにいたしました。「シン・トセイ」の名に込めました、新たな都政を創っていくとの決意の下、改革の突破口となる7つの「コア・プロジェクト」と、都民サービスの提供のあり方や仕事そのものを構造的に改革していく「各局リーディング・プロジェクト」を併せて展開してまいります。
変革の鍵は、デジタルトランスフォーメーション、DXであります。本定例会に条例案を提案いたしまして、4月の設置を目指すデジタルサービス局は、DX推進の旗振り役として、各局及び区市町村を技術面からサポートするとともに、職員全体のデジタルスキルの向上を担うなど、改革を先導してまいります。各局におきましても、5Gを活用したサービスの早期実現、税務手続や都営住宅入居申込のオンライン化など、先端技術の社会実装及び都民の利便性向上を図ってまいります。こうした実践の中で、5つのキーワード、「スピード」「オープン」「デザイン思考」「アジャイル」「見える化」。これらを、都政の新たなスタンダードとして職員一人ひとりに浸透させながら、都政の構造改革、そして東京のDXを強力に推し進めてまいる。その先に、都政のQOS、クオリティ・オブ・サービスを高めて、都民のQOL、クオリティ・オブ・ライフを向上させることで、誰もが「住んでよかった」と幸せを実感できる東京を創り上げてまいります。
目指すべき未来への第一歩を踏み出すための令和3年度予算案におきましては、成長し続ける都市・東京の実現に向けた戦略的な取組を果敢に進める。その観点から、「『未来の東京』戦略」で掲げる政策に重点的に予算を配分いたしました。加えて、コロナ禍により影響を受けた社会・経済の早期回復に向けた対策を推進するべく、一般会計の当初予算規模は7兆4250億円といたしております。厳しい財政環境の中にありましても、事業の不断の見直しによりまして積み立ててきた基金や、発行余力を培ってきた都債を積極的に活用することで、都民の命を守り、その先の東京の未来を創る取組を着実に推し進めてまいります。
また、環境施策の強力な推進を図るべく、全国の自治体に先駆けて発行し、年々需要が高まっております「東京グリーンボンド」につきましては、来年度、その発行額を400億円へと拡大をいたします。加えまして、コロナ禍において支援が必要な都民や事業者を社会全体で支えていくため、600億円程度のソーシャルボンドの発行を目指すなど、国内におけるESG投資のさらなる促進を図ってまいります。
これより、主要な政策について申し述べてまいります。まずは、「環境」「金融」「産業」など、東京が「世界から選ばれる都市」へと飛躍するための取組についてであります。
災害級の猛暑や激甚化する豪雨など、まさに人類にとっての脅威に他ならない気候危機。ここに正面から立ち向かうべく、私は、「気候非常事態を超えて行動を加速する宣言」を表明いたしまして、今こそ行動を起こすこと、「TIME TO ACT」を世界に呼びかけました。そして先月には、世界経済フォーラムの「ダボス・アジェンダ」に出席をいたしまして、2030年までに、都内の温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減する目標、「カーボンハーフ」を世界に表明したところであります。私が副議長を務めるC40など国際的なネットワークとも連携いたしながら、気候危機への「行動」で世界をリードし、東京発の世界的ムーブメントを展開してまいります。
ここ数か月、イギリスや中国など自動車のゼロエミッション化に向けた世界の動きは極めて速く、これからの自動車産業の行く末を決める熾烈な覇権争いの様相を呈しております。東京はこうした世界の潮流に後れることなく、環境先進都市としてのプレゼンスを発揮するとともに、優れた環境技術を、我が国経済の持続可能な成長へと繋げていかなければなりません。こうした決意の下、先般、都内で新車として販売される乗用車を2030年までに、二輪車を2035年までに、それぞれ100%非ガソリン化することを目指す意欲的な目標を打ち出しました。
来年度、早速、その達成に向けました確かな「行動」に踏み出してまいります。ZEVの普及を一気呵成に拡大すべく、環境省と連携した補助の拡充、減税措置の延長等によりまして、導入にかかる実質負担を、最大でガソリン車を下回る水準まで軽減をいたしてまいります。急速充電器につきましても、整備・管理に対する補助を新たに創設をいたします。さらに、EVバイクの利便性向上のためのバッテリーシェアの推進や、メーカーにZEV開発を促す新たな仕組みの検討など、多面的な施策を講じてまいります。
脱炭素化の柱となる水素の活用につきましても、ヨーロッパをはじめ世界で取組が加速する中、さらに前へと進めてまいります。昨年末には、水素ビジネスのリーディング企業が一堂に会する「東京水素イニシアティブ」を開催をいたしまして、未来を切り拓く水素エネルギーの利用拡大に向けまして、官民が強固に連携することを確認をいたしました。水素ステーションの拡大や燃料電池商用車両の普及など、手を緩めることなく施策を展開してまいります。
そして、多様な主体が総力を結集して気候危機に立ち向かう「行動」の大きな呼び水となるのが、環境と金融を組み合わせた「グリーンファイナンス」であります。環境改善に資する取組が市場で適正に評価され、それが投資を呼び込み、さらに取組を加速させる。この好循環こそ、まさに「サステナブル・リカバリー」を体現するものであります。
私はかねてより、東京を世界に冠たる国際金融都市とすべく、取組を進めてまいりました。4月からは、新たに国際金融都市戦略担当局長を設置をいたしまして、秋には「国際金融都市・東京」構想を改訂し、そのさらなる加速化を図ってまいります。構想改訂のための有識者懇談会におきましても、グリーンファイナンス市場の拡大が最優先分野の一つとされておりまして、人々の共感に根ざした志高い投資を世界中から呼び込む新たな市場を、この東京に成熟させたいと思います。先般、「Tokyo Green Finance Market(仮称)」の創設に向けまして準備会合を開催したところであり、今後、具体の検討を深めてまいります。
感染症との闘いの中で傷ついた経済を再び成長軌道に乗せ、さらなる飛躍へと導いていく。その一つの鍵は、コロナ禍において生まれた新たなニーズに対応し、「新しい成長」へと繋げていくことであります。そのために欠かせないDXを強力に推し進め、東京の稼ぐ力に一層の磨きをかけるべく、中小企業における先端技術の導入から活用まで、専任アドバイザーが徹底してサポートする事業を開始いたします。また、デジタルにより新たな製品・サービスの開発に果敢に挑戦する中小企業に対しては、最新設備の導入経費を助成いたしてまいります。DXをきめ細かく後押しをするとともに、引き続き販路開拓や事業承継など、中小企業への多面的な支援を推進することで、東京の産業力の底上げを図ってまいります。
さらに、独創的なアイデアや機動力を持つスタートアップの力を、爆速で進めるべきDXの追い風としていきたいと存じます。大企業等とのマッチング機会を創出し、DX推進に資する製品やサービスの普及を促すことで、先端技術の社会実装へと繋げてまいります。
都市農業の稼ぐ力の向上におきましても、デジタルの力を活かします。先端技術の開発・活用を進める「東京型スマート農業」を推進するとともに、「東京農業アカデミー」におきましてデジタルを活用できる人材を育成するなど、農業が成長産業の一つとして確固たる地位を築いて、東京の稼ぐ力を支える一つの柱となるように取り組んでまいります。加えまして、新鮮な野菜・水産物など、東京産食材の戦略的なブランド力向上、全国と連携した国産木材の活用促進、林業・水産業における新たな人材育成拠点の開設など、幅広い取組によりまして、東京の多彩な魅力を生み出す農林水産業の持続可能な発展を図ってまいります。
誰もが輝く多様性こそ、東京の活力と発展の源泉であります。引き続き「東京大改革2.0」の要諦として、「人」に焦点を当てた施策に力を入れてまいります。
コロナ禍にありまして、不安を抱えて出産・育児に臨む方々を、社会全体で後押しをする。こうした観点から、新たに開始する出産応援事業では、子供一人当たり10万円分の子育て支援サービスや育児用品等の提供を通じまして、経済的負担の軽減を図ります。併せて、各家庭の子育てニーズを把握して、今後の効果的な施策展開へと繋げてまいります。
育児休業の取得を、誰にとっても当たり前のものとして定着させるべく、来年度、働くパパママ育休取得応援事業を大幅に拡充いたしまして、企業に対し、男性の育休取得率の向上、そして取得期間の長期化を強力に促す。特に出産直後の女性のサポートを後押ししてまいります。
在宅勤務や時差出勤など、多様で柔軟な働き方が浸透しつつある今、男性の家事・育児参画の気運をさらに高めたいと思います。来年度、インフルエンサーの発信力も活かしながら、家事・育児の魅力を広く伝えるキャンペーンを展開し、女性、男性、誰もが仕事や家庭で活躍できる社会の実現を図ってまいります。
子育ての楽しさや幸せを何よりも実感させてくれるのは、子供の笑顔に他なりません。「『未来の東京』戦略」におきましても、「子供の笑顔のための戦略」を第一に掲げまして、「チルドレンファースト」の社会を実現するとの決意を明らかにしております。子供や子育て世帯に寄り添ったきめ細かな政策を推進をする。同時に、幅広い主体と共に、子供の笑顔に繋がる多彩な取組を展開をして、社会全体で子供を育むムーブメントを創り上げる。その先に、「子供が笑顔で子育てが楽しいと思える社会」を築いていきたいと思います。
「人」を育む教育のあり方も、従来の発想からの転換が求められております。「誰一人取り残さず、すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び、育つ教育」。この目指すべき教育の実現に向けまして、新たな「東京型教育モデル」を展開いたします。子供の意欲を引き出す。主体的に学び続ける力を育む。ICTの活用によりまして一人ひとりの力を最大限に伸ばす。この3つの「学び」を、子供の目線に立って、東京の強みを活かしながら日々実践、改善していくことで、理想の教育を追求する。こうした全体の姿をこれからの教育モデルと位置づけまして、子供たちの成長を社会全体で支えてまいります。来月には、新たな教育のあり方を盛り込みました次期「教育施策大綱」を策定をいたしまして、持続可能な都市・東京を担う子供たちを力強く育んでまいります。
人生100年時代、高齢の方々が心豊かに過ごせる地域づくりを推進するとともに、新しい日常に即した暮らしの支援を進めてまいります。
来月末、第8期となる「高齢者保健福祉計画」を策定いたします。介護・フレイル予防及び社会参加の促進や、認知症施策の総合的な推進などを重点分野に位置づけるとともに、新型コロナウイルス感染症への対応を各分野に盛り込みます。高齢者人口が益々増加する2040年を見据えまして、今、取り組むべき施策を示してまいります。
介護の現場では、人手不足が深刻化する中、いかに質の高いサービスを提供できるかが重要な課題であります。来年度、介護現場の改革をさらに充実させ、事業者によるデジタル機器や次世代介護機器の導入を強力に支援するほか、人材育成に向けたセミナーを開催しまして、介護職員の定着へと繋げてまいります。今後の介護需要の増加を見据えまして、先端技術の活用や人材の確保を図りながら、現場の支援を推進してまいります。
このほか、高齢者をはじめデジタル機器に不慣れな方々に対する支援も進めます。通信事業者と連携したスマートフォン利用の普及啓発のほか、区市町村や町会・自治会による取組を後押しするなど、多様な主体と共にデジタルデバイドの解消に向けた対策を推進し、デジタル化がもたらす利便性を誰もが享受できる社会を実現してまいります。
コロナ禍は、人々の暮らしの基盤である住まいのあり方や、取り巻く環境にも大きな変化をもたらしています。テレワークの急速な普及は、新たなワークスペースの需要を生み、高齢の方々には、新しい日常に対応した居場所づくりや見守り機能が求められております。こうした変化を的確に捉えまして、誰もが地域のコミュニティの中で安心して豊かに暮らせる住環境を創り上げていくべく、住宅戦略のバージョンアップを図ってまいります。空き家を活用したコワーキングスペースの整備、居場所づくりに向けた新たなモデルの構築、先端技術を活用した高齢者の見守り支援の強化など、区市町村や民間との連携の下、都市の総合力を駆使した住宅戦略を展開してまいります。
次に、ソーシャルインクルージョンに根ざした施策についてであります。条例制定以降、創設を目指し取組を進めてまいりました都の認証ソーシャルファームが、来月、いよいよ産声をあげます。コロナ禍において、障がいのある方やひとり親の方など、就労に困難を抱える方々の雇用に深刻な影響が生じている今、引き続き、ソーシャルファームの創設やその活動を支援し、就労困難者の雇用の場の拡大を図ってまいります。
都はこれまで、都内の公立小中学校におきまして、発達障害等のある児童・生徒が通常の学級で過ごしながら、個々の状況に応じて特別な指導を受けられる仕組みを整えてまいりました。来年度は、高校段階におきましても同様の体制を構築いたします。外部人材を積極的に活用して、生徒一人ひとりに合わせたサポートを行うことによって、誰もがどの都立高校に進学しても必要な教育を受けられる、まさにインクルーシブな教育を実現してまいります。
人の心に潤いをもたらし、いきいきと輝くための活力を与えてくれる芸術文化は、私たちの生活に欠くことができません。コロナ禍で厳しい状況にある若手アーティストに対しまして、創作活動の後押しや活躍の場の提供など、幅広い支援を実施をしてまいります。また、都立文化施設の収蔵品等をオンラインで公開しまして、芸術文化の新たな体験を広く提供するなど、コロナ禍にありましても文化の灯を絶やすことなく、都市の活力へと繋げる取組を推進してまいります。
未来に向けたまちづくりにおきましても、その中心に据えるべき視点は「人」であります。高度な都市機能を維持しながら、人の目線に立ち、人が集い、憩う、そんなまちづくりを進めてまいります。
世界一の乗降客数を誇る新宿駅の周辺におきまして、来年度、誰もが利用しやすい機能的なターミナルへの再編に向けた土地区画整理事業に着手いたします。東西の駅前広場は、現在の車中心の空間構成から、人に配慮したゆとりのある空間へと姿を変え、回遊性が飛躍的に高まる。そのための第一歩を踏み出します。加えまして、西新宿地区におきましても、車から人への理念の下、再整備方針の検討を開始をいたします。5G環境の整備や次世代交通の導入なども見据えまして、道路空間のあり方等を広く検討してまいります。
人の移動の円滑化に資する鉄道ネットワークの充実に向けましては、多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面への延伸について、今年度より基本設計に着手をいたしました。引き続き事業化に向けた取組を推し進め、地域の利便性向上を図ります。また、先月には、国におきまして東京圏の地下鉄ネットワークのあり方等について検討が始まる機会を捉えまして、国土交通大臣に対し、地下鉄8号線の延伸や臨海地域地下鉄構想の実現等に関する要望を行いました。羽田空港アクセス線につきましても、先月、国が事業許可を行ったところであり、今後とも鉄道事業者をはじめ関係機関と連携し、誰もが快適に移動できる鉄道ネットワークの充実を推進してまいります。
人中心の都市構造への転換に向けまして、自転車の活用もさらに推進したいと思います。コロナ禍による利用の増加など、直近の動向も踏まえながら、誰もが快適に安心して自転車を利用できる環境を整備いたします。来年度早々、計画を改定して、新たに定める「自転車活用推進重点地区(仮称)」を中心に、連続した通行空間の整備、自転車シェアリングの広域利用、交通安全対策の強化などの取組を、集中的に進めてまいります。
感染症の拡大を契機に、身近な憩いの場としてその重要性が再認識されている都立公園の魅力をさらに引き出します。明治公園及び代々木公園におきましては、都立公園で初めて、民間のアイデアと資金を生かすPark-PFI制度を活用して、都心の緑豊かな空間の中で多様なアクティビティが楽しめる場の整備を進めてまいります。また、近代的洋風公園の先駆けである日比谷公園につきましては、来年度、「再生整備計画」を策定しまして、回遊性の向上や交流広場の創出など、世界に誇る公園としての新たな姿を示してまいります。
開園から約30年、多くの方々に愛され続ける葛西臨海水族園は、老朽化に伴いまして、令和8年度を目途に新たな施設へとその機能を移転いたします。現在の施設につきましては、新たな水族園とも有機的に連携しながら、周辺一帯の魅力を向上させる利活用策について検討を行っておりまして、今後広くご意見を伺いながら、基本的な考え方を取りまとめてまいります。
先ほど申し上げましたソーシャルインクルージョンの理念を、公園にも取り入れます。来年度、都立府中の森公園におきまして、ユニバーサルデザインに配慮した誰もが楽しめる遊具広場を開設するとともに、区市町村の取組を後押しするべく、新たな補助制度を創設をいたします。障がいの有無にかかわらず、全ての子供たちが共に楽しく遊べる公園の整備を、区市町村と手を携え拡大してまいります。
これまで、「人」が輝く東京を実現するための施策について申し述べてまいりました。女性が大いに輝き、子供たちの笑顔が溢れ、高齢の方も障がいのある方も、誰もがいきいきと活躍する。こうした多様性をベースに、これまで以上に活気に溢れ、未来に向けて力強く成長していく東京を創り上げる決意であります。
私はこれまで、待機児童対策をはじめ、女性起業家の支援、女性の首長や経営者と連携した新たな会議の立ち上げなど、女性が輝くための取組に力を入れてまいりました。都の審議会等につきましても女性委員の任用を積極的に推進をして、その割合は飛躍的に向上して、既に32.9%まで達しております。今後、意思決定の場への女性参画をさらに加速させまして、まずは令和4年度末までに、女性任用率を40%以上に高めてまいります。
「『未来の東京』戦略」では、「女性の活躍推進戦略」として、女性の希望に応じた生き方・働き方のサポートや、女性活躍に向けた戦略的な普及啓発などのプロジェクトを掲げております。また、昨年10月に設立した「つながり創生財団」を中心に、外国人が安心して暮らせる多文化共生社会づくりに向けた取組も進めております。引き続き幅広い施策によりまして、東京の多様性をもっと圧倒的に高めることで、多彩な価値観や発想を、「サステナブル・リカバリー」へと繋げていきたい。
次に、都民の安全安心を守る取組について申し上げます。多くの尊い命が失われ、我が国に様々な形で凄惨な爪痕を残した東日本大震災から間もなく10年。先日、東北地方を中心に、その余震とみられる強い揺れが発生したところであり、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。過去の震災の記憶は、決して風化させてはなりません。風水害を含め、大規模災害がいつ東京に発生してもおかしくない中、コロナ禍との複合災害に備える観点も踏まえまして、防災対策の強化に全力で取り組んでまいります。
災害への備えを真に万全なものとするためには、都民一人ひとりの理解と共感が欠かせないところであります。都民目線で災害対策を分かりやすくまとめ、取組の進捗を毎年公表しております「東京防災プラン」につきまして、来月末に改定を行います。感染症と自然災害との複合災害への備えとして、ホテルや大型商業施設等の新たな避難先を確保いたしまして、避難者の分散を図るほか、感染拡大防止に有効な物資の備蓄を充実させるなど、対策を強化いたします。このほか、DXによる防災対策のアップグレードなど、今、為すべき対策を取り入れながら、自助・共助・公助の進展による防災事業のさらなる進化を図ってまいります。
倒れないまちの実現に向けまして、先般公表いたしました「無電柱化加速化戦略」には、無電柱化の行く手を阻むあらゆる課題を乗り越えて、地震や台風への備えを一段と高めるべく、7つの戦略を掲げております。都道・臨港道路での年間整備規模の倍増、区市町村道への支援強化、民間宅地開発における取組促進などの施策を一体となって推し進め、都内全域の無電柱化を加速してまいります。
また、「耐震改修促進計画」の改定案には、老朽化が進んだ戸建て住宅の除去の促進や、マンションの管理状況届出制度を活用した効果的な支援等を盛り込みました。病院や学校など公共性の高い建物や、不特定多数が利用する大規模建築物につきましても、所有者への働きかけを強化するなど、耐震化の徹底を図ってまいります。
延焼からまちを守る特定整備路線につきましては、来月、第一号となる補助第136号線の足立区関原・梅田地区間が開通いたします。引き続き、「防災都市づくり推進計画」の新たな整備プログラムの下、他の路線につきましても着実に整備を進めてまいります。併せて、不燃化特区におきまして、建築物の建替え・除去への助成、固定資産税・都市計画税の減免など踏み込んだ支援を継続するとともに、無接道敷地の解消に向けた支援策を拡充するなど、燃え広がらないまちづくりを推し進めてまいります。
激甚化する風水害への備えも固めてまいります。昨年も、記録的な豪雨による災害が全国的に発生いたしまして、迅速な避難行動を促す情報発信の重要性、改めて広く認識されたところであります。現在、河川監視カメラの設置拡大を順次進めておりまして、来年度は「水防災総合情報システム」につきまして、河川の状況などをリアルタイムに伝えるためのリニューアルを行います。併せて、新たに「高潮防災総合情報システム」を稼働させまして、このうち、高潮リスクをピンポイントで検索できるサービスにつきましては、今年度中に運用を始めるなど、防災情報を都民に分かりやすく伝える体制を早期に整えてまいります。
調節池の整備につきましては、来年度、善福寺川上流及び第二期となる城北中央公園におきまして新たに事業化に着手をいたします。これらを含めまして、2030年度までに約150万立方メートルのさらなる事業化を図るべく、引き続き着実に取組を進めてまいります。
江東5区などの東部低地帯におきましては、高台づくりの推進、道路高架部を活用した垂直避難の実施など、水害から命を守る方策につきましてあらゆる選択肢を洗い出して、国や関係自治体と共に検討を進めてまいります。併せまして、防潮堤や水門などの施設につきましても、来年度、次期整備計画を策定して、耐震・耐水対策を一層推進するとともに、最新技術の活用を検討するなど、防災力のさらなる強化を図ってまいります。
安全安心で快適な暮らしを支える事業の基盤の強化にも取り組んでまいります。
水道事業におきましては、予防保全管理による施設の長寿命化など、強靭な水道システムの再構築や、スマートメータをはじめ先端技術を活用したお客さまサービスの向上を図ってまいります。下水道事業におきましては、激甚化する豪雨を踏まえた浸水対策の強化や、AIによる雨水ポンプの運転支援に向けました技術開発を進めるほか、今後、落合及び清瀬水再生センターの運営に、民間の知恵や工夫を取り入れる包括委託を導入をいたしてまいります。来月には、水道局及び下水道局におきまして新たな5か年の経営計画を策定し、計画的かつ効率的に事業を推進してまいります。また、コロナ禍において厳しい経営状況が続く見通しの交通局におきましても、将来にわたり都営交通としての責任と役割を果たす観点から、来年度、次期経営計画の策定を進めてまいります。
生鮮品流通の基盤である中央卸売市場の活性化も欠かせません。将来の市場の姿を展望し、加速度的に進むデジタル化や物流の変化にも適応できるよう、先月、市場経営の羅針盤となる経営指針の案を公表いたしました。市場関係者や都民の皆様のご意見も踏まえながら、年度内に取りまとめ、戦略的な市場経営を推進してまいります。
次に、活気溢れる東京の実現に欠かせない、多摩・島しょ地域の振興について申し上げます。
多摩地域には、高い技術を誇る企業や、大学・研究機関等が集積しております。そのポテンシャルを大いに引き出し、イノベーションを生み出していく。そのために、来年秋に開業予定の多摩産業交流センターなど、都の産業拠点を核として、多様な主体の連携を促進いたします。世界有数のイノベーション先進エリアとしての地位を確立すべく、関係機関と共に実行委員会を設立をいたしまして、来年度は基本指針を策定するなど、取組を加速してまいります。
多摩地域から東京の成長を生み出す取組の一環として、英語を学ぶ環境の充実も図ってまいります。江東区に設置し都内外から多くの利用をいただいております体験型英語学習施設につきましては、多摩地域におきましても、同様の施設を令和4年度中に整備をいたします。都内全域の児童・生徒の英語力向上を力強く後押しをし、その可能性を大きく伸ばしていきたいと存じます。
自然豊かな多摩地域で、職住近接で働き、暮らすことのできる環境を整えてまいります。サテライトオフィスにつきまして、市町村や民間による整備・運営を支援するほか、商店街の空き店舗等を活用した小規模なオフィスの運営によりまして、地域の活性化を図るモデル事業を実施するなど、新しい日常にふさわしい多様な働き方を多摩地域から発信してまいります。
このように、新たな可能性に溢れ、その価値に改めて焦点を当てるべき多摩地域の魅力をさらに高めていくべく、来年度、新たな多摩振興プランを策定をいたします。社会情勢の変化や、それぞれの地域の特性・課題の分析などを踏まえまして、市町村や有識者の声も十分に取り入れながら、5月を目途に素案を公表してまいります。
島しょ地域におきましては、強大化する台風による電柱倒壊の危険性をいち早く低減しなければなりません。簡易な構造による整備手法を可能な限り採用し、コスト縮減や工期短縮を図りながら、早期の無電柱化を目指すところであります。来年度は、一昨年の台風で被災した大島町の差木地及び波浮港地区の都道におきまして無電柱化を完了させるとともに、各町村の意向を踏まえました整備計画を策定し、島民の方々への安全安心へと繋げてまいります。
島々の魅力向上・発信に向けましては、引き続き人を惹きつけるブランド力向上のための各島の取組を支援するほか、観光客の長期滞在を促す新たな事業を展開するなど、個性を磨き、魅力溢れる地域を創り上げる施策を進めてまいります。
また、国益に直結する国境離島である沖ノ鳥島及び南鳥島の維持・保全に向けまして、基礎調査を行って方向性を検討するとともに、両島の重要性を広く発信するなど、国とも連携しながら取組を強化してまいります。
オリンピック・パラリンピックにつきまして、東京は開催都市としての責務を果たすべく、安全安心な大会を実現する準備に邁進をしてまいります。今月には、そのための具体的な取組が盛り込まれました「プレイブック」の初版が公表されました。引き続き、組織委員会、国、IOC、IPCをはじめ関係機関と連携して、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期すとともに、ハード・ソフトの両面にわたる取組を都民の豊かな生活へと繋げていくなど、綿密な仕事を積み重ねてまいります。
東京2020大会は、「多様性と調和」を大きなビジョンとしております。これまで、「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」の制定など、人権意識の醸成に取り組んでまいりましたこの東京が、このビジョンを大会の中でいかに具現化し、世界へと発信していくのか。まさに今、世界が注目をいたしております。大会を契機に、多様性と人権尊重の理念を社会に一層根付かせ、それをレガシーとして、より良い未来を創り上げていきたいと思います。
そして同じく、東京から世界へと発信していくべき気候危機行動ムーブメント「TIME TO ACT」につきまして、本日夜、オンラインにてキックオフ会議を開催をいたします。脱炭素社会の実現に向けまして、建物のゼロエミッション化や、再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素の活用につきまして、都の経験と知見を発信して、世界における対策の推進に貢献してまいります。また、C40議長であるロサンゼルス市長をはじめ、パリ市長や気候変動に先進的に取り組む有識者にご登壇いただいて、それぞれの「気候危機行動」について発表いただく。そのことで、今こそ起こすべき行動を、ここ東京から世界へと呼びかけてまいります。
私たちが学ぶべき先人・渋沢栄一。約600もの社会事業に尽力をされ、誰一人取り残さないSDGsの理念を当時から体現したとも言います、多様性を重んじた人物でありました。困窮者や孤児等の保護施設であった旧東京市養育院の院長を半世紀にわたり務めたことは、その象徴と言えましょう。女子教育にも力を注ぎ、女子高等教育機関の先駆けの一つであります日本女子大学校の設立に深く関わった後、同校の第三代校長に就任するなど、生涯を通じて精力的に行動したことでも知られています。常に時代の先を読み、動き続けた渋沢の姿勢を心に刻みながら、コロナと気候危機という2つの危機を乗り越え、大いなる多様性を基盤とした真にサステナブルな東京を実現するべく、果敢に行動してまいります。「行動」こそが、希望への道であります。都議会の皆様、都民の皆様、ご理解とご協力よろしくお願い申し上げます。
なお、本定例会におきましては、これまで申し上げましたものを含めまして、予算案32件、条例案48件など、合わせまして100件の議案を提案をいたしております。よろしくご審議をお願いいたします。
以上をもちまして、私の施政方針表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。
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