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令和4年(2022年)2月16日更新

令和4年第一回都議会定例会 知事施政方針表明

令和4年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。

2月1日、元東京都知事の石原慎太郎氏が逝去されました。オリンピック・パラリンピックの招致表明をはじめ、これまで残された数々のご功績は、貴重なレガシーとして東京に根付いています。改めて、ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

1 新型コロナウイルス感染症対策

はじめに、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
まず、コロナとの闘いの中で亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げるとともに、コロナ禍の厳しい状況の中にあっても、日々努力を重ねておられる都民・事業者の皆様に敬意を表します。また、感染防止対策にご協力をいただいている皆様、昼夜を問わず奮闘いただいている医療従事者の皆様に、改めて深く感謝を申し上げます。
オミクロン株の脅威から、命と暮らしを守るという強い思いの下、「感染を止める、社会は止めない」との方針を掲げ、先手先手の対策を講じてまいりました。感染力が極めて強く、急速に拡大するのがオミクロン株であります。引き続き、その特性を踏まえた対策を素早く、まさにスピード勝負で、戦略的に展開する。「攻め」と「守り」の総力戦で、この難敵に立ち向かいます。

都民の命と暮らしを守る

医療提供体制の強化・充実

「守り」の要である医療提供体制につきましては、「感染拡大緊急体制」を敷き、医療機関での受入れ、宿泊療養、自宅療養と、症状等に応じて的確に対応できる体制を整えるとともに、感染動向を踏まえ、先を見据えた対策も講じています。無症状・軽症者向けの療養施設の整備、自宅療養者の困りごとに対応する「うちさぽ東京」の開設、検査体制の拡充などに加え、今週より順次、臨時の医療施設を立上げ、高齢者や不安を抱える妊婦の受入れを拡大いたします。重層的な取組により、全ての方々が安心できる環境整備を進めてまいります。

高齢者・子供への対応を強化

そして今、力を注ぐべきは、感染が増加している高齢の方々や子供たちを守る取組であります。高齢者施設に対する往診を強化し、早期に中和抗体薬や経口薬を投与できる体制を確保するほか、ワクチンバスを運行して追加接種を強力に推進することで、重症化を防ぎます。職員の感染等により運営継続が困難となった施設に対しましては、人材派遣を活用した新たな応援の仕組みを築き、高齢者の安心へと繋げます。
学校や保育現場での対策も強化します。教員や保育士等への定期的・集中的な検査を実施するほか、学校では分散登校とオンラインのハイブリッド授業を推進し、感染防止と学びの両立を図ります。保育所につきましても、運営継続のための職員確保を後押しする一方、休園となった際は、公民館等で子供を受け入れる区市町村を支援するなど、社会を止めないための取組に尽力します。

3回目のワクチン接種の加速

一方で、「攻め」の武器となるワクチンの追加接種も加速いたします。命を守るため、さらには、日々の暮らしを継続していく観点からも重要な取組であり、医療従事者等に続き、今月から都の大規模接種会場において、教育・福祉関係者を含む、エッセンシャルワーカーへの接種を開始いたしました。今後も、経済団体と連携し、中小企業の従業員向けの接種を進めるなど、一層の推進を図ります。
これらの取組を着実に実行していくためにも、検査キット、ワクチン、経口薬、中和抗体薬の4点セットについて、早期の確保と確実な供給を国に求めています。特に、有効な武器となる経口薬につきまして、迅速かつ安定的な供給を図るべく、国産治療薬の治験協力を実施しており、国内承認や実用化のスピードアップに繋げてまいります。

一日も早く日常を取り戻す

これまでの対策と皆様のご尽力により、夜間滞留人口や実効再生産数は減少傾向にあり、効果は着実に表れています。都民・事業者の皆様には、引き続き、基本的な感染防止対策の徹底をはじめ、テレワークの一層の推進や、改めてのBCPの点検などに、ご理解とご協力をお願いしたいと存じます。これまでの経験を踏まえた実効性ある対策を推進し、あらゆる手立てを総動員することで、人々の活気や賑わいに溢れる東京の日常を、一日も早く取り戻してまいります。

2 未来の東京に向け、トップスピードで実行する

「成長」と「成熟」の両立こそ、持続可能な東京への道

コロナとの闘いを乗り越え、いかに未来へと羽ばたくか。今、人類に突き付けられている命題に、世界各国がいち早く答えを出そうと模索し、行動を重ねています。都は昨年より、「サステナブル・リカバリー」の旗の下、コロナ禍からただ元に戻るのではなく、より進化した都市として発展を続けていくための取組を加速してまいりました。私たちの未来を脅かす気候危機への対応。デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出す「スマート東京」の推進。「『未来の東京』戦略」に掲げた数々のプロジェクトは、着実に進んでいます。
加えて、多くの困難を乗り越えて成功裏に終えた東京2020大会は、多様性への理解の向上やバリアフリーの進展など、誰もが暮らしやすい社会の実現に向け、東京の都市としての成熟度を大きく高めるものとなりました。こうした都市の成熟は人の活力を生み、その活力は都市の成長の源泉となります。この「成長」と「成熟」の両立こそ、東京が持続的に発展していくための鍵であるとの確信の下、引き続きその実現に向けた取組を推し進めてまいります。

「東京大改革」を光の如き速さで推進

激化する国際競争の中での「成長」と、誰もが輝くさらなる高みの「成熟」。これを成し遂げる上で、何よりも大切なのはスピードです。大会の成功により国際的な信頼を高めたこの機を逃すことなく、世界に、そして未来に飛躍する東京を築く取組に邁進し、結果を出さなくてはなりません。そのスピードこそが、東京のこれからを決定づけます。強い決意を胸に、世界に輝き続ける東京の実現に向けた「東京大改革」を、まさに光の如き速さで進めてまいります。

「『未来の東京』戦略」のバージョンアップ

その羅針盤となる「『未来の東京』戦略」について、このたび、さらなるバージョンアップを図りました。世界の潮流である「グリーンとデジタル」をはじめ、都民の命と生活を守る「危機管理」や「段差のない社会」の実現、「チルドレンファースト」といった切り口からプロジェクトを進化させています。大会のレガシーを発展させ、「サステナブル・リカバリー」の視点からの取組を一段と強化することで、強靭で持続可能な社会を築き上げます。
戦略は作って終わりではありません。実行し、目指すべき社会を実現してこそ意味を持ちます。取り巻く環境の変化にもしなやかに対応しながら、磨き抜いた政策を力強く前進させてまいります。

都庁を変革する

都庁自身も変わり続けます。役所の世界では常識となっている年度単位の思考や、実証実験の繰り返しから脱却し、事業執行の徹底した迅速化を図る。課題が生じれば、素早く柔軟に対応し、完成度を高めていく。こうしたアジャイルの発想を都庁全体に浸透させ、構造的な課題にも鋭く切り込みます。
その鍵を握るのはデジタルの力です。DXは、単なる業務の効率化に留まるものではありません。真の目的は、都政のQOS、サービスの質を爆速で上げること、そして都民のQOL、生活の質を高めることです。アップグレードした「シン・トセイ」の下、職員のデジタルスキルの底上げや、「伝わる」広報への転換など、数々のプロジェクトを加速させ、常に時代の一歩先を読んだサービスを生み出します。
そして、改革を断行し、新たな未来を創るのは、スピードと実行力を兼ね備えた課題解決型の組織です。子供目線の政策を総合的に推進する「子供政策連携室」を設置するほか、スポーツや芸術文化、治安対策等の業務を「生活文化スポーツ局」に集約し、安全・安心で豊かな都民生活のための政策を一体的に推進いたします。また、新型コロナ対策の最前線を担う福祉保健局の執行体制を充実させるとともに、未知なる感染症への適切な対応等を図るため、令和5年度に向け、組織のあり方の検討を進めてまいります。

希望ある未来を切り拓く令和4年度予算案

都政の新たなステージを果敢に切り拓くべく、本定例会には、一般会計総額7兆8010億円となる予算案を提案いたしました。これまで以上にメリハリを効かせ、グリーンやデジタルの分野に重点的な投資を行う一方、事業の見直しを一層強化し、都債の発行抑制を図るなど、将来にわたる財政対応力にも目配りしています。「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」、この3つのシティを実現し、東京を持続可能な都市へと変革させるために、施策を大胆にアップグレードしました。全庁一丸で、その成果を早期に形あるものとし、希望ある未来を導いてまいります。

3 「世界から選ばれる都市」へと進化する

これより、主要な政策について申し述べてまいります。国際政治学者イアン・ブレマー氏が提唱している、主導国不在の「Gゼロ」の世界において、国際情勢は混沌とし、不確実性は増すばかりです。こうした中にあっても、市民の生活を守ることを使命とする世界の都市は、時に協調し、時に切磋琢磨しながら、人々を脅かす地球規模の課題を解決に導かなくてはなりません。その最たる例が、気候危機です。私自身、世界大都市気候先導グループ・C40の副議長であり、こうした世界的ネットワークとも連携しながら、国際的な脱炭素化の潮流をリードし、混迷極める世界でのプレゼンスを高めてまいります。

脱炭素化で世界をリードする

昨年のCOP26での合意のもと、世界は「1.5℃目標」に向かって走り出しました。各国も、次々と野心的な目標を打ち出していますが、大事なのは、いかにそれを実行するか。まさに本気度が試される一年です。既に「2030年カーボンハーフ」を表明している都は、一人ひとりの行動に繋がる「共感」を大切にしながら、あらゆる取組の抜本的な強化を図り、総力を挙げて挑みます。

住宅のゼロエミッション化を強力に推進

まずは、建築物のゼロエミッション化、とりわけ家庭部門への取組に一段と注力し、条例改正やそれに基づく制度の強化・拡充を図ります。住宅政策の次期「マスタープラン」では、住宅市街地のゼロエミ化を最優先事項に掲げました。ドアや窓などの断熱改修や、太陽光パネル・蓄電池の設置等、様々な補助を拡大するほか、都営住宅などについても、環境性能を一段と高めます。また、人にも地球にも優しい「東京ゼロエミ住宅」の一層の拡大に向け、新たに、不動産取得税を最大で全額減免し、助成金の拡充や耐震化促進税制とも併せて効果的なPRを行うなど、全庁一丸で、住宅の省エネ・再エネを強力に推し進めます。

自動車の脱炭素化を加速させる

次に、自動車の脱炭素化です。ZEVをもっと使ってみよう、人々がそう思えるよう、モビリティとインフラの両面からの推進を図ります。一般車両も使える水素ステーションを設置するバス事業者に対し、FCバス導入の上乗せ補助を行い、自己負担を概ねゼロにします。また、EV用の充電器につきまして、都有施設での設置をこれまで以上に加速するほか、短時間でフルチャージ可能な超急速充電器の普及促進、戸建て住宅への設置補助の開始など、質・量ともに拡大を図り、ZEVの普及を力強く後押ししてまいります。

東京の緑を守る

CO2の排出削減のみならず、その吸収源となる緑の保全も両輪で進めます。いわゆる、生産緑地の「2022年問題」を乗り越えるべく、緑地を維持する区市を積極的に支えます。また、将来にわたり農地を脈々と引き継ぐためには、担い手たる農業者の育成が欠かせません。初めて農業を目指す方、農地を探している方、副業として農業に関心がある方などを幅広く掘り起こし、東京ならではの農業の維持・発展に繋げます。
里山の美しい原風景、それがもたらす生物多様性の恵みなど、東京に残された豊かな自然環境を身近に感じることで、自然を守る「共感」を育てることも重要です。東京の魅力的な自然環境を、最新技術を駆使して発信するデジタルミュージアム構想について、具体の検討を進めます。

環境と経済の好循環を作り出す金融の力

環境対策が経済の妨げになるという考えは、この令和の世では、もはや過去のものであります。むしろ、世界をリードする環境政策の推進が、未来を拓く技術革新や新たな需要をもたらし、持続可能で力強い経済へと繋がります。この環境と経済の好循環を創り出すことこそ、これからの時代の重要な成長戦略であります。
その流れを確かなものとするのが、金融の力です。グリーンファイナンスを根付かせるべく、金融系外国企業の誘致や、再エネ拡大に向けた投融資を加速させます。また、来年度からは、ベンチャー企業等の脱炭素イノベーションを促進するファンドを設立し、果敢なチャレンジを後押しする市場環境を醸成いたします。さらには、社会課題の解決と経済的利益の両立を目指す「インパクト投資」を活性化するなど、世界から選ばれる国際金融都市への道を切り拓いてまいります。

中小企業の稼ぐ力を高め、経済を成長軌道に乗せる

東京の経済を力強い成長軌道に乗せるため、都内の産業基盤を支え、稼ぐ力の源泉である中小企業のDXを加速します。ロボットやAIなどの設備投資を強力に後押しし、新たなビジネスモデルの創出に繋げます。併せて、直面する消費者ニーズの変化をチャンスに変え、デジタルを梃子に変革を遂げようとする商店街の取組を促進するなど、世界を見据えた事業展開から、日々の暮らしに根ざした身近な場面に至るまで、次々とイノベーションを生み出していきます。
デジタルの力を最大限に引き出すためには、それを巧みに操ることができる「人」が不可欠です。職業訓練による集中的・専門的な育成プログラムを実施し、先端IT分野を背負って立つ人材を輩出するとともに、大規模なマッチングイベントにより、デジタル分野への人材シフトを促します。また、企業内で変革を巻き起こすキーパーソンを育て上げるべく、DXのリスキリング支援を精力的に展開いたします。
イノベーションの先導役となるスタートアップの支援も強化します。その最大の強みとなる独創的な技術やアイデアを、国際競争の舞台で積極果敢に使いこなしていけるよう、知的財産の戦略策定から特許等の取得まで一気通貫でサポートしていきます。
さらには、中小企業がこの先も持続的な成長を遂げていくため、人材育成や販路開拓等の支援機能を結集し、多様な主体と結び付けて新たな価値の創出を促すなど、総合的に支える仕組みを強化してまいります。

何度でも訪れたくなる観光都市へ

東京の成長戦略を描く上で欠かせない観光産業の活性化も進めます。来るべき需要の回復を見据え、先般、新たな実行プランを策定しました。旅行者ニーズの変化を捉え、先端技術を取り入れた新時代のスタイルを確立するとともに、地域や環境にも配慮した持続可能な観光を推進するなど、世界を魅了し、何度でも訪れたくなる観光都市を築き上げます。

臨海地域のポテンシャルを解き放つ

オリンピック・パラリンピックを契機に、世界から熱い視線が注がれる臨海地域のポテンシャルは、東京が秘める大きな強みです。魅力溢れるこの地を舞台に、世界の最先端を走るサステナブル都市のモデルを創り出す「東京ベイeSGプロジェクト」は、来年度、いよいよ先行プロジェクトを始動させます。中央防波堤エリアにテクノロジーの巨大実装フィールドを創出し、見る者の心を躍らせ、希望に溢れたこの先の未来を映し出します。併せて、「地下鉄8号線」豊洲・住吉間の延伸及び「品川地下鉄」の整備について、来年度早々にも都市計画等の手続きに着手いたします。臨海地域のさらなる魅力向上に繋げるため、早期の事業化に向け取り組んでまいります。

真のグローバル都市へと飛躍する

国際社会における東京のプレゼンスを一段と高めるための取組も進めます。循環型社会を形成し、独創的な文化が花開いた江戸の街、その先進性を受け継ぎ発展する東京の未来像を、デジタル技術を駆使しながら発信し、世界の範となる都市のモデルを示します。また、海外の企業や投資家など、様々なプレーヤーが集い、活躍できる東京を築くべく、英語が当たり前に使える環境を整えていきます。多彩な魅力が世界を惹きつけ、異文化との融合が新たな価値を創造する。そんな、真のグローバル都市へと飛躍してまいります。

4 子供の笑顔が溢れる社会を創る

未来を担う子供たちが夢や希望を抱いて育ち、笑顔溢れる東京を創りたい。そんな想いを込めた「こどもスマイルムーブメント」のキックオフイベントでは、こども政策を担当する野田大臣もお迎えし、3600人もの方々にご参加いただいて、子供の笑顔のために何を為すべきなのか、忌憚のない議論を交わしました。このムーブメントには、既に千を超える企業等に参画いただいています。子供目線に立ってスクラムを固く組みながら、チルドレンファーストの社会の実現に向けた取組を、前へ前へと進めてまいります。

子供たちを誰一人取り残さない

誰一人取り残さないとの強い思いの下、あらゆる子供たちの健やかな成長を全力でサポートします。来年度、区部と多摩にそれぞれ設置する「医療的ケア児支援センター」は、保護者と自治体、受入施設を結ぶ相談拠点として、児童とその家族が抱える悩みを受け止め、必要な支援へと確実に繋げます。また、放課後等デイサービスについては、国の報酬改定を踏まえ、都独自の財政的支援を講じます。実務経験のある職員の増員や、預かり時間の延長、送迎の実施などを補助要件とすることで、事業者のサービスの質の向上を後押しいたします。
孤独な状況に置かれているヤングケアラーへの支援も急務です。彼らの出す小さなサインを確実にキャッチするべく、福祉や教育現場との強固な連携の下、家事支援ヘルパーの派遣や、ソーシャルワーカー、相談体制の充実など、重層的な対策を講じてまいります。

教育DXのさらなる推進

新たな時代を切り拓く子供たちの力を引き出すため、教育現場のDXをさらに推進します。高校段階における一人1台端末整備にかかる負担軽減策につきましては、私立においても都立と同等の助成を行い、誰一人取り残すことのない学習環境を整えます。さらに、来年度から必修となるプログラミング教育では、専門家によるオンライン講義や、民間のデジタル補助教材等を活用し、子供たちの学ぶ意欲に応える実践的な授業を展開してまいります。

子供を笑顔にするプロジェクト

コロナの影響で、楽しみにしていた学校行事が中止になってしまった。こんな、やりきれない想いを抱えている子どもたちに、再び笑顔を取り戻してほしい。都内の公立・私立、全ての学校を対象に、芸術鑑賞やパラスポーツの体験など、多彩な活動の場を提供していく取組を、今回の予算案に盛り込みました。「見る・聞く・触れる」の経験を通じて、級友と楽しい思い出を分かち合ってほしいと思います。

子供も家族も笑顔にする多彩な支援

子供の笑顔の源は、保護者の笑顔です。妊娠前から、出産、子育て期に至るまで、それぞれが抱える悩みに寄り添った支援を展開します。
都内の保育施設における待機児童は千人を切り、知事就任時から、概ね9割の削減を実現することができました。喫緊の課題となっているのは、小学校に通う子供たちの放課後の居場所づくりです。認証保育所での受入れや、ベビーシッターの活用など、長時間預かりにも対応した様々な選択肢を揃え、共働き世帯が直面する「小一の壁」を取り払います。
また、子供の成長に応じた切れ目のない支援を届けるべく、「とうきょう子育て応援パートナー」制度を創設します。各家庭の状況に合わせ、伴走型で支援をコーディネートする人材を育成し、安心して子育てができる環境を整えていきます。
そして、子供を産み育てたいという願いを形にするためにも、若い頃から、自らのライフプランを描いてほしいと思います。中高生や若年層が、年齢に応じた体の特徴など、妊娠等に関する正しい知識を身に着け、将来に備えた健康管理を行えるよう、医療機関等と連携した相談体制の構築やさらなる普及啓発を図ります。
こうした取組を含め、都政のあらゆる分野で子供の立場に立って施策を捉え直し、総合的な企画調整機能を持つ「子供政策連携室」を核として、実効性ある政策を力強く展開してまいります。

5 人が輝く段差のない社会を築く

違いを受け入れ、支え合うことで、東京が誇る「人」の力は何倍にも大きくなります。あらゆる場面での段差を解消し、全ての人々が輝ける、多様性が尊重された社会を築き上げます。

誰もがいきいきと輝くインクルーシブシティ

パートナーシップ宣誓制度

誰もが自分らしく、人生を実り豊かなものにしてほしい。本年秋、新たに創設する「パートナーシップ宣誓制度」により、性的マイノリティの方々が直面する様々な生きづらさを取り払い、多様性の輪を大きく広げます。全国で初めて、証明書の発行に至る全ての手続きをオンラインで完結させることにより、意図しない形で性自認や性的指向を知られてしまう、いわゆるアウティングへの対策を万全にします。行政のみならず、民間との幅広い連携の下、様々なサービスを提供するなど、当事者の思いに寄り添った制度を構築してまいります。

女性も男性も輝ける社会に向けて

女性も男性も自らの希望に応じて輝ける、誰にとっても住みやすい社会への取組も加速しなければなりません。来月、「男女平等参画推進総合計画」を改定し、働く場における女性の活躍推進、幅広い世代への意識改革、男女間のあらゆる暴力の根絶に向け、様々な主体と連携しながら、女性のさらなる輝きを引き出します。そして、本定例会には、東京都版のクオータ制とも言うべき取組に先鞭をつけるべく、防災会議及び国民保護協議会における女性委員の拡大に繋がる条例案を提案いたしました。これにより、女性任用率はいずれも40%を超えることとなります。今後、他の審議会等におきましても女性参画を加速し、都の施策に多様な声を一層反映させてまいります。

長寿社会の実現

団塊の世代が初めて75歳を迎える本年、世界に誇る長寿社会の実現に向け、成熟都市としての真価がまさに問われようとしています。住み慣れた地域で仲間たちとボランティアや趣味の活動に励む。飽くなき探求心で、大学での研究に打ち込む。様々な活動の機会を提供し、心身ともに元気に、いきいきと活躍できる社会づくりを進めます。
また、高齢者にスマートウォッチ等を装着いただき、健康状態を可視化できる取組を開始いたします。コロナ禍でも自宅で手軽にできるセルフケアを通じて、日常生活での行動変容を促します。さらに、得られた情報をビッグデータとして蓄積し、健康管理アプリの開発などに活かすことにより、地域包括ケアシステムの基盤を強化します。
そして、喫緊の課題である介護人材の確保に向けては、幅広い層に積極的に仕事の魅力を発信し、インターンシップからマッチング、その後の定着までの一貫した支援を開始いたします。併せて、職員宿舎のさらなる拡大を促進し、職住近接の働きやすい職場環境を築いてまいります。

人中心のまちづくり

街の段差を取り払い、高齢の方も、障がいのある方も、誰もが移動しやすい環境を整備することで、活気溢れる都市への実現へと繋げます。目指すのは、何度でも出かけたくなる、ウォーカブルなまちです。人が憩い、集い、いつ来ても新たな出会いが待っている、そんなワクワクする東京にしていきたい。東京2020大会を機に進展したまちのバリアフリー化を加速し、地理情報システムを活用した整備状況の見える化を推進するなど、区市町村と連携を深めながら、さらなる面的拡大を図ります。また、周辺のまちを繋ぎ、歩いて楽しめる空間として再生する東京高速道路、いわゆるKK線のプロジェクトにつきましては、来月、事業化に向けた方針の中間まとめを策定いたします。地元区等との調整を重ねながら、誰もが親しめる緑に溢れた空中回廊として甦らせてまいります。

みんなのスポーツレガシーへ

昨年夏の大会の成果を、東京の、みんなのスポーツレガシーへ。全ての都民がこの先も、スポーツを通じて感動を分かち合える社会を目指し、先般策定した「スポーツレガシービジョン」には、都立施設の戦略的活用など、スポーツ振興に向けた展望を示しました。来年度、その重要な取組の一つとして「パラスポーツトレーニングセンター」を開設し、アスリートの活動を支えるとともに、誰もがパラスポーツに親しめる環境を整えます。大会で得たスポーツとの繋がりを日常に溶け込ませ、健康で豊かに暮らせる「スポーツフィールド・東京」を実現してまいります。

6 危機管理体制を強化し、安全・安心なまちを実現する

世界に伍して成長を続ける都市の力も、いきいきと輝く「人」の力も、全ては、安全・安心という基盤の上に発揮されるものであります。差し迫る様々な脅威から、人々の命と財産を守り、都市の強靭化をいち早く実現しなければなりません。ハード・ソフトの両面から、不断に備えを固めます。

風水害への備えを一段と強化する

まず、気候危機の影響で深刻化する風水害への備えです。これまでの度重なる被害を踏まえ、最優先で整備を加速するべき調節池について、新たに目黒川流域で事業化に着手いたします。これと現在整備中の環状七号線地下広域調節池を連結させることで、地下調節池として国内最大を誇る貯留機能を発揮します。さらには、大型化する台風、頻発する集中豪雨に対抗するための河川施設のあり方について検討してまいります。併せて、下水道についても、来月、「浸水対策計画」を策定し、区部10か所の重点整備地区を新たに設定するなど、時間75ミリ降雨に対応する整備水準へとレベルアップしてまいります。

まちの耐震化・不燃化を加速する

次に、まちの耐震化・不燃化です。緊急輸送道路の沿道に立地する大規模マンション等への補助を拡充し、耐震化をさらに加速します。「燃えない、燃え広がらない」まちづくりの主軸となる特定整備路線は、全28区間で工事着手となりました。令和7年度までの全線整備に向け、その手を緩めることなく邁進してまいります。

無電柱化のさらなるスピードアップ

無電柱化につきましても、昨年策定した加速化戦略を推進力として、さらなるスピードアップを図ります。とりわけ、電柱の倒壊が避難経路の遮断など深刻な事態を招く木密地域では、私道に係る整備を都が全額負担し、早期実現に繋げます。また、南海トラフ地震の切迫性が増すとともに、台風の被害が頻発する島しょ地域の無電柱化は、まさに焦眉の課題であります。各島特有の課題を徹底調査し、地元町村等と精力的に調整を進めながら、先行整備を行う島を速やかに選定するなど、「島内完全無電柱化」の実現に向け、取組を推進してまいります。

ソフト面の災害対応力を強化する

ソフト面の対策も強化します。大規模風水害の被害状況等をバーチャルで再現する3Dシミュレーターの開発に着手し、災害時のオペレーションの精度を高めます。風水害時の適切な避難行動に繋げる「東京マイ・タイムライン」については、スマホで手軽に操作できるアプリ版を追加するほか、区市町村や学校等との連携によりさらなる浸透を図ります。
また、平時から都と企業との繋がりを作り、一斉帰宅を控える呼びかけや職場内備蓄などを推進する「防災リーダー」制度を創設します。併せて、GPS等を活用し、道路や一時滞在施設等の混雑状況を可視化するシステムの構築も進めるなど、帰宅困難者対策を強化します。
救護体制の充実に向けましては、救急・災害医療の専門チームである東京DMATを増強するほか、救急患者の広域搬送を可能にする「ドクターヘリ」の運行を開始します。東京消防庁では、土砂災害の現場で優れた機能を発揮する土砂吸引車を、消防機関として全国で初めて導入するなど、迅速かつ的確な救助に繋げます。
島しょ地域では、ドローンや人工衛星などDXの力を大いに活用し、港湾施設等の被災状況を速やかに把握できるようにします。さらに、得られたデータを集約し、リアルタイムに共有できる情報プラットフォームを構築することで、災害復旧の迅速化を図ってまいります。

都市強靭化プロジェクト

危機管理の要諦は、広く、大きく構えることであります。都民の命と財産、そして、この先の未来を生きる人々にまで思いを巡らせ、都市強靭化のためのプロジェクトを始動させます。気候変動、地震、噴火、テロ、感染症など、東京が直面する危機を克服するため、蓄積したデータに基づく検証を行い、長期的展望に立って、取るべき施策を明らかにいたします。

7 多摩・島しょの振興

最後に、東京の持続的な発展に欠かすことのできない、多摩・島しょ地域の活力を高めるための取組です。

多摩地域の魅力を一層引き出す

多摩地域は、緑に囲まれ、子育てもしやすく、豊かな住環境が整うなど、ゆとりある生活が過ごせるエリアとして注目を集めています。その魅力を一層引き出すための取組を推進します。
まず、地域の強みを活かした産業の振興です。本年秋、多摩地域におけるイノベーション創出の中核となる「多摩産業交流センター」が、八王子に誕生します。都域を超えた連携も深めながら、産学公の広域ネットワーク拠点を形成します。また、多摩産材をはじめ、住宅建設に国産木材の活用を促進する「木材利用ポイント事業」を開始します。東京の購買力を活かした需要創出により、全国各地が誇る国産木材の振興を図ってまいります。
教育環境も充実させます。この4月、公立では全国初となる小中高一貫校が立川に開校します。12年間という長期の課程を活かし、子供たちの豊かな国際感覚を養っていきます。
人々の生活の足である多摩都市モノレールにつきましては、箱根ケ崎方面への延伸に向け、来年度、都市計画等の手続きに着手するほか、子育て世帯を応援するべく、小児特別運賃を適用する取組を実施するなど、地域のさらなる発展へと繋げます。
山間部の土砂災害への備えも強化します。地域住民の生命線である山岳道路では、優先的に対策を講じる区間を選定し、落石防護柵の整備などを推進することで、集落の孤立などを未然に防いでまいります。

島しょ地域の持続的な発展に向けて

豊かな自然環境がもたらす海や山の恵み、独自に育まれた伝統文化など、島しょ地域には、数多くの宝物が溢れています。これをさらに輝かせたい。11の島々が持つ個性を活かし、島全体の持続的な発展に繋げるため、新たなブランディング戦略となる「サステナブル・アイランド創造事業」をスタートさせます。町村と民間の協働を促しながら、地域資源を掘り起こし、東京が誇る「宝島」の新たな魅力を創り出します。また、島しょにおけるMICE誘致を加速するための助成制度を創設し、産業活性化の起爆剤とします。国内外へのPRを戦略的に展開し、旅行者の誘客や国際的なプレゼンスの確立に繋げます。
さらに、時間や空間を超えるデジタルの力を存分に発揮させ、医療や教育など、様々な分野での振興を図ります。通信困難地域の解消に向け、町村とも連携し、モバイル通信ネットワーク環境の整備を推進します。加えて、5Gの利用拡大に向けた小笠原村における情報通信基盤の大容量化、町立八丈病院での遠隔医療の実装、VRによる英語学習プログラムの展開など、幅広い取組をスピード感をもって進めます。

8 時代を切り拓き、未来を担う「人」を育てる

テクノロジーの世界は日進月歩であります。特に人工知能、AIを活用したサービスが幅広く浸透し、生活の利便性を飛躍的に高めています。AIの進化は、単なるサービス向上やビジネスモデルの変革に留まらず、2045年には、人間の知能を凌駕するとも言われています。「人類が抱える様々な問題が解決される」、一方で「人間の仕事が奪われAIに社会が支配される」など、様々な議論がなされる中にあって、今こそ私たちは、未来を担う多彩な「人」を育てていかなければなりません。真に豊かな未来を描ける、発想力に溢れる人材や、画期的なイノベーションを社会に実装できる、実行力に優れた人材。時代を切り拓く「人」の力と、進化し続けるテクノロジーの力が相まってこそ、誰もが心豊かで幸せを実感する未来を創り上げることができるのです。改めて、第七代東京市長・後藤新平氏が繰り返し強調された「一に人、二に人、三に人」の精神を受け継ぎ、人に「光」を当て、人の力を大いに引き出すための取組に力を入れてまいります。
その先に、絶えず発展を続ける東京の姿があるとの確信の下、「光」のスピードで邁進する決意であります。都議会の皆様、都民の皆様のご理解、ご協力、よろしくお願いを申し上げます。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案33件、条例案61件など、合わせて111件の議案を提案しております。よろしくご審議のほど、お願いをいたします。

以上をもちまして、私の施政方針表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。

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