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令和5年(2023年)2月15日更新

令和5年第一回都議会定例会 知事施政方針表明

令和5年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。

1 はじめに

先日、トルコ南東部を震源とする大地震が発生し、甚大な被害が生じています。犠牲になられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。都としては、速やかに国際緊急援助隊として警視庁及び東京消防庁の職員を派遣いたしました。今後も、現地のニーズに応じて、必要な支援を行ってまいります。
折しも、多くの尊い命が失われた関東大震災から今年で100年の節目を迎えます。街路・橋梁・河川など今日の東京の骨格、これは第7代東京市長も務めた後藤新平による帝都復興計画を基に形作られたものであります。今を生きる私たちの時代におきましても、必要とされるのは、都民の命を守り抜くという揺らぐことのない信念であり、先を見据えた戦略に他なりません。先人たちが築き上げた基盤の上に、より豊かで光り輝く東京を創り上げてまいります。
気候変動や感染症、エネルギー不安。地球規模で引き起こされる問題も山積しています。今こそ、世界が知恵を寄せ合い、切磋琢磨しながら立ち向かわなければなりません。国内に目を向けますと、厳しい少子化の現実があります。いつの時代も未来を切り拓くのは「人」。少子化は紛れもなく、この国の存亡に関わる国家的課題です。だからこそ、日本の首都である東京がリーダーシップを取り、発想の転換を導いていかなければなりません。誰もがいきいきと輝き、「成長」と「成熟」が両立した明るい未来に向けて、東京大改革に邁進してまいります。

令和5年度予算案

こうした想いで編成した令和5年度予算案は、子供への投資、安全・安心、美しい地球を未来に残す取組など、都民目線に立った政策に重点を置き、一般会計の当初予算として過去最大となる8兆410億円を計上いたしました。少子化に歯止めをかけるための施策には昨年度を2000億円上回る1.6兆円を計上するなど、「未来への投資」に大胆に財源を振り向ける一方、事業の見直しを徹底して1141億円の財源確保も実現しています。加えて、最終補正予算案では新たに3つの基金を創設しました。健全な財政を維持しながら中長期的な視点に立った戦略的な施策を展開してまいります。

「『未来の東京』戦略」のバージョンアップと都政の構造改革

先月、都政の羅針盤となる「『未来の東京』戦略」をバージョンアップしました。我が国の厳しい現実にも真正面から向き合いながら、目指すべき未来の姿を見据えて、今、東京が為すべきことは何か、東京にできることは何かを徹底的に考え、政策を磨き上げていきます。戦略に推進力を与える都政の構造改革もさらなる高みを目指します。キーワードはオープン&フラット。デジタルガバメントへの歩みを加速し、外部の新しい発想も取り込みます。都庁組織を一段と活性化させることで、QOS、クオリティ・オブ・サービスを一層高めてまいります。
そして、都政を支える組織体制も、社会状況や都民ニーズの変化に的確に対応するべく強化いたします。都民の生命と健康を守り、福祉・保健・医療サービスを将来に渡って盤石なものにするため「福祉保健局」を廃止し、新たに「福祉局」と「保健医療局」を設置するほか、「スタートアップ・国際金融都市戦略室」を新設し、東京の成長と社会課題の解決を主導します。このたびの予算、戦略、体制を三位一体として、東京大改革を爆速で推し進めてまいります。

2 チルドレンファーストの社会を創り上げる

これより、主要な政策について申し述べます。

望む人誰もが産み育てやすい社会

次の世代を担う子供たちが減り続けています。我が国は、子供を持ちたいという一人ひとりの想いに真剣に向き合わなければなりません。自己実現や幸せの追求という誰もが持つ願いを叶えられるようにしていく。こうした決意で、親の所得に因らず0歳から18歳までの全ての子供たちに月額5千円を切れ目なく給付することを決断しました。これは「子供を産み育てたい」、その願いを都が本気で応援していくというメッセージであります。第二子の0歳から2歳までの保育料を無償化するほか、都立大学の授業料の実質無償化に向けた準備を進めるなど、子育てに係る経済負担の軽減を図ってまいります。
もとより少子化は、課題が複雑に絡み合い、一つ手立てを講じれば万事が解決するものではありません。だからこそ、知事就任以来、待機児童対策をはじめ、出会いから結婚、妊娠・出産、子供の健やかな成長に至るまで、シームレスな支援を率先して行ってきたのであります。この手を緩めることなく、取組をさらに充実強化してまいります。
少子化の要因の一つと言われるのが未婚化・晩婚化です。私は、国会議員の頃から婚活支援に力を注いでおり、都政におきましても、結婚に向けた気運醸成に邁進してきました。来年度より、都有施設を活用した出会いの場の創出や、これから結婚生活を始める方々向けの住まいの安定的な確保など、一歩を踏み出そうとする人々の背中をしっかりと後押しをいたします。
子育ての経験は、仕事をはじめ様々な場面で必ず大きな糧となるはずです。二者択一ではなく、育児に仕事に共に輝ける社会にしていかなければなりません。より多くの男性社員が育業できるように環境整備に取り組む企業を応援するなど、育業の精神を社会に浸透させてまいります。
また、女性の社会進出が進むにつれて、健康な女性が将来の妊娠に備えて行う卵子凍結への関心が高まっています。この社会的適応と呼ばれる卵子凍結について、今後の本格的な支援に向け、都の調査に協力した方への凍結費用の助成等を開始します。自分らしく人生を送るために、こうした取組を活用しながら、ライフプランの選択肢を広げていってほしいと思います。
一人ひとりの豊かな人生を応援する。これは東京の未来への投資そのものであります。

子供の笑顔に溢れた社会

子供がのびのび成長し、自らが持つ力を育める環境を整えることは、今を生きる私たちの責務です。先月取りまとめた「こども未来アクション」には、子供目線で練り上げた子供のための政策が詰まっています。スピード感を持って実践に移し、チルドレンファーストの社会を築き上げてまいります。

子供の笑顔のために

好奇心旺盛な子供たちが、発達の早い段階から、できるだけたくさんの学びや経験の機会に触れることは大切です。親の就労の有無に関わらず定期的に保育所等で受け入れ、他者との関わりを通じて健やかに成長できる仕組みを創出します。また、幼稚園・保育所などの垣根を越えた質の高い学びのプログラムを開発し、自然や芸術等の多彩で豊かな経験ができる機会も充実します。そして、子供は遊びを通じて、友達同士で関わり合い、実社会に必要な力を身につけていくものです。子供の意見を取り入れながら地域資源を活かした遊び場づくりに取り組む区市町村を支援するなど、子供の笑顔が生まれる環境を整えてまいります。

全ての子供の健やかな成長に向けて

全ての子供が健やかに成長できるよう、一人ひとりに寄り添った支援を展開します。
まずは、深刻化する児童虐待についてです。新たに多摩地域の3か所に児童相談所を新設し、体制の抜本的な再編・強化を図ります。併せて、児童福祉司等の人材の確保・育成の強化や、サテライトオフィスの設置等を通じて区市町村との連携を深めることで、緊急性を要する事案にも切れ目なく対応していきます。
医療的ケア児に向けましては、受入枠を広げる施設への支援や、新たな法人開拓を推進するなど、ショートステイでの受入れを拡大します。多岐に渡る支援を円滑に調整するコーディネーターの活動も都独自にサポートするとともに、訪問看護師の実践的な研修を充実するなど、支援の担い手となる人材もしっかりと育て上げます。
その数が一貫して増加傾向にある不登校の児童・生徒たちに対しては、未然防止に向けた取組だけでなく、多様な教育機会を確保し、その可能性を伸ばしていくことも必要です。新たに、学校内に別室での学習指導を行う支援員を配置するほか、オンライン上の仮想空間に居場所を創出する取組の輪も拡大します。併せて、調査を通じて、フリースクール等に通う子供たちを取り巻く環境や課題を深掘りし、今後の効果的な施策の立案へと繋げていきます。

グローバルな環境で活躍できる力を育てる

続いて、グローバルな環境で活躍できる力を育む取組についてです。現代社会では、国際語である英語を使いこなし、国の垣根を越えた交流が従来にも増して求められています。東京と言えば英語、「英語力の東京」という看板が立つほどに、抜本的に施策を強化してまいります。
まず、小学校において、ネイティブの英語助手が一週間、終日在校することで、日常生活の中で生きた英語に集中的に触れられる機会を創出します。また、英語スピーキングテストにつきましては、対象を中学1年・2年生まで拡大し、学年を重ねる中で継続的に学ぶ意欲の向上に繋げます。高校生を対象とした英語プレゼンテーションのコンテストも開催し、話す力のみならず、聞き手の心を掴む豊かな表現力を磨きます。さらに、青海の英語学習施設TGGで新たに展開する宿泊プログラムでは、まさに「英語漬け」の環境で揉まれながら、確かな語学力をものにしてほしいと思います。こうした取組に加え、様々な国の高校生を招いて国際交流を深めるとともに、3か年で1000人以上の都立高校生を海外へ派遣するなど、異文化に触れる機会を幅広く充実させます。
また、都立大学では、理学部において秋入学制度を導入し、令和6年10月から新たな学生を迎えます。グローバルスタンダードな教育環境の中、優秀な留学生との切磋琢磨を通じて世界で勝負できる力を育ててまいります。

3 「人」の力を輝かせる一人ひとりが主役の都市

子供はもとより、年齢、性別、障がいの有無などに関わらず、一人ひとりが主役になる社会を築き上げます。

女性の活躍を全力で応援

全ての女性が、持てる力を存分に発揮し、自分らしく輝いてほしい。そのために、東京は変わり続けなければなりません。例えば、女性特有の健康課題についての社会の認識は、まだまだ十分ではないと思います。企業内における理解促進を図り働きやすい職場の環境づくりを進めるほか、テクノロジーで解決するフェムテックという新しい成長の芽も育て上げていきます。さらには、いわゆる「年収の壁」、「ガラスの天井」といった女性の活躍を阻む様々なバリアに立ち向かうべく、新たに設置する有識者会議において社会の仕組みから根本的な議論を行い、施策の抜本強化に繋げます。都の推進体制も大幅に強化し、大企業の職場も含め、様々な場で女性が輝けるよう後押ししてまいります。

違いを認め、多様性が力を生む

互いの違いを尊重し、誰もが活躍できる多様性に溢れた社会を築く。その想いで、全国で初めて条例に基づく制度を創設し、普及を進めているソーシャルファームは、数多くの障がい者の雇用を生み出しています。様々な理由で就労に困難を抱える方々の自立への思いを、社会全体でしっかりと後押ししていかなければなりません。例えば、発達障がいのある方々の中には、類まれな集中力や分析力を有している方もいます。そうした多様な特性を尊重し、イノベーションが期待されるIT分野などにおいて、大いに発揮できるようにしていく。ニューロダイバーシティと呼ばれるこのうねりを大きなものにし、トライアル雇用などを通じて、障がい者の活躍の場を広げてまいります。

高齢者がいきいき暮らせる社会

高齢者がいつまでもいきいきと暮らせる成熟都市に向け、社会の基盤づくりを進めることが重要です。
身体機能などの客観的データに基づき効果的なケアを提供する事業者を支援するなど、いわゆる科学的介護の導入を促し、介護現場のDXを促進し、働きやすい職場環境を実現するなど、介護人材の確保にも繋げてまいります。また、高齢者もデジタルツールを上手に活用することで、自らの生活をより便利で快適にすることができます。広く都民から募集したスマホサポーターの協力も得ながら、身近で気軽に相談・交流ができる場を新たに設けるなど、スマホに苦手意識を持つ高齢者をきめ細かくサポートします。住まいの確保も豊かな暮らしの大前提です。東京ささエール住宅の支援策をバージョンアップし、高齢の方など入居に配慮が必要な方が安心して利用できる賃貸住宅の環境整備を進めます。
住み慣れた地域で健康に暮らしていくためには、医療の充実が欠かせません。要介護の最も大きな原因となる循環器病への対策として、新たに「心不全サポート病院」を設置し、地域における医療・介護の連携体制を強化します。また、かかりつけ医と往診医療機関との連携を深めながら、オンライン診療の仕組みの構築や24時間診療体制の実現を図るなど、増大する在宅医療のニーズにもしっかりと対応してまいります。

スポーツの力で全ての人が輝く

スポーツの力を通じて、全ての人が輝ける環境を整備します。この4月から東京アクアティクスセンターがオープンし、東京2020大会を機に整備された新規恒久施設が全て開業いたします。来月には、パラスポーツの競技力を向上する拠点として、味の素スタジアム内にパラスポーツトレーニングセンターも開業いたします。多彩に整備された各施設の特性を活かし、日常の中にスポーツが溶け込む豊かな社会へと繋げていきます。さらに、2025年の世界陸上とデフリンピックの開催を機に共生社会を一層浸透させることは言うまでもありません。手話のできる人材の育成、障害理解教育の充実、さらには、デジタルを活用した新しいコミュニケーション技術の普及促進など、様々な取組を通じて、誰にでもやさしいまちを築き上げてまいります。
さて、先日、東京2020大会に関して組織委員会が発注した業務の契約を巡り、組織委員会の元幹部が逮捕されました。このような事態が発生したことは誠に遺憾であります。清算法人には、今後とも全面的に捜査に協力するよう伝えました。都といたしましては、組織委員会のガバナンスや運営状況について、既に外部有識者を中心に調査を進めているところであります。かねて申し上げているとおり、国際的な大会におきましても最も大切なのは都民・国民からの信頼に他なりません。2025年に向けては、昨年末に策定した都の関与のガイドラインも踏まえながら、透明で公正な大会となるよう準備を進めてまいります。

4 全ての活動の基盤、安全・安心でサステナブルな都市

続いては、全ての活動の基盤となる安全・安心であります。いついかなる時も揺るがないサステナブルな都市の実現に向け、将来を見据えて練り上げた政策を確実に実行に移します。

新型コロナウイルス対策

はじめに、新型コロナウイルス対策についてであります。都民・事業者・医療従事者の皆様と共に、この見えざる敵との闘いを続けて3年が経過しました。海外の専門家からも評価される「東京モデル」は、まさに皆様の尽力の賜物であります。改めてこれまでのご協力に深く感謝を申し上げます。
先般、国から、5月8日より新型コロナの扱いを季節性インフルエンザ並みの「5類」へ変更するとの方針が示されました。新たなステージへの移行に伴い、都民の皆様や医療現場において混乱を招かないことが何よりも大切です。国に対しては、段階的な移行に向け、現場の意見を十分に踏まえ具体的な方針を示すよう改めて要望いたしました。
都は、ハイリスクの方を引き続きしっかりと守り抜くとともに、感染拡大時に機動的に対応できる体制を維持していく。さらには、現在、コロナ患者を受け入れていない医療機関をバックアップし、コロナとの共生基盤を構築する。こうした3つの観点から施策を進めます。そのために要する経費を計上した補正予算案も本定例会に提案いたしております。
都民・事業者の皆様には、引き続き、換気、3密の回避、手洗い等の基本的な感染防止対策をお願いいたします。マスクの着用は国の考え方に基づいた上で、都としても個人の主体的な判断を尊重することといたします。重症化リスクの高い方を守るために着用が効果的な場面等について分かりやすく周知し、こうした場面等では着用を推奨します。都民の命と健康を最優先に、サステナブル・リカバリー、活気溢れる東京を確かなものにする。引き続き、皆様のご協力のほどよろしくお願いいたします。

東京をさらに強靭な都市へと生まれ変わらせる

次の100年も都民の安全・安心を確保する。この強い想いと覚悟を胸に、「TOKYO強靭化プロジェクト」を動かします。今後10年間の事業規模を6兆円と見積もり、新たに設置する基金も活用しながら、継続的かつスピード感を持って取組を前へと進めてまいります。

「倒れない・燃えない・助かる」まちづくりの推進

まず、震災対策です。今後30年以内に70%の確率で発生するとされる首都直下地震。昨年公表した被害想定の結果も踏まえ、不断の備えを固めます。これまでの成果により、既に約9割の住宅で耐震化が完了しました。今後、さらなる被害軽減に向け、平成12年以前に建築された比較的耐震性の低い約20万戸の木造住宅を対象に、強度を増す改修を後押しいたします。そして、阪神・淡路大震災での私自身の経験をもとに、急ぎ整備を進めるのが無電柱化であります。既にセンター・コア・エリアの都道の無電柱化はほぼ100%達成しましたが、来年度は、木密地域の私道や民間宅地開発における取組をさらに強化いたします。島しょ地域では、地域の特性を考慮した整備手法で工期短縮を図り、先行して進める利島・御蔵島の「島内完全無電柱化」を加速します。併せて、木密地域の不燃化のさらなるスピードアップや、発災時の水上輸送を可能にする防災船を建造するなど、大地震があっても「倒れない・燃えない・助かる」まちづくりを推進いたします。

風水害への備えを固める

気候変動の影響により、数十年に一度と言われる豪雨災害が世界各地で発生しています。風水害への備えは待ったなしです。そこで、総容量約150万立米の調節池の整備を加速するため、2030年度までとしていた新規事業化の目標を前倒しすることといたしまして、来年度、早速、仙川第一調節池(仮称)を事業化いたします。また、今後の海面水位の上昇等を踏まえました防潮堤の段階的な嵩上げや、市町村下水道の浸水・震災対策の支援も行っていきます。東部低地帯の高台まちづくりも加速するべく、高規格堤防の整備促進に向けた新たな仕組みも視野に入れ、国とも連携しながら実効性の高い手法の検討を進めるなど、着実に備えを固めてまいります。

都民の防災意識を高める

「自助・共助・公助」。これらが三位一体で機能することで、東京の強靭化は初めてその真価を発揮します。関東大震災100年の節目を契機として、都民一人ひとりの防災意識を高めるムーブメントを起こしてまいります。まずは、都民に親しまれている「東京防災」、そして女性の視点を取り入れた「東京くらし防災」を、この機に全面的にリニューアルします。地域の防災の要となる町会・自治会には自主点検を促し、不足する備えを都が支援します。これに併せ、町会・自治会の連合会と連携しながら、震災時の出火防止に効果的な感震ブレーカーを木密地域の世帯に無償配布いたします。また、消防団の活動に不可欠な資機材の充実を図るとともに、被災地域への視察を踏まえた効果的な訓練を推進し、地域の防災力の向上に繋げます。さらには、高まるミサイルの脅威から都民を守るため、そのリスクを明らかにし、避難施設であるシェルターに必要な要件や設備等について技術的調査を行います。

脱炭素化とエネルギー安定確保の両立

続いては、世界がしのぎを削る脱炭素社会に向けた施策展開であります。都は先進的な取組で、気候危機の回避とエネルギーの安定確保との両立に挑み、持続可能な都市の実現へと繋げてまいります。

改正環境確保条例の施行に向けた準備

令和7年4月より、新築中小建物への太陽光発電設備の設置等を大手住宅供給事業者などに義務付ける全国で初めての制度がスタートします。それまでの2年間は、その後の制度運用を左右する大切な時間です。折しも、エネルギー価格の高騰等も相まって、家計にも地球にも優しい住宅への関心は高まるばかりです。東京のグリーンシフトを加速する好機としまして、都民・事業者の理解と共感を育んでまいります。新制度に向けて先行的に取り組むハウスメーカー等への支援を強化するほか、東京の住宅事情を踏まえ、狭小な屋根にも適した小型・軽量パネルの設置を後押しします。持続可能な視点で忘れてはならない住宅用パネルのリサイクルルートも構築します。さらに、都庁も「隗より始めよ」で、都の施設においてパネル設備を倍増。蓄電・充電設備も充実させて、都民・事業者・都が一体となってこの太陽光発電ムーブメントを加速します。

中小企業での省エネ推進

次に、省エネです。今や脱炭素経営という言葉が定着する中、「減らす」「創る」「蓄める」、このHTTは中小企業が成長する上で欠かせない戦略となります。電力使用量を見える化するエネルギー管理システムの導入や、高効率な空調設備への更新などを支援します。こうした自らが取り組む省エネ対策に加え、中小企業の排出量取引を活性化し、産業全体のCO2削減に繋げていく。その第一歩として、国内での排出量取引の一つである「Jクレジット制度」の利用を後押しすることで、中小企業の脱炭素化をさらに進めます。

ZEVの普及に向けて

世界ではEVの開発競争が激しさを増しております。これに後れを取ることなく、ZEVの普及を強力に推し進めます。2024年春のフォーミュラEの開催を捉え、気運醸成のイベントを戦略的に展開し、ZEVに触れてみたい、この機に乗り換えてみよう、そうした多くの人々の興味を惹きつけてまいります。これを後押しするように、蓄電池としても活用できるEV車両購入へのインセンティブを高めて市場の活性化に繋げていきます。併せて、充電設備の導入支援を抜本的に強化するほか、芝公園や代官山付近の都道において、パーキング・チケットの券売機と急速充電器を併設する全国初の取組も進めます。車両の普及と充電インフラの整備を両輪で加速させることで、日常的なモビリティとして浸透させてまいります。

水素社会の実現

国際競争力を高めるためにも、重要となるのが水素技術です。とりわけ、製造段階からCO2を一切排出しないグリーン水素は、まさに持続可能な社会を実現する切り札です。いち早く都内での製造・利用を開始するべく、事業者への支援はもとより、都自らも施設整備に向けて動き出していきます。
水素社会を実現するためには、これまでのモビリティのみならず、まちづくりの観点から導入事例を面的に拡大する必要があります。東京港ではカーボンニュートラルポートの形成に向け、水素エネルギーを活用した荷役機械への転換に取り組む事業者を強力に後押しするほか、大井ふ頭において先行プロジェクトに着手します。また、臨海副都心では、山梨県から供給を受けたグリーン水素をもとに、全国で初めて水素ボイラーによる地域熱供給を開始します。こうした取組によって拡大が見込まれる水素需要にも的確に対応するため、パイプラインを含めた大規模な水素供給ネットワークの構築を目指し、関係自治体と意見交換を行ってまいります。

サステナブルファイナンスの推進

脱炭素社会の実現は、金融の力なくして達成されません。先日訪れたロンドンでは、多くの金融関係者と直接意見を交わし、今後も互いの連携を強化しながら、投資環境を活性化させていくことが重要だとの認識で一致いたしました。都は、全国に先駆けて「東京グリーンボンド」を発行するなど、サステナブルファイナンスを先導しています。これをさらに推し進めるため、来年度は、再エネ発電や蓄電池のインフラ投資を加速するほか、サプライチェーンにおける中小企業のCO2削減の取組をファンドの力で後押しいたします。脱炭素を導く金融市場の流れを拡大し、世界をリードする国際金融都市の実現に繋げます。

5 ポテンシャルを引き出し、世界中を惹きつける東京へ

世界有数のビジネス拠点、個性溢れる文化、さらには豊かな自然環境まで、多種多様な顔を持つ東京のポテンシャルを引き出し、世界中を惹きつける都市を実現してまいります。

スタートアップの躍進こそ、成長のドライバー

「日本資本主義の父」として、いくつもの企業の設立に関わった渋沢栄一は、夢がなくては幸福を掴めないと説いたとされています。夢を抱く挑戦者を応援し、東京をより豊かで活気溢れる都市にしたい。その想いで、新たな成長のドライバーとなるスタートアップの挑戦を全力で後押ししていきます。都庁は本気です。先ほど申し上げました「スタートアップ・国際金融都市戦略室」を核に、資金調達から事業展開に至るまで、あらゆるステージをワンチームでサポートし、世界一スタートアップフレンドリーな都市を目指してまいります。
要となるのは、チャレンジャーたちが集う場づくりです。東京におけるイノベーションの一大拠点「Tokyo Innovation Base」を整備します。挑戦に伴うあらゆる困りごとをワンストップで解決し、様々な民間支援施設とも連携しながら、東京発のスタートアップを次々と送り出してまいります。
世界を見据えた挑戦と飛躍を大胆に後押しする投資にも取り組みます。ビジネスノウハウに優れた海外ベンチャーキャピタルやアクセラレータを誘致するほか、活動初期の資金調達を支援する新たな仕組みを構築するなど、スタートアップの成長の基盤を固めます。また、大規模なファンドを立ち上げ、多彩な知の集積から生まれる大学発スタートアップ等を後押しをして、イノベーションの裾野を広げていきます。
そして、都が、こうして生み出される優れたサービスを最初に利用するファーストカスタマーとなってまいります。スタートアップの信頼性を一気に引き上げ、さらには、協働によるオープンイノベーションを巻き起こして、様々な都市課題の解決に結び付けていきます。公共調達に参加しやすい仕組みづくりを進めるほか、様々な場面で協働の機会を増やすなど、スタートアップが活躍できる舞台を格段に広げます。

GX/DXを加速し、産業構造の転換を促す

革新を生み出すデジタルの力を東京の隅々まで行き渡らせていく。旗振り役となる都庁が、住民サービスの担い手である区市町村と連携して、オール東京でデジタルガバメントを推進していきます。これを強力に推し進め、官民共創によるイノベーションのプラットフォームとなるのが「GovTech東京」であり、本年9月のサービス開始を目指して準備を進めてまいります。
デジタル分野とともに競争が過熱するのが、クリーンエネルギーへの転換を成長の突破口とするGXです。この新たな分野への産業シフトが急がれます。事業転換を促す技術開発の支援をはじめ、GXに向けた経営戦略の策定、知的財産の積極活用など、この機にチャンスを掴もうとする中小企業の挑戦を力強くサポートしていきます。
産業構造の転換に的確に対応できる人材確保も重要です。女性、若者、シニア世代など、全世代を対象とした2万人規模のリスキリングプロジェクトを展開し、成長が期待される産業分野で大いに力を発揮していただきたいと思います。

世界を惹きつける魅力的な都市

新しい観光を創り上げる

これまでにない新しい東京の観光を創り上げ、世界を惹きつける磁力を高めていく。コロナとの共存に向けた歩みが本格化する中、一人でも多くの方に、東京の素晴らしさを堪能してもらおうではありませんか。
その鍵の一つがメタバースです。デジタル上に再現した街並みで、様々なコンテンツを楽しみながら、時間・空間を超えた東京旅行を体感してもらう。あるいは、都内のMICE開催に合わせて、バーチャル会場を新たに創り上げ、東京の魅力映像を多くの参加者に紹介する。こうして国内外の東京ファンを増やし、観光客誘致に繋げていきます。
インバウンドが東京に最も期待する魅力の一つが多彩な食です。その土地ならではの食材を楽しむガストロノミーツーリズムをはじめ、食を通じた積極的なプロモーションを展開してまいります。加えて、都内各地を舞台にしたファッションイベントを開催するほか、世界で根強いファンを持つアニメ・マンガの展示拠点を豊島区池袋に整備するなど、東京の強みを戦略的に活かします。
街を彩る煌びやかな夜景も、世界を惹きつける新たなキラーコンテンツにしたいと思っています。その鍵は、我が国が高い技術性で世界をリードするプロジェクションマッピングの活用です。イベントでの投影のみならず、都庁舎をはじめとする西新宿や再開発エリアを鮮やかに演出するなど、街全体へと広げていきます。併せて、東京港の海上公園に、幻想的な光が織りなす噴水を設置するなど、新たなランドマークを出現させてまいります。

芸術・文化のさらなる活性化

次に、豊かな人生を送る上で欠かせない芸術・文化です。コロナ禍の影響を受けてきた中小の芸術団体による公演活動を積極的に後押しをするほか、都営住宅の空き店舗等を創作の場として貸し出し、都民が身近にアートに触れられる環境も創出します。また、アーティストの持続的な活動を支援するサポートセンター機能を新たに整備します。資金調達のセミナーからハラスメントや著作権に関する相談まで、様々な側面から創作活動を支えていきます。さらには、新たな表現の創造拠点「シビック・クリエイティブ・ベース東京」において、デジタルテクノロジーを活用した創作や、街と連携したイベントの展開など、これまでにない芸術の楽しみ方を提供し、アートの可能性を一層広げてまいります。

ゆとりと潤いに満ちたまちづくり

人中心の空間を生み出し、何度でも歩きたくなるウォーカブルなまちづくりも推進します。その象徴の一つ、銀座の一等地を走るKK線の再生に向けた事業化方針を来月策定します。緑に囲まれた空中回廊。この完成イメージをより多くの皆様に感じていただくため、ゴールデン・ウィークの期間を捉えて、大規模なウォーキングイベントも実施します。
都立公園の再生プロジェクトも着実に進んでいます。日比谷公園大音楽堂、いわゆる「野音」の再整備に着手し、Park-PFI制度で民間の力を活用しながら、この先も都民・アーティストから愛される音楽堂へと甦らせます。また、5月には、新たな都立公園として練馬城址公園が開園します。としまえん等の歴史を受け継ぎながら、子供たちがのびのびと過ごし、賑わいや緑に溢れた、誰からも親しまれる公園にしてまいります。広々とした水辺空間を満喫できる隅田川テラスをイベント広場として活用する仕組みづくりを進めるほか、都心部・臨海部を結ぶ身近な交通手段として舟運の活性化も加速するなど、ゆとりや潤いのあるまちづくりを進めます。

6 さらに暮らしやすく魅力に溢れた多摩・島しょへ

次に、未来への可能性が広がる多摩・島しょについてであります。多摩地域が東京へ移管されてから今年で130年の節目を迎えます。市町村と一層の連携を深めながら、今後も多摩の魅力を高めていきます。そして、この機に、多摩や島しょのファンを一段と増やしていきたいと思っています。地域住民との交流や、実際に暮らしてみる機会を創出する取組も新たに始めます。多摩・島しょと繋がる方々、ひいては「ここで暮らしたい」と望む方々を増やし、さらなる活性化の原動力としてまいります。

変わり続ける多摩の魅力的なまちづくり

多摩のまちは変わり続けています。先月には、体験型英語学習施設が立川にオープンし、大変大きな反響をいただいています。高まる多摩の魅力は、今後も発展し続ける交通基盤、なかでも多摩都市モノレールの延伸によって、さらに加速することでしょう。各駅の特徴を活かし、新たな暮らし方・働き方のモデルとなるまちづくりを目指す市や町を全力でバックアップしていく。こうした拠点づくりを一層推進するべく、「多摩のまちづくり戦略(仮称)」を新たに策定していきます。さらに、東京2020大会のコースを活かした本格的な自転車ロードレースを開催します。安全で誰もが楽しめる大会にすることはもとより、国内外の注目が高まる機を捉え、多摩の魅力を大いに発信してまいります。

より暮らしやすく訪れたくなる島しょ地域へ

たくさんの宝物に満ち溢れた島しょ地域。世間に伝わる魅力は、そのごく一部でしかないと思います。私は、これをもっと輝かせ、多くの人々にその素晴らしさを知ってもらいたいのです。東京の島ならではの魅力。それは、個性的なアクティビティ、息を呑む絶景など有数の観光資源を、都会から少し足を伸ばすだけで堪能できることではないでしょうか。こうしたところに、上質な宿泊施設を誘致し、あるいは、廃ホテルの撤去・跡地活用を推進するなどして島の魅力に新たな価値を加え、旅行者の多様なニーズに応えていく。これに併せ、海外航空会社等の受入体制の整備や、国際会議の戦略的な誘致・開催を進めるなど海外への発信力を強化します。遠隔医療、教育DXの推進など良好な生活環境の整備も進めながら、住んで良し、訪れて良し、世界に誇れる東京宝島の価値を磨き上げてまいります。

7 おわりに

さて、今月、アイデアや技術を武器にイノベーションを起こす国内外のスタートアップや、世界の都市のリーダーたちが、ここ東京に集います。イノベーションを加速させる国際イベント「City-Tech.Tokyo」、そして、都市の課題解決に挑む国際会議「G-NETS Leaders Summit」であります。両者が掲げる旗印「SusHi Tech Tokyo」には、持続可能な新しい価値の創造に挑む東京の揺るぎない決意が込められています。国や都市を超えた人と人との繋がりが新しい価値を生み出していくのです。この機会を、まさに明るい未来への出発点にしていきたいと思います。
もとより、東京の礎を築いた後藤新平や渋沢栄一が活躍した時代も、私たちが生きる今も、そして、100年先の未来も、その主役は常に「人」であります。だからこそ、知事就任以来、都民ファーストを掲げ、一人ひとりが輝く東京を目指し都政に邁進してまいりました。世界のスピードは速く、私たちを取り巻く環境も目まぐるしく変化し続けています。しかし、誰もが夢や希望を抱き、自己実現を追求できる社会にする、このことはいついかなる時も決して見失ってはならないと思っています。1400万の都民一人ひとりが、次なる時代のゲームメイクを担う存在です。100年先も豊かさに溢れる持続可能な東京を目指し、新たな種を蒔き、大きく花開かせていく。この「未来への投資」を、都議会の皆様、都民や事業者の皆様と共に推し進め、東京大改革、東京の進化、これを確かなものにしてまいります。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案35件、条例案48件など、合わせまして112件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願い申し上げます。

以上をもちまして、私の施政方針表明を終わりといたします。
ご清聴、誠にありがとうございました。

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