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令和4年(2022年)6月1日更新
令和4年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。
2019年12月、初めて確認された原因不明の感染症は、その後たちまち世界中へと広がりました。人類と新型コロナウイルスとの長い闘いの始まりであります。「攻め」と「守り」の対策、何より都民・事業者の皆様一人ひとりの意識と行動を大きな力にして、私たちはこの未知なるウイルスへの対策を着実に進めてまいりました。感染を止める、社会は止めない。東京が一丸となり、ようやくその糸口を掴みかけた矢先に、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が、コロナ禍で苦境に喘ぐ東京にも暗い影を落としております。
資源大国ロシアの暴挙は、グローバルなサプライチェーンを瞬く間に混乱の渦に陥れました。特に、原油や天然ガスの供給不安は、化石燃料の多くを輸入に頼る日本、中でもエネルギーの大消費地・東京の足元を揺るがす脅威そのものであります。いかにしてエネルギーを安定的に確保するか。この大きな課題は、さらなる成長と成熟へ踏み出そうとする私たちの重い足枷となっています。
光り輝く東京を確かなものとするために、今、為すべきは、危機をチャンスに変える発想で「サステナブル・リカバリー」を実現することに他なりません。海の向こうの出来事が、すぐさま身近な暮らしに影響を及ぼすグローバルな時代です。そこで生まれる脅威は、幾重にも複雑な事象が絡み合い、一つの切り口では解を導くことができない難しいものばかりです。だからこそ、世界の知恵、都庁全体の知恵を結集して困難に立ち向かい、その先に、いかなる危機にも揺らぐことのない真に持続可能な都市を実現してまいります。
3月に福島県沖で発生した地震は、「電力需給ひっ迫警報」というかつてない事態を引き起こしました。未だ火力発電所は全面復旧に至っておらず、この夏や冬の電力需給も厳しい見通しが示されています。社会の様々な活動を支えるエネルギーが途絶えてしまいますと、この首都・東京は活動停止に追いやられてしまう。先週には、私を本部長とする「エネルギー等対策本部」を立ち上げ、全庁で危機感を共有しました。都民の安全・安心のために何ができるか、それを常に考え、一歩踏み込んだ施策を講じていくよう指示を出しました。この本部を、都政を取り巻くあらゆる課題を洗い出し、総力を挙げて解決を加速させていく推進力としてまいります。また、気候変動対策と産業政策、この二つの視点から、国や大企業とも連携して取り組むため、今後、執行体制も強化し、施策を強力に推し進めてまいります。
電力を「減らす」、「創る」、「蓄める」、それぞれの頭文字を取って「HTT」、この3つの観点から政策を磨き上げ、社会を脱炭素型へとシフトさせていきます。まずは、例年以上に猛暑が予想されるこの夏の電力ひっ迫を乗り越えるため、エネルギー消費が高止まりしている家庭部門の省エネを加速させます。今ではオフィスで当たり前の光景となったクールビズ。これを家庭の省エネまで昇華させ、「Tokyo Cool Home & Biz」として、行動変容に繋げるムーブメントを起こします。省エネ家電への買替えを促す東京ゼロエミポイントの対象も拡充いたしまして、各家庭の「減らす」取組をさらに後押しします。一つひとつは小さな行動でも、皆が一丸で取り組めば、未来を変える大きな力となります。この夏を何としても乗り切るため、皆様のご協力を改めてお願いいたします。
そして、目下の電力ひっ迫もさることながら、エネルギー自給率を高め、国際情勢に左右されない都市の底力をつけなければなりません。2030年の「カーボンハーフ」の実現。これを確かなものとするべく、2026年を中間年とするロードマップを示し、新たに一定の新築建物を対象に、ZEVの充電設備の設置や国基準以上の断熱・省エネ性能の確保、太陽光パネルの設置を義務化する検討も深め、条例改正に向けた準備を加速をいたします。都民・事業者の共感を得ながら、「減らす、創る、蓄める」、この三拍子揃った都市を創り上げてまいります。
また、電力危機は、東京だけに留まる問題ではありません。東京電力管内での太陽光パネル等の設置を都が誘導し、生み出された環境価値は都民のために還元される仕組みといたします。他の自治体と力を合わせながら、解決策の選択肢を広げてまいります。
脱炭素化の鍵を握る水素に、世界の関心が一層高まっています。技術開発を巡る主導権争いが熾烈さを増す中、エネルギー危機の克服、さらには、国際競争力の強化のためにも、水素普及を加速しなければなりません。まちづくりを通じた活用や、再エネ由来の「グリーン水素」の実装も進めるなど、真の水素社会の実現に向けた基盤づくりを推進します。
脱炭素化をコストからビジネスチャンスに変える発想の転換も必要です。ガソリン車からZEVへ、優れた技術を成長産業に振り向ける。脱炭素に配慮した企業経営をサポートし、サステナビリティに着目した資金調達も普及させていく。こうした取組を重ねながら、環境により良い活動が市場で評価される土壌を築き上げ、中小企業のイノベーションを次々と生み出す力強い経済へと変えてまいります。さらには、税制も「環境」を基軸の一つに据えることが重要です。今年度の東京都税制調査会では、さらなるグリーン化に向けた議論を開始したところであります。あらゆる施策を総動員して、都民や事業者、様々な主体と力を合わせながら、脱炭素社会の実現に向けた取組を一層推進してまいります。
そのためにも、現下の原材料価格の高騰に苦しむ企業を下支えし、成長の基盤をしっかりと固めなければなりません。制度融資を拡充するほか、経営の効率化・省エネ化に資する設備投資を強力に後押しするなど、資金面・経営面からサポートいたします。また、国際的な小麦需給のひっ迫を踏まえ、米どころ新潟産の米粉など国産農作物を用いた商品開発を促進いたします。さらに、海外から都内・国内への資材調達の切り替えや、輸出促進のための世界への発信強化など、円安のデメリットを抑え込み、チャンスに変えるための施策も講じます。
コロナ禍から厳しい環境が続く都民生活も守り抜きます。孤独・孤立等に悩む方々の相談支援を強化するほか、障がい者の就労機会の確保、都立学校における給食費の負担軽減など、多方面から支えてまいります。さらには、地域の元気をもっと引き出すため、デジタルの力も活用したキャッシュレス・ポイント還元など、区市町村の取組も支援し、一人ひとりの明日への活力へと繋げてまいります。
都は、戦禍を逃れてきたウクライナの方々が、この東京で安心して暮らしていけるように、都営住宅での受入れや相談窓口の設置など、いち早く実施をしております。一方で、避難生活も長期化し、様々なニーズや困りごとも明らかになってきました。全庁横断のチームを立ち上げ、この先も地域の中で自立した生活を送れるよう、就労、子育て、教育など、様々な側面から一人ひとりに寄り添ったサポートをしてまいります。
続いて、新型コロナウイルス対策について申し上げます。
3月の重点措置の終了以降、病床使用率、重症者病床使用率は大幅に減少し、新規の陽性者数も下降傾向にあります。ゴールデンウィーク後の感染拡大も見られません。こうした状況を踏まえ、先月22日をもちましてリバウンド警戒期間を終了といたしました。今後は、水際対策にも留意しつつ、基本的な感染防止対策を徹底することで感染を抑えるステージに入っていきます。都民・事業者の皆様は、引き続き、こまめな換気、3密回避、場面に応じたマスクの正しい着用など、常に心に置いた行動をお願いいたします。医療提供体制につきましては、通常医療との両立を図りながら、救急のひっ迫状況などに応じて柔軟に運用を行います。ワクチンにつきましても、若い方々が接種を受けやすい大規模会場に再編し、併せて、高齢者等を対象とする4回目接種も促進するなど、感染の連鎖を断ち切るための取組を推し進めます。
そして、3回目の接種を受けた方などを対象として、今月中に、「もっとTokyo」をトライアル的に開始し、ワクチン接種の加速と都内観光の振興を両輪で進めてまいります。今後、国の動きや感染状況を踏まえながら、全国の観光振興と足並みを揃えてまいります。
今なお続くコロナとの長い闘いの軌跡を振り返り、先日、これまで講じてきた取組の成果や課題などを取りまとめました。培った知見と経験を武器に、この先も柔軟かつ機敏な対策で立ち向かってまいります。
先週、首都直下地震等の新たな被害想定を公表いたしました。倒れない・燃えない・燃え広がらない。これまで何年もかけて築き上げてきたハード・ソフト両面からの対策が実を結び、前回10年前の想定から被害の想定が減少しております。一方で、人口構造や住環境等の変化に伴う課題も重みを増しており、引き続き、いつ起こるとも知れない巨大地震を相手に、不断に備えを講じていくのは言うまでもありません。新たに作成したインフラ・ライフライン等の時間軸ごとの被害様相なども活かしながら、自助・共助・公助の強化に繋げてまいります。
猛威を増す水害への対策も待ったなしです。今後の「河川施設のあり方」につきまして、今月末から有識者を交えた議論を開始いたします。気候変動を踏まえた目指すべき整備目標や地下河川を含めた整備方針等について検討を深め、方向性を取りまとめます。また、都のあらゆる豪雨対策をレベルアップするために、総合的な取組を推進する基本方針の改定も加速して、水害に負けない強靭な都市を築いてまいります。
今季に入り、島しょ地域では、既に台風の影響で一部地域に停電被害が発生しています。島民の安心に包まれた生活を守るため、急ぎ無電柱化を成し遂げなければなりません。今年初めに策定いたしました整備計画を基に、「島内完全無電柱化」を先行的に行う島として、利島と御蔵島を選定いたしました。今後も、島しょ地域の無電柱化に向けて取組をさらに加速してまいります。
こうした様々な災害リスクを想定し、大きく構えることが危機管理の要諦であります。長期的な視点で備えをアップグレードする「都市強靭化プロジェクト」を加速するため、副知事をトップに各局の連携を強化する推進会議を設置をいたしました。客観的データに基づく様々な検証を行いながら、災害に強いあるべき都市の姿を明らかにしてまいります。
また、確実な救助を推進し、都民の安全・安心を高めます。東京消防庁では、新たに「安全推進部」を新設し、ヒューマンエラーによる事故を徹底的に防止するための危機管理体制を強化いたしました。さらに、来月より、通報者からのスマホ映像を共有する「映像通報システムLive119」、これを多摩地域にも導入し、一分一秒を争う現場での的確な救助に繋げてまいります。
社会のデジタル化は、その利便性の裏側で、常にサイバー攻撃のリスクを抱えています。特に、中小企業が有する独自の技術や情報はイノベーションの源泉であり、これを守ることは、東京の持続的な発展に不可欠であります。専門家派遣や機器類の導入に加え、新たにセキュリティ対策の中心となる人材育成を支援し、企業の自律的・継続的な対処能力の底上げを図ってまいります。
不確実性が高まる社会にあって、都民に寄り添い、期待に応えていくためには、機動的で実行力ある都庁へと変革を遂げなければなりません。改革の実践を通じて、都政を変える。この「シン・トセイ」の理念を職員一人ひとりが共有し、構造改革を前へ前へと進めてまいります。
最優先は、いかに素早く事業の効果を届けるか。早期着手に向けて、あらゆるプロセスをつぶさに検証し、手続きの短縮化や年度単位に縛られない執行など、事業の前倒しを図るための標準モデルを構築いたします。これを全庁に徹底をし、施策展開のスピードをさらに加速させます。
そして、改革の鍵を握るのは、高度な専門性を有するデジタル人材であります。先週からスタートした「東京デジタルアカデミー」では、都庁のみならず、都内自治体職員のデジタルリテラシーの底上げも図ってまいります。さらには、世界の先進事例に学ぶなど、質・量ともに人材の充実を図り、区市町村も含めた東京全体のDX推進に繋げてまいります。
都が提供するサービスは、その情報を必要とする人に届いてこそ、真価を発揮いたします。今、都民が何を知りたいかをキャッチし、正しい情報をタイムリーに伝えることが大切です。4月より、広報・広聴機能を集約し、全庁の広報をマネジメントする体制を整えました。時機を捉えた戦略的なプロモーションや都民との双方向のコミュニケーション機能を強化するほか、海外にも東京の魅力を積極的に発信してまいります。真に必要とする情報をプッシュ型で届けるデジタルプラットフォーム「ZERO」など新たな取組も始めております。「伝える広報」から「伝わる広報」へ、都の発信のあり方を見直して、都政への共感を育んでまいります。
さらに、この夏、都の広報の司令塔として都庁全体をマネジメントし、都民をはじめ国内外の皆様に一層わかりやすく情報をお届けするべく、より戦略的に広報を展開する体制を強化してまいります。
7月1日、都立・公社病院を一体的に地方独立行政法人化し、「東京都立病院機構」を設立いたします。新たな都立病院として、安定的かつ柔軟な人材確保など機動的な病院運営を行い、行政的医療を充実させてまいります。加えて、地域医療の充実にも着実に貢献し、将来にわたって都民の皆様の生命と健康を守り続けてまいります。
さて、私が知事に就任した2016年、8466人を数えた待機児童も、本年4月時点で300人程度に減少する見込みであります。子育て世帯の不安を取り除き、子供たちの健やかな成長に向け、最優先で進めてきた取組が確実に実を結んでおります。子供の笑顔は、未来への希望そのものであります。新たに「子供政策連携室」を核とした強力な推進体制を整えました。タテ・ヨコ・ナナメ、組織の垣根を飛び越え、ヤングケアラーなど今日的な課題やモデルとなるような新たな試みにも挑戦いたします。そして、「チルドレンファースト」の視点から、年度内を目途に、未来を切り拓いていくための先進的な取組や横断的な取組を体系的に取りまとめ、施策を強力に推進してまいります。
子供の声をしっかりと聞き、気持ちに寄り添うことは何よりも大切なことです。先般公開した「こどもホームページ」には、子供たちから募った自由な発想が溢れんばかりに詰め込まれています。都政の最初の入口として親しみやすいポータルサイトとなるようバージョンアップを重ねてまいります。さらには、「こども記者」として番組制作を体験したり、易しい表現で取組を紹介する「広報東京都こども版」を発行するなど、都政への関心を育み、子供の柔軟な発想や瑞々しい感性を施策展開に繋げてまいります。
働くママ・パパには、何よりも愛しい我が子と一緒に過ごす時間を増やしてほしい。今月、企業のトップや著名人などが一堂に会するサミットを開催し、誰もが子供との時間を大切にできる社会の実現に向けまして、企業の取組を後押しをしながら、気運を盛り上げてまいります。そもそも、「休む」ことを連想させる「育休」という言葉自体を変えなければなりません。そこで、イメージを一新する愛称を皆様から募集いたしましたところ、8800件を超える大変大きな反響をいただきました。誠にありがとうございます。いただいたご意見、そしてご提案を基に、今月中にネーミングを決定をいたしまして、子供を「育む」ための活動時間へと、社会のマインドチェンジを促してまいります。
子供の可能性を伸ばし、時代を切り拓く力を育てていくことは、未来への投資そのものであります。この4月、立川では都立高校で初となる理数科の新入生を迎えたほか、都立大でも、データサイエンスの履修コースが新たにスタートいたしました。とりわけ、若いうちから世界に目を開くことも大切です。先日の海外出張では、アラブ首長国連邦の高校生たちとの国際交流に向け、その懸け橋を築きました。異なる社会・文化を実際に肌で感じることは、世界で活躍するために欠かせないグローバルな素養を育みます。今回生まれた繋がりを、若者同士の具体の交流に結び付けていきたいと思います。
誰一人取り残さないという信念の下、子供たちが抱える様々な悩みに寄り添い、その解決に全力で挑みます。この4月、都内で6番目となるチャレンジスクールを足立区に開校いたしました。多様な進路を描けるこの学校で、もう一度、学ぶ楽しさを知ってもらいたいと思います。
また、過去最多を更新する児童虐待から、子供たちを守るための対策は急務であります。都立児童相談所の練馬区への設置に加え、多摩地域につきましても、具体化に向けて検討を深めます。児童福祉司等の人材確保を進め、トレーニングセンターも新設してスキルアップを図るなど、大幅に体制も強化しました。「子供を守る」、その強い想いを胸に、困難に直面する子供たちに確実に支援を届けられるよう、力を尽くしてまいります。
グローバルな都市間競争は激しさを増すばかりです。宮坂副知事が視察を行ったUAEのドバイは、まるでSF映画の中に飛び込んだようなイノベーティブな環境が、意欲に溢れるチャレンジャーたちを世界中から惹きつけています。世界のダイナミズムの渦に飛び込んでみる。さもなければ気づかぬ内に遥か後方に取り残されてしまうでしょう。強い危機感の下、海の向こうのライバルたちに学び、切磋琢磨しながら、東京を世界から選ばれる都市へと進化させてまいります。
新たな価値を生み続ける魅力的なまちへと、東京のバージョンアップを推し進めてまいります。最先端の都市モデルを誕生させる「東京ベイeSGプロジェクト」は、この夏、新たな一歩を踏み出します。広大な中央防波堤エリアを最新テクノロジーの実装フィールドとして開放し、様々な都市課題の解決に繋げてまいります。また、早期に5G環境を整備してきた西新宿では、多様な主体の連携を促すコンソーシアムを立ち上げ、これを基盤に、利便性の高いサービスを継続的に生み出す魅力的なエコシステムを構築いたします。
かの渋沢栄一翁らの尽力により、国民の献金・献木により造営された神宮外苑。このたびの再整備に当たりましては、都民に開かれた庭として再生させることが、創建時に託された人々の想いを未来へと継承させることに繋がるはずです。そこで、開発事業者には、幅広い都民参画の取組を検討するよう要請いたしました。多くの都民がスポーツに親しみ、賑わい溢れる緑豊かなまちへと発展させてまいります。
新たなカルチャーを生み出すまち・渋谷におきまして、デジタルテクノロジーを融合させたアートとデザインの創作活動の拠点を整備いたします。子供たちが先端アートに出会う場、世界を魅了する次世代アーティストを育てる場とするなど、デジタルの力で人々の創造性を掻き立て、東京のまちに新たな価値を創出してまいります。
ファッションデザイナーを志す学生を対象としたコンクールの募集も来月から開始をいたします。ビジネス展開に向けた支援も提供するなど、若き才能が世界に羽ばたく後押しをして、東京で研ぎ澄まされた感性を国内外に発信してまいります。
東京が誇る「食」の技と味わいで世界を堪能させたい。先月には、「春の食フェスティバル」を開催をいたしまして、バラエティに富んだ数々の料理を多くの方々にお楽しみいただきました。この秋には、旬の食材をふんだんに取り揃えた「味わいフェスタ」も予定をいたしておりまして、多彩な「食」の魅力を広くアピールしてまいります。
また、最近では、若い世代を中心にバーチャル空間でライブイベントを行ったり、ユーザー同士の交流を楽しんだりする動きが広がり始めています。こうした時代の流れを捉え、デジタル空間を活用した魅力発信を展開をして、国内外に東京のファンを増やしてまいります。
世界中に勇気と感動を届けた東京2020大会。その総括となる最終報告が行われた先日のIOC総会では、コロナ禍におきまして世界との連帯を示し、史上最も準備が整った大会として、様々な点から高い評価をいただきました。あの熱い夏からちょうど1年となる節目を捉え、大会の記憶を呼び起こし、都民・国民の皆様に感謝をお伝えする。そのため、7月から10月を大会1周年記念期間として、国立競技場のセレモニーを皮切りに、パラスポーツのエキシビションや東京レガシーハーフマラソンなど、様々なイベントを開催いたします。障がい者をはじめ来場が難しい方にも楽しんでいただけるよう、デジタル技術を活用するなど誰もがスポーツに親しめる工夫も凝らします。
また、大会を象徴する新競技の新たな拠点「有明アーバンスポーツパーク(仮称)」につきましては、今月、その事業の実施に係る方針を策定して、民間の活力を存分に活かした整備を進めます。11月には、レインボーブリッジを駆け抜けるサイクルイベントを開催するほか、大会で実際にロードレース会場となった多摩地域での計画も進めるなど、レガシーを確実に未来へと繋げ、スポーツが日常に溶け込んだ「スポーツフィールド・東京」を実現してまいります。
さらには、2025年に開催が予定されている世界陸上とデフリンピック。先日、東京は世界陸上の開催地を調査するワールドアスレティックス評価パネルの訪問を受けまして、東京の開催能力と魅力を直接アピールいたしました。また、デフリンピックにつきましても、先月のブラジル大会に職員を派遣し、大会運営をつぶさに調査してまいりました。いずれも多くの選手たちが来日する極めて大規模な国際大会であります。東京で開催することになりますと、国の全面的な支援はもとより、幅広い関係者が共に力を合わせることが不可欠であります。都としてもそれぞれの大会の招致主体たる団体を、国や関係者と密に連携しながら積極的に応援してまいります。
「多様性と調和」。東京2020大会で掲げたこのビジョンを具現化する取組も着実に進め、さらなる成熟都市へと導きます。
共生社会実現への象徴ともなる「パートナーシップ宣誓制度」の創設に向けて、今般、いわゆる人権尊重条例の改正案を提案いたしました。都道府県として初めて条例に根拠を持たせ、その実行性を担保するだけでなく、区市町村や民間とも連携しながら、当事者の心に寄り添ったきめ細かなサービスを展開いたします。まずは、宣誓された性的マイノリティの方々が都営住宅等に新たに入居が可能となるよう規定を整えるほか、順次、他の事業にも広げてまいります。
さらに、意思決定への女性参画を促進し、施策に多様な意見を反映するため、都の審議会等にもクオータ制を導入いたします。そのための条例改正案も本定例会に提案をいたしております。
芸術文化も、多様性の輪を広げるための重要なチャネルです。今月28日から10日間にわたり、共生社会実現のための、アジア初となる総合国際カンファレンスを開催いたします。年代や性別、障がいの有無など、あらゆる違いを受け入れる芸術文化の力で世界を一つに繋げ、ダイバーシティ・インクルージョンが根付いた都市に進化させてまいります。
世界が営々と築き上げてきた国際秩序を、一気に揺るがすロシアのウクライナ侵攻。力による一方的な現状変更を許せば、地球上のあらゆる地域がたちまち不安定化する、そうした危機感が国際社会に広がっています。中立を貫いてきた北欧2国がNATO加盟に乗り出し、また、アジア・太平洋地域においても、日米豪印4カ国による「QUAD」が本格的に動き始めるなど、国家の安全や経済連携を巡り、世界の枠組みも大きく姿を変えようとしております。
年々脅威を増す気候変動や道半ばの新型コロナウイルスとの闘い、そして、激変する国際情勢。我が国を取り巻く環境が様変わりし、国防のみならず、エネルギーや食料、経済の安全保障など国の根幹に関わる複合的な危機が一気に押し寄せています。戦後、平和と安定を享受してきた日本は、今、最大の試練を迎えていると言っても決して大袈裟ではないでしょう。
忘れてならないのは、これが首都・東京の安全にも直結する、私たち自身の問題でもあるということです。時代の大きな節目に立つ私たちの行動が、東京、そして日本の未来を決定づけます。かつて、オイルショックが省エネ技術の革新を促し社会を大きく飛躍させたように、直面する困難を乗り越え、東京をさらに強靭で豊かな都市へと進化させなければなりません。「TIME TO ACT」、今こそ行動する時です。
その鍵を握るのは「人」です。挑戦する意欲に溢れる人材、未来を切り拓く夢を持つ人材、そうした多彩な人材の熱量が都市の発展の強力なエンジンとなるのであります。これをフル回転させ、危機を乗り越えた先に「成長」と「成熟」が両立した、「人」が輝く明るい未来を必ずや実現する。その決意の下、「東京大改革」を全速力で前へと進めてまいります。都議会の皆様、都民の皆様のご理解、ご協力、お願いをいたします。
なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案1件、条例案44件など、合わせて62件の議案を提案いたしております。よろしくご審議のほど、お願いを申し上げます。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。
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