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令和3年(2021年)6月1日更新
令和3年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。
4月11日、名誉都民である篠原儀治さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
今、我が国は、世界から大きく取り残される瀬戸際、まさに危機的な状況にあります。長きにわたる新型コロナウイルス感染症との闘いの中、デジタル化の後れや道半ばの働き方改革など、数々の課題が私たちに突き付けられました。これらは、先を見据えた戦略的な備えが十分でなかったことが浮き彫りとなったものであり、ワクチンもその一例であります。状況を打開するゲームチェンジャーとして、早くから期待されていたにもかかわらず、開発・確保・接種ともに世界主要国の後塵を拝しております。コロナ禍からの景気回復の後れにも繋がっていて、2020年のGDPはリーマンショックを超える落ち込みを記録したほか、国民の間には、長い闘いによる閉塞感も漂っております。同じく人類の脅威となる気候危機の問題につきましても、脱炭素に向けた世界の動きが一段と加速しており、我が国におきましても、環境やエネルギー政策に関する具体的な方向性や戦略を示していくことが、一刻を争う、まさに焦眉の急であります。
国際社会におけます日本の地位の低下が叫ばれている中、世界との競争から、さらに立ち後れるような事態は、何としても食い止めなければなりません。この未曽有の危機にあって、厳しい現実から目を逸らすことなく、取るべき戦略を明確にし、希望ある未来へ繋げる行動を起こす。そして、東京自らが「ゲームチェンジャー」となり、日本の持続的な発展を牽引し、世界をリードしていく。改めて、こうした強い思いを都議会の皆様、都民の皆様と共有したいと思います。
まず、現下の最大の課題であります新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
4月25日に発出されました緊急事態宣言が再び延長され、都としても、不要不急の外出自粛や、施設の特性に着目した休業・時短の要請といった措置を講じております。都民・事業者の皆様には、この間、多大なるご協力をいただいております。また、医療従事者の皆様は、日夜を問わず、現場の最前線で奮闘いただいております。都知事として、心より感謝を申し上げます。
感染者数は漸減傾向にあるとはいえ、依然として高い水準が続いており、医療提供体制も厳しい状況にあります。流行の主体が感染力の強い変異株N501Yに置き換わっているほか、インドで最初に確認され、さらに感染力が強いとの報告がある変異株L452Rにも警戒しなければなりません。専門家の方からは、ゴールデンウィーク後に人流が増加しており、この傾向が続きますと、早い段階でリバウンドする可能性が高いとの指摘もいただいております。
感染者数が減少しつつある今の流れをさらに確実なものとし、何としても再拡大を招かない。都民の皆様、事業者の皆様には、大きなご負担をおかけしておりますけれども、人流を抑える、そして基本的な感染拡大防止対策を徹底する。改めて、皆様のご協力をお願いいたします。
続きまして、新型コロナウイルス感染症対策を推進するための補正予算について申し上げます。
4月、23区及び多摩地域の6市を対象区域とする、まん延防止等重点措置の実施に当たりまして、「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金」の支給などに関する補正予算を編成いたしました。また、この間の緊急事態宣言の発出とその延長に伴う措置の実施に際しまして、感染拡大防止協力金や、休業の協力依頼に伴う都独自の支援金等を支給するための補正予算を三度編成いたしました。
これらは、いずれも都民・事業者の皆様と一体となって迅速な対策を進めるべく、専決処分を行ったものであります。都議会の皆様のご承認のほど、よろしくお願い申し上げます。
そして、本定例会におきましては、現下の感染状況や社会経済情勢を踏まえた的確な措置を講じるべく、総額4552億円の補正予算案を提案いたしました。各区市町村で本格化する高齢者向けのワクチン接種を確実に実施するための取組や、集団接種を行う大規模会場の設置など、感染拡大の抑え込みに向けた対策を加速させてまいります。また、事業者の資金繰り支援の拡充に加え、都独自の支援制度を創設し、経済の下支えを図ります。併せまして、生活福祉資金の貸付けを継続するとともに、女性や若年層が自ら命を絶つ例が増えていることを踏まえまして、相談体制を拡充するなど、セーフティネットの強化に向けた取組も進めてまいります。
感染収束に向け、多くの方が心待ちにし、最大の武器となるのがワクチンであります。2月に立ち上げたワクチンチームのもと、区市町村や医師会等との情報共有や連携の強化を図るとともに、副反応などの不安にも専門家が対応する相談センターを開設するなど、接種を着実に行うための体制を確保しております。そして、高齢者向けの接種について、区市町村を強力にバックアップするべく、集団接種会場として都有施設を提供するほか、地域の診療所等がワクチン接種に専念できる環境を整えられますよう、都が協力金を支給する取組を開始いたします。こうした取組に加え、都が主体となる集団接種を行い、さらなるスピードアップを図ります。まずは、今月8日から、東京2020大会で使用する築地の車両基地におきまして、警察や消防関係者等を対象とした接種を開始いたします。なお、築地の会場は、大会時には車両基地とするため、6月末で閉鎖することとなりますが、代々木ライブサイト会場をワクチン接種の会場として転用する予定であります。今後とも、国や区市町村とも連携をいたしまして、あらゆる方面からの対策を全力で講じてまいります。
また、刻々と変わる感染状況に的確に対処していくためには、検査体制や医療提供体制等を強固なものとすることが欠かせません。感染拡大が想定される場所や、重症化リスクの高い方が利用する高齢者施設等における検査を徹底することで、感染の端緒を捉える。スクリーニング検査の拡充により、変異株の監視を強化する。急速な感染拡大にも対応できるよう、必要な病床や宿泊療養施設を確保する。そして、自宅療養者向けの往診やフォローアップの体制を充実させるほか、後遺症への相談にもしっかり応えていく。こうした取組を戦略的に展開しまして、都民の皆様の安心に繋げてまいります。
東京のエネルギーを生み出すのは、都民の日々の生活や事業活動であります。コロナ禍が長引く中にありましても、その下支えを図るとともに、感染拡大防止と社会経済活動を両立しなければなりません。飲食店の時短営業等の影響によりまして、売上げが減少した中小企業等に対しましては、国の支援金への上乗せを行いますほか、国制度の対象とならない、厳しい状況に置かれた事業者を支援する都独自の給付金を支給いたします。また、飲食店等での感染防止マナー定着の旗振り役となる「コロナ対策リーダー」は、既に10万を超える方々が研修を修了しておられます。「徹底点検TOKYOサポート」チームによる個別訪問も進めておりまして、タブレット端末の活用により徹底した効率化を図るとともに、リーダーの取組をきめ細かく支援するなど、引き続き、都民・事業者と一体となった感染対策を浸透・定着させてまいります。感染拡大防止はもとより、働き方改革にも資するテレワークにつきましては、多くの皆様に実施をしていただいておりますが、人流抑制の観点から、より一層の推進が必要であります。企業の経営方針として、スピーディに実施環境を整えていただくため、経済団体との会談等を通じまして、経営者によるトップダウンの呼びかけをお願いしております。また、1万社を目標といたしまして、「週3日・社員の7割以上」が継続的に取り組む中小企業を認定して、奨励金を支給する事業を新たに開始するなど、テレワークの普及定着に向け、実効性ある取組を進めてまいります。
これ以上の感染拡大を何としても阻止し、大切な都民の命と健康、そして日々の生活を守り抜く。都としての最も重要な責務を果たすため、これまでの闘いの中で積み重ねてきた知見や経験を活かしながら、あらゆる手立てを講じ、この難局を乗り越えてまいります。
次に、開会間近となった東京2020大会について申し上げます。
1年延期という前例のない事態の中、活躍の舞台を信じ、大会本番のその瞬間に向けて、厳しい鍛錬を重ねているアスリートの皆様に心から敬意を表します。
現在の感染状況などから、東京2020大会の開催への不安を感じる声があることは承知しております。安全・安心な大会運営が最優先であることは言うまでもなく、とりわけ実効性あるコロナ対策が極めて重要となります。そのため、3つの徹底、すなわち、来日人数の削減の徹底、行動管理・健康管理の徹底、医療体制見直しの徹底。この「3徹」の考え方のもと、国、組織委員会、専門家といった関係者とともに、様々な対策の具体化を進めております。
今後、多角的な観点から課題をさらに精査するとともに、各地で実施されてきたテストイベントにおける実証も踏まえながら、感染症対策の実効性を高めてまいります。そして、こうした対策の強化につきまして、今月中に更新されます、大会参加者が守るべきルールを定めた「プレイブック」に反映させてまいります。
国内の観客につきましては、スポーツイベントでの上限規制に準じることを基本としつつ、今月中にその方針を示せるよう、関係者との協議を詰めてまいります。また、海外からのお客様をお迎えできない中にあっても、この大会期間中、オンラインによる海外発信を強化してまいります。多種多彩な芸術文化をはじめとした東京の魅力や、水素社会の実現に向けた都の取組などを発信をし、東京の国際的なプレゼンスの向上に繋げてまいります。
福島県Jヴィレッジからスタートしたオリンピックの聖火は、感染防止対策との両立が求められる厳しい環境の中、その灯を絶やすことなく繋がれております。皆様のご協力に改めて感謝を申し上げます。
大会の原点である、復興オリンピック・パラリンピックとして、東日本大震災からの復興の姿を世界に発信する。世界で初めて、夏季パラリンピックを二度開催する都市として、パラスポーツの魅力を多くの人に伝えるとともに、多様性と人権が尊重される社会を築き上げる。そして、「サステナブル・リカバリー」を目指すオリンピック・パラリンピックの新たなモデルを示していく。これらはまさに、「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」を目指す、オリンピック憲章の理念の具現化そのものであります。
オリンピック開会まで52日、パラリンピック開会まで84日。組織委員会、国、IOCやIPCをはじめ関係機関と連携しまして、開催に向けた総仕上げを着実に行って、安全・安心な大会運営に全力を尽くしてまいります。
目前に立ち塞がる新型コロナウイルス。その闘いの中であぶり出される我が国の構造的課題。そして地球規模で深刻化する気候危機。私たちは、こうした幾多の困難を乗り越え、希望に満ちた未来を紡いでいかなければなりません。その羅針盤となります「未来の東京」戦略を力強く前へと進め、東京2020大会に向けて磨き上げてきた数々のレガシーを発展させるなど、あらゆる政策分野で「サステナブル・リカバリー」を実現し、世界から選ばれる、強靭で持続可能な都市を創り上げてまいります。
「未来の東京」の創出をリードする主要プロジェクトとして、多彩な魅力と高いポテンシャルを併せ持つベイエリアを舞台に立ち上げたのが、「東京ベイeSGプロジェクト」であります。
東京を、様々な危機にも対応できるサステナブルな都市へと進化させる。そのための手掛かりは、遡ること数百年前の江戸のまちに見出すことができます。世界最大規模の人口を擁しながら、環境に配慮された循環型社会が成立されていたとされており、私たちが見倣うべきまちづくりの視点が数多く残されています。こうした先人たちの知恵や伝統を受け継ぎ、現代日本が誇る技術力を徹底的に活用しながら、「自然」と「便利」が融合した「未来の東京」を築き上げる。この実現に向け、今年度より「臨海副都心」と「中央防波堤」エリアにおきまして、先行プロジェクトに着手するとともに、民間開発を促すための「まちづくり戦略」を策定いたします。大胆な規制緩和や最先端技術の活用など「社会の構造改革」をスピーディに実装し、未来の水準点となる都市モデルを、ベイエリアから世界へと発信してまいります。
人々の生活領域まで深刻な影響を及ぼしつつある気候危機を前に、我々に残された猶予はありません。2050年までのカーボンニュートラルの実現。そのためには、この10年間の行動が勝負を決すると言われており、世界は今、脱炭素に向けた熾烈な国際競争の様相を呈しております。こうした中、都は、2030年までの温室効果ガス排出量の半減など、世界をリードする目標の実現に向けて、先般、アップデートした「ゼロエミッション東京戦略」に掲げた政策を総動員してまいります。さらに、現在、「環境基本計画」の改定に着手しており、これらを推進力として、あらゆる主体を巻き込んだ「カーボンハーフスタイル」を実践し、社会システム全般が脱炭素型へと移行した持続可能な都市基盤を築いてまいります。
とりわけ、都内CO2排出量の7割以上を占める建物のゼロエミッション化は、喫緊に取り組むべき課題であります。1400万都民が居を構える住宅屋根等のポテンシャルを最大限に活かすべく、太陽光パネルや蓄電池の設置を強力に推進し、防災性にも優れた住宅の普及を通じて、都市のサステナビリティを一層高めてまいります。また、一事業者として多くのエネルギーを消費する都庁自身も「ゼロエミッション都庁行動計画」のもと、省エネ・再エネのさらなる推進や、庁有車のZEV化など、都民・事業者の範となる率先行動を起こしてまいります。
東京の総力を挙げて気候危機に立ち向かう。そのためには、様々な主体による脱炭素に向けた取組を資金面で支える金融市場の活性化が不可欠であります。目覚ましい勢いで拡大するESG投資を国内外から東京に呼び込み、グリーンファイナンスで世界をリードするための方策を検討しておりまして、近日中に有識者からの提言が取りまとめられます。こうした取組みを通じまして、世界に冠たる国際金融都市の地位を確立するべく、「構想」の改訂に向けた検討を深めており、この夏までに素案を公表してまいります。
都が、「2030年カーボンハーフ」の実現を表明したのが今年の1月。そして、先般、日本政府は、2030年の温室効果ガス削減目標を46%まで引き上げる方針を打ち出しました。こうしたグリーンシフトの動きは、国家や都市、企業をはじめ、社会経済活動を行うあらゆる主体に求められており、気候危機時代における世界のスタンダードとなる流れであります。今こそ、“TIME TO ACT”、行動を加速する時であります。東京は、「脱炭素」を起点とした一連の施策を果敢に展開をし、環境先進都市・国際金融都市として、世界をリードしてまいります。
次に、安全・安心で魅力溢れる東京の実現に向けた取組についてであります。
今年の4月、熊本地震の発生から5年が経過をいたしました。震度7の地震が立て続けに二度発生するという、この観測史上類を見ない地震の教訓を盛り込んだ従前の計画をバージョンアップしたものが、先般公表いたしました「東京防災プラン2021」であります。防災分野におけるDXの推進や、感染症と自然災害との複合災害への備えなど、新たな課題にも的確に対応できるよう、防災対策の強化を図りました。引き続き、「自助」・「共助」の担い手である都民・事業者と、「公助」を担う都が一体となり、安全・安心な東京を共に築き上げてまいります。
6月に入り出水期を迎える中で、日本各地で甚大な風水害が毎年のように発生していることを踏まえ、豪雨対策を強化してまいります。リアルタイムの情報発信によって、都民の迅速な避難行動に繋げるべく、これまで都内38か所における河川監視カメラの画像の公開を進めてまいりました。本日より順次、新たに20か所でカメラを稼働させ、併せてYouTubeを活用した動画配信を開始いたします。各地の避難所におきましては、マスクやアルコール消毒液といった感染症対策用の物資を充実させるべく、区市町村への支援を開始するなど、複合災害への備えも固めます。また、河川の氾濫防止に大きな効果を発揮する調節池の整備に向けまして、新たに柳瀬川、奈良橋川を事業化に向けた検討に加えますほか、環状七号線地下広域調節池について、将来の地下河川化を含めて、その延伸の検討を進めてまいります。
防災機能の強化に欠かすことのできない無電柱化につきましては、本年2月に策定した「加速化戦略」において、都道等における年間整備規模の倍増など、7つの戦略を掲げました。これを踏まえ、先般、その基本的な方針や目標を定めた「無電柱化計画」の改定案を公表したところであります。今後5か年で、第一次緊急輸送道路や島しょ地域の都道をはじめとした約1400キロメートルの整備に向けて、取組を進めてまいります。
こうした安全・安心を高める取組に加えまして、地域の特色を活かしたまちづくりにより、都市の魅力を最大限に引き出してまいります。
渋谷地区の児童会館跡地を中心とした再開発につきましては、その歴史を踏まえ、子供の創造性を育む施設の整備や、多世代が交流できる空間の創出などを通じまして、出会いと成長の拠点を形成してまいります。この夏には、事業者の募集を開始しまして、民間の創意工夫を活用しながら、具体化を進めてまいります。また、泉岳寺駅地区での市街地再開発事業におきましては、高輪ゲートウェイ駅とのアクセス性を向上させるとともに、緑と光溢れるガーデンエリアを整備するなど、新たな賑わいを創出してまいります。
さらに、90年以上にわたり都民に親しまれ、昨年夏に閉園した「としまえん」の跡地におきましては、今月、新たな都立公園となる練馬城址公園の整備事業に着手いたします。地域の歴史や、緑豊かな自然を活かしながら、都民が安らぎ、防災拠点ともなる公園を創り上げてまいります。
テレワークを活用した職住近接のゆとりある生活など、そのポテンシャルが改めて注目される多摩地域の魅力をさらに高めてまいります。先日、素案を公表いたしました「新しい多摩の振興プラン(仮称)」では、社会構造の変化をさらなる発展のチャンスと捉え、サテライトオフィスの充実や、先端技術を活かしたイノベーション創出など、今後の目指すべき方向性や振興策を取りまとめたところであります。市町村や都民の皆様のご意見、都議会での議論を踏まえまして、9月の策定を目指してまいります。
併せて、多摩・島しょ地域の重要な産業であります林業・水産業の新たなプランを策定をしまして、一層の振興を図ります。社会情勢の変化に対応しながら、担い手の確保・育成や、デジタル技術を活用した経営力の強化などを進め、東京の林業・水産業の持続的な発展に繋げてまいります。
都市の活力の源泉は「人」であります。誰もが自分らしく、いきいきと活躍し、未来へと発展し続ける社会を築くため、「人」が輝く東京の実現に向けた取組を推進してまいります。
子供は、可能性に溢れたかけがえのない存在、まさに社会の宝であります。その宝を社会全体で大切に育み、全ての子供たちが夢と希望を抱きながらのびのびと育ち、笑顔で溢れる東京にしたい。こうした思いのもと、「未来の東京」戦略におきましては、「子供の笑顔のための戦略」を一番目の戦略に位置付けております。例えば、私が、力を注いでまいりました待機児童対策につきましては、これまでの取組が着実に実を結びつつあります。知事に就任した平成28年に8466人を数えました都内の待機児童数は、本年4月1日時点での速報値ベースで、1000人を切る見込みとなりました。今後とも、子育て世帯が直面する様々な困難に寄り添いながら、子供の健やかな成長に向けまして、あらゆる施策を講じてまいります。
先の第一回定例会におきまして、都議会の皆様からのご提案による「こども基本条例」が成立をいたしました。子供を権利の主体として尊重する。いかなる状況においても子供の幸福を最優先にする。この条例に込められました思いをしっかりと受け止め、チルドレンファーストの東京を築き上げる。その実現に向けまして、子供に関する政策を幅広い観点から検討するため、全庁横断的な体制を整備したところであります。都の子供政策をリードするべく立ち上げた「こども未来会議」での議論も深めながら、子供目線に立った施策を率先して推進してまいります。
子供たちの個性や能力に向き合い、その成長を社会全体で支える「東京型教育モデル」の実現。その柱となる教育のデジタル化を強力に推進するべく、都立高校等における無線LANの整備計画を1年前倒ししまして、今年度中に全校への整備を完了させます。また、各校が特色ある教育活動を行うために選定する学習端末を生徒が所有する、いわゆる「CYOD方式」につきましては、令和4年度からの導入に向け、端末購入における保護者支援のあり方等について検討を進めております。こうした取組により、子供たち一人ひとりの力を最大限に伸ばす学びを着実に進めてまいります。
東京から世界へ羽ばたくグローバル人材を育成するべく、多摩地域に展開する体験型英語学習施設につきましては、多くの児童・生徒が利用しやすいアクセス性等の観点から、立川駅至近の複合商業施設内に開設することといたしました。来年度中の開業に向けまして、着実に準備をしてまいります。
3月末に発表されました「ジェンダーギャップ指数」の国際比較におきまして、日本の順位は、昨年とほぼ変わらずで、156か国中120位でありました。私が危機感を覚えるのは、こうした現状に慣れ切ってしまった我が国が、世界から見たその異常さに気づかないまま、いつまでも後れを挽回できないことであります。いつの時代も未来を切り拓くのは「人」であり、意思決定の場など、あらゆる場面で女性をはじめとした多様な視点が反映されてこそ、誰にとっても住みやすいまちが実現をいたします。こうした認識のもと、「男女平等参画推進総合計画」の改定に着手をいたしました。コロナ禍を背景に、在宅時間が増えたことに伴う家事・育児負担の増加、不安定な就業環境など、女性を取り巻く新たな課題にも対応するべく、行動変容を促すための「意識改革」と社会の「仕組みづくり」。この2つの柱を両輪に、多角的な視点で検討を深めてまいります。
地域で支え合いながら、高齢者がいきいきと心豊かに、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる東京の実現。こうした理念を掲げ、3月末に新たな「高齢者保健福祉計画」を策定いたしました。団塊の世代が後期高齢者となる令和7年、さらには団塊ジュニア世代が高齢者となる令和22年といった中長期を見据えつつ、目の前にある新型コロナウイルスを踏まえた対応も盛り込んでおります。その重点分野の一つである介護予防・フレイル予防では、高齢者によるオンラインツールを活用した非対面での交流や、感染症対策を講じた対面での活動を支援する事業を開始したところであります。不安やストレスを抱えやすい現下の状況だからこそ、人と人との繋がりを保ち、心身共に健康でいられるよう、高齢者の方々の活動をサポートしてまいります。
雇用情勢の回復の兆しが見えない状況にある中、就職氷河期世代や、解雇・雇止めなど、困難に直面している方々に寄り添った就業支援を展開いたします。コロナ禍にありましても採用意欲の高い企業の求人を掘り起こし、トライアル就労を通じて正社員となる機会を提供するなど、2万人を超える雇用創出を目指す「東京版ニューディール」の取組を開始いたしました。安定した雇用の場の確保に向け、取組を着実に実行してまいります。
また、3月に都として初めて認証したソーシャルファームにつきましては、さらなる拡大を図るべく、新たな事業者の募集を開始いたしました。ひとり親や障がいのある方など、一人ひとりが個性や能力に応じて活躍するソーシャルファームは、まさにダイバーシティの象徴であります。こうした社会的意義や、そこで働く方々のいきいきとした姿を広く発信し、都民や事業者の理解を促していくことで、社会で共に支え合う「ソーシャル・インクルージョン」の輪をさらに広げてまいります。
「人」が輝き、誰もが活躍できる東京。安全・安心で、世界から選ばれる持続可能な都市・東京。こうした目指すべき「未来の東京」の実現に向けて、政策を大胆に展開していくためには、都庁自らが都民の期待に応える組織へと変貌を遂げなければなりません。その鍵となるDXを梃子に構造改革を徹底的に推進をして、「新しい都政」を切り拓く。その道筋を示すのが「シン・トセイ」戦略であり、デジタル人材を結集し、改革の先導役となる組織が、この4月に新設した「デジタルサービス局」であります。各局や区市町村が推進するDXを技術面からサポートするほか、職員全体のデジタルスキルを向上させるなど、行政のデジタル化を強力に推進をし、都政のクオリティ・オブ・サービスを飛躍的に高めてまいります。
短期集中で、数々の改革ミッションを成し遂げる。既に取組は動き出しております。例えば、都庁の職場で初めて導入したフリーアドレス制は、固定デスクと紙を前提とする働き方から解放し、プロジェクトに合わせた柔軟なチーム編成を可能にいたします。行政手続のデジタル化に向けましては、「東京デジタルファースト条例」に基づく「推進計画」の素案を取りまとめたところであり、利用件数の多い手続きから重点的に取り掛かるなど、ユーザー視点に立った取組を加速させます。また、八丈島における学習支援アプリを活用した「EdTechサービス」の導入など、教育や医療をはじめ、島しょ地域の様々な社会課題をデジタルで解決する新たな取組も始まっております。職員一人ひとりが改革マインドを共有し、「都政の新しいスタンダード」を定着させる。「シン・トセイ」戦略の実践とともに、「未来の東京」戦略を果敢に展開することで、「東京大改革2.0」を実現をし、誰もが幸せを実感できる都市・東京を創り上げてまいります。
幕末から昭和初期の激動期を駆け抜けた渋沢栄一は、明治の末、近代化がもたらした新たな生活に国民が安住し、世界へさらに飛躍しようとする気概を失いつつあった風潮を憂い、次のような言葉を残しております。
「社会全般が元気をなくしており、発展が停滞している。今までの仕事を守って間違いなくするよりも、さらに大きなことを計画し発展させ、世界と競争しなければならない。」
私たちは今、100年に一度の災禍により大きな社会変革が生じている激動と混沌の只中にあります。こうした時だからこそ、偉大な先人である渋沢の言葉を肝に銘じ、これまでの延長線上ではなく、大胆な発想と高い理想を掲げ、「成長」と「成熟」が両立した社会を創り上げなければなりません。コロナ禍からの復興に当たり、より強靭で持続可能な都市へと進化する「サステナブル・リカバリー」の実現は、今を生きる我々の使命であります。
そのためにも、東京の総力を結集し、この難局を何としても乗り越える。そして、その先の希望ある未来を切り拓いてまいります。都議会の皆様、都民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
さて、本定例会は、都議会の皆様にとって、現任期最後の定例会となります。改めて振り返りますと、平成から令和への改元という時代の転換点を迎える中、都内各地に甚大な被害をもたらした台風や、今なお続く新型コロナウイルス感染症への対応のほか、急速に進む少子高齢化や気候危機など、様々な諸課題に共に向き合ってきた4年間でありました。都議会での真摯な議論を通じ、都政は、直面する課題への具体的な解決策や、先を見据えた先駆的な施策を生み出し、持続可能な「未来の東京」に向けた歩みを着実に進めてまいりました。東京の発展に力を尽くされたことに、心より感謝を申し上げます。
現任期を最後にご勇退される方々には、これまでのご労苦に対しまして、都民を代表して改めて深く敬意を表します。また、改選を迎えられる皆様には、心よりご健闘をお祈りをいたします。
なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案3件、条例案28件など、合わせまして54件の議案を提案いたしております。よろしくご審議のほど、お願いをいたします。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。
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